百人一首
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49部分:第四十九首
第四十九首
第四十九首 大中臣能宣朝臣
篝火が燃えて辺りを照らしている。
夜になり暗闇が世界を支配するこの時になって篝火が頼りになる。
篝火だけを友として夜を過ごし。
気付くともう朝になってしまっていた。
朝は静かにやって来て。
灰が篝火の後にあるだけ。
朝がやって来てもそれは静かなもので。
今の自分の心をそのまま現わしているようだった。
あの人に逢えないこの辛さ。
辛いものはそのまま心に残って。
心はその辛さを忘れずにそのままで。
昼も夜も心はあの人に向けられている。
恋しさは募るばかり。辛さもまた募るばかり。
募っていくこの辛さを心に残してそれを今歌に詠う。
みかきもり 衛士のたく火の 夜はもえ 昼は消えつつ ものをこそ思へ
歌にしてみても気持ちは消えない。ただひたすらあの人のことを想い恋焦がれるだけ。
篝火は消えて灰になって。そうして朝が去って昼になって。それでも想うのはあの人のことばかり。
そうした中で忘れられずに想いを募らせていく。火は消えても想いは消えはしない。そうした辛さが何時まで続いていくのか自分でもわかりはしない。けれどそれでも想い続けるのだろう、このことだけはわかるのだった。わかってはいてもどうすることもできはしないのだけれどそれでも。
今日もまたあの人を想いこうして夜の訪れを受ける。篝火はそのまま灰になってしまうのをわかっていながら。また朝が来るのを一人で待つだけだった。
第四十九首 完
2009・2・16
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