魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年
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第三十四話 過去の出会い、現在の再会
前書き
題名の現在は「いま」と呼びます。
「全さん全さん全さん全さん全さ~~~~~~~んっ!!」
「「「「「「「「「………………………」」」」」」」」」
痛みで気絶している全の顔に抱きつき頬ですりすりするリインフォースⅡ。
それを見ている全員が唖然としている。
「り、リイン?な、何で橘君に頬をすりすりさせとるん?」
一番早く回復したはやてが代表してリインフォースⅡに聞く。
「え?それは全さんだからですよ~~♪すりすり~~~♪」
何だかハートが飛び交うような幸せな表情で全にすりすりするリインフォースⅡ。
「り、リイン?そいつは女の子に嫁とかいう最低な奴なんだぞ?そんな事して勘違いされたら」
聖はあくまで善意でリインフォースと全を離れさせようとするが
「全さんはそんな事しませんも~~ん♪むしろ、物凄く気遣ってくれますも~ん♪」
離れる気配が微塵もない。
「と、とりあえず、リインフォースだったか?全は今、ちょっと対応が出来ない状態でな。恐らく積もる話もあるだろ?ここは離れて、な?」
「うぅぅぅぅ……はい、わかりました」
ミサキがリインフォースⅡの頭に人差し指を置き、説得する。その説得により渋々とはいったものの、リインフォースⅡは全から離れた。
「よし、それじゃ医務室に運んでくれ。それとシグナムさん、見てあげるから患部を見せて……男性陣は後ろを向く!!」
「「は、はい!!」」
こうして、模擬戦は幕を閉じた。
全は今、夢を見ている。というのも全にはわかるのだ。これが夢だという事が。
なぜなら全の前には既に亡くなっている人物が二人もいるからだ。
『全君、これはどうだろう?』
『甘いですよ、智樹さん。王手』
『な、何だとぉ!?ここで王手……うぅむむむむむ……』
『長考ですか?いいですよ、この状況からどうやって乗り切るのか見物ですから』
『むむむむむむ……』
ある一軒家のリビング。そこで机に置いてある将棋盤で将棋をやっているのは幼い頃の全と智樹と呼ばれる男性。
『二人とも。そろそろ休憩したらどう?はやてだって帰ってくるんだし』
『いや、待ってくれ日和。もう少し、もう少しで打開策が……』
『ここにこうすればいいのですよ』
日和と呼ばれた女性が将棋盤の上の駒を動かす。
『むっ……では、ここに……』
『ふふっ。そうくる事は想定の範囲内。では、ここに置けばどうなるでしょうか?』
なぜか智樹対全ではなく、日和対全の戦いになっているが、これはいつもの事だ。
『そしてここに置けば……王手、ですよ?』
『…………未だにこういった頭脳勝負では日和さんには勝てない』
『ふふっ。これでもこの手の手合いの試合では全勝中なのよ?』
日和の言う通り、なぜかこういった頭脳勝負が物を言う将棋やチェス、囲碁などの盤を使った勝負では全は一度も勝てていない。
そんな彼女にも一つだけ弱点がある。それが運動があまり出来ないという事だ。
元々体が強くなく、子供を産むのも少し危険があるとまで言われていた。
それでも彼女は子供を産んだ。智樹との間の子供を。
『お母さ~~ん、お父さ~~ん、ただいま~~!!』
『あらあら。帰ってきたようね。おかえり、はやて』
玄関まで迎えに行く日和。夢を鑑賞している側の全は日和の後を追いかける。
玄関までやってきた全の目の前に少し幼いはやての姿があった。今とは違い、車椅子だ。
はやてはこの頃から既に車椅子での生活をしていたのだ。
そして彼女の車椅子を押している人物こそ、彼女にとって忘れられない存在。
『ごめんなさいね、リインフォースさん。はやての散歩に付き合ってもらっちゃって』
『いえ。出来るところまでやりたいと言ったのは私ですから』
綺麗な銀髪を腰の所まで伸ばしている美少女と呼んでも過言ではない少女が日和に別に迷惑ではない事を伝える。
『にしても、あれね……あの時、いきなり本から人が出てきた時は驚いたけど……慣れてしまえばあれね』
『……普通は一般人は慣れる事はないと思うのですが……』
頬に手をやり、うふふと笑顔を浮かべる日和。そんな日和に疲れたような表情をしている。
『そうかしら?貴方だって家族なのよ?家族が一人増えたと思えば自ずと慣れるものよ』
『……私のような物が、家族と呼ばれていいのでしょうか?』
『こらっ』
『あいたっ』
自分の事を物という彼女の頭に日和のチョップが当たる。
『自分を卑下しない。貴方は私たちの家族。それ以上でも以下でもないの。わかった?』
『……日和殿……ああ、わかった』
ああ、こんな人だったなと全は思い出す。
日和はあまり細かいことは気にせず、どんな相手にも態度を変える事はなかった。それは全の前世での母親、真白と似た部分があるかもしれない。
だからこそ、全は真白に心を開いたのだろうと思っている。
『おぉい、飯にするんじゃないのかぁ?』
『はいはい、もうトモ君はせっかちなんだから』
そして、そこで夢は終わった。
「……何で今、あの頃の夢なんて見たんだろ……」
全はベッドの上で目を覚ました。
気絶するまでの記憶を手繰り寄せる。
——————————確か、シグナムと模擬戦をしていて、全力全開の縮地と抜き足を同時に使った『暗殺技 零』を使ってそれから……。
ああ、そうかと思い出す。技の反動で両足を悲鳴を上げ、あまりの痛みに気絶したのだ。
しかし、今はそんなに痛みがない。完全にないとは言い切れないがそれでもあの時よりも大分よくなっていた。
——————————美咲さんに感謝だな。
全はそう思いながら、ベッドから降りようとする。と、ベッドの縁に顔を埋めて寝ている少女の存在に気付いた。
「ん?…………え?」
少女が埋めていた顔を少し横向けにする。そして少女の顔を見て全は驚く。
似て、いたのだ。あの時、はやての事を頼むとお願いし、最後まではやての事を思い、散っていった少女、リインフォースに。
「いや、そんな事ある筈が……」
そんな事ある筈がない。しかし、目の前の少女はあまりにも似すぎている。これはただの偶然なのだろうか?
しかし、そんな考えは少女が起きると消え去った。
「あ、全さんっ!起きたんですねっ!」
「っ、くっ!」
「ふわっ!?あ、あの、全さん……?」
屈託のない笑顔を向けてくれる少女を全は思わず抱きしめる。
「ごめん、ごめん……最後まで、一緒にいてあげられなくて……」
この二人は初対面だ。しかし全はそんな事関係なく少女に謝罪する。
少女もその謝罪の意味を正しく理解している為、優しく抱きしめる。
「大丈夫ですよ、全さん……全さんは何も悪くありません……だから、大丈夫ですよ?」
「ごめん、ごめん、ごめん……」
泣きながら謝罪を繰り返す全。そしてそんな全を優しく抱きしめ、背中をさすってやる少女——————リインフォースⅡ。
そんな全とリインフォースⅡの様子を見守っていた少女がいた。リインフォースⅡの主であるはやてだ。
———————————何なん?二人は初対面の筈やのに……。
そんな疑惑がはやての中から離れなかった。
後書き
全の謝罪の意味と、なぜ過去に子供の姿でリインフォースがいたのかははやて編ではやてが記憶を取り戻してから明らかになります。
正直、悲しい運命としか言えません。考えた自分が言うのもあれですが。
後、この小説内ではリインフォースの記憶をリインフォースⅡはきちんと引き継いでおります。
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