SAO~円卓の騎士達~
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第二話 ベータテスター
~アーサー side~
あの後、俺達はホルンカの村で片手剣入手クエを受けた。
片手剣の人数が多い分、面倒だったし、MPKされそうにもなったが、不幸中の幸いとも言うべきか、かなりスペックの高い両手剣が二つもドロップした。
恐らく、第一層で手に入れられる魔剣だと思う。
俺たちはその剣を俺とコノハで一つずつに分けた。
クライン達とはフレンド登録をしてここで別れた。
それから一ヶ月後、俺とキリト、シンタローは第一層攻略会議に参加するため、最前線の街、トールバーナーへとやって来た。
ここまでの死者の数はおよそ二千。
完全攻略に絶望を覚える人が増えてきた時の事だった。
他のメンバーは始まりの街で待機している。
そして、第一層攻略会議が始まる。
ディアベル「みんな、今日は集まってくれてありがとう! 俺の名前はディアベル。 職業は気持ち的にナイトやってます!」
「SAOにジョブシステムなんて無いだろ!」
など声が上がる。
今ので少し場の空気が和んだ。
結構、リーダーの素質があるな。アイツ。
ディアベル「この前、俺のパーティーがボス部屋を発見した。」
その言葉だけで空気が変わる。
別に戦闘までまだあるんだからそんなに集中しなくても。
ディアベル「そこでまずはその場でパーティーを組んでもらいた「ちょっと待ってや!!」」
ディアベルの話してるところに関西弁の頭がモヤットボールみたいな男が乱入する。
キバオウ「ワイはキバオウって者や! 攻略の前にまずこの中にもみんなに謝らなアカン奴がおるやろ!」
ディアベル「それはベータテスターの事かな?」
キバオウ「せや! あいつらはゲーム開始直後に情報を独占し、ニュービーを置いてった! そのせいで今まで何人もの犠牲者が出たんや!」
・・・ハァ、いかにも正論みたく言ってるけど論破しほうだいじゃん。
キバオウ「ここにいるベータテスター! 前に出て皆に謝りぃや! そんでもってアイテム、武器、防具、金を全部吐き出せ!」
こりゃ、黙って見てる訳には行かないな。
アーサー「キリト、シンタロー、最悪の場合お前らもベータテスターだって言わなくちゃいけなくなるかもしれない。 それでもいいか?」
二人とも黙って頷く。
黙って立ち広場の中央に向かって歩く。
キバオウ「何や!? お前、ベータテスターか!?」
アーサー「その通りだ。」
キバオウ「じゃあ、お前がいたあのパーティーの二人もベータテスターか!?」
アーサー「そうだが、パーティーリーダーは俺だ。 メンバーの分は俺が謝る。」
キバオウ「ほう、それはお前さんの正直さと心意気に免じて良しとしたるわ。それじゃあ、さっき言った通り、謝って全財産、吐き出してもらおうか!」
アーサー「謝りはするが、アイテムを置いてく訳にはいかない。」
キバオウ「何やと!?」
アーサー「俺はここに攻略会議をしに来た。 あんたも戦力を減らす気は無いだろう?」
キバオウ「む、それは確かにその通りや。 なら、この場で謝ってアイテムは攻略後に渡してもらおうか!」
アーサー「元からそのつもりだ。 だが、謝る前に一つだけ言うことがある。」
キバオウ「何や!?」
アーサー「もし、あんたらがベータテスターだったらニュービーを助けたのか?」
キバオウ「そ、それは……」
???「俺はそいつに賛成だな。 何も、ベータテスターが悪い訳じゃないだろ。」
声がした方を見ると、巨体でスキンヘッドのいかついおっさんが立っていた。
初対面の子供によく泣かれるタイプの人だな。
キバオウ「・・・お前さんは?」
エギル「エギルって者だ。」
キバオウ「それで、さっき言った事はどういう意味や?」
エギル「そのままの意味だ。 悪いのは茅場でベータテスターじゃ無い。 それに、あんたも貰ったろ、コレ。」
そう言ってエギルが見せたのは第一層の攻略本。
アルゴが無料配布してたやつか。
キリトは買わされたらしいが。
キバオウ「貰ったが、それがどうしたと言うんや?」
エギル「これを出してたのはベータテスターだ。」
キバオウ「なっ!?」
ディアベル「エギルや、えーと」
アーサー「アーサーだ。」
ディアベル「エギルやアーサーの言った通り、悪いのはベータテスターじゃない。 それで良いんじゃないかな、キバオウ。」
キバオウ「……せやな。 アーサーはん。 さっきはすいません。」
アーサー「いや、それでもベータテスターがニュービーを置いてったのは事実だ。 こちらこそすまなかった。」
ディアベル「それじゃあ、一件落着したことだし、会議を再開しよう。 さっき言った通り、パーティーを作ってくれ。」
俺はもとの席に戻ろうとしたが、、、何か人数増えてねぇか?
誰だよ、あの二人。
どこかで見た顔してるけど、、、
あ。
階段を勢い良くかけあがり、その二人に掴みかかりそうな勢いのまま質問をする。
アーサー「何でお前らがここにいるんだ、佐々木兄弟!」
そこにいたのは剣道全国決勝の相手の副将と大将の佐々木兄弟だった。
聞くところによると、兄の拓真(プレイヤーネーム サクマ)が元ベータテスターで、弟の佑真(プレイヤーネーム コジロウ)をSAOに誘った結果、デスゲームになり、攻略組としてここに来たばかりで、その時偶然キリトを発見したらしい。
サクマ「しかし、現実は小説より奇なりとは、よく言ったものだ。」
アーサー「あぁ。 まさかベータ時代のコンビが決勝の相手だとはな。」
そんなことを話しながらパーティーを組んだ。
人数は多ければ多いほど良いからな。
ディアベル「そこのフードを被った人! ソロじゃ危ないからパーティーを組んでくれ!」
その声に反応して近くを見るとフードを被ったプレイヤーが一人で座っている。
それなら声をかけるのも当然か。
そのプレイヤーが立ち上がると驚いたことにこっちに向かってくる。
まさか、
???「あなたたちのパーティーに入れてくれないかしら?」
アーサー「俺は別にいいが、お前らは?」
キリト「断る理由無いだろ。」
シンタロー「以下同文だとおもうぞ。」
アーサー「分かった。」
ーAsunaがパーティーに加入しました。ー
名前はアスナか。
アーサー「俺の名前はアーサー。 よろしく、アスナさん。」
アスナ「何で私の名前を、、」
アーサー「視界の右上にHP表示があるだろ? その表示の上に小さく名前が書いてあるのが見えないか?」
アスナ「あ、確かに。」
アーサー「ところで、何で俺達のパーティーに入ったんだ?」
アスナ「情報を多く持っている貴方達と組めば生存率が上がると思ったから。」
アーサー「なるほど。」
ディアベル「それじゃあ、全員パーティーを組んだところでボスについての情報だ。 この攻略本によるとボスはイルファング・ザ・コボルトロード、取り巻きにはルインコボルト・センチネルがいる。 ボスは左手に盾、右手に斧を持っているが五本あるHPの四本目になると腰のタルワールに武器を変更するらしい。」
アーサー「ちょっといいか?」
ディアベル「なんだい?」
アーサー「その攻略本の情報を鵜呑みにしない方が良いと思う。」
ディアベル「理由は?」
アーサー「第一層で俺達が確認したベータ時代との変更点は六ヶ所、情報屋の情報も含めると十ヶ所以上になる。 そんなに変更があったのにボスがベータ時代のままな訳がない。」
ディアベル「分かった。 因みにどんな感じで変更されていると思う?」
アーサー「知るか。 それこそ運営のみぞ知る事だろ。」
ディアベル「そう言うことだそうだ。 皆、注意しとくように。」
その後、各パーティーの役割分担をし、攻略は明日と言うことになった。
俺達はボスの相手をする二つのパーティーの一つになった。
そして、その夜。
俺達の泊まっている宿にエギル、キバオウ、ディアベルが来た。
因みに今はキリトだけ居ない。
あいつ、アルゴにクレーム入れると同時に買い食いしてくるらしい。
食い意地の張った奴め。
アーサー「で、何でお前らがここに来たんだ? って言うか、どうやってここの事を知ったんだよ。」
キバオウ「全員、親交を深めに来たんや。 知った方法はアルゴはんに聞いたんや。」
アーサー「あの野郎、人の個人情報まで売りやがって。 まぁ、良い。 折角来た客をそのまま帰すほど神経図太くないからな。」
ディアベル「ありがとう。 あの時、ベータテスターをかばってくれて。」
アーサー「何だよ、いきなり。 あれは俺もベータテスターだったからでな。」
ディアベル「実は俺もベータテスターなんだ。」
アーサー「そうなのか!?」
ディアベル「あぁ。 だから礼を言う。」
アーサー「そうか。 だが、まぁ、それでもあんたの知らないことを俺は知っている。」
ディアベル「どういう意味だ?」
アーサー「ベータテスターのホンの一部は八層よりも上に行っていた。 人数は二十人。 俺もその一人だった。 俺の仲間のベータテスターは全員そうだ。」
エギル「どれくらいまで行ったんだ? それに、なんでネットでは八層までしか行ってないと書いたあったんだ?」
アーサー「二十七層まで上った。 八層までと書かれていたのは攻略組の後から来た奴が八層までしか行けないように九層以上からはアクティベートしなかったんだ。」
キバオウ「何で、そんなことを。」
アーサー「当時の攻略組以外の殆どは攻略した階層に来て、それだけだった。 特に武器を作ろうとも、攻略組に入ろうともせずに後からやって来てはモンスターを狩り、金を貯めてただけだった。 それにムカついた攻略組は九層からはアクティベートしないことにしたんだ。 他の奴はそれに気付きもせず、ベータ時代は八層までしか行けなかったとネットに書いた。 それだけの事だ。」
エギル「なら、その二十人全員が集まれば、」
サクマ「もう無理だ。 二十人の内、十人が死んでる。」
エギル「な、なんでだよ?」
コジロウ「アルゴさんの情報によると、殺されたらしいです。」
ディアベル「だ、誰に?」
アーサー「プレイヤーネーム「poh」という元ベータテスター。 それも二十七層まで登った中の一人だ。 ベータテスト時代からヤバそうな感じはしてたんだが、ここまでとは。」
サクマ「まぁ、何にせよ俺達が情報を独占してると言うのはあながち間違いではない。」
キバオウ「・・・ビーター。」
ディアベル「ん?」
キバオウ「いや、ベータテスターでチーターみたいやと思ったらビーターって言葉が浮かんでな。」
シンタロー「ビーターか。 確かにその通りだな。 これから、そう名乗るか?」
サクマ「良いんじゃないか? 嫌われ者になるがな。」
キバオウ「ちょ、待ってーな。 何でわざわざ嫌われ者になる必要があるんや!? 折角、みんなベータテスターが悪者やないと思い始めてるんに。」
アーサー「みんなって言うのは、今回の攻略に参加してる奴だけだろ? 世間一般的なベータテスターの印象はまだ悪者だ。 そこにもっと悪い奴が出れば普通のテスターの印象は少しだが良くなるはずだ。」
キバオウ「何でそこまでする必要があるん!?」
アーサー「理由は無い。 けどこのままじゃその内、ベータテスターに対してPKが増える可能性が無い訳じゃないからな。」
コジロウ「俺はベータテスターじゃないけど、兄貴達の言ってることは良く分かります。 それに、人を助けるのに理由はいらないし。」
サクマ「お前、ただ単にその言葉が言いたかっただけだろ。」
コジロウ「あ、ばれた?」
サクマ「当たり前だ。 お前がFFファンなのは百も承知なんだよ。」
コジロウ「でも、助けたいって思うのは本当ですよ?」
アーサー「ま、何にせよ決まりだ。 今、キリトとユージオ達に了解のメール貰ったからな。」
シンタロー「相変わらず行動が早いな。」
アーサー「思い立ったが吉日って言うだろ?」
ディアベル「・・・どう言ってももう決めたんだね?」
アーサー「あぁ。 死ななきゃ何でも良い。」
ディアベル「じゃあ、俺達に何か手伝える事は無いか?」
キバオウ「ワイもや! ワイも手伝うで! 止めても無駄なんやったら少しでも手伝わせてくれや。」
エギル「もちろん、俺もだ。」
このあと、話し合った結果、ビーターを名乗るのは攻略が終わったときで、きっかけを作るのはキバオウという事になった。
~side out~
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