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Fate/kaleid night order

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第6節:霊脈地ヘ、そして来る万華鏡の来訪者

霊脈地までは、遠坂の調べで2キロあることが判明したため、その後、約30分かけて俺たちはそこまで移動した。


「しかし・・・・・・ここに至るまでずっと、見渡す限りの炎ですね。それに大気中の魔力(マナ)濃度も異常です。カルデアの資料で確認したフユキとはまるで違います。これでは古代の地球と言っても差し支えないくらいです。先輩、凛さん。本当にここはフユキなのでしょうか?」

「ああ、それは間違いない。ただマシュの気持ちも解るよ。こんな光景、俺たちがいた2004年の冬木じゃまったくなかった。これもやっぱり、さっきの竜牙兵の集団みたいな異変が起きてるのと決して無関係じゃないと思う、なあ遠坂?」

「そうね、そのせいで益々この原因が気になってきたわ。2人とも急ぐわよ!」

「ああ(はい)!」


そして、霊脈地がある辺りに到着した直後だった。その近くから、紛れもない恐怖の悲鳴が聞こえた。


「ーーーキャアアアアアーーーーー‼︎」

(っ・・・⁉︎嫌な予感がするぞ。)

「遠坂、マシュ。今の悲鳴はもしかして⁈」

「もしかしてじゃないわよ士郎!」

「はい、凛さんのいう通りです。先程の悲鳴はどう聞いても女性の悲鳴です。急ぎましょう、先輩!」


直後、マシュは瓦礫を蹴立てて走り出す。俺たちも慌てて黒い甲冑の背中を追う。漆黒の稲妻の如き疾駆を必死に追随するが、英霊と融合した人間とただ魔力を足に通して少し強化しただけの人間とでは基本的な身体能力がかなり違う。そのためマシュと俺たちとの距離はどんどん離れていく。

そしてたどり着いたその場にいたのはーーー


「何なの、何なのよコイツら⁉︎なんだって私ばっかりこんな目に会わなきゃいけないのよ⁉︎」

「もうイヤ、早く来て、助けてよレフ!何時だって貴方だけが私を助けてくれたじゃない!」

「「「オルガマリー所長・・・⁈」」」


人理保証継続機関フィニス・カルデアの所長、オルガマリー・アニムスフィアだった。
よく見ると、彼女の周りをあの竜牙兵達が取り囲んでいた。その光景を見た俺は真っ先にその場に駆け出し、投影した干将・莫耶を振りかぶる。


「やめろてめぇらッ‼︎」


助走の勢いをつけて振り下ろした夫婦剣による一撃は、剣を振り上げた骸骨の頭蓋を一撃で粉砕し、一気にオルガマリーの元へ駆け寄る。
続いて来たマシュも彼女の姿に驚きを隠せないようだ。

「オルガマリー所長⁉︎何故ここに⁉︎」

「あ、貴方たち⁈ああもう、いったいなにがどうなっているのよーーー‼︎」

「下がっていてください所長。先輩、凛さん。行きます!」

「ああ(ええ)!」


敵に向かって駆け出したマシュは豪快に盾を振るい、襲いかかる骸骨達を大盾で叩き潰す。相応の重量と質量を兼ね備えた彼女の大盾は岩でも粉々にできるだろう。
そして俺と遠坂も負けじと、マシュが取りこぼした骸骨達が振るう武器を、俺が投影した干将・莫耶で、遠坂が魔術で強化した自身の両腕で、それぞれ受け止め、頭蓋を即座に破壊していき次々と仕留めていく。そして最後の一体を、干将・莫耶が粉砕した。


「お疲れ様。マシュ、遠坂。」

「何言ってんの、それは貴方もよ士郎。」

「はい、先輩こそお疲れ様です」


笑顔で手のひらをマシュと遠坂に向けると、遠坂はすぐに、マシュも最初は驚いたがこちらの意図を察したのか同じく手のひらを向け、3人で手を軽く叩き勝利を労う。


「戦闘は無事終了しました。お怪我はありませんか、所長?」

「・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・どういう事なの?」


マシュが所長に無傷かどうかを尋ねると彼女は驚きに満ちた顔で此方を見つめていた。


「どうなさったのですか所長?・・・・・・ああ、私の状況ですね。本当に信じがたい事だとは思いますが、実はーーー」

「サーヴァントとの融合体であるデミ・サーヴァント化でしょ。そんなのは見れば解るわよ。」

「私が訊きたいのはどうして今になって成功したのかって話よ!」

「いえ、それ以上に貴方!貴方よ、今日いきなり平行世界からのカルデアにやってきた一般人!」

「あ、はい!なんでしょうか?」

いきなりで尚且つ顔を会わせるのはこれが初めてだったということもあり、思わず口調が敬語になってしまった。

「別にかしこまらなくていいわよ!確か、衛宮士郎といったわね。」

「あ、ああ。そうだけど。」

「なんでマスターになっているの⁉︎本来ならそれはそこの遠坂凛のような一流の魔術師に与えられるべき力の筈でしょ!」

「いやそれはだな・・・」

「それはだな、じゃないわよ!早く質問に答えなさい!いったいこの子にどんな乱暴なことをして言いなりにした訳⁈」

「違う、それは完全な誤解だ!俺は断じてマシュにそんなことしちゃいないぞ!」

「じゃあ何だって言うのよ⁉︎」

「いやだからだな・・・」

(まいったなあ、どう返したものか。誤解を解こうにも、そうなると俺が魔術を使えるってことを説明しなくちゃいけない。所長は知らない筈だし、そうなるとさらなる誤解を生む恐れがあるんだよなあ。ハア、ほんとにどうすりゃいいんだよ・・・)


俺が1人心の中で悩んでいた時だった。遠坂が少し怒ったように所長に話し始めた。


「あらマリー、私は敬語じゃなくていいとは言ったけど、そこのっていうのはいただけないわねぇ。」

「うっ、ご、御免なさい。だけど貴方じゃなくてソイツがマスターになってるっていうのはホントにおかしいじゃない!」


そしてーーー


「だからそれは違うって士郎が言ってるでしょ。あ、でもそれだけじゃ足りないか。えっとね。簡単に言わせてもらうと士郎も私や貴方と同じで魔術が使えるの。これでいいかしら?」

(あっ・・・)


俺が悩んでいたことをサラッと言ってのけた。


「え、ええええええええ⁈」


それに対して所長も当然の反応を返してくれた。

「ハア・・・」

「えっ、ちょ、どうしたのよ士郎⁈あっもしかして今の言っちゃいけなかった?御免なさい!」

「いやもういいよ。バレちゃったものはしょうがない。所長、今遠坂が言った通りだ。俺も魔術が使えるんだ・・・固有結界だけど。」


その瞬間、所長の顔がまた驚きに染まった。


「えっ⁉︎固有結界って、なんで貴方がそんな封印指定モノの大禁呪を使えるのよ⁈」

「それは・・・「きっかけは士郎がまだ幼い頃、胸に聖遺物を埋め込まれて属性が''剣''に変化したからよ。それも、アーサー王が持っていた最強の聖剣エクスカリバーの鞘っていう超が幾つもつくほど凄いやつをね。」・・・以下の通りだ。」

「!!!???」


所長は驚きすぎたらしく、さっきから口をパクパクさせている。


「はは、やっぱりそうなるよな・・・」


その後、更に詳しい経緯を説明しどうにか俺が魔術を使えるという理由を理解してもらった。
そしてマシュ自身が、俺がなんでマシュと契約したのかという理由を説明してくれた。


「ーー以上です。私たちはレイシフトに巻き込まれ、この特異点に転移してしまいました。所長がこちらで合流できた唯一の人間です。でも、希望ができました。所長がいらっしゃるなら他に転移が成功した適正者もーー」

「いないわよ。それはあなたの説明で確定したわ」

と、言いかけたマシュの言葉をオルガマリーはバッサリと切り捨てた。

「私もあの子も凛もレイシフト装置、コフィンに入っていなかった。生身のままのレイシフトは成功率が激減するけど0にはならない。一方コフィンはシフトの成功率が95%を下回ると電源が落ちるのよ」

「・・・・・・あれ?じゃあマリーさんは参加はしなかったのか?」


俺の質問にオルガマリー所長はじろりと一睨みする。


「・・・・・・悪い?司令官が最前線に出るわけないじゃない。言ったでしょ、君たちは私の道具だって」

「え、その・・・はぁ」


威圧的な態度にやはり思わず謝ってしまう。


(この人、なんか常に怒ってる気がする。これで部下に嫌われたりしてないんだろうか・・・?)

「・・・・・・まあいいわ。状況は理解しました。ーー衛宮士郎。緊急事態ということで、君とキリエライトの契約を認めます。けど、ここからは私の指示に従ってもらいます。文句はないわね?」

「あ、ああ・・・・・わかった・・・」

「凛もそれで構わないかしら?」

「ええ、いいわよ。それにこの手の魔術にも関しては、私、知ってはいたけどそこまで詳しいってわけでもなかったしね。」

「そう、わかったわ。」


呆れたような顔からキリッとした表情に変わる。なんだか、無理に偉そうな態度を取っているように見えた。


「ところで所長、これからどうするんですか?」

「そうね。まずはベースキャンプの作成よ。いい?こういう時は霊脈のターミナル、つまりは魔力が収束する場所を探すの。それならカルデアとの連絡も取れるわ。じゃあ、移動しましょう」

張り切った口調のオルガマリー所長。このままなら一行はいい雰囲気で入れただろう。俺が間髪入れずに、

「でもマリーさん、霊脈地はここなんだけど?」

「あっバカ・・・!」


ーーーと、言わなければ。
とっくに俺たちが3人で探していた霊脈地についているのだ。横にいたマシュに同意を求めるとマシュも微妙な顔で首を縦にふる。


「「「「………………」」」」


場に沈黙が流れる。当のオルガマリーは羞恥で顔を真っ赤に染めている。


「あ……そ、そうよ⁉︎そうに決まってるじゃない⁉︎わかってる、わかってたわよそんなことは‼︎君に言われなくても‼︎」

「いたっ!痛いって!もう、なんでさ⁉︎」

余計なことを言い、酷い逆ギレを受けた士郎はオルガマリーにゲシゲシと蹴られた。しかも彼女が履いているのがヒールであるために踵の部分が凄く痛い。


「じゃ、じゃあマシュ。此処にその盾を地面に置きなさい。宝具を触媒にして召喚サークルを設置するから」

「……だ、そうですが。よろしいですか、先輩?」

「……あ、ああ。構わないよ」

「凛さんも、それでいいでしょうか?」

「ええお願い。」

「・・・・・・わかりました。ーーそれでは、始めます」


マシュは頷くと手にした盾を地面に置く。すると、盾を中心に魔方陣が展開され、周りが青い空間になった。


「これは…………カルデアにあった召喚実験場と同じ――」

『シーキュー、シーキュー。もしもーし!よし、漸く通信が繋がったぞ!こちらカルデア管制室だ、聞こえるかい⁉︎」

突然、その場に聞きなれた声が聞こえてくる。この穏やかそうな声音は知る限りでは一人しか知らない。そしてそう思ったのとほぼ同時に
空間に現れた立体映像には知っている顔、あのゆるふわ系のDr.ロマンの姿が映し出された。


「ドクター!無事だったんですね!」

『……まあ、カルデア内部はひどい有様だけどね。ともあれ、まずは君たちの状況を確認してくれ』


確かに、Dr.ロマンの顔は酷く疲れた様子だった。


「はい、Dr.ロマン。こちらAチームメンバー、マシュ・キリエライト。通信は良好です。そして、現在、特異点Fへのシフト、及び霊脈地への接続を完了しました。」

「同伴者は衛宮士郎、遠坂凛、オルガマリー・アニムスフィアら三名。全員、心身共に異常ありません。レイシフト適応、マスター適応、ともに良好。衛宮士郎、遠坂凛ら二名を正式な調査員として登録してください。」

『……やっぱり、士郎君と凛君もレイシフトに巻き込まれていたか。コフィンなしでよく意味消失に耐えれたね。とにかく、君たちが無事で何よりだよ。それと・・・所長?生きてらしたんですか?あの爆発の中で⁉︎しかも無傷⁉︎どんだけ⁉︎』

「どういう意味ですかっ⁉︎というかレフはどこ⁉︎医療セクションのトップのあなたが、なぜその席にいるの⁉︎」
部屋を退出した後、士郎が管制室へ向かったと知ったロマンは俺と遠坂を心配してカルデア中を捜索していたらしい。そう思うと衝動で動いて申し訳ない気持ちになる。

『…………自分でもこんな立場は合わないことくらい理解してますよ。でも、他に人材がいないんですよ、オルガマリー。現在、生き残ったカルデアの正規スタッフは僕を入れて二十人に満たない。……レフ教授はあの時、管制室で指揮をとっていました。あの爆発の中にいた以上、生存は絶望的でしょう』


あの爆発でそこまでの被害が出ているなんて。それにあのレフ教授が亡くなったなんて信じられなかった。オルガマリーは俺たちと合流した時以上に信じられないという顔で口を開く。


「そんなーーレフ、が……?いや、それより待って、生き残ったのが二十人に満たない?じゃあマスター適正者は?コフィンはどうなったの⁉︎」

『……47人、全員が危篤状態です。医療器具も足りません。何名かは助けることはできても、全員はーー』

「ふざけないで!すぐに凍結保存に移行しなさい!蘇生方法は後回し、死なせないことが最優先よ‼︎」

『ああ!そうか、コフィンにはその機能がありました!至急手配します!』


オルガマリー所長の指示にカルデアにいるDr.ロマンは立ち上がりその場を離れた。その際に転けたような物音がしたけど気にしない。


「……驚きました。凍結保存を本人の許可なく行うことは犯罪です」


マシュが驚いた表情でそういったのを聞き逃さなかった。


「えっ?そうなのか?」

「はい。それなのに、即座に英断なさった所長に驚いていたんです。流石です、所長。責任より人命を優先なさるとは……」

「バカ言わないで‼︎死んでなければあとでいくらでも弁明できるからに決まってるでしょ!第一、47人の命なんて私に背負えるわけないじゃない・・・・・・!」

「あら。やっぱり貴方優しいんじゃない。ね、士郎。」

「ああ、たとえ理由が何であれこの状況で自分じゃなく他の誰かの命を救うことを真っ先に考えられる奴なんて、やっぱりオルガマリーさんは優しいんだな。」

「だ・か・ら!違うって言ってるでしょう!私一人の手に負えそうにないからに決まってるじゃない・・・・・・!」

不安な表情を浮かべて悲痛な声を上げる。ここまで切羽詰まってる彼女は見たことがない。

「死なないでよ、頼むから・・・・・・!・・・・・・ああもう、こんな時レフがいてくれたら!」


そう言う彼女からはレフ教授への強い依存のような、そんな感情が伝わってきた。
その時再び画面上にDr.ロマンが現れた。大急ぎで冷凍保存の指示を出して戻ってきたらしく、彼の額から汗が、洪水のとまでは流石にいかないが結構流れている。


『所長、なんとか手配は完了しました!それで話は変わるんだけど、マシュ。士郎君と凛君と所長だけじゃなく君が無事なのも嬉しいけど……なんて格好をしてるんだい⁉︎破廉恥すぎる!お父さんはそんな子に育て覚えはないよ⁉︎』

「Dr.ロマン。ちょっと黙ってください」


悪ふざけをしてたロマンにいい加減我慢の限界だったのか、笑ってるはずなのに凄い迫力でマシュはそう言って黙らせた。


(・・・・・・何故だろう。ここで隣にいるあかいあくまの姿が思い浮かんだのは。)

「何、士郎?私の顔になんかついてる?」

「いや、なんでもないぞ。」


だが間違っても本人には言えない、当たり前のことだが。


「ドクター、私との体を状態チェックしてください。現状の把握には、それが一番早いです」

『き、君の、身体状況を?……………お?おおぉ⁉︎』


ロマンはマシュにそう言われ少し黙ったかと思えば、急に叫び出した。


『身体能力、魔術回路、全てが飛躍的に向上している!これじゃあ人間というより――』

「はい。サーヴァントそのものです。私は経緯を覚えていませんが先輩は先程の戦闘中、サーヴァントと融合したようです」

「成る程、デミ・サーヴァント化に成功したのか・・・それでこのことは士郎君と凛君には話したのかい?」

(成る程、マシュの身に起きた英霊との融合はデミ・サーヴァント化って言うのか。)


一人勝手に納得する。


「はい、既に説明済みです。」

「そうか、じゃあ今後の行動について僕の方から説明させてもらおう。三人とも、それでいいかな?あと所長も」

「ああ(ええ)(はい)。」

「あとって何よ、あとって!本当にいつも一言余計ね貴方は!・・・私も別に構わないわ。」

「そうか、よし、じゃあ説明を始めるよ。まずーーーーー











side???



「まさか、彼らがこの世界に飛ばされてきたのか・・・衛宮士郎・・・そして、凛。」


赤い外套を羽織った剣士は何か大切なものを見つけたように空を眺めていた








side???

ゴンッ!!!!

「イッターい⁈いきなり落下とか聞いてないよーー⁈」

「だっ、大丈夫、■■■?」

「落ち着きなよ、■■■さん。それにしてもなんか見覚えある景色だなあ。」

「なに、アンタなんか知ってるワケ?■■■■■■■。」

「いや、僕のせいとはいえ、今回は何にも知らないよ。せいぜい似た景色を見たことがあるって程度さ。」

「そう。じゃあいいわ。ほら■■■、いつまでもしゃがんで頭さすってないで早く立ち上がんなさい。」

「うぅ・・・分かったよ。それにしてもホントに、ここは・・・何処なんだろ?」


そして特異点Fのとある場所にまた4人、俺たち以外の新たな来訪者が訪れていた・・・・・ 
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