聖闘士星矢 黄金の若き戦士達
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102部分:第十二話 ベルゼブブのカナンその三
第十二話 ベルゼブブのカナンその三
「その黒い雲はよ」
「その通りだ」
そしてカナンもそれは否定しないのだった。完全に肯定していた。
「ベルゼブブは蝿の主なのだからな」
「蝿に蟹かよ」
いささか自嘲もあるようなデスマスクの言葉であった。
「何かな。面白いって言えば面白いな」
「面白いか」
「蝿と蟹がそれぞれ八大公と黄金聖闘士ってわけだ。もっとも」
「もっとも?」
「勝つのは俺だけれどな。これは決まっていることだ」
自信だけは変わらなかった。これについては。デスマスクの自信は彼の技を目にしてもいささかも揺らぐことはなかったのであった。
その自信のまま青い炎でカナンの蝿を消していく。消していっているというよりは相殺であり激しい攻防であった。焔と蝿がせめぎ合っていた。
デスマスクとカナンはその中で睨み合っている。もうそこには笑みがなかった。デスマスクはその激しい視線をカナンに向けていたのである。
そしてその中で彼は。またカナンに言ってきた。
「これで終わりか?」
「何が言いたい」
「蝿で終わりかって聞いてんだよ」
カナンを睨み据えたまま問うてきたのだ。
「これでな。どうなんだよ」
「貴様はこれで終わりではあるまい」
「わかってると思うがな」
既に技は見せている。だから動ずるところはないのだった。
「それはな」
「無論これで終わりではない」
カナンはまたしてもこのことを認めてきた。
「蝿だけではな」
「やっぱりな。じゃあこっちもやりがいがあるってもんだ」
「青い炎も蝿も」
カナンは周りの攻防を見ることなくデスマスクに告げた。
「それぞれ尽きようとしているな」
「確かにな。もう飽きたな」
「飽きたか」
「ああ、そうさ」
今の言葉は強がりだった。だがそれは表には出さない。
「飽きたな、いい加減」
「小宇宙を無駄に消耗したくないのではないのか?」
「何っ!?」
「私も同じだからだ」
デスマスクに対して言うのだった。
「それはな」
「ほお、無駄に小宇宙を消耗したくないか」
「私にはわかる。貴様の小宇宙はかなりのものだ」
「俺の方が御前よりずっと強いんだがな」
「勝つのは私だ」
カナンもまた己に絶対の自信があるのだった。
「貴様にもな」
「じゃあ見せてもらうか?」
周りはもう青い炎も蝿も消えていた。その二つの攻防はとりあえずは引き分けだった。しかしそれで終わりではなかったのだった。
デスマスクもカナンも互いに手を繰り出してきた。そうして次の技を繰り出すのであった。
「行くぞ、キャンサーよ」
カナンはその右手に何かを漂わせてきた。
「このカナンの次の技」
「むっ!?」
「先程言った筈だ」
デスマスクに対して語る。
「ベルゼブブは地獄を司る魔神とな」
「そういやそうだったかな」
惚けたのは言葉だけだった。今はその顔も真剣だった。
「忘れたぜ」
「ならば思い出させてやろう」
右手に集まっていたのはまた黒い何かだった。それはデスマスクもはじめて見るものだった。
「何だそれは」
「黒い光だ」
「黒い光!?」
「見たことはあるまい」
表情はない。声だけで笑っている。
「この光はな」
「噂には聞いていたがな」
その光を見ながら答えるデスマスクだった。
「この目で見るとは思わなかったぜ」
「そうか。やはりな」
「それではだ」
黒い光が次第に集まっていく。今それをデスマスクに向けていた。しかしデスマスクはそれを見ても悠然としていた。余裕を変えはしていなかった。
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