英雄伝説～光と闇の軌跡～（碧篇）

同日、17:45―――――



～アルバレア公爵邸～



「ヴァイス様、アルフィン皇女並びにセドリック皇子をお連れしました。」

戦闘終了後の処理をヴァイスがしていると扉がノックされ、リセルの声が聞こえてきた。

「入って来てくれ。」

「かしこまりました。」

そしてヴァイスの許可を聞いたリセルは扉を開いて、金髪の可憐な容姿を持つ少女と同じく金髪の中性的な容姿を持つ少年と共に部屋に入って来た。

「貴方が”クロスベル皇帝”を名乗るヴァイスハイト・ツェリンダー………………」

「……………………」

少女―――――エレボニア帝国皇女でありオリヴァルト皇子の腹違いの妹であるアルフィン皇女は呆けた表情でヴァイスを見つめ、少年―――――エレボニア帝国皇子であり、アルフィン皇女の双子の弟、セドリック皇子は不安そうな表情でヴァイスを見つめていた。

「…………なるほど。奴の弟と妹だけあって、腹違いでも金髪は見事に受け継がれている上、容姿も僅かにだが奴と似ている所があるな…………そこの所は俺とは大違いだな…………」

アルフィン皇女とセドリック皇子を見つめたヴァイスは静かな笑みを浮かべ

「ジルタニアとヴァイス様の似ているところなど、全くありませんでしたものね…………」

リセルは苦笑していた。

「え……僕とアルフィンの腹違いの兄ってまさか…………」

「もしかしてオリヴァルトお兄様をご存知なのですか？」

一方ヴァイスの言葉を聞いたセドリック皇子は驚き、アルフィン皇女は目を丸くし

「ヴァイスハイト・ツェリンダー…………もしかして、お兄様が”影の国”とかいう場所で出会ったご友人ですか！？」

「あ……！以前そう言えばそんな話をしてくれたね…………！」

そしてある事に気付いたアルフィン皇女の言葉を聞いたセドリック皇子は目を見開いて呟き

「ええっ！？じゃ、じゃあどうしてこんな酷い事を…………！」

すぐに状況を思い出して信じられない表情でヴァイスを見つめて言った。

「”覇道”を歩む際、友人である奴(オリビエ)に剣を向ける覚悟はとっくにできている。”皇”とはそういうものだ。皇族の癖にそんな事もわからんのか。」

セドリック皇子に見つめられたヴァイスは厳しい表情で二人を見つめて言い

「そんなの、わからないよ……！今まで仲良くしてくれたルーファスだって、今回の件を聞いてもそれが国の為だって言うだけだったし…………」

セドリック皇子は混乱した様子で答え

「――――！！ルーファスはどうなったのですか！？」

ある事に気付いたアルフィン皇女は血相を変えて尋ねた。



「――――奴なら俺が殺した。奴の遺体は手厚く葬ってある。」

「そんな…………！」

「………………………」

ヴァイスの答えを聞いたセドリック皇子は信じられない表情をし、アルフィン皇女は悲しそうな表情で黙り込んだ。

「どうして……どうしてこんな酷い事を……反乱なんか起こしたんですか！？エレボニアはクロスベルの宗主国で自治も認めているのに…………！僕達はクロスベルの人達にそこまでされるほどの酷い事をしたのですか……！？それにどうして以前の通商会議の時、オズボーン宰相をあそこまで追い詰めたんですか！？父はあの時、オズボーン宰相を庇えない事にどれだけ心を痛めたのか知っていますか！？あの時以降兄上にこれ以上オズボーン宰相を追い詰める事はしないでくれと頼んだのに、全然聞いてくれない事にどれほど悲しい思いをしたか……！それにレオン少佐が仰ったという”百日戦役の真実”って何ですか！？」

そしてセドリック皇子は怒りの表情で叫び

「………………まさか。貴様らはクロスベルがどのような状況に常に晒されていたのかや”鉄血宰相”の抱えている闇、”百日戦役の真実”を今まで知らなかったのか？」

セドリック皇子の叫びを聞いたヴァイスは眉を顰めた後、表情を厳しくしてセドリック皇子とアルフィン皇女を睨んだ。

「え………………？」

「共和国(カルバード)と領有権で争っていた事やこちら側の勘違いでリベールに戦争を仕掛けた事は存じておりますが………………」

ヴァイスの言葉を聞いたセドリック皇子は呆け、アルフィン皇女は戸惑った様子で答えた。

「呆れたな。これではかつてのマルギレッタと同じではないか。オリビエの弟と妹と聞き、どのような皇族か若干期待していたが……失望した。所詮は腹違いか………………」

「…………恐らくご両親はお二人には成長するまでは綺麗な世界を見ていて欲しいと願い、時期が来るまで教えないように教育係に指導したのかもしれませんね…………」

二人の答えを聞いたヴァイスは呆れた表情で溜息を吐いた後不愉快そうな表情をし、リセルは目を伏せて言った。

「い、一体何の事なんですか……………？」

「………………どうか私達に貴方達が知っている事を教えて下さい。エレボニア皇族である私達には知る権利があります。」

ヴァイスとリセルの様子を見たセドリック皇子は戸惑い、アルフィン皇女は考え込んだ後真剣な表情でヴァイスを見つめて言った。

「――――いいだろう。クロスベルの事は勿論、お前達の兄がしようとした事や”百日戦役”の真実も全て教えてやろう。心して聞くがいい。恐らくお前達がいつも見ていた”綺麗な世界”は完全に破壊されるからな――――――」

アルフィン皇女の言葉を聞いたヴァイスは嘲笑した後、リセルと共にクロスベルの過去やオズボーン宰相の闇、さらには”百日戦役”の真実を教えた。