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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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第145話

同日、12:00――――



~オルキスタワー・屋上~



「……やれやれ。招かれざる客がここまで辿り着いてしまうとは。」

ロイド達が屋上に到着すると聞き覚えのある男性の声が聞こえてきた。

「……おじさま……!」

「ディーターさん……!」

声の持ち主――――白き神機の前にいるディーターを見たエリィとロイドは声を上げ

「ディーター・クロイス。貴様が残っていたか。」

「ちょうどいいぜ。」

ヴァイスとギュランドロスは不敵な笑みを浮かべた後ロイド達と共にディーターに近づいた。

「フフ………久しぶりだね、諸君。しかし昼食(ランチ)の約束をした覚えはないのだが……ひょっとして日時を間違えてはいないかね?」

「いいや、今日がそうだな。」

「ああ……今日が貴様にとって”最後の晩餐”だ。」

口元に笑みを浮かべて尋ねてきたディーターの言葉にギュランドロスとヴァイスは好戦的な笑みを浮かべて言った。

「アポイント無しの訪問、申し訳ありません。――――ですがこちらにも譲れない事情がありまして。」

「独立国の取り消し、それに市内の魔導兵など色々ありますが…………」

「まずはとっととキー坊を返してもらおうか?」

一方ロイドやティオ、ランディはディーターを睨み

「………………」

キーアは黙り込んでいた。

「ああ、構わないよ?」

その時ディーターは余裕の笑みを浮かべて意外な言葉を言い

「な…………」

「…………」

ロイドは驚き、ヴァイスは真剣な表情でディーターを睨み

「一体何を考えているのですか……?」

「命が惜しくなってロイド達の懐柔でもするつもりか……?」

エリゼとリィンはディーターを警戒していた。

「フフ、君達は何か、勘違いしているようだね。我々は別に、キーア君に無理矢理、協力してもらっているわけでない。このクロスベルを取り巻いている、途方もない困難……それを解決するために彼女は進んで協力してくれたのだ。」

「それは………」

ディーターの説明を聞いたティオは複雑そうな表情をし

「―――そう仕向けたのもまた、おじさま達のはずです。猟兵団を影で操り、クロスベル市を襲撃させることで、市民の独立の気運を煽り………両帝国と共和国の資産を凍結することで自治州存亡の危機を演出した…………」

エリィはディーターを睨み

「まあ、猿芝居、ここに極まれり……だな。」

ギュランドロスは不愉快そうな表情でディーターを睨み

「そしてその状況をキーアさんに突きつけて決断を迫った…………」

エリゼは複雑そうな表情で呟き

「白い歯が売りのナイスミドルにしちゃエゲツなさすぎやしねぇか?」

ランディは目を細めてディーターを睨んだ。



「ディーター大統領……いえ、ディーターさんと呼ばせてもらいます。それが貴方の”正義”ですか?」

そしてロイドはディーターを睨んで尋ねた。

「ああ―――その通りだ。現実の政治は奇麗事ばかりではない。あの程度の政治工作ならばむしろ手ぬるいくらいだろう。12年前、帝国がリベールに侵攻する時に起こした悲劇を君達は知っているかね?もしくは共和国が民主化する時に断行された血塗られた粛清は?」

「だ、だからと言って……!」

「おじ様達のしている事が正当化されるとでも……?」

ディーターに問いかけられたロイドはディーターを睨み、エリィは不安そうな表情で尋ねた。

「正当化は”される”ものではない。力と意志をもって”する”ものだよ。私はクロイス家の当主だが、元々、一族の使命についてはさほど熱心なわけでは無かった。そのあたりはむしろ、娘の方が詳しいくらいだからね。―――だが、始祖が夢見た新たなる”至宝”の誕生が実現可能だとわかった時………私は狂喜し、クロイス家に生まれたことに感謝したものだよ。この激動の時代を治め、”正義”を広められるだけの力を手に入れられるのだからね。」

「”正義”…………」

口元に笑みを浮かべて言ったディーターの言葉を聞いたティオは呆け

「そんな下らない事の為にこんな事を仕出かしたとはな……」

「やっぱり”正義”を盲信する奴はロクな奴がいねえな。」

ヴァイスとギュランドロスは不愉快そうな表情をし

「それでは、貴方は………自らの利益のためでも、支配欲のためでもなく………”正義”を実現するためにここまでの事をしたと……?」

ロイドは厳しい表情でディーターを睨んで尋ね

(愚かとしか言いようがないわね。)

(……処刑されて当然の男だな。)

(エリィには悪いが……あの者達が処刑しなくてもこの私が自ら処刑する!)

ルファディエルはやラグタス、メヒーシャは怒りの表情で呟き

(フン、つまんなさすぎてあくびがでてくるね!)

(ま、よくあるパターンだな、くかかかかっ!)

エルンストは不愉快そうな表情をし、ギレゼルは陽気に笑った。

「ハハ、それ以外にどんな理由があるというのだね?10年前、IBCの資産が大陸一を達成した時点で富を求める必要もなくなった。大陸全土を支配するという、ヴァイスハイト君やギュランドロス君のような時代錯誤な幻想にも興味は無い。私はね――――我慢がならないのだよ。”国家”という枠組みに囚われて無益な争いを繰り広げるこの世界に。その意味では”独立国”という形式にこだわっているわけでもない。マクダエル議長の宣言通り、無効とされても構わないのさ。――――私が理想とする”正義”が世界に遍く広まるのであれば………その”正義”によって秩序が保たれ、平和な世界が築かれるのであれば!」

「本気なのか………?」

「…………私にはただの夢物語にしか思えません。」

笑顔で言ったディーターの話を聞いたリィンは信じられない表情をし、エリゼは呆れ

「そんな世界が実現する訳がないだろう。」

「全くだな。王と民達の”力”と”意志”によって創られる世界……それが現実だ。」

ヴァイスは呆れ、ギュランドロスは不愉快そうな表情をし

「大人になった今ならわかるけど、ホントーに夢みたいな話だったよ…………」

キーアは複雑そうな表情で呟き

「なんつーか……ここまでガチだとは思わなかったぜ。」

ランディは呆れて溜息を吐き

「……ですがその”正義”の幻想もある程度は実現できてしまう…………」

「そうね、キーアちゃんという”零の至宝”があれば………既存の政治思想にはない、反則とでもいうべき状況設定だわ。」

ティオとエリィは複雑そうな表情で言った。



「……………………………――――ディーターさん。俺は……貴方の考えには色々と勉強させてもらいました。ですが貴方の”正義”については……少し過大評価をしていたようです。そういう意味で言えば局長達の”覇道”を行く宣言の方がまだ現実味があります。」

ロイドは考え込んだ後ディーターを睨んで呟き

「…………………………」

ロイドの言葉を聞いたディーターは厳しい表情でロイドを睨んだ。

「俺達は警察官でしかも特務支援課の所属です。法というルールに則りながら、市民に寄り添う形で”正義”を体現する。ですが………必ずしも正解があるとは限りませんし、迷ったりすることも多くあります。」

「……そうね。かつてセシルさんが言っていたように立場が異なれば”正義”の在り方も変わってくるものだし………」

「迷いながら、時には失敗しつつも”正義”を追い求めていく…………かつてディーターさんに言われた事でもありますよね。」

「なんつーか、あの時の演説と全然違うような気がするんだが?」

「……あれは力と意志が足りていない状況においての方法論について語ったまでだ。その双方が揃っている状況で”正義”を行使しないこと……それは”怠惰”ではないのかね?」

ロイド達の言葉を聞いたディーターは反論したが

「―――違う!”正義”は移ろいやすく、形の定まらないものだ……!それを追い求め続ける事にこそ、皆にとっての価値がある……!貴方のしようとしている事は”正義”を型にはめて画一化し、押し付ける事でしかない……!そんなものが本当に貴方の求める”正義”なのか!?」

「ぐっ………現に私はクロスベルの政治状況に風穴を開けて幾つもの改革を成し遂げた!その結果を否定するというのか!?」

ロイドの叫びに唸った後怒りの表情で叫んだ。



「……それとこれとは話が別です。おじさまの全てを否定するつもりはありませんし、学ぶ所が多かったのは確かです。だからこそ……その欺瞞と勘違いを指摘せざるを得ません。貴方を尊敬していた者として……間違いに気付いて欲しい意味でも!」

「いいだろう!」

そしてエリィの言葉に大声でディーターが答えたその時、ディーターは片手を天に翳した。するとディーターは不思議な光に包まれ始め、さらにディーターの足元には謎の魔法陣が展開された。

「………!?」

「な、なんだぁ!?」

それを見たロイドとランディは驚き

「まさかクロイス家の”魔導”の力……!?」

エリゼは警戒し

「気を付けてください!オルキスタワーから彼を中心に膨大な霊力が集まり始めています……!」

ティオはロイド達に警告した。



汝………”力”を求めるか……?



「え―――――」

一方リィンは身体の痣のある部分がドクンドクンと響き始めると同時に頭に響いた謎の声に呆けた。


我が選び、汝が選べば”契約”は成立する――――求めるのであれば、我が名を呼ぶがいい、焔を刻みし起動者(ライザー)よ――――

(そうか…………これが空の女神(エイドス)が仰っていた…………)

誰もいない謎の空間にいるリィンは謎の声を聞いて目を閉じて集中し

(……そうだ………この名前を聞いた時………俺は思ったんだ……”彼”の名を………懐かしさすら覚えるあの名前を……)

リィンが全身に集中したその時!



~オルキスタワー・屋上~



「来い―――――”灰の騎神”ヴァリマール!!」

リィンは片手を空へと掲げて叫んだ!

「兄様……?一体何を………」

リィンの行動を見たエリゼは戸惑った。

「フフ、ベルほどではないがクロイス家の当主としてこの程度は嗜んでいてね…………そして、このオルキスタワーの”霊子変換機能”を利用すれば――――こんな事も可能になるのだよ!」

するとその時ディーターは光に包まれて白き神機の中へと吸い込まれた!

「あ……………」

それを見たエリィは呆け

「吸い込まれたねー……」

キーアは信じられない表情で呟いた。そして神機は自分の手や頭を動かした。

「ふむ……視界と制御も良好だ。”至宝”の力を受けつつ自在に操る事ができそうだな。」

その時神機からディーターの声が聞こえてきた!

「お、おじさま……………」

「霊的な位相空間から人形兵器をコントロールしている……!?」

その様子を見たエリィは信じられない表情をし、ティオは真剣な表情で呟き

「オイオイ、そんなのありかよ!?」

ランディは目を細めて叫んだ。その時ディーターが乗った神機はその場で決めポーズをし

「ハハ、これぞ”正義”を体現し、世に知らしめるための白き機体……………さあ――――”証明”してみるとしようか。私の”正義”と君達の”正義”……果たしてどちから正しいのかを!」

ロイド達に回転する片腕を突き付けて叫んだ!

「くっ………望むところだ!」

「全力をもって挑ませてもらいます……!」

「そんなガラクタ、すぐにぶっ壊してやるぜ!」

対するロイドやエリィ、ギュランドロスも武器を構えて叫んだ。

「……待て!何か来るぞ!?」

その時何かに気付いたヴァイスは警告し

「へ…………?」

警告を聞いたロイドが呆けたその時、白き人形兵器―――――”灰の騎神”ヴァリマールがロイド達の目の前に降り立った!



「なあっ!?」

ヴァリマールを見たディーターは声を上げ

「新手の”神機”……!?」

「チッ!こんな時に限って!」

ロイドとランディは警戒し

「た、多分……違うと思う………キーアが知る限りこんな”神機”、見た事もないよ。」

キーアは戸惑った表情で呟き

「まさか”結社”が新たに作った人形兵器ですか……!?」

ティオは真剣な表情で叫んだ。するとその時ヴァリマールはロイド達に振り向いて地面に膝をつき

「い、一体何を……!?」

ヴァリマールの行動を見たロイドが戸惑ったその時、リィンが謎の光に包まれ始めた!

「兄様!?」

リィンの様子を見たエリゼが血相を変えて叫んだその時

「大丈夫だ、心配するな、エリゼ。」

リィンは優しげな微笑みを浮かべてエリゼを見つめて言った。するとリィンは光に包まれ、ヴァリマールの中に吸い込まれた!

「あ……………」

「リ、リィンもおじさまと同じように………」

「まさか……」

その様子を見たエリゼとエリィは呆け、ヴァイスは信じられない表情をした。一方ヴァリマールの中に吸い込まれたリィンは操縦席らしき場所に転送され、次々と端末を操作し始めた。



「凄い………勝手に頭に操縦方法とか入って来る………………刀は…………よし、ちょうどいいのがあるな…………」

端末を操作していたリィンは驚きの表情で呟いた後ヴァリマールの片手に握られてある刀を見て頷いて操作し、リィンの操作によってヴァリマールはリィンと全く同じ剣の構えをした!

「なっ!?」

「兄様と同じ剣の構え……!?」

「オイオイオイ……!まさかとは思うが……!?」

一方その様子を見ていたロイドとエリゼは声を上げ、ランディは信じられない表情になり

「リィンさんが操縦しているのですか!?」

ティオが驚きの表情で叫んだ。

「ああ――――空の女神(エイドス)が仰っていた”灰の騎神(ヴァリマール)”とはコイツの事だ。視界もいつも通り見えるし……刀もある以上、いつも通り戦える。」

「!!に、兄様の声……!」

「じゃ、じゃあその人形兵器が空の女神(エイドス)の話にあった……!」

リィンの声を聞いたエリゼは驚き、エリィは信じられない表情をした。

「ガッハハハハハハッ!まさかここに来て、こんな展開が待っていたとはな!!」

「フッ……まさか美味しい展開をここで持っていかれるとはな。」

その時ギュランドロスは豪快に笑い、ヴァイスは静かな笑みを浮かべ

「ふ、ふざけるな!!そんな物で”正義”の象徴たるこの”神機”に勝てると思ったら大間違いだ!この白き神機と似た姿をしたその人形兵器は今この場で木端微塵に破壊してくれる!!」

怒りの様子で叫んだディーターの声が聞こえてきた。

「破壊されるのは貴方の方だ!」

ディーターの声に応えるかのように刀を構えたヴァリマールからはリィンの声が聞こえてき

「――――みんな!リィンの援護をするぞ!!」

「おおっ!!」

ロイドの号令に仲間達は頷いてそれぞれの武器を構え

「――――今こそ”魔神”の力、とくと見せてあげなさい!ラテンニール!!」

「はハハハハッ!壊シがイのアるガラクタだッ!!」

ティオはラテンニールを召喚し

「エイドロンギア、召喚します……………!」

さらに異空間からオルキスタワーの探索の途中で見つけたエプスタイン財団が開発し、何者か――――マリアベルによって奪取された”オーバルギア”の新型兵器――――”エイドロンギア”を召喚し

「リンク完了………これより”灰の騎神”ヴァリマールの援護を始めます!!」

転移の光に包まれた後エイドロンギアに乗って、ティオが操縦するエイドロンギアはヴァリマールの横に滞空した!

「行くぞ、みんなっ!!」

「おおっ!!」

そしてロイドは号令をかけて仲間達と戦闘を開始し、リィンが操縦するヴァリマールやティオが操縦するエイドロンギアも戦闘を開始した!



今ここに!ゼムリア大陸の現代と古代の兵器がぶつかり合う戦いが始まった……………! 
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