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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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第144話

~オルキスタワー~



「なっ!?」

「お、お義兄様……!?」

「一体どうしてここに…………」

リウイ達を見たロイドやエリィは驚き、ティオは戸惑った。

「――――ここにいたか。シズク・マクレイン。俺達に同行してもらうぞ。」

そしてリウイは厳しい表情でシズクを睨んで呟き

「なっ!?まさかシズクちゃんを拘束する気ですか!?」

「なんであんたらがシズクちゃんを拘束するんだよ!?」

「お義兄様!まさかシズクちゃんに危害を加える気なのですか!?」

「シズクさんには何の罪もないんですよ!?」

リウイの言葉を聞いたロイド、ランディ、エリィ、ティオはリウイを睨んだ。

「――――敵将に精神的な攻撃をする為に敵将の家族を拘束する。”戦”の鉄則だぞ。」

「ま、実質は”保護”に近い。その娘には何の危害も加えられないから安心しろ。」

その時ヴァイスは厳しい表情で呟き、ギュランドロスは真剣な表情で答えた。

「局長!?ギュランドロス司令!?」

「まさかあんた達も絡んでいたのか!?」

二人の答えを聞いたロイドとランディは厳しい表情で二人を睨んだ。

「………地位や名誉を奪った所で、今の(アリオス)には痛くも痒くもないだろう。ならば奴にとって最も奪われたくない家族(シズク)を奪えば、少しは奴も(こた)えるから、罰にもなるだろう?」

「シズク・マクレインの”保護”は始めから決まっていた。諦めな。全てはメンフィルや俺達に睨まれた(アリオス)が悪い。」

睨まれた二人はそれぞれ答え

「そんな……そんな事って………!」

「ふざけるな!互いを大切に想っている家族を引き離すのか!?」

二人の答えを聞いたエリィは怒りの表情になり、ロイドはリウイやヴァイス達を睨んで怒鳴った。

「”保護”に近いと言っただろう。それに逆に尋ねるがクロスベルの民達から恨まれているアリオスの娘であるシズクが今後クロスベルで平穏無事に生きていけると思っているのか?当然、エレボニアやカルバードもその娘の身柄を狙っているぞ。」

「!!」

(まあそうね。迫害される事や人質にされる事、最悪アリオスへの”見せしめ”として拷問された挙句嬲り殺される事や暗殺される事は目に見えているわ。)

「そ、それは……………」

「………………………」

「少なくともアリオスの娘である限り、クロスベルの民達からは白い目で見られ、石を投げられる事になるであろうな……」

「シズクさん……………」

しかし静かな表情で語ったヴァイスの話を聞いたロイドは目を見開いて息を呑み、ルファディエルは納得した表情をし、エリィは言いよどみ、ランディは目を伏せ、ツァイトは重々しい様子を纏って呟き、ティオは複雑そうな表情をしていた。するとその時



「……………わかりました。」

シズクが辛そうな表情で答えてリウイ達に近づき

「シズクちゃん!?」

「貴女がお義兄様達の命令に従う必要はないのよ!?」

シズクの行動を見たロイドとエリィは叫んだ。

「………いいんです。お父さんは世界中の人達に迷惑をかけたのですから………お父さんの”罪”を少しでも軽くする為なら、わたしはどうなっても構いません………だから……だからお父さんの命を助けて下さい……!」

「シズクさん………………」

「…………………………」

「クッ……………!」

しかし寂しげな笑みを浮かべた後涙を流しながらリウイ達に頭を深く下げたシズクの行動を見たティオは複雑そうな表情をし、キーアは辛そうな表情で黙り込み、ロイドは唇を噛みしめ

「―――いいだろう。今後メンフィルがアリオス・マクレインに対してこちらから危害を加えない事は約束しよう。」

「……さすがにこんな幼い娘にそこまで泣かれては頷くしかないな。」

「ああ……ったく、あの馬鹿親父もこんな家族思いな娘を裏切るとは馬鹿な事をしたもんだぜ。」

一方シズクの行動を見たリウイやヴァイス、ギュランドロスはそれぞれ答えた。

「……お義兄様。シズクちゃんを今後どうされるおつもりなんですか?」

その時エリィは不安そうな表情でリウイを見つめて尋ねた。

「――――名前を変えた後、ロレントのイーリュンの孤児院に預けて、成長すればメンフィルの何らかの仕事に就いてもらうつもりだ。」

「………敵対国出身の私達のようにシズクちゃんにメンフィルに忠誠を誓わせる為……ですか。」

「………みんな。ある意味で言えばシズクちゃんの未来は明るい。メンフィルの保護を受けられれば、少なくとも彼女の身の安全は保障できるし、メンフィル帝国の仕事に就く事自体もエリートと言ってもおかしくないと思う。」

リウイの答えを聞いたエリゼは複雑そうな表情で呟き、リィンはロイド達を見回して言った。

「………何の権力もないわたし達ではお先が真っ暗なシズクさんのこれからをどうする事もできませんし………アリオスさんから引き離すのは可哀想ですが、将来的に考えてメンフィルに預けられる方がシズクさんの為にいいかもしれませんね………………」

「…………………」

ティオは疲れた表情で呟き、ロイドは複雑そうな表情で黙り込んだ。

「…………あの、リウイさん。シズクちゃんを私と貴方の養子に――――”パリエ家”の養子にしてはいけませんか……?」

その時セシルは決意の表情で尋ね

「え……………?」

「セ、セシル姉……?」

セシルの言葉を聞いたシズクは呆け、ロイドは戸惑った。

「―――何故その娘に対してそこまでするのか聞いてもいいか。」

そしてリウイは真剣な表情でセシルを見つめて尋ねた。

「……………アリオスさんが今回の件に関わった事を知ってからずっと考えていたんです………全てが終わったその時、シズクちゃんはどうなるのか………アリオスさんは自分の身は自分で守れますが……シズクちゃんはそうはいきませんし、今後陽の当たる場所できっと生活できないでしょう………ずっとその娘をお世話をしていた身としてはほおっておけないんです……!」

「セシルさん……………」

決意の表情で答えたセシルの言葉を聞いたシズクは涙を流してセシルを見つめ

「セシル姉……………」

ロイドは複雑そうな表情でセシルを見つめていた。

「もし、引き受けて下さったらイリーナさんかシルフィさんの”使徒”になってリウイさんを一生支え続けます……!だから、お願いします……!」

「なっ!?」

「お、お姉様達の”使徒”!?そ、それって……!」

「”神格者”の”使徒”――――要は不老不死の身になって、リウイ陛下達を支え続けるという事ですか……」

頭を深く下げて言ったセシルの言葉を聞いたロイドとエリィは驚き、ティオは信じられない表情で呟き

「そこまでしてその娘を守りたいのか………」

リウイは信じられない表情で呟き

「……………例えお前と俺が承認しても、今の”パリエ家”の当主はティアだ。当主であるティアが認めない限り、無理な話だな。」

そして気を取り直した後リウイは真剣な表情で答えた。するとその時

「―――ならば私が認めればよいのですね、お父様?」

ティアがリウイ達の背後から現れて真剣な表情でリウイを見つめた。



「ティア様……!」

ティアを見たシズクは驚き

「ごめんなさいね、シズクさん…………シズクさんの件を知った時、できれば反対したかったのだけど、シズクさんの今後を考えるとそれが一番良いとしか考えられなくて……………でも、お母様の提案ならばある程度は貴女を自由にできるわ。……………いきなりで申し訳ないけど………実の父親であるアリオスさんと親子の縁を切るのは凄く辛いと思うけど……………代わりに私とお母様が貴女の家族になってもいいかしら?」

ティアは申し訳なさそうな表情で答えた後シズクに尋ね

「そんな……そんな……!わたしなんかがティア様とセシルさんの家族にしてもらえる資格なんて………ましてやお父さんがセシルさんの婚約者さんを殺したのに………そのお父さんの娘であるわたしがセシルさんにそこまでしてもらう資格なんてないのに……!うううっ…………!」

微笑まれたシズクは涙を流して泣き始めた。

「―――私の事は気にしないで、シズクちゃん。アリオスさんがまだガイさんを殺害した犯人だと決まった訳ではないとロイドも言ったでしょう?それにずっと病院で一緒にいたんだから、家族のようなものじゃない。」

「ううっ……ヒック………ありがとう………ございます……………わたしなんかで……よろしければ…………お願いします……………」

自分を抱きしめて優しげな微笑みを浮かべて言ったセシルの言葉にシズクは泣きながら頷いた。

「フフ、これからは私が貴女のお姉さんでお母様が貴女の母親でもあるからよろしくね?」

「は、はい……………よ、よろしくお願いします………ティア姉様……セ、セシルお母さん……………」

ティアに微笑まれたシズクは戸惑いながらティアとセシルを見つめ

「ええ、よろしくね。」

見つめられたセシルは微笑んだ。

「―――――幸いシズクさんは私達と同じイーリュン教の信徒ですから………シズクさんが16歳になるまではお母様に預けて、16歳になった時、私の補佐としてイーリュン信徒として働いてもらいます。それならシズクさんがアリオスさんに代わって世界中の人々に罪を償う事もできますから、いいですよね?」

そしてティアは真剣な表情でリウイを見つめて尋ね

「……………まあいいだろう。その娘に関しては何の仕事に就かせるべきか、まだ決めていなかったしな。―――ここでの目的は果たした。撤収!」

「ハッ!」

尋ねられたリウイは頷いた後外套を翻して兵士達と共に部屋を出て行き

(……キーアはこの事を全て知っていたから、俺達に止めるなって言ったのか……?)

リウイ達が出て行った後ロイドは小声でキーアに尋ね

(うん………セシルとティアなら安心でしょうー?)

(確かにそうね………)

キーアの答えを聞いたエリィは安堵の表情をし

(もしかしたらキーアはシズクさんがイーリュン教で働いているから、自分もイーリュン教で働こうと決めたのかもしれませんね……)

(ハハ、ありえそうだな。)

ティオの言葉にランディは苦笑しながら頷いた。



そしてロイド達は泣き疲れた影響で眠り始めたシズクをセシル達に任せた後部屋を出た………………………… 
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