魔法少女リリカルなのは -Second Transmigration-
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第8話 生きた証
前書き
第8話です
ではどうぞ~
じぃちゃん達が帰った後、俺と士郎さんと桃子さん、箕笠先生の四人は今後俺がどうするのかを話した。
と言っても、前とあまり変わらない。家は俺が相続するわけだが、俺の年齢で1人では暮らせない。だから、寝るときと食事は高町家で過ごすこと。
あと、それの期限は俺の気持ちの整理がつくまでの2つだ。
最後の約束は普通に考えればもっとあるんだろうけど、これくらいで済んだのは士郎さんと桃子さんが信頼してくれているからだろうか?なんて思ったが、多分違うだろうな。
ちなみに、天城の姓はこのままでいいらしい。俺もその方がいいしな。
「箕笠先生、お茶をどうぞ」
「ありがとう悠里くん」
煎れたばかりのお茶を箕笠先生にだして俺は向かいの席へと座る。
「まずはお疲れ様でした。お父さんが亡くなってしまって大変でしたでしょうけど、よく頑張ったわね」
「そんなことは……こちらこそありがとうございました。箕笠先生のお陰で、またここで暮らせます」
「フフフ。いいのよ、それが私の仕事なんだから」
そう言って箕笠先生はテーブルの横においてあるコーヒー用の砂糖入れから角砂糖を3個入れて、さらにミルクを入れた。
それをかき混ぜてからまず一口。
……はじめて見たときは本当に驚いたな、馴れはしたけど。
「……うん、やっぱり悠里くんはお茶を煎れるのが上手ね。とても美味しいわ」
「……ありがとう、ございます」
なんとも複雑だが、美味しいと言ってくれたのだからお礼は言わないとな。
「さて……実は、今日私が来たのはもう一つあるの」
「はぁ……」
「これを悠里くんに渡すために、ね」
箕笠先生は荷物の中から一つの小さい箱を取り出す。それは縦長のでラッピングが施されており、ネックレスを入れるのに使う箱と同じ大きさだった。
「琉聖さんの荷物から出てきた物でね、メッセージカードも一緒に出てきたから、悠里くんへの誕生日プレゼントだったんでしょうね」
「……俺の」
「あと、これは琉聖さんの遺書と私への連絡先を書いておいたわ。何かあったら、いつでも相談にいらっしゃい」
「はい……」
「それと、一つアドバイスね。……悠里くんはもう少し周りの人を頼ってみなさい?……あなたが思っている以上に、みんなはあなたのことを想ってるわ」
箕笠先生が帰った後、俺は父さんのプレゼントを確認することにした。まずメッセージカードに書かれていたのは
『また一年、勇往邁進』
の一言だった。
……子供が漢字読めるかよ、とツッコミを入れてから、今度は封筒に入った手紙を見る。この手紙は俺個人に父さんが書いた遺書らしい。年齢的にまだ読めないから渡すのは先かと思ったらしいが、俺が粘って貰うことに成功した。
悠里へ
これが読まれてるってことは、俺はもうこの世には居ないんだろうな。
まず最初に、お前に俺がどんな仕事をして死んだのか、内容は知らされていないだろう。
俺自身も、今のお前に仕事の内容を話すことは出来ない。
納得しないかもしれないが、どうか許して欲しい。
……さて、前置きが長くなったな。
愛莉が死んでから、俺は仕事を休んでお前と一緒に過ごしてから思ったんだ。俺は、悠里と愛莉になにかしてやれたのか?ってさ。
女々しい話だけど、人間ってのはその人がいなくなって初めて気付く生き物でな?……ついこの間まで、愛莉の事を引きずってたんだ。それと同時に、お前の父親としてどうだったか、疑問を持つようになった。
……親に反発して家を出た俺と同じ目に合わせたくなかったしな。
けど、どうやら違ったらしいな。士郎から聞いたよ。『自慢の父さんです』って言ってくれて、ありがとう。
こんな俺を、父親と思ってくれて、ありがとう
俺がお前に伝えたい事はたくさんあるんだけど、これだけは一番お願いしたい。
悠里、優しさを忘れないでくれ。
寂しい思いをしたなのはちゃんと一緒にいて、支えてあげた思いを
恭也が間違えて、1人暴走してしまったときに怒って、それを相手に気付かせてやれた怒りを
それでも相手を許して、誰かの為に泣いてあげることができる優しさを、どうか忘れないでくれ。
どれだけ裏切られても、お前を苦しめても、優しさだけは変わらずにいて欲しい。
それがお前の強さであり、お前は俺と愛莉の、『生きた証』なのだから。
……いよいよ最後だな。
悠里、一緒にいれなくて、本当にゴメン。
俺も、お前の成長がもっと見たかった。誕生日を一緒に祝って、学校に入学して、授業を見に行ったり、お前の彼女や、好きな女の人の話を聞いたり、お前と一緒に酒を呑んだり……
数えだすとキリがないほど、やり残した事が多いけど、
それでも
お前の事を変わらずに愛してる。
ありがとう
生まれてきてくれて
本当に、ありがとう
愛する息子、悠里へ
「……っ……ぅ」
遺書を読み終えた俺はたまらず紙を握り締めて呻いた。それはやがて嗚咽が混じってきて、身体の中から何かがこみ上げてきていた。
「…んだよ、これ……」
こんなこと聞いてない。
確かにこの歳までしか過ごせないって知ってはいたけど、誰がこんな結末になるなんて予想しただろうか?
こんな事になるなら、俺は……
「悠里くん、ご飯できたk……悠里くん!?」
そこへ、俺を呼びに来たのであろうなのはが現れる。なのはは驚きながら、俺に駆け寄ってきた。
「な、のは……」
「どうしたの?どこか痛いの?」
「どうかしたのか?悠里?」
なのはと一緒に来ていた恭也さんも来ると、俺は恭也さんに遺書を手渡した。恭也さんはそれに目を通すと、納得したように頷いた。
「……そうか。琉聖さんが」
「なんで……な、んで……」
なんで、父さんが死ななければいけなかったのか。
これが、俺が転生してしまったが故の対価だとでも言いたいのか。そんな考えさえもよぎってしまう中で
ギュ……
「え……?」
驚いて見ると、なのはが俺を抱き締めていた。
それは、なのはが寂しい時や泣きそうな時にいつも使う手であり、なのはにとってはおまじないだった。
「なの、は……?」
「悠里くんがいつも寂しい時にしてくれてるから……だから、今日は私の番だよ」
「俺は……」
「いいんだよ。今は、なのはとお兄ちゃんしかいないから。誰も悠里くんの事を笑ったりしないから」
「ぅ……」
ああ……この子は
「だから、今は泣いて。泣き終わるまで、一緒にいるから」
「う…う、うわぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁん!!!」
この子は……なのはは、なんて優しいんだろうか
なのはに抱き締められて、俺は大声をあげて泣いた。
信じられないことに、病院の霊安室で泣いたときよりも泣いていた。
多分、高町家には声が聞こえてるんだろうけど、今の俺には恥も外聞もない。転生を繰り返して何十年生きていようとも関係ない。
今の俺は、親の死を悲しむただの子供でしかなかったのだから。
それから数10分後
「落ち着いた?」
「……うん」
俺は泣き終えてなのはから離れると、気恥ずかしくなってきた。日頃からなのはの事を妹みたいに見てきたものだから、尚更。
「ありがとうな」
「うん♪」
なのははいつもの笑顔で返事をする。それにつられて、俺も自然に笑っていた。父さんが死んでから5日経って、初めて笑った瞬間だった。
???side
夜の海鳴市の公園に、1人の人がベンチに座っていた。その人物とは、先程までいた箕笠詠瑠である。
「……えぇ。無事に悠里くんへ遺書を渡したわ。家の方も何とかなったから、問題は無いわよ」
『…………』
「そう……それで?あなたはこれからどうするの?琉聖の最後を看取ったのは貴方なのに、悠里くんへ会ってあげなくていいのかしら?」
『…………』
「だからって……わかりました、もう何も言わないわ。それなら、アナタに任せるわ。……えぇ、それじゃあ」
詠瑠はケータイを切ると、ため息を吐いた。
そこへ今度は空中にディスプレイが写されて、メガネを掛けた同世代の女性が映った。
「あら、レティ。悪いわね、そっちから連絡をやらせてしまって」
『いいのよ。それより、そっちはどうだったのかしら?』
「2人の友人の家に預けられる事になったわ。長い付き合いみたいだし、心配ないでしょう」
『そう。……それで、あの2人の子供はどうだったのかしら?』
「とってもいい子よ♪それに、優しい所は愛莉に似たわね。お祖父さんを呼んだ時なんて、私も泣きそうになっちゃったわ」
『フフフ……さて、帰ってきてからは、また忙しくなるわね』
「そうね。悠里くんの事も心配ではあるけど、こっちも何とかしないといけないわね」
それじゃあ、と言って詠瑠は通信を切って立ち上がると、地面に円形の翡翠色の魔法陣が浮かび上がった。
それの発光が強くなった次の瞬間、詠瑠の姿はその場から消えていた。
後書き
というわけで父親との別離になります。
いかがでしたでしょうか?
一応、今後の悠里の物語の上では必要でしたので、力を入れてみました。
箕笠先生については言うまでもないですね。
感想をお待ちしていますノシ
では、また次回で
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