英雄伝説~菫の軌跡~(閃篇)
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第35話
~聖アストライア女学院・聖餐室~
「政治方面ではアリシア女王陛下を始めとしたリベールの王族達――――クローディア王太女とレイシス王子に加えてリベールの各都市の市長達。軍方面では彼女の父親であるカシウスさんは当然として王国軍の宿将であるモルガン将軍やカシウスさんの弟子にあたるシード大佐と王室親衛隊隊長のユリア准佐、後はリベール各地の関所に務めている部隊長達。導力技術方面ではラッセル博士を始めとしたZCF(ツァイス中央工房)の幹部クラスの技術者達。商業方面ではボースの有力な商人達やボースの高級レストラン―――”アンテローゼ”を始めとしたリベールの各都市に存在する酒場やレストランのオーナーや料理人達。他にはリベールに存在している通信社や調査会社に務めている人達や経営している人達に加えて七耀教会の総本山であるアルテリアに務めている神父やシスターにも知り合いがいるとの事だ。」
「…………………」
「リベールの女王様達どころか七耀教会の総本山の神父さんやシスターさんとも知り合いだなんて……!」
「む、無茶苦茶だ……!」
「しかもラッセル博士って”導力革命の父”として有名な導力技術者で、シュミット博士と並ぶ世間でも超有名な導力技術者よ!?」
「更にレンは父上とも知り合いのようだからな………そういう意味では”アルゼイド流”や”アルゼイド子爵家”の伝手を持っているという事にもなるな……」
オリヴァルト皇子の口から出た驚愕の事実の連続にリィンは口をパクパクさせ、エリオットとマキアス、アリサは信じられない表情で声を上げ、ラウラは静かな口調で呟いた。
「フフ、それどころか彼女はクロスベル方面にも色々な伝手があるのだよ?」
リィン達の反応を面白そうに見守っていたオリヴァルト皇子は話を続けた。
「ク、クロスベルにもレンの知り合いがいるんですか!?」
「一体どのような職業の方達なのですか?」
オリヴァルト皇子の話を聞いたマキアスは驚き、ガイウスは不思議そうな表情で訊ねた。
「私が知っている限りではヘンリー・マクダエル議長やディーター・クロイス市長、クロスベル警察に務めている一部の刑事達やクロスベル警備隊の現在の司令や上層部達。後は確か”炎の舞姫”の二つ名で有名な劇団アルカンシェルのアーティスト――――イリア・プラティエと”金の太陽、銀の月”でデビューして有名になった新人アーティスト―――リーシャ・マオとも知り合いだったはずだ。」
「なっ!?」」
「前クロスベル市長であられたマクダエル議長にも伝手があるのですか……!」
「それに確か現クロスベル市長のディーター・クロイス市長ってクロスベル国際銀行(IBC)の総裁でしょう!?と言う事はIBCにも伝手があるって事じゃない……!」
「し、しかもあのアルカンシェルのイリア・プラティエとリーシャ・マオとも知り合いだなんて……!」
「知名度で言ったらあの二人の方が昨日出会った”蒼の歌姫”より上だぞ……!?」
オリヴァルト皇子の説明を聞いたリィンやユーシス、アリサ、エリオットとマキアスはそれぞれ驚いていた。
「フッ、そして止めとばかりに彼女は今まで挙げた人物達をも超える人物――――それこそその気になれば”四大名門”すら簡単に潰せ、この帝国にも深刻なダメージを与える事ができる人物にも伝手があるんだ。」
「ええっ!?し、”四大名門”を簡単に潰せる人物!?」
「し、しかもこのエレボニア帝国自体に深刻なダメージを与える事ができる人物ですか………」
「失礼ですが、そのような人物はこの世に存在しないと思われるのですが……?」
「お兄様、その人物は一体どんな人物なのでしょうか?」
オリヴァルト皇子の口から出た驚愕のにエリオットは驚き、エマは信じられない表情をし、ユーシスは戸惑いの表情で訊ね、アルフィン皇女は興味ありげな表情で訊ねた。
「その人物とは………――――かの”Ms.L”だ。」
「”Ms.L”……………?」
「”Ms.L”ですって!?」
「馬鹿な!?殿下、本当にレンはあの”Ms.L”にも伝手があるのですか!?」
オリヴァルト皇子の答えを聞いたリィンがクラスメイト達と共に不思議そうな表情で首を傾げている中アリサと共に血相を変えたユーシスは信じられない表情で訊ねた。
「ああ。何でも遊撃士の仕事の関係で偶然知り合って、その際に彼女を助けて、その事に感謝した彼女はレン君と懇意の関係を結んでいるとの事だ。」
「その”Ms.L”とはどのような人物なのだ?アリサとユーシスは知っているようだが………」
「―――”Ms.L”。まるで神がかっているかのように彼女が手を出した相場や株は後にすべて上場し、それらによる配当金等で莫大な富を築いた彼女は株や相場で莫大な資産を増やしながら世界各国の多くの企業の”大株主”となった資産家で、唯一判明しているのは性別が女性である事のみで、本名、年齢等すべてが謎に包まれているゼムリア大陸一の資産家なのだが………”Ms.L”の経営術はまるで神がかっているかのように彼女が会社経営に口を出せばその企業に必ず莫大な利益をもたらすことから、”現代の福の神”として称えられ、その事から企業によっては”Ms.L”が持つ権限の方がその企業の最高責任者よりも上で、”Ms.L”の総資産は”四大名門”や二大国どころか、IBC(クロスベル国際銀行)を経営しているクロイス家をも上回るとも噂されている謎の資産家だ。」
「ちなみに”Ms.L”はラインフォルトグループ(うち)の”特別取締役”も兼ねているのだけど………”特別取締役”である彼女は他の取締役達と違って会長である母様と同じ権限を持っていて、社員たちからは母様の”跡継ぎ”やら母様に何かあった時の為の”代役”とか色々と噂されている人物よ………」
「わたくしも”Ms.L”の噂は耳にした事がありますわ。何でもゼムリア大陸一と称されている資産家でありながら社交界のような公の場に決して現れない方で、”四大名門”の当主の方々やお父様が彼女に招待状を出しても袖にした事から口が悪い貴族達は以前色々と彼女の悪口を言っていたそうですが、後にその貴族達は”Ms.L”によって破滅に追いやられて取り潰しになった事から、上流階級の方達の間では彼女の悪口は禁句である事が暗黙の了解になったと。ちなみに今年の夏至祭の招待状も送りましたが、既に欠席の連絡が来ているとの事ですわ。」
オリヴァルト皇子の話を聞いて疑問に思ったガイウスの質問にユーシスとアリサはそれぞれ答え、アルフィン皇女は二人の説明を補足するように答えた。
「貴族を破滅に追いやり、取り潰しですか………」
「どれだけ凄いお金持ちだったとしても幾らなんでも貴族を破滅に追いやるなんて無理だと思うのですが………」
アルフィン皇女の話を聞いたエマは表情を引き攣らせ、エリオットは不安そうな表情で呟き
「それが可能なのが”Ms.L”なのだよ。帝国貴族は”血統”が重視されている傾向だが家を存続させるためのお金がなければ、取り潰しになる。そして家を存続させるためのお金を稼ぐためには領地経営や商売や投資等で儲ける事なのだが………莫大な資産を持ち、数々の企業の権力を握る”Ms.L”は”経済制裁”として”Ms.L”のターゲットになった貴族達が取引している企業がその貴族達と2度と取引させないようにする事やその貴族が経営している領地から商人達を撤退させる事が可能なのさ。そして家を存続させるためのお金を稼げなくなった貴族達は破滅に追いやられて、その結果取り潰しになる……まさに”現代の福の神”と称えられている者の”力”という事だろうね。」
「……父上―――アルバレア公爵にとっても”Ms.L”は”天敵”だと兄上達から聞いた事がある。何せ”Ms.L”は公爵家と取引している企業の経営に口出しできる権限も全て所有している上、その事を目ざわりに思った父上が”Ms.L”が持っている公爵家と取引している企業の権限を全て金や権力で奪おうとしたが、”Ms.L”の経済制裁によって手痛い目に遭った事から、公爵家と取引している企業を通しての”Ms.L”からの和解の申し出を受け入れた――――つまり、父上が”Ms.L”に対して事実上の敗北を認めたとの話だからな。」
「なっ!?あのアルバレア公爵が……!?」
「バリアハートであれ程強引な手を使ってマキアスさんを拘束したアルバレア公爵が敗北を認める程の資産家なのですか……」
「と、とんでもなさすぎだろう……………」
(これで”Ms.L”がレンだと知ったら、色々な意味で更に驚くだろうね。)
オリヴァルト皇子の後に説明したユーシスの話を聞いたリィンは驚き、エマは呆け、マキアスは疲れた表情で呟き、リィン達同様驚いたり信じられない様子でいるクラスメイト達を見回したフィーは呆れた表情をしていた。
「”Ms.L”という人物は”ラインフォルトグループ”の取締役も兼ねているとアリサは言っていたが……一体どのような人物なのだ?」
「その…………私も会った事がないからわからないのよ。」
「へ……で、でもアリサって”ラインフォルトグループ”の会長の娘なんでしょう?会長の娘だったら、他の取締役と会える機会とかあるんじゃないの?」
ガイウスの質問に困った表情で答えたアリサの答えを聞いて目を丸くしたエリオットはアリサに訊ねた。
「確かに他の取締役達とは会った事はあるけど、”Ms.L”とだけは会った事がないわ。私も”Ms.L”の事は気になっていて母様やシャロンに何度か彼女に母様の娘として挨拶させてもらえる機会をくれるように頼んだ事もあるけど、二人とも”Ms.L”だけは絶対に会わせてくれなかったのよ………しかも取締役達が集まる重要な会議の時もいつも代理人を出席させて徹底的に自分の正体を隠していたそうだから他の取締役達も”Ms.L”の正体を知らなくて、”Ms.L”の正体を知っているのは母様と母様の秘書を務めているシャロンだけだと思うわ。」
「そのような謎があまりにも多すぎる人物ともレンは知り合いなのか………」
「ハハ……レンの謎を知ったはずなのに、謎が更に深まったような気がするな………」
アリサの説明を聞いたラウラは驚きの表情で呟き、リィンは苦笑していた。
「そう言えば……以前ルーレでイリーナ会長と出会った時イリーナ会長はレンと知り合いで、レンにその事を訊ねた時レンはある人物の”専属護衛”の仕事をしていて、その時に知り合ったと言っていたが……もしかしてその護衛した人物というのは”Ms.L”という人物の事ではないか?」
「あ…………」
その時ある事に気づいたガイウスの推測を聞いたリィンはイリーナ会長の言葉やレンの話を思い出した。
うふふ、士官学院に来る前のレンは”とある人物”の専属護衛みたいな仕事をしていてね。その人がイリーナおばさんとも知り合いのようだから、その関係で知り合いになったのよ♪
「フン、間違いないだろうな。」
「まさか”Ms.L”が関係していたなんて、夢にも思わなかったわよ……」
リィン同様かつての事を思い出したユーシスは鼻を鳴らし、アリサは疲れた表情で肩を落とした。
「フフ……先程の話を聞いていたらわかると思うが”Ms.L”は怒らせたら冗談抜きで”どんな相手でも”破滅に追いやる事ができる程のとんでもない存在だけど、慈悲深い所もあってね。毎月数千億ミラを稼いでいる彼女は毎月数百億ミラという莫大な金額の寄付金を遊撃士協会本部と七耀教会に寄付しているとの事だ。」
「ま、毎月数百億ミラの寄付金!?」
「とてつもない金額だな………」
「しかも毎月数千億ミラも稼ぐ事自体も凄まじいな……」
「一体何の為にその二つの組織に莫大な金額の寄付をし続けているのですか?」
オリヴァルト皇子の話を聞いたエリオットは驚き、ガイウスとラウラは目を丸くし、エマは戸惑いの表情で訊ねた。
「七耀教会は孤児院と言った福音施設等も経営しているからね。彼女と親しいレン君の話によるとそう言った施設にお世話になっている人々の為に寄付し続けているとの事だよ。」
「な、なるほど………あれ?でも、何で遊撃士協会まで……って、もしかしてレンが遊撃士だからですか!?」
オリヴァルト皇子の推測に納得した様子でいたマキアスはある事に気づき、信じられない表情で訊ねた。
「フッ、レン君曰くそれについては『”Ms.L”のみぞが知るよ♪』、だとの事だ。」
そしてレンの口調を真似たオリヴァルト皇子の答えを聞いたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「まあ、そう言う訳で”Ms.L”自身様々な企業のトップや一部の上層部達に加えて遊撃士協会本部の幹部たちや七耀教会の教皇を始めとした上層部達とも繋がりがあるとの事さ。」
「七耀教会の教皇様達とも繋がりがあるのですか…………」
「レンの人脈同様、無茶苦茶だ………」
”Ms.L”の人脈の凄さにエリゼは驚き、マキアスは疲れた表情で呟いた。
「ちなみにだが、君達も知っての通りレン君は四種類の得物を扱いこなしているが……その内銃と魔導杖は”Ms.L”を通したオーダーメイド品で、ツァイス中央工房(ZCF)、ラインフォルト、ヴェルヌ、エプスタインの技術を組み込んだこの世に一つしかない武器だそうだよ。」
「ええっ!?どこも導力技術で超有名な企業ばかりじゃないですか!?」
「よりにもよってその4つの企業の技術を組み込んだオーダーメイド品って………道理で見た事が無い訳よ………価値にしたら、数百―――いえ、数千万ミラか、下手をすれば数億ミラになるでしょうね………」
オリヴァルト皇子の話を聞いたエリオットは驚き、疲れた表情で呟いたアリサの推測を聞いたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「す、数億ミラって……家も余裕で買えるじゃないか……」
「フン……家どころか”伯爵”クラスの総資産を上回っているぞ。」
「色々な意味でレンは凄いな………」
「ああ……しかも”特例”で認めてもらってまで遊撃士になったのに、何故トールズに入学したんだろうな……?」
「それについてはわたしも前々から疑問に思っていた。ぶっちゃけ、士官学院で学ぶ勉強なんてレンにとっては無意味だし。」
「フィーちゃん、さすがにそれは言い過ぎですよ。」
我に返って疲れた表情で呟いたマキアスにユーシスは鼻を鳴らして指摘し、呆けた表情で呟いたガイウスの言葉に頷いたリィンは考え込み、ジト目で呟いたフィーの推測を聞いたエマは不安そうな表情で指摘した。
「いや、フィー君の言う通りレン君にとっては実際士官学院で学ぶ事はない……というかむしろ教える側だと思うよ。確か彼女は博士号をいくつか持っているという話も聞いた事があるしね。」
「は、博士号!?」
「しかも一つではなく複数持っているのですか……」
「それ程の才を持ちながら遊撃士をやっている事といい、奴が何を考えているのかますますわからんな………」
オリヴァルト皇子の話を聞いたマキアスは驚き、エマは表情を引き攣らせて呟き、ユーシスは信じられない表情で考え込んでいた。
「……その事についてだが。彼女が遊撃士をやっている事についての彼女の真意はわからないが、彼女が士官学院に入学した理由は私の”依頼”だからなんだ。」
「へ…………」
「殿下の”依頼”、ですか?」
「一体何故そのような依頼を………」
オリヴァルト皇子の答えを聞いたエリオットは呆け、リィンは不思議そうな表情をし、ラウラは戸惑いの表情でオリヴァルト皇子を見つめた。
「この帝国の新たなる”風”になる事を期待している君達が様々な才能に溢れる彼女と共にいる事によって刺激されてそれぞれの才能を伸ばしたり自分達に秘められている才能に気づき、そして君達と同じ立場でありながら既に”一人前の社会人”としての経験もある彼女から色々学んで欲しいと思い、トールズのⅦ組に入学するように依頼したのさ。」
「レンちゃんがトールズに留学したのはそのような理由があったのですか………」
「………我々の為にそこまでして頂き、誠にありがとうございます。」
オリヴァルト皇子の説明を聞いたエマは驚き、ユーシスは会釈をした。
「”一人前の社会人”か………確かにオレ達はまだ”学生”である事に対して、既に遊撃士として活動しているレンは”一人前の社会人”だな………」
「う、う~ん……徹底した秘密主義のあの娘が本当に私達の知りたい事を教えてくれるのかしらね……?」
ガイウスは考え込み、アリサは苦笑しながら自身の疑問を口にした。
「フフ、それは君達次第だろうね。彼女には本当に感謝しているよ。私の依頼の為に遊撃士稼業をしばらくの間休業してもらった上、その対価に対する”報酬”も私にとっては容易な内容だったしね。」
「”報酬”……レンは一体何を要求したの?レンの事だから、ミラじゃないと思うけど。」
「それは帝国で武の双璧をなす流派の片方――――”アルゼイド流”の剣技を指導してもらう事さ。」
「ええっ!?それじゃあレンが”アルゼイド流”の剣技を扱えるのは……!」
「まさか……殿下が父上にレンに”アルゼイド流”の剣技を教えるように手配なされたのですか!?」
フィーの疑問に答えたオリヴァルト皇子の話を聞いてある事に気づいたエリオットは驚いてラウラを見つめ、ラウラは驚きの表情で訊ねた。
「ああ。今年の2月前半あたりに子爵は1週間くらいレグラムを留守にしただろう?その時に彼女は子爵から”アルゼイド流”の剣技を指導してもらったのさ。」
「確かにそのくらいの時期に父上はレグラムを留守にしましたが……―――!?殿下、まさかレンはたった1週間で父上から”アルゼイド流”の”免許皆伝”を認めてもらえたんですか!?」
「あ………!」
「……確かに殿下の話だとそうとしか思えないな。」
オリヴァルト皇子の説明を聞いて困惑の表情をしていたラウラだったがある事に気づくと血相を変え、ラウラの推測を聞いたアリサは声を上げ、ガイウスは静かな表情で呟いた。
「ああ、信じられない事だがその通りだ。しかも子爵曰くレン君の才能もそうだが彼女の振るう”剣”は、自分の弟子達の中で最も才能があるオーレリア将軍よりも遥かに上で、レン君が”本気”になればオーレリア将軍を上回る事は確実だろうと言っていたね。」
「馬鹿な!?あの”黄金の羅刹”を上回るだと!?」
「”領邦軍の英雄”と謳われているあのオーレリア将軍よりレンの方が強いなんて……!」
「その……オーレリア将軍という方は一体何者なのですか?」
オリヴァルト皇子の答えを聞いたユーシスとエリオットが驚いている中、ある人物の事が気になったエマはリィン達に訊ねた。
「オーレリア将軍……通称―――”黄金の羅刹”。伯爵家の当主にして女性ながらラマール領邦軍の総司令を務める人物……信じ難いことに――”アルゼイド流”と”ヴァンダール流”の二大流派を修めているらしい。」
「そ、そんな凄まじい方よりもレンさんの方が強いなんて…………」
「ふふ、お兄様からレンさんの話は窺っていましたが会えなくて本当に残念ですわ。」
リィンの答えを聞いたエリゼは信じられない表情をし、アルフィン皇女は若干残念そうな表情をした。
「才能はわかるけど、レンが振るう”剣”はあの”黄金の羅刹”より上ってどういう意味なの?」
「ハハ、さすがにそれについては私もわからないよ。私は剣士じゃないからね。もしかしたら同じ剣士であるリィン君やラウラ君ならわかるかもしれないが。」
「いえ……お恥ずかしながら私のような未熟者では先程殿下が仰った父上の言葉に込められた意味はわかりません……」
「俺も同じです……それにしても何故レンは殿下に”アルゼイド流”を指導の手配を要求したのでしょうか……?」
フィーの疑問に答えたオリヴァルト皇子の話を聞いて苦笑しながら答えたラウラの答えに同意したリィンはある事が気になり、不思議そうな表情をした。
「彼女の話によると彼女の剣術はスピードや手数に特化した”柔の剣”を得意とするのだが、一撃の威力に特化した”剛の剣”はあまり得意じゃないから、それを学ぶ為に”アルゼイド流”の指導を頼んだとの事だ。」
「”剛の剣”………」
「た、確かにラウラの剣技って、どれも威力が凄いよね……」
「うむ……”アルゼイド流”の剣技はどれも攻めに特化した剣技で、一撃の威力を重視した剣技だ。」
「なるほど………レンは自分の欠点に気づいていて、その欠点を失くすために”アルゼイド流”を学んだのか……」
オリヴァルト皇子の説明を聞いたガイウスは呆け、エリオットに視線を向けられたラウラは頷き、リィンは納得した様子で呟いた。
「それと意外に思うかもしれないが彼女は誰よりも努力家なんだよ。」
「へ……レ、レンがですか??」
「いつも自分の事を”天才”と豪語しているのですから、とてもそんな風には見えないのですが……」
オリヴァルト皇子の指摘を聞いたマキアスは呆け、ユーシスは戸惑いの表情をした。
「レン君曰く『”真の天才”は自分の優れた才能に奢るという弱点を作らずに、自分の優れた才能を伸ばし続ける努力家』だとの事だ。だから彼女は自分が”天才”だと理解していても油断や慢心もしないし、努力もする。その証拠が彼女が”アルゼイド流”を学んだ事だ。」
「あ…………」
「”八葉一刀流”の皆伝者でありながら、その事に慢心せず、自分の欠点を補う為に”アルゼイド流”を努力して学んだという事ですか……」
「もしかしたら、他の武器を扱うのも自身の欠点を補う為かもしれないな……」
「”天才”の欠点はその才能ゆえに、積み重ねが欠けてしまうという話を聞いた事があります。レンちゃんはその事にも気付いていて、努力もしているのでしょうね……」
オリヴァルト皇子の答えを聞いたエリゼは呆け、リィンとラウラ、エマはそれぞれ考え込み
「う、う~ん……レンが努力している様子なんて、全然思い浮かばないよね……?」
「普段のレンの様子を考えたら絶対に想像できないね。」
「あの娘って、本当に何でも余裕でこなしているものね……」
戸惑いの表情で呟いたエリオットの言葉にフィーはジト目で同意し、アリサは疲れた表情で呟いた。
「フフ……先程言ったように彼女は”依頼”で仕方なくトールズに留学したが、それでも彼女も君達と同じ生徒。できれば彼女自身にトールズに留学した事が彼女にとっても実りある学生生活であった事と感じてもらう為にもまずは同じクラスメイトとして、仲良くしてあげてくれ。」
その後リィン達はオリヴァルト皇子達と談笑しながら夕食を取った―――――
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