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剣士さんとドラクエⅧ 番外編集

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もしもトウカが敵対したら

 
前書き
90話でトウカがもし呪われしトウカとなって味方に襲いかかっていたら。

残酷描写、バッドエンド注意。

トウカは呪われないので「呪われし」トウカ戦なんてありえないんですけどね! 

 
 光が、私を襲う。瞬間、意識は上書きされていった。

 私は私だ。私はトウカ、性別は女、年齢は恐らく十八。それには違いなかったけど、決定的に考え方が変わったように思う。そしてそれを当たり前だとも考えれるようになった。

 「嬉しいことに」。私は、これで、義理からの忠誠ではなく本当の主への忠誠を誓えるというわけだ。しかもこの体はかなり具合が良いらしい。ドルマゲスみたいな才能のない、しかも限界のきた男の身体より若くて鍛え上げた伸びしろのある体の方がいいに決まってるだろう?

 偉大なる魔神ラプソーン様には、あんな男より私の方がいいに決まってる。

 あぁ、杖が。おいたわしや、こんな杖に封じられて、私を通してでしか動けないなんて。なんてことだろう。この世界を支配し、本当の幸福の中でみんな生きるべきだ。いや、ラプソーン様の為には喜んで死ぬべきでもあるけれど。

 なら、残りの賢者も私が殺せばいいだけのこと。幸い、ラプソーン様の魔力があるから私も魔法が使えるようになったみたいだ。もちろん、私自身に魔力は……あるにはあるみたいだけど使えない。偉大なるそのお力を借りることで私は……目の前の人間を殺せる。

 ま、私はお力を借りなくてもいけると思うんだけど……慢心はいけないね。

 エルト、ヤンガス、ゼシカ、ククール。思い入れはある。別れだと思うと悲しい。二度と会えないなんて思ったら悲しくって。でも仕方がないこと。どうせここで見逃したって対峙するだけなんだから。無駄なことをしたって余計悲しくなるだけ。

 嗚呼、嗚呼。悲しいな。悲しすぎるよ。別れっていうのは……悲しいものなんだ。

 私はトウカ。ラプソーン様が見間違えられたのはアーノルド。アーノルドという男は何者なんだろう。あんなに気になっておられたんだから、きっと悲しい別れをしたんだろうな。別れを悲しいと思うラプソーン様は心のない、助けてもくれない神ではない。理解の深い偉大な方なんだ。

「あははっ」

 杖を左手に持つ。右手はいつも通り剣を構える。向けるのは、一番後ろにいて、どうしてか、私を凝視して硬直しているククール。どうしてだろうね、彼は私にそんなに思い入れでもあったんだろうか?やっぱりツンツンしてるところもあったけど優しくって愚かだから?

 彼とゼシカは敏いから、私が敵対したことにはもう気づいてるかな?あぁエルト、信じられないような顔をして。十年一緒にいた親友だろう、今は別れを悲しもうよ。

「別れって悲しいよね!」

 ククールに剣を向け、突撃。なんとか躱したククールは、震える手で杖を構えていたけれど、私に攻撃するなんて考えもつかないみたい。哀れだなぁ、愚かだなぁ、バギクロスを撃てばいいのに!悲しいなぁ!

「とう、か?」
「回復役には最初に死んでもらわないといけないよね。悲しくって涙が出そうだけど……君たちには偉大なるあの方のために死んでもらう」

 あれあれ、私ってば手元が狂っちゃってるのかな?ゼシカが放った渾身のルカニを躱したものの、まだ一人も殺せていないなんて。あれあれ。悲しすぎて涙がちょちょぎれそうだから?

 さてと、魔法を披露はしようか!初めての魔法、ワクワクするなぁ!

「バイキルト!」

 エルトが驚きでいっぱいの顔をした。ちゃんと発動したから?それより絶望してくれないと、悲しめないんだけど。

 ていうか、魔力は借りれるにしても才能はそうはいかない。使えるってことは魔力はないくせに魔法の才能はあったってこと?それともラプソーン様のお力が素晴らしいから?

 ま、いいや。

 呆然として杖を取り落としそうなククールから殺そうと思ったけど後回しでいいや。だって回復どころか一歩も動けそうもない。それならより私の動きを知ってるエルトからのほうがいいだろうね。それか魔女のゼシカ?

 ククールの前から跳躍し、横薙ぎ一閃でエルトとゼシカの首を刈ろうとする。エルトはやっぱりぎりぎり槍で受けきった。ゼシカ?あぁ……首から血を流して、瀕死かな。避けたみたい。避けきれてないから瀕死。でも殺せなかったのは私が未熟だから。

 ヤンガスが腹をくくって私を止めようとしてくる。斧を振りかぶって私の動きを止めようって?そうはいかない。そうはさせないさ。だって止めるための動きで殺そうとしてないじゃないか、迷いがあるんだよ。

 鉄板入りのブーツの底で斧を受け止めると、蹴り返しながらメラミ。ほぼゼロ距離から放たれた魔法をモロに食らったヤンガスは命に別状はないけどまぁ、怯むよね。発動が遅いメラゾーマだったらここまで瞬発力がないわけだし、我ながらいい判断。

「散れ」

 ま、そんなに怯んじゃったら今まで倒してきた魔物みたいにスライスしちゃうんだけどね。横切り3回、輪切りってやつ。これで一人目だ。

 エルトから回復してもらったらしいゼシカ対策にマホカンタ。必死で向かってきて、普段めったに使わない短剣を引き抜く前に今度こそきっちり首を切り裂き、胸を一突きして二人目。鮮血が飛び散って、肉片がべちゃっとそこらを汚すのが目立ってきたね。

 うーん、ゼシカはヤンガスに比べて斬りごたえがないなぁ。体積の問題?でも死んでも可愛いね。ヤンガスは死んでも強そうだし。

 涙を浮かべながら渾身の力で薙ぎ払ってきたエルトの攻撃をひょいと躱し、間髪入れずに雷光一閃突きが眼前に。いくら命中率が高いって言っても普通の攻撃より遥かに隙だらけの攻撃なんだから当たるはずもなく適当に避けて、なんとなく気まぐれで柄で思いっきり殴ってみた。

 気絶したのかどうと倒れたエルト。……うーん、脳漿がそこらを汚してるし生きてはないみたいだなぁ。ああ悲しい。エルトには血の色が良く似合うのに。親友だったのにごめんね。

「さて、ククールだけだ」

 びくりと彼は体を揺らした。味方を生き返らせようともせず、反撃の気すら薄いククール。なんでだろう?優しくって愚かなククールだけど、ちゃんと度胸もあるはずなのになぁ。

「どう、して」
「愚問だね」
「……殺すのか?」

 そりゃあ殺すんだけど。まぁ、こんな無害なククールならほっといてもいいかもね。でもあの三人を生き返らせたら困るから……。先にやることがあるな。

「ベギラゴン」

 対象からククールを外して、火葬。まぁさっきまで仲間だったわけだし。死体を消すって意味の方が大きいけど。さてと、泣きそうな顔をしてても綺麗な顔だね、ククール。死にたい?生きたい?どんな気持ち?私を憎めばいいのにね。頭が追いついてないのかな?

「……」

 上から下までククールを眺めた。ほかのみんなは殺してしまったし、焼いたし、反撃してきたからじっくりなんて見れなかった。首のチョーカーを毟り取って、なんとなくククールの前に立つ。

 怯えている?違う。悲しんでる?違う。なら、ククールは何を考えているんだろう。

「全部忘れさせてあげようか。そしたら生かしてあげる」

 頭の中で考えていることと、私は違う行動をした。歩み寄って、せめて一撃であの世に送ってあげるつもりだったのに。泣きそうなククールは、私の頬のかすり傷を慣れたように治して、そして、そして。

「忘れるのだけはごめんだぜ……」

 あぁ、最後の慈悲は君が君の手で潰したわけか。何故か泣きそうなのに笑ったククールは、破邪の魔法を発動しようとしたのか、それともそれは神の裁きたるグランドクロスだったのか。

 どちらにせよ、何か害そうとするのなら、させる前に殺してしまう他ない。悲しいけど。

 剣を鋭く、その一撃は一番冴え渡って。

 赤い服に赤い傷、銀髪を赤に染めてククールは死んだ。

・・・・
・・・
・・


「……何があったか?あまり言いたくはないんだがな」

 あまりにも遅い帰りに痺れを切らしたトロデ王によって生き返ったククールは苦い顔で俯いた。激しい炎が何もかも……ククールの死体以外……を燃やし尽くし、骨の欠片も見つからなかった為、もはや真実はククールの中にしかなかった。

「ドルマゲスだよ。ドルマゲスをトウカが倒した。そして本気を出したドルマゲスに俺達はやられたってわけさ。回復魔法が使える俺は最後まで生き延びたが、ザオリクを使えないようにみんな、焼かれちまったんだ」

 何故か、口ついて出たのは嘘だった。ひどい嘘だったが、本当のことを言ったところで何になる?ひとりで彼女を追いかけても……また殺されるだけだろう。

「初めに『トウカを庇った』ヤンガスが死んだ。次はゼシカだった。エルトはずいぶん頑張ったが、駄目だった。トウカは最後まで俺を逃がそうとしてくれたが、結果はあれだ」

 涙は出ない。嘘をつくことは久しぶりだったが、慣れていた。トロデ王は信じた。……信じなかったかもしれないが、追求はされなかった。

「またどこかに行っちまったな。流石に追いかけるのは無理じゃないか?」

 皮肉気な微笑みは、微笑むと到底言えないような歪みとして真実を示唆しているかのようだった。 
 

 
後書き
ククール生存()。
ククールじゃなくてもトウカは最後に残った人を逃がすつもりでした。なんとかかんとか心で反発。

この後、トロデ王は諦め、ククールはふらっと彼らの前から消えます。

そしてどっかでトウカと遭遇して死ぬか、またなんとか逃がしてもらえるかのどっちかです。

暗黒神が復活したらトウカはどうするんでしょうね。 
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