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剣士さんとドラクエⅧ 番外編集

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もしもルゼルが生まれていたら3

 
前書き
※クリア後
※ククールとトウカが結婚している
※本編で出ていない事はぼやかしてますのでご安心ください
※詳しくは書いていないけれど主姫 

 
「ゼシカのことは?」
「大事な友達!」
「ヤンガスのことは?」
「私もあんな力強い見た目になりたい!なんか私が姉貴だけど同士!大事な友達!」
「……やめてくれ。で、トロデ王のことは?」
「主君!」
「ミーティア姫は?」
「お守りすべき存在!すごく美人!」
「で、エルトのことは?」
「友達!相棒!」

 また始まったなと僕はやれやれと肩をすくめる。みんなで久しぶりに集まろうがこの夫婦、全く自重しないから困る。しかもこの場所はトウカの兄で僕の親友ルゼルの部屋だし。

 さっきまでゲホゲホしてたはずのルゼルが固まってる。目が怖いよルゼル。久しぶりに会ったのに僕じゃなくて騎士夫婦見てるのやめてくれないルゼル。僕疎外感で悲しい。ミーティアはニコニコ笑って二人を見ているけど、ヤンガスなんてすごい顔。トウカが結婚してしばらく経つのにほんと、すごい顔。娘は嫁にやらんな顔を一番してたのヤンガスだったもんね。

 ま、自室でもないのにドレスを着たトウカを夫婦のすることだからと騙して膝に乗せていちゃついてるククールのせいなんだけど。なんなのあれ。傍目から見たら見た目麗しい恋人か夫婦なんだけど言動が子供を騙す悪い大人なんだけど。

 妬み?そうかも。ゼシカもちょっと見せつけられすぎてイラついてるし。ククールに。まぁ少しは許してあげよう……実るまでの道のりが険しすぎたんだから。

 告白するまで気づかない好意、なかなか恋を自覚しないトウカ。ようやっとパーティ公認カップルになったと思ったらもう残るはラプソーンをぶっ倒すだけで、気合いバッチリぶっ倒したらその後立ちはだかるルゼル。むしろ普段は無表情な癖にククールと話してる時怖いぐらい表情豊かだったのには引いた。

 え、ルゼルがトウカの前にいる時?そりゃあデレッデレだよ。僕にはツンデレなのに。解せない。何がツンデレって?「トウカを五体満足に連れ帰ってくれてありがとう」「笑顔が前よりも出るようになったし」「でもエルト、あの不埒者は何」って。不埒者ではないって説得が大変だった。

 っていうか、ククールって真面目だよね、ドニの人の話を聞く限り夜遊び好きだったろうに一度も行かなかったよ。カジノからトウカを遠ざけてたし。嫉妬を引くために結婚した後に行こうとした時とか本当に面白かったけどさ。その結果、ククールの赤い騎士服に似た服でこっそり着いてったトウカが女の人全部かっさらったって。……そして腕相撲でこてんぱんにもされたって、人前で。これは酷い。

 あっでも結婚式では熱かったよね、ウエディングドレス綺麗だったし、ククールもムカつくとかそういうの通り越してかっこよかったし、めちゃくちゃ祝福したし。トウカがククールをお姫様抱っこしようとして、ククールがあわてたのとかも。キスのあとの抱擁でアバラやられてたのだれだっけ。

 そうそう、あれ結局家ではトウカがお姫様抱っこしたよね?人目につかなくてよかったよね。ルゼルが吐血寸前まで笑ってたけど。主治医に怒られつつヒィヒィ言ってた義兄を持つククールには同情する。世間では繊細なる天才扱いされてるルゼルが結構妹絡みだとロクデナシなこととか。

「じゃあ、俺の事は?」
「大好き!」
「……あれ犯罪じゃないの?」
「夫婦だから……」

 旅が終わっても相変わらず童顔なトウカは大人っぽいドレスを着ていなきゃ成人には見えない。それが今甘い色のドレスを着ているものだから子供にしか見えない。髪の毛を結んでいる大きなリボンも原因だよね。

 で、ククールは今日はムカつくほどイケメンで、赤い服が良く似合う男。あれだ、色男。うん、ヒカルゲンジってやつじゃないの。見た目には。見た目は。対等に見えて敷かれてるようでククールが優勢でやっぱり相思相愛だけど。

「ククールがもっと腕相撲強くなったらもっと大好きかなぁ……特訓する?」
「今日は勘弁な」
「えへへーーそうだよね!今日は剣の手合わせだもんねぇ!」
「そうだな、確か……」

 うーん、平和だな。こういう時は見せつけなくていいのに見せつけてくるククールが戦闘狂に甘い予定を崩されてるのは最高かもしれない。

「バイキルトなしスカラあり攻撃魔法厳禁の手合わせだよ、ククールくん」
「よ、よくご存知で」
「そりゃあ義弟の予定ぐらいこの俺が把握してないわけないよねぇ。ねぇトウカおいで」
「はい兄上!」

 いつもは今までの苦労を思ってこれ止めないけど、ルゼルはあまりにも容赦なかった。これはここでやったククールが悪い。ぴょんとトウカはククールの膝から飛び降りてルゼルの前にやってくる。ククールの手が虚しく空を切る。自業自得だよ、シスコンの前でやるんだから。

「いーこだね、トウカ。今日も勝てる?」
「えへへ兄上、ありがとう。無敗の剣士だもの勝てるよ!」

 ルゼル、煽ってトウカの頭をお兄ちゃん特権で撫でないの。

 あと目と鼻の先に対戦相手がいる時にそういうことは言わない方がいいんじゃないかな……。

 ちなみにククールは負けた。トウカから一本とったのは意地だったんだろうけど、それで怪我してたら意味ない気もする……。今日も炸裂したベホマは絶好調だった。

「で、甥か姪は?」
「えっと……」
「……まぁいいや。大事にしてくれたら」

・・・・

「ご飯にする?お風呂にする?そ、れ、と、も、手合わせにする?」
「……ご飯で、トウカ。いつも思うんだが何か違うんだ……」
「あ、そう?じゃあご飯ね。明日から選択肢はご飯か手合わせかちゅーにする?」
「是非」

 一緒に帰ってきたくせに毎回のセリフ。楽しそうなトウカに以前の男装めいた様子はない。髪の毛は長く後ろに伸ばして揃いにくくってるし、服装は優雅な騎士の服。ただしピンク色でアクセントは赤。女騎士だと見たらわかるだろう。なぜピンクなのかと聞けばトウカだかららしい。……桃花だな。トウカは桃花ではないらしいが。ややこしい。

 どうせなら真っ赤にした方が似合う、という言葉は飲み込んでおいた。トウカは無自覚女たらしだ。いくら服装が揃いでも、いや揃いだからこそそれは俺の沽券に関わる。

 トロデーン兵を辞め、結婚し、だが兄の希望通り跡継ぎを破棄したトウカ。まぁ紆余曲折あったが一応当主となるルゼルでモノトリア家は終わりだから仕方ない。だからトロデ王にも好きなことをやれと言われてたトウカは今、俺と僻地に住んでいる。やっている事は魔物退治だ。

「今日も人のためになったかなぁ。まぁ、私は私のためだけど」
「さぁな。ラプソーンの残党が減るのはいいことだろうよ」
「うん。さぁーて、ごはん食べてお風呂ーー!」

 小さな体が俺の横をすり抜けて走っていく。信じられないことに未だ健全すぎる関係は、そろそろ俺には限界に近かったが……まぁ、なるようになるのは知っていた。鈍感で戦闘のエキスパートの癖に恋愛音痴は初心だったからそれは性急になるのはクールじゃないってわけだろう。照れ屋だし、案外彼女は。

 その割には意地悪でセクハラめいた質問も体の仕組みを専門用語で解説してくる程度には鈍感で、意味に気づいてぽかぽか叩いてくるという可愛らしいところもあり……ただし打撲は結構酷かった……なかなかその反応も可愛い。

 少し前なら彼女のことを戦歴でしか知らない奴らは馬鹿にしただろうが、まぁ今は可愛い俺だけの奥さんだから、今更結構モテている。

 毎度思うが断るのは当たり前にしてもこてんぱんにするのはかわいそうではないか、とも思うものの。お断りしますスラッシュが見ててひどい。

 でも、こんな平穏な生活もいいかもな。

「ククールーー!!みてみて、卵が双子だよ!」

 今を俺は結構満足している。ただ子供はトウカ似で性格はトウカ似でもおとなしい子がいいなと願う。 
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