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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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外伝~偽りの楽土の崩壊~後篇

~オルキスタワー~



「―――ここから先はわたくしの方から数々のスクープをお伝えさせていただきます。まずは2ヵ月前に起こったクロスベル市襲撃事件ですが……」

そして端末に映る人物はグレイスに代わって報告を始めた。

「……この不快な映像はいったい何時(いつ)まで続くのかね?」

画面端末を見ていたディーター大統領は怒りの表情でマリアベル達を見つめ

「侵入経路は掴めたため、物理的な遮断を行っている最中ですわ。あと2分ほどでしょう。」

「街頭スクリーンについても既に撤収の命令を出しています。………ただ街頭スクリーンを守っていた兵士達が市民達による総攻撃を受けて全員制圧された為、応援の兵士達が向かっている所でして………スクリーンを片付けるには少々時間がかかります。」

マリアベルとアリオスはそれぞれ報告した。

「ふむ………」

報告を聞いたディーター大統領は考えこみ

「フフ、いい不意打ちでしたな。虚実を織り交ぜた妙手……老兵の意地といったところか。そして市民の支持を利用した宣言……まさに”英雄”にして”王者”の宣言か。」

シグムントは不敵な笑みを浮かべて言った。

「何を他人事のような………君達が議長を逃がした上、”六銃士”を一人も捕える事もできなかったからこのような事になったのだろうが?」

その時ディーター大統領は表情を歪めてシグムントを睨んだ。

「いや、それについてはお詫びするしかありませんな。もっとも、こちらの主張通り、”全ての禍根”を潰しておけばこうはならなかったはずですが?そのせいで”赤い星座(俺達)”は甚大な被害を受けたのですが、そこの所はどう責任を取られるおつもりか?全員で1000人いた”赤い星座”も既に半数以下にまで減らされた上、”赤い星座”の中でも腕利きの副部隊長(ザックス)までついに殺られちまった。」

睨まれたシグムントは凶悪な笑みを浮かべた後厳しい表情でディーターを睨んだが

「………御子殿の機嫌もある。支援課の関係者に思い切ったことまではできない。それに猟兵達が殺されたのに何故私が責を問われなければならない?(ミラ)が全てで、私達に雇われた君達にそんな事を言える資格があると思っているのか?逆に契約通りの働きをしない事に責任を問いたいぐらいなのだが?」

「……………………フン、確かにその通りですな。」

厳しい表情で自分を睨んで言ったディーター大統領の言葉を聞いて怒りの表情で黙り込んだ後、不愉快そうな表情で答えた。

「フフ、”六銃士”やメンフィルにまんまと踏み台にされて歯がゆいですけどこればかりは仕方ないですわね。」

その時マリアベルが口元に笑みを浮かべて呟き

「……タングラム門方面の国防軍にも少なからず影響があるはずです。何とか立て直してみましょう。」

「ああ、よろしく頼む。」

そしてアリオスは部屋を出て行った。

「―――では、我々の方も本腰を入れさせてもらいましょう。”ラギール商会”に”六銃士”や奴等に従う”六銃士派”ども………そしてメンフィル帝国軍………”本気”で狩らせてもらいますよ?」

「わたくしは”結社”の方々と連絡を取っておきますわ。教会の船と支援課たちに加えて”英雄王”達………何とかする必要がありますから。」

「ああ、行きたまえ。」

アリオスに続くようにシグムントとマリアベルも部屋を出て行った。



「フフ、やれやれ。お父上はどうも思い切りが足らぬようだな。」

部屋を出るとシグムントは苦笑しながらマリアベルに言い

「まあ、深謀遠慮とでも思っていただきたいですわ。大陸全土の秩序を組み替える壮大な計画………お父様一人ではどうしても限界がありますもの。」

マリアベルは溜息を吐いた後口元に笑みを浮かべて言った。

「だから優秀なスタッフが色々と力を貸しているわけだ。剣聖や、”あの御仁”のような。」

「フフ、そういう事ですわ。」

シグムントの言葉にマリアベルが頷いたその時

「パパ、話は終わったのー?」

シャーリィとヴァルドが二人に近づいてきた。

「あ、ベルお嬢さんだ!やっほー!」

「………………………」

「ふふ、シャーリィさんはいつも元気ですわね。例の話についても考えてくださったかしら?」

「ああ、お嬢さんの私設部隊のトップだったっけ?んー、面白そうだけど今の環境も気に入ってるしなぁ。」

マリアベルの言葉を聞いたシャーリィは考え込み

「やれやれ、俺の目の前で堂々と引き抜きをしないでもらいたいもんですな。ただでさえウチは”六銃士”どものせいで、人材不足に陥っているのですから。」

シグムントは厳しい表情でマリアベルを睨んだ。

「あら、これは失礼。それではシグムントさん、今後の段取りについては以前お話した通りに。」

「ああ、承知した。―――小僧。お前の方はどうする?」

マリアベルの指示に頷いたシグムントはヴァルドに視線を向け

「……俺はアンタらの仲間になった覚えはねぇ。勝手にやらせてもらうぜ。」

ヴァルドは静かな表情で答えた。

「フ……まあいいだろう。」

「ヴァルド、その気があればとことん鍛えてあげるからいつでも来なよね~!」

「ケッ………」

そしてシグムントとシャーリィは去り

「フフ……頼もしい方々ですわね。」

二人が去るとマリアベルは静かな笑みを浮かべ

「……化物父娘(おやこ)の間違いだろ。対等に渡り合ってるアンタも相当なタマだと思うがな。」

ヴァルドは呆れた後不敵な笑みを浮かべた。

「ウフフ………後悔していますか?わたくしの誘いに乗った事。」

「ハ………んなワケないだろ。アンタがくれた薬のおかげで俺は”チカラ”を手に入れた………誰もが使いこなせないような圧倒的な”チカラ”をな。」

「フフ、そうですわね。魔人化した時のヴァルドさんは膂力ならば人として最強…………わたくしたちにとってもまたとないサンプルですから。」

「クク、せいぜい喜んでモルモットになってるやるよ。あの野郎をブッ潰して………誰が一番か証明するためにもな。」

マリアベルの言葉にヴァルドは凶悪な笑みを浮かべて答えた後、真剣な表情になった。



さらに数日後、グランセル城には現メンフィル皇帝シルヴァンがファーミシルス大将軍やレオン少佐を含めた僅かな護衛と共に突然リベール国王アリシア女王を尋ね、ある話をアリシア女王やその場に同席したクローディア姫、カシウス准将、ユリア准佐に話し、アリシア女王達を驚愕させた…………… 
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