英雄伝説~菫の軌跡~(閃篇)
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第30話
翌日、エリオットと合流したリィン達は実習課題の消化を始め、課題の一つである手配魔獣の撃破をした後、地下道からオスト地区への抜け道に出るとちょうど正午の鐘がなり、マキアスの提案によってランチをテイクアウトした後マキアスの実家で食べる事になり、マキアスにコーヒーをご馳走してもらい、くつろいでいた。
~オスト地区・レーグニッツ家~
「ふむ、これが帝都名物のフィッシュ&チップスか。聞いていたよりも十分すぎるほど美味に感じるな。」
「レンはジャンクフードは健康や美容の為にあまり食べないけど………こんなにも美味しいジャンクフードは初めてね。」
「うん、確かにあのお店、かなり美味しいみたいだね。」
「まあ、味がいいのは認めるが所詮はジャンクフードさ。冷めたら驚くほど不味くなるのは変わらないんだがな。」
ラウラとレンに地元の料理を褒められている事に嬉しさを感じたエリオットは笑顔になり、マキアスは苦笑しながら説明した。
「でも、戦闘レーションよりは遥かにマシだと思う。」
「はは、それを言ったら何でもマシになりそうだけど。」
フィーの意見にリィンは苦笑しながら同意した。
「しかし、このコーヒーはかなり本格的で香りもいいな。さっき豆を挽いていたけど買い置きでもしているのか?」
「ああ、少し前に父さんが買い置きして行ったみたいだ。たまに公務の合間に戻ってきて休憩して行くみたいで……忙しい毎日での、ちょっとした贅沢のつもりみたいだ。」
「あはは……さすがレーグニッツ知事だね。」
「ふむ……好感の持てる方だな。この家も、帝都知事のような要職にある人物の自宅とは思えぬというか……」
「ぶっちゃけ小さいね。」
「フィー、あのな……」
はっきりと言ってしまったフィーにリィンは冷や汗をかいて呆れ
「言われてみればそうね……”知事”ってリベールで言ったら市長さんの事でしょう?リベールの市長さん達のお家はみんな大きいのに、リベールより遥かに大国である帝国の、それも帝都知事のお家とはとても思えないわね。」
フィーの意見にレンは不思議そうな表情で首を傾げながら頷いた。
「はは、言ったように正真正銘の平民出身だからな。帝都庁で出世してからもわざわざ生活スタイルを変えるほど父も僕も器用じゃなかったし。それに……こんな小さな家でも思い出がないわけじゃないからな。」
リィン達の様子を見たマキアスは苦笑しながら説明し、懐かしそうな表情をした。
「そっか……」
「確かに居心地がいいというか落ち着ける雰囲気だよね。」
「うふふ、マキアスお兄さんの気持ち、レンもわかるわ。レンのお家は田舎だけど、それでもずっと住んできたから愛着があるもの。」
「あ……写真発見。」
マキアスの話を聞いたリィン達がそれぞれ納得している中、フィーは写真を見つけた。
「ああ、それか……」
そしてリィン達はフィーが見つけた写真に近づいて写真を注目した。
「うわあああ……マキアスが可愛いっ!」
「ふむ、昔は何とも言えぬ愛らしさを持っていたのだな。」
「これが、こんなにガンコで口うるさいのになるとは……」
「クスクス、その時は誰も想像できなかったでしょうね♪」
「ええい、人の昔の写真で盛り上がるんじゃないっ!」
自分の幼い頃の姿を見て盛り上がっているエリオット達を見たマキアスは呆れた表情で指摘した。
「はは、さすがにお父さんは今と雰囲気は変わらないけど。隣にいるのはお姉さんか何かなのかな?」
かつてのレーグニッツ知事の隣に写っている女性が気になったリィンはマキアスに尋ねた。
「父方の従姉でね。近くに住んでいたからよく遊びにきてくれたんだ。男二人の父子家庭……色々と世話になってしまったな。」
「ふむ、過去形という事は……もう結婚されて家庭に入られたのか?」
「………………………亡くなったよ。6年くらい前にね。」
ラウラの質問を聞いたマキアスは押し黙った後静かな口調で答えた。
「え……」
「……………そうか。マキアスが……貴族を嫌っている理由だな?」
「…………!」
「あ……」
「そ、それって……」
「…………」
リィンの質問を聞いたラウラ達はそれぞれ顔色を変え
「……本当はこんな話、誰にもするつもりは無かったんだ。だが、そろそろ僕も少しは吐き出した方がいいかと思ってね。長くなるけど……みんな付き合ってくれるか?」
「も、もちろんだよっ!」
「…………」
「……是非とも。」
「当然、レンも聞きたいわ。」
「どうか、聞かせてくれ。」
「ありがとう。」
リィン達の返事を聞いたマキアスは過去を話し始めた。
「”姉さん”は……僕より9歳年上で…………美人で、気立てもよくて僕にとっては最高の女性だった。……さっきも言ったようにうちは正真正銘の庶民でね。でも、父さんは役人としてかなり優秀だったみたいで……帝都庁で重要なポストを任せられて、頭角を現していったんだ。清廉潔白を地で行ってたから、煙たがる連中もいたみたいだが……それでも、大きなプロジェクトを幾つも成功させたことで内外でかなりの評価を得ていった。母は僕が小さい頃にはもう亡くなっていて……でも、近くに住んでいた”姉さん”が男所帯を世話してくれた。父さんも、姪にあたる姉さんのことを凄く可愛がっていて…………一緒に住んでたわけじゃないが本当の意味で家族同然だった。僕にとっては自慢の”姉”で……幼いながらも憧れの存在だったんだ。
当然だけど……そんな女性を、周りの男たちが放っておくわけはなくて。随分モテていたけど、しっかりとしていた人だったから僕もちょっと安心だったんだ。―――”彼”が現れるまでは。”彼”は―――帝都庁に勤める父さんの部下にあたる青年だった。といっても、平民ではなくて由緒正しい貴族…………それも伯爵家の跡継ぎという、正真正銘のサラブレッドだった。ただ、貴族にありがちな傲慢さや尊大さは欠片もなくて……僕も会ったことはあるけど……誠実そのものと言った人柄だった。
そんな彼が、父に紹介される形で姉さんと知り合って……二人はお互い惹かれあって身分を超えた恋人同士になった。……正直、子供心に悔しくて仕方なかったよ。でも僕の目から見ても彼と姉さんは本当にお似合いで……姉さんが幸せそうだったから仕方なく諦めるしかなかったな。そして、父さんが仲人に立つ形で二人は婚約して……それが―――終わりの始まりだった。
相手の実家―――伯爵家が露骨に潰しにかかってきたんだ。どうやら”四大名門”の一つ、カイエン公爵家との縁談が急に持ち上がったらしくてね……平民の娘を娶るなどとんでもないと騒ぎ始めたんだ。父さんが帝都庁の要職だったから露骨な手こそ打ってこなかったが……ありとあらゆる嫌がらせや脅しが姉さんに対して密かに加えられた。愛する人を困らせたくなかったのか、父の立場を慮ったのか……姉さんは結局、一言も相談せず、ただひたすら耐え続けた挙句――――河に身を投げて自らの命を絶った。
僕達父子が経緯を知ったのは全てが終わり、投身自殺をした姉さんの遺書が見つかった後だった。どうやら”彼”は最後の最後で姉さんを手酷く裏切ったらしい。『わ、私は彼女に言ったんだ!”愛妾”として大切にするからどうか我慢してくれと!なのにどうして命を絶つ!?』
その後……父さんはそれまで以上に実績を上げた。そして、盟友であるオズボーン宰相と協力する形で帝都庁の貴族派を押し退けて…………4年前に帝都庁長官―――つまり帝都知事に任命された。これが、レーグニッツ家の事情さ。」
「……そんな事が……」
「だから”貴族”が嫌いになったの……?」
マキアスの過去を聞き終えたエリオットは悲痛そうな表情をし、フィーは尋ねた。
「……ああ。僕は……姉さんを死なせた”敵”を求めずにはいられなかった。相手の男に、伯爵家、横槍を入れて来た公爵家……しまいには貴族の全て……貴族の文化や制度すら敵と思った。そして……彼らに勝てるだけの力を必死になって追い求めてきたんだ。」
「「……………………」」
マキアスの話を聞いたリィンとラウラはそれぞれ重々しい様子を纏って黙り込んだが
「――だけど、頭のどこかでとっくにわかってはいたんだ。結局それは、ただの”八つ当たり”だったんじゃないかって。」
「え…………」
「………………」
静かな口調で答えたマキアスの答えを聞き、それぞれ驚きの表情でマキアスを見つめた。
「貴族や平民に関係なく、結局は”その人”なんだろう。相手の男は、誠実ではあったが愛する人を守りきれるほど強くなかっただけだろうし……伯爵家も”自分達の利益”をただ優先しただけなんだと思う。平民だろうと悪人は悪人だし、貴族にも尊敬できる人間はいる。ユーシスのヤツはともかく……リィン、ラウラ―――君達にはそれを教えられてきたからな。」
「マキアス……」
「…………」
「父さんがどう思ってるのかは僕にもわからないが……これが現時点での僕自身の偽らざる気持ちだ。」
「そうか……そなたに感謝を。」
「――ありがとう。話してくれて。」
「ふふ……」
「えへへ………うーん、でもマキアスも素直じゃないよねぇ。ここまで来たらユーシスだってちゃんと認めてあげればいいのに。」
マキアスに感謝しているリィンとラウラの様子をフィーと共に微笑ましそうに見守っていたエリオットは呆れた表情で指摘し
「じょ、冗談じゃない!あの尊大で傲慢なヤツを断じて認められるものかっ!いつもいつも人のことをガリ勉だの余裕がないだの……!」
エリオットの指摘に対して大声を上げて反論したマキアスはユーシスの姿を思い浮かべて厳しい表情をした。
「そ、そこまでは言ってないと思うけど……それにほら、ユーシスってある意味天然っていうかそんなに悪気はないと思うし。」
「ええい、それが一番、腹が立つんじゃないかっ!!」
「やれやれ……」
「ふふ……」
そしてエリオットの指摘に再び怒鳴ったマキアスの様子をフィーとラウラは微笑ましく見守り
「……コーヒーと一緒にいい時間が過ごせたな。」
「そうね……………」
リィンの言葉に頷いたレンは考え込んでいた。
「レン、どうかしたのか?」
考え込んでいるレンの様子が気になったリィンは不思議そうな表情でレンに訊ね
「ええ……今のマキアスお兄さんの話でちょっと気になる事があってね。」
「へ……一体何が気になったんだ?」
「―――マキアスお兄さん。辛い事を聞くようだけど、先程話に出て来た亡くなったお姉さんの遺体は見つかったのかしら?」
「レ、レン!?い、一体何を……」
レンのマキアスへの質問を聞いたエリオットは驚き
「………いや……結局見つからなかったよ。姉さんが投身自殺をした日はちょうど大雨の日でね……もしかしたら雨で増水した影響で河の流れが激しくなって、海まで流されたんじゃないかって憲兵達や父さんが姉さんの遺体の捜索を依頼した遊撃士が言っていたらしいけど……それがどうかしたのか?」
マキアスは重々しい様子を纏って答えた後レンを見つめて尋ねた。
「…………この写真に写っているお姉さんとそっくりなお姉さん―――――フィオーラお姉さんとレンは知り合いで、”半年前も元気な様子”でレンと会話していたもの。」
「!?ど、どどどどど、どういう事だ!?な、なななな、何で死んだはずの姉さんが半年前にレンと…………!」
レンの説明を聞いたマキアスは混乱した様子で声を上げ
「そのお姉さん―――フィオーラお姉さんはお城でメイドさんを務めている人でね。昔、大陸中を旅をしていたレイスおに――――レイシス王子が偶然帝都を訪れていて、フィオーラお姉さんが河に身投げする場面を見て、フィオーラお姉さんを助けるために自分も河に飛び込んでフィオーラお姉さんを助けたそうよ。」
(あの人か……)
「レイシス王子………!”リベールの若獅子”と称されているリベールの王子殿下か……!」
「確かレイシス殿下はオリヴァルト殿下と同じ庶子の身の方で、かつてはオリヴァルト殿下のように滅多に社交界に姿を見せず、将来リベールの国王となられるクローディア王太女殿下を支える為に様々な知識を求めて大陸中を放浪していたという話を聞いた事があるが………」
レンの答えを聞いたフィーはある人物を思い浮かべ、リィンは驚き、ラウラは真剣な表情で考え込み
「えっと……リベールのお城って事はグランセル城の事だよね?」
ある事が気になったエリオットはレンに訊ねた。
「ええ。ちなみにフィオーラお姉さんはレイシス王子御付きの侍女でね。レンはレイシス王子とも知り合いだから、レイシス王子経由でその人と知り合ったの。」
「なっ!?レンはレイシス王子殿下と知り合いなのか!?」
「一体どのような経緯があってレイシス王子殿下と………――――!もしかしてカシウス卿関係か?」
「あ……”剣聖”カシウス・ブライトって王国軍の重鎮だから、リベール軍の重鎮の娘のレンがリベールの王子様と知り合っていてもおかしくはないね……」
(ま、知り合いどころか一緒に”異変”を解決した”仲間”だけどね。)
レンがリベールの王子と知り合いである事にリィンが驚いている中レンがリベールの王子と知り合いになれた理由を察したラウラは目を見開き、ラウラの推測を聞いたエリオットは目を丸くしてレンを見つめ、フィーは静かな表情でレンを見つめていた。
「ま、まさかレンにそんなとんでもない知り合いがいたなんて………じゃなくて!レン、本当にそのフィオーラという姉さんと同じ名前のメイドの人は姉さんなのか!?」
表情を引き攣らせてレンを見つめていたマキアスだったが我に返ると血相を変えてレンを見つめて訊ねた。
「恐らく同一人物だと思うわよ?フィオーラお姉さんからフィオーラお姉さんの親戚の中に”革新派”の有力人物である帝都知事――――マキアスお兄さんのパパがいるって話を聞いた事があるし。」
「!!」
「そ、それってどう考えても………」
「”恐らく”ではなく”間違いなく”同一人物だな。」
「良かったな、マキアス……!」
レンの説明を聞いたマキアスは目を見開き、信じられない表情をしているエリオットの言葉に続くようにラウラは答えて頷き、リィンは明るい表情でマキアスを見つめた。
「あ、ああ……!でも、どうして姉さんはリベールに……それに命が助かったのに僕達に連絡を一度も寄越してくれなかったんだ……?」
「レイシス王子から聞いた話だけど、レイシス王子の提案でフィオーラお姉さんとフィオーラお姉さんの家族。それぞれを守る為よ。」
「?それってどういう事?」
マキアスの疑問に答えたレンの答えの意味がわからないフィーは不思議そうな表情で首を傾げた。
「マキアスお兄さんの話にもあったようにフィオーラお姉さんって、婚約の件で貴族の人達に目を付けられてさんざん嫌がらせをされたのでしょう?フィオーラお姉さんが生き続けたら、その嫌がらせの矛先がいつか本当に家族に向かうかもしれなかったし、かと言ってフィオーラお姉さんは自殺の決め手となった自分を裏切った元婚約者さんの”愛妾”になるつもりもない。だけど”四大名門”の一つ―――”カイエン公爵家”と婚姻を結ぶことになる元婚約者さんを振った事で元婚約者さんの実家や”カイエン公爵家”の顔に泥を塗って、フィオーラお姉さんもそうだけどフィオーラお姉さんの家族に元婚約者さんの実家や”カイエン公爵家”の怒りの矛先が向かう事を懸念したレイシス王子が一旦本当に死んだ事にして、状況が落ち着いたら家族の元に戻ればいいという提案をしてフィオーラお姉さんがその提案を受け入れたの。――――ま、フィオーラお姉さん自身、これ以上家族に迷惑をかけない為や自分を裏切った元婚約者さんがいる帝国からも離れたいという思いもあったそうだけどね。」
「……………」
「マキアス………」
レンの話を聞いて辛そうな表情で黙り込んでいるマキアスをリィンは心配そうな表情で見つめた。
「で、でも……それなら何で今までマキアス達に連絡しなかったんだろう……?6年も経っているんだから、状況はとっくに落ち着いているよね……?」
「レンもその事が気になって聞いてみたら、自分の為に色々としてくれたレイシス王子への恩返しが終わるまでは自分から連絡するつもりはないとの事よ。―――ちなみに恩返しの期間はレイシス王子が誰かと結婚するまでよ。」
「姉さん…………」
エリオットの疑問に答えたレンの説明を聞いたマキアスは複雑そうな表情をしたが
「――ま、レンの見立てだと”それ以外の理由”もあると思うけどね♪」
「へ……”それ以外の理由”??」
小悪魔な笑みを浮かべたレンの答えを聞くと呆けた表情をした。
「うふふ、自殺をするほどまで追い詰められた女性が自殺した自分を助けてくれた所か自殺しようとした自分を生きるように説得した挙句、自分の為に色々としてくれた男性に対して”恩”を感じる以外で何も思わないなんて、普通に考えてありえないでしょう♪」
「そ、それって………」
「……レイシス王子殿下への想いによって、殿下から離れたくないという気持ちか。」
「えっと………幾らなんでもそれはレンの気のせいじゃないのか?」
レンの話を聞いてある事を察したエリオットは困った表情をし、ラウラは静かな表情で答え、リィンはマキアスを気にしながら訊ねた。
「クスクス、フィオーラお姉さんのレイシス王子を見る目って、エリゼお姉さんみたいにわかりやす過ぎるから、レンの気のせいじゃないわ♪」
「え、えっと………」
「……なるほど。」
「ふむ………」
「あはは……」
レンの答えを聞いたリィンが困った表情で答えを濁している中フィー達は納得した様子でいた。
「………………」
「マキアス、どうしたんだ?」
一方マキアスは複雑そうな表情で黙り込み、その様子が気になったリィンは訊ねた。
「いや………皮肉な運命だなと思ってさ………身分の関係で姉さんは追い詰められて命を断とうとしていたのに、その身分の高い人に助けられた上新たな生活を用意してもらって……そして以前の婚約者同様身分が高い人を好きになってしまってさ…………」
「それは…………」
「―――身分制度が廃止されているリベールだったら、少なくても前のような貴族達からの嫌がらせとかないと思うし、もしマキアスのお姉さんがレイシス王子と恋仲になった時、レイシス王子もそうだけどレイシス王子の妹のクローディア姫も二人の性格を考えたら絶対マキアスのお姉さんの味方をすると思うから大丈夫だと思うよ。」
マキアスの答えにラウラが複雑そうな表情をしている中フィーが静かな表情で自身の推測を答えた。
「へ…………」
「その口ぶりだと……まさかフィーはレイシス王子殿下とクローディア王太女殿下のお二人とお会いした事があるのか?」
フィーの答えを聞いたマキアスが呆けている中リィンは目を丸くして訊ねた。
「ん。ちなみにオリビ……じゃなくてオリヴァルト皇子とも会った事があるよ。」
「ええっ!?オ、オリヴァルト皇子殿下とも!?
「……一体どのような経緯でオリヴァルト殿下達とお会いする機会があったのだ?」
フィーの口から出た驚愕の人物の名前を聞いたエリオットは驚き、ラウラは信じられない表情で訊ねた。
「……ある”事件”に巻き込まれた時。ちなみにレンともその”事件”で知り合いになった。」
「ええっ!?それじゃあレンとフィーが知り合い同士なのは……!」
「そういう事♪その”事件”の解決の為に共に協力し合った仲だからよ♪」
フィーの説明を聞いてある事を推測して驚いているエリオットの言葉にレンは笑顔で頷いた。
「フム……しかしその”事件”とは一体どういう”事件”なのだ?オリヴァルト皇子殿下に加えてクローディア王太女殿下達も巻き込まれた”事件”となると、絶対世間では有名になる”事件”になると思うのだが……」
「うふふ、今はマキアスお兄さんのお姉さんのお話だからそのお話については機会があった時にね♪」
そしてラウラの質問を聞いたレンは笑顔で誤魔化し、レンの答えを聞いたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「あ、あのなあ………普通、そこはその”事件”について話す流れだろう……」
「クスクス、いつも言っているようにレディにはミステリアスな部分があればあるほど魅力が増すものよ♪」
呆れた表情で指摘したマキアスの指摘に対して笑顔で答えたレンの答えを聞いたリィン達は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「アハハ……話を聞けば聞く程、レンの謎が深まるよね……」
「ああ…………―――そうだ、マキアス。レンに頼んで、フィオーラさんに宛てた手紙を書いてその手紙をフィオーラさんに送ってもらったらどうだ?」
苦笑しながら呟いたエリオットの言葉に疲れた表情で頷いたリィンは気を取り直してマキアスに提案した。
「へ………だ、だがレンの話だと姉さんは僕達と連絡をとりたがっていないとの事だぞ?」
リィンの提案を聞いたマキアスは複雑そうな表情で答えたが
「”家族側からの連絡を受けたくない”とはレンも言っていないだろう?」
「あ…………えっと……レン、姉さんへの手紙、頼んでもいいか?」
リィンの指摘を聞くと呆けた後考え込み、そして真剣な表情でレンを見つめて訊ね
「ええ、別に構わないわよ。勿論、返事もくれるようにレイシス王子を通じて伝えておくわ♪」
「レン………ありがとう。」
レンが了承すると嬉しそうな表情でレンを見つめた。
その後後片付けを終えたリィン達はマキアスの実家を出て実習課題の消化を再開した――――
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