真田十勇士
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巻ノ五十三 九州のことその十
「関白様にですな」
「従おうとされている」
「ですな、それでは」
「今のうちにな」
まさにというのだ。
「手を打っておこう」
「さすれば」
「源三郎も近いうちに戻ってくる」
長男の信之もというのだ。
「その時にはまた動く」
「北条殿に文と人を送られ」
「そして手を打とう」
「わかりました」
幸村も頷く、そして程なくだった。
島津家は秀吉に降った、義久は頭を剃りそのうえで秀吉に帰順を申し出た。秀吉もそれを許し島津家は三国の領土を保証された。
そして信之も上田に帰って来た、それを受けてだった。
信之は彼に政の補佐をさせ北条家に人と文をやることにした、その時に。
上杉家から兼続が来てだ、昌幸に述べた。
「我が殿からのお言葉ですが」
「上杉殿からの」
「はい、北条殿をです」
「説いてじゃな」
「関白様に従う様にと」
促すというのだ。
「それが殿のお考えです」
「戦ではないな」
昌幸はこの言葉に色々な意味を込めて言った。
「和じゃな」
「はい」
その通りという返事だった。
「殿はそれをお考えです」
「左様か」
「そうです」
兼続も昌幸の真意を読み取りつつ答えた。
「天下はもう定まっていますので」
「そうじゃな」
「ですから」
兼続はまた答えた。
「我等は徳川家と共に」
「三家でじゃな」
「北条殿を説きましょう」
「わかった」
昌幸はすぐにだ、兼続に答えた。
「ではな」
「共にですか」
「元よりそのつもりだった」
昌幸は己の考えを述べた。
「それはな」
「では」
「徳川殿とも合わせてな」
そしてというのだった。
「そうしようぞ」
「さすれば」
「約束する」
こうも言ったのだった。
「戦はせぬに限る」
「ですな、いいことはありませぬ」
「だから何とかな」
「北条殿には関白様に従ってもらいますか」
「勝てぬのなら従うべきじゃ」
これが昌幸の考えである、彼はこの考えに基づき今まで動きそうして真田家を守ってきたのである。それで今も言うのだ。
「頃合を見てな」
「北条殿の頃合は」
「そろそろじゃ、だからな」
「さすれば」
「お話しよう、わし自ら出向いてもな」
こう言ってだ、そして実際にだった。
昌幸は北条家の説得に動くことにした、それは家康も同じだったが。
彼は駿府城においてだ、家臣達に難しい顔で言っていた。
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