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Three Roses

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第十話 またしての崩御その六

「幸いあの国の状況は我が国にとっていいものとなりました」
「新教派が力をつけてですね」
「そして旧教派は確かに強いですが」
 それでもというのだ。
「王国派はかなり弱まりました」
「これまであの国は周辺国の中でもとりわけ王国派が強かったですが」
 そしてこの国、ひいてはエヴァンズ家に対抗していたのだ。その衝突がかなり強く激しいものであったのだ。
「彼等はその力を大きく削がれました」
「これは帝国が動いている様ですが」
 ロドネイ公が言ってきた、このことを。
「しかしこのことは」
「我々にとってですね」
 マリーはまだ目が赤かった、だが。
 その目を毅然とさせてだ、ロドネイ公に答えた。
「いいことですね」
「我々は共通の敵を持っています」
「王国ですね」
「ですから少なくとも王国に対してはです」
「味方同士ですね」
「旧教と新教の違いはありますが」
 信仰のそれはあるがというのだ。このことは教皇庁も関わっているがそうした信仰に絡んだ政治の問題はあってもというのだ。
「それ以上にです」
「帝国と我が国、王国はですね」
「数百年対立しています」
「両国によって敵です」
「紛れもなく」
「それ故にですね」
 マリーは政治を観る目になっていた、広く遠く見てそのうえで慎重に考えている。そうした目になっていた。
 その目を以てだ、こう言うのだった。
「帝国の動きは歓迎すべきですね」
「我々にとっては」
「実に」
「わかっています、では」
 今度はだ、マリーはセーラとマリアを見て二人に言った。
「あちらも王家の者として、そして」
「わかっています」
「私達も」
 二人も応える、毅然として。
「その国、我が国の為に」
「それぞれの二つの国の為に」
「私達は尽くします」
「この王家の者として」
「お願いします、それとですが」
 さらに言うマリーだった。
「私達は離れていてもです」
「それでもですね」
「私達は共にあるわね」
「中庭の薔薇は咲いています」
 今もというのだ。
「その薔薇と共に」
「私達もですね」
「共にある」
「場所は離れていても」
「それでも」
「そうです」
 まさにというのだ。
「ですから」
「私達はこれからも」
「一緒にいるのね」
「心は」
 薔薇と共にというのだ。
「そうです、ですからそれぞれ嫁いでも」
「心はいつも共にある」
「そうなるわね」
「はい、それでなのですが」
 ここでだ、マリーはこんなことも言った。
「薔薇はそれぞれの国に持って行けますね」
「はい」
 ロドネイ公がマリーの今の言葉に答えた。 
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