英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第93話
”赤い星座”、”黒月”、”結社”と警察、警備隊の連合部隊によるクロスベル市内の戦いから1週間後――――
IBCビルが爆破されたことで周辺諸国の緊張は一気に高まった。
これに対し、マリアベル総裁代行はオルキスタワーにバックアップしていた顧客データなどを速やかに復活させ……
万全の対応を見せる事で周辺諸国の動揺は収まりつつあった。
―――しかし猟兵達が残した爪痕は深く、多くの市民はいまだ呆然としていた。
中でも大スター、イリア・プラティエが瀕死の重傷を負ったというニュースは国内外にも大きな衝撃を与え……
さらに警察本部が襲われかけ、多くの警官や刑事達が重傷を負った事実と襲撃をかけた武装集団の行方がつかめないことが市民を言い知れぬ不安に陥れていた。
そして――――武装集団の背後にエレボニア帝国とカルバード共和国がいたという噂が市民の間でも囁かれ始めた頃……
事件のために延期されていた『国家独立』の是非を問う住民投票が3日後、開催される運びとなった。
~特務支援課~
「―――そうか、戻るのか。」
「はい……本当なら半年は勉強させていただくつもりでしたが……色々考えて――――戻らせていただく事にしました。」
セルゲイの言葉にノエルは重々しい様子を纏って頷いた後決意の表情になった。
「……そっか……」
「……無理もないわ。今回の件で警備隊もかなりの損害を負ったみたいだし。」
「幸いにもベルガード門の連中の損害は大した事はなかったらしいが………ギュランドロスのオッサン達の訓練を受けてないタングラム門の連中が甚大な被害を受けちまったからな……ま、優秀な若手隊員は喉から手が出るほど欲しいだろ。」
ノエルの答えを聞いたロイドやエリィは複雑そうな表情をし、ランディは疲れた表情で呟き
「”六銃士”達の訓練を受けなかったツケがまさかこんな所に来るとは誰も予想していなかっただろうな………」
リィンは真剣な表情で呟き
「そして甚大な被害を受けた今……即戦力をほおっておくことはできなかったのでしょうね……」
「そうだね~。警備隊にいた頃のノエルさんってソーニャ副司令のお気に入りだったし……」
「……仕方ないとはいえ、寂しいですね。」
セティやシャマーラ、エリナは複雑そうな表情で言った。
「あはは……優秀やソーニャ副司令のお気に入りかどうかは疑問ですけど。……すみません。せっかく復興作業が一段落して通常業務に戻れた矢先に……」
ランディ達の言葉を聞いたノエルは苦笑した後、複雑そうな表情をした。
「いや……気にしないでくれ。今のクロスベルの状況で警備隊の役割は大きいしな。」
「寂しくなりますけど……納得するしかありませんね。」
「ノエルも………いなくなっちゃうのー?」
キーアは不安そうな表情でノエルに尋ね
「あはは……うん。キーアちゃんに会えなくなるのはすごく寂しいけど……」
「……そっか……」
ノエルの答えを聞いて残念そうな表情をした。
「でも、またいつでも遊びに来ちゃうから……!それこそまたみんなで………………」
キーアの表情を見たノエルは無理やり笑顔を作った後、空いている3つの空席に視線を向けて黙り込んだ。
「……本部でしばらく指揮を執る事になった局長とアル警視は仕方ないとして……エルファティシアさん、一体どこに何をしているのかしら……?」
エルファティシアがいつも座っていた席に視線を向けたエリィは不安そうな表情で呟き
「昨日の内に局長から休職の許可を貰った後、そのまま行き先や理由も告げずに姿を消したものな………」
ロイドは複雑そうな表情で言った後溜息を吐いた。
「エルファティシアさんもそうですが……復興を手伝っていたリセルさん達までクロスベル市から姿を消した事にも疑問ですね。特にリセルさんはヴァイスさんの正妻であり、右腕のような存在だったのに………」
その時ティオは考え込みながら呟き
「うん……襲撃の時のそのリセルさんっていう人達の活躍を聞いた副司令、一人でもいいから何とか警備隊に来てもらいたかったらしくて、復興を手伝っているリセルさん達に接触して警備隊に勧誘したらしいんだけど………本当にどこに行ったんだろう。」
「特にあのガルムスって言う爺さんは絶対欲しいだろうな。なんせ、叔父貴を一人で制圧するギュランドロスのオッサンクラスの”化物”だしな。」
「しかもよりにもよってあの”赤の戦鬼”と同じ”戦鬼”を名乗っているらしいねえ。警備隊に入れば即戦力どころか切り札みたいな存在になるのは間違いなしだろうね。」
ティオの言葉にノエルは頷いた後溜息を吐き、ランディは目を伏せて呟き、ワジは口元に笑みを浮かべて呟き
「あたしは”魔導功殻”だっけ?そっちの方が気になるな~。復興で忙しくて話す暇がなかったのが非常に惜しかったよ……」
「ええ……人形なのに自らの意志を持つどころか私達人々が持つ感情まであり、さらに治癒魔術―――それも最上位クラスの魔術まで扱えるなんて……」
「一体どのようにして創られているのでしょう?」
「話を聞く限り、シェラ様達のような”機工種族”とは全くの別物のようだしな……一体どんな存在なんだ?」
シャマーラが呟いた言葉にセティとエリナは頷き、リィンは考え込んでいた。
「……リセルさん達も含めた局長達の”協力者”達みんな、エルファティシアさんや局長達と親しい関係のようだしな……局長達―――”六銃士”なら何か事情を知っていそうなんだが………」
「肝心の局長達はみんな、”知らない”の一点ばりですしね…………空港や駅、国境の記録によれば、全員クロスベル市から出た形跡はないから、恐らくクロスベルのどこかに潜伏しているのだと思いますが………」
疲れた表情でいったロイドの言葉にノエルは溜息を吐いて頷き
「……ヴァイスさん達の事ですから確実に事情や場所を知っていて絶対隠しているでしょうね。でなければ、ようやく再会できたばかりなのに、行方を眩ませたリセルさん達を探さないなんてありえません。」
ティオはジト目で言った。
「……ま、その内ひょっこり姿を現すんじゃねえか?……それより話を戻すが、今日がノエルの仕事納めか。」
そしてランディは話を戻してノエルに視線を向けた。
「はい、今日一日……精一杯頑張らせてもらいます。よろしくお願いします、皆さん。」
「ああ……こちらこそ。」
「ノエルさん……よろしくお願いするわね。」
ノエルの言葉にロイドとエリィは頷き
「―――各種手続きは俺の方でやっておこう。それと、晩メシは久々にどこか外にでも繰り出すか。特別に俺のオゴりにしてやる。」
セルゲイは意外な提案をした。
「セルゲイ課長……」
「はは、いいですね。」
「なかなかの太っ腹です。」
「フフ、それなら僕の馴染みのホストクラブでも行くかい?綺麗どころを集めて豪勢な送別会を準備するけど。」
「ええっ!?」
さらに続くように言ったワジの提案を聞いたノエルは驚き
「おっ、アリかもしれねぇな。俺としては綺麗な姉ちゃんのいる店の方が嬉しいが。」
ランディは嬉しそうな表情を浮かべていった。
「ふう……そういう問題じゃないでしょう。」
ランディの言葉を聞いたエリィは呆れ
「ならば、みっしぃショーがあるMWL内のレストランとか……」
ティオは真剣な表情で目を光らせて言った。
「そんなお店があるのー?」
「ちょっと気になってきたね♪」
ティオの言葉を聞いたキーアは無邪気に尋ね、シャマーラは口元に笑みを浮かべて言った。
「それ以前にお前ら……俺の財布の中身を考えろっての。後、ルファディエル。今はロイドの中で黙っているようだが……お前も特務支援課の俺と同じ上司として割り勘してもらうからな。でないと代わりにリーダーである弟が払う羽目になるぜ?」
一方セルゲイは呆れた表情で言った後、ロイドに視線を向けて呟き
「ええっ!?」
(フフ、仕方ないわね。まあ、それぐらいなら出してあげましょう。)
セルゲイの言葉を聞いたロイドは驚き、ルファディエルは微笑んでいた。
「あはは………」
その様子を見ていたノエルは苦笑し
「と、とりあえず今日は、夜までに仕事を終わらせないとな。」
ノエルの様子を見たロイドもつられるように苦笑し
「グルル………ウォン。」
ツァイトは呆れた様子で吠えた。
その後ロイド、エリィ、ティオ、ランディ、ノエル、リィンのチームと、ワジ、セティ、シャマーラ、エリナのチームに分かれ……それぞれのチームはそれぞれが担当する支援要請を片付ける為に行動を開始した……………
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