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歌集「春雪花」

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 待ち疲れ

  求めし影は

   風のよに

 吹きてや消えし

    独り淋しき



 ずっとここに居たとして…彼には会いようがない…。

 想いは消えることはなく…絶えず私を悩ませる…。

 日々に追われ…恋に疲れ…心に問われ…。

 彼はここにはいない…いや、いっそその方が良かったのだ…居ないからこそ、私が彼を傷付けることはないのだから…。

 想い溢れ…ふと彼がいた気がしたが、それは幻…。

 風に吹かれ消え去えさる煙りのように…それは刹那に霧散して…


残るは侘しき私一人…。



 露草の

  花もかわきし

   夏影も

 心の袖は

   濡れし儘なれ



 朝露に濡れた蒼き露草の花も、真昼の太陽に渇いている…。

 全てを見透かすような夏影…しかし、私の心にある袖を、乾かすことは出来ない…。

 彼に会えず…この想いを告げることさえ出来ぬ身を、心で嘆かずにはいられない…。


 愚かしい…私が生まれたこと、そのものが…。



 
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