英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第87話
~中央広場・百貨店『タイムズ』・屋上~
「……お待ちして……おりました………」
ロイド達が屋上に到着すると手すりの側で景色を見つめていたチキが振り向いてロイド達に会釈をした。
「チキさん……一人で大丈夫なんですか?」
「護衛の”社員”はつけなくて大丈夫なのですか?」
チキに仲間達と共に近づいたロイドとエリィは尋ねた。
「………少々忙しくなってきておりますので……そちらの方を優先させています……それに皆様のおかげで……両組織がいなくなりましたので……それほど気にかける………必要はないかと……」
「……よく言いますね。通商会議の件の裏では貴女達もどこかで関与していたでしょうに。」
チキの答えを聞いたティオはジト目で見つめて言った。
「――――お互い時間も無い事ですし……本題に入らせていただきます……実は……昨夜”銀”様から突然連絡があったのです………自分から申し込んできた”ラギール商会”との長期契約を……打ち切ると……伝えにきたのです……」
「あ……」
「それは……」
チキの話を聞いたノエルは声を上げ、エリィは複雑そうな表情をした。
「……私達に何か落ち度があったのかと思い……引き止めようとしたのですが……相当、頑ななご様子で……私達の方も戸惑っているのです………」
「……そうですか。」
「それがわたしたちに何の関係が……?」
チキの説明を聞いたロイドは目を伏せ、ティオは尋ねた。
「――――昨日、エルム湖南岸で……いったい何があったのでしょうか……?」
「ひょっとして……」
「僕達が一緒だったのは既に掴んでいるみたいだね?」
チキに尋ねられたノエルは真剣な表情をし、ワジは尋ねた。
「はい……そして遊撃士協会の方々やセリカ様達と………”結社”の者達が……現れたという事くらいまでは……一体”彼女”に何が起きたのでしょうか……?」
「…………………」
「まさか……………!」
「既に”銀”の正体を掴んでいたんですか……!?」
チキに尋ねられたロイドは黙り込み、エリィは信じられない表情をし、ティオは驚きの表情で尋ねた。
「……ダメだ、エリィ、ティオ。尋常な相手じゃない。下手な情報を喋ると―――あ。」
エリィとティオの言葉を聞いたロイドは忠告したがある事に気付いて声を上げ
「やれやれ。なかなか悪辣だねぇ。」
ワジは疲れた表情で溜息を吐いた。
「…………何か勘違いをされているようですね………”銀”様の正体はマクダエル議長の……暗殺未遂事件の数日後に私達の方で……掴んでおります……」
「なっ!?」
「ええっ!?」
「そ、そんなにも早い時期から”銀”の正体を掴んでいたなんて……!」
「まるでルファディエルさんみたいだねぇ?ひょっとして彼女も関わっているとか?」
チキの話を聞いたロイドとエリィ、ノエルは驚きの表情で声を上げ、ワジは口元に笑みを浮かべてチキを見つめ
「―――――!まさか……ルファ姉が言ってたという”情報屋”とは貴女の事で、”銀”の正体と引き換えにルファ姉は貴女達から各国や”黒月”、”赤い星座”、さらには”ルバーチェ”の情報を引き出していたのですか!?」
ワジの疑問を聞いてある事に気付いたロイドは信じられない表情でチキを見つめて尋ね
(くかかかかっ!とうとうバレたようだぞ!?)
(あら……まさかそこまで気づくなんて……さすがにそこまでは予想していなかったわ…………フフ、これは後でご褒美が必要ね。)
ロイドの言葉を聞いたギレゼルは陽気に笑い、ルファディエルは苦笑した後微笑んでいた。
「……………ルファディエル様と”契約”をしているのは事実です……」
「!!」
「相変わらず恐ろしいですね、ルファディエルさんは…………味方で本当によかったです………」
「え、ええ……………そういえば”アルセイユ”でリフィア殿下達が”あの件”って言ってたけど……もしかしてリフィア殿下達がクロスベルに来訪する前日の夜、ルファディエルさんがビルを出て”情報屋”を訪ねたようだけど………チキさんを訪ねて、通商会議の時の”策”を仕込んでいたのではないかしら?」
チキの答えを聞いたロイドは目を見開き、ティオは疲れた表情で呟き、エリィは表情を引き攣らせた後推測し
「ああ………間違いないだろう。(ランディや赤い星座の件が全部片付いて、落ち着いたらリーシャの件も含めて何でそんな事をしたとか、全て話してもらうからな?ルファ姉。)」
エリィの推測を聞いたロイドは疲れた表情で頷いた後ルファディエルに念話を送り
(フフ、わかったわ。)
ロイドの念話にルファディエルは苦笑しながら答えた。
「それと…………リィン様はクロスベルに来訪する以前に……ご主人様から……”黒月”の重要人物が書いてあるリストを頂いているはずなので……”銀”様の正体は最初からご存知のはずです……………」
「なっ……………リィンが!?」
「それにチキさんの主――――リウイお義兄様の名前が出たわね……一体リウイお義兄様は何を考えてリィンを特務支援課に所属させたのですか?」
チキの話を聞いたロイドは驚き、エリィは真剣な表情でチキに尋ねたが
「………例えイリーナ様の血縁の方とはいえ…………話す義理はありません……………エリィ様やマクダエル議長は”メンフィル帝国”とは”何の関係もない”のですから……………」
「…………っ!」
チキの答えを聞いて唇を噛みしめ
「………リィンが特務支援課に来た理由やメンフィル帝国が何を考えているのかは後で考えよう。……それで……”彼女”をどうするつもりなのですか?」
ロイドは疲れた表情で言った後、真剣な表情でチキを見つめて尋ねたが
「………特に何も。それより貴方達が私に尋ねたいのは……そんな事ではないと思いますが………?」
「―――!!……ランディはどこにいるのですか?」
チキにある事を言われて目を見開いた後、真剣な表情で尋ねた。
「ランディ様ですが……3時間ほど前に………マインツ山道の……とある地点を訪れたそうです……」
「!?」
「ほ、本当ですか……?」
「………各地に展開している中のマインツ山道を監視している者達からの報告ですから………信憑性は高いかと……」
「なるほど……」
「それで、その地点というのは?」
「……現在……クロスベル警備隊が防衛線を敷いている……滝の手前……その付近にある高台から……ザイルで……崖下に……降りたとの事です……その先は………気付かれそうだったので…………追跡を断念したそうです……」
「ロイド……!」
チキの情報を聞いたエリィは真剣な表情でロイドを見つめ
「ああ、この上もない情報だ。―――チキさん。情報感謝します……!」
見つめられたロイドは頷いた後口元に笑みを浮かべてチキを見つめた。
「………ルファディエル様には色々とお世話になっていますし………メンフィル帝国にとって……大切なお客様である……セルヴァンティティ様達を……いつもお世話して頂いているお礼の意味もありますので………ですが、くれぐれもお気をつけて……相手は……精鋭ぞろいのメンフィル兵達と互角に戦った……相手です……特に……”赤の戦鬼”はカーリアン様でも……手こずる相手かと思われますので……………」
「……わかりました。よし、エニグマで課長に連絡してすぐにマインツ山道へ出よう!」
チキの言葉に頷いたロイドは仲間達を見回して号令をかけ
「はい……!」
「了解です……!」
「何とか追いつかないと……!」
ロイドの号令に仲間達は頷いた後チキから去って行き
「……………”ここから”は私達も本気で………戦わなければ……いけないようですね……………ご主人様から頂いた知らせにあった……今日クロスベルに到着する予定の……ヴァイスハイト様の奥様達の到着が早いか……襲撃が早いか………タイミングによっては………”味方”の戦力が大きく変化しそうですね…………」
ロイド達が去るとチキは静かな表情で空港がある方向を見つめて呟いた………………………
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