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衛宮士郎の新たなる道

作者:昼猫
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第7話 純粋なる歪

 「衛宮士郎、私と勝負しなさい」
 「は?」

 何時のの様に勉学に励み、学友たちとの絆を深めて?からの放課後に、日課になりつつある百代との組手に行こうとした士郎達の前に、マルギッテ達が立ちはだかった。
 因みに、未だに両者のファン達は遠目から恨めし気な視線を送っている。

 「は?ではありません。私と戦いなさいと言ってるのです!」
 「ちょっと待て、マル!既に先約があるんだから、空気位読んで欲しいな!」

 それを返したのは士郎本人では無く、両者の視線の間に割って入りこんだ百代だ。

 「だ、誰がマルですか!そ、それに学年は百代が上でも、歳は私の方が上なのですから敬語を使いなさい!」

 同期の者達から呼ばれる愛称を年下の者に呼び捨てにされたマルギッテは、何故か頬を赤らめながら抗議する。
 しかし百代は言葉使いは兎も角、態度だけは改めないまま対応する。

 「空気を読むくらいのマナーを守るんでしたら、幾らでも相応の対応をしますよ?それに是はアレですか?先日の旅行中の時での士郎へのいちゃもんですか?」
 「それは誤解です。あの件につきましては私に過失があったことは認めています」
 「でしたらまずは謝罪が先でしょう。それに貴女が今この地に居るのは彼女――――クリスの護衛の為なのでしょう?その任務を蔑ろにして、俺に戦い挑んでいいと言う許可を取っているんですか?」

 士郎は、自分の前に居る百代と交代して前にでて正論を言う。
 百代では話をややこしくさせかねないと判断したからだ。
 そしてマルギッテは士郎の正論の前に押し黙る。如何やら図星だったらしい。
 それに百代が士郎の腕に自分の腕と手を絡めてから畳掛ける。

 「そうです!それにこれから士郎と私は組手と言う名のデートをするんですから!」
 「・・・・・・・・・・・・」

 百代の言葉に今度は士郎は押し黙る。その態度に百代がすぐに疑問を呈する。

 「何だよ士郎、如何してお前が黙るんだ。まさかこの私に不満でもあって言うのか!?」

 顔を赤くしながら胸まで押し付けていた百代からすれば、この状態で何が不満なのだと言いたい。自他ともに認められている美少女だし、自分のファンは先ほどからシロウに殺意を送っているしと。
 しかし士郎の反応は違った。

 「・・・・・・・・・え?」
 「・・・・・・・・・え?」
 「1・・2、3・4・・・5、6、7・・・・・・・」

 一瞬お互いにキョトンとしてからシロウは、百代に対するこれまでの不満に覚えがあるかのように、一つ一つ思い出すと同時に指を折り曲げて数えていく。
 その数が両手の指で足らなくなり、逆走しだしたところで百代は顔を青ざめながら止めに入る。

 「待て待て待て待て!指を動かすのを止めろよ!と言うか、そんなにあるのか!?」

 その彼女の反応にまたもキョトンとした士郎だったが、 彼女の耳元に顔を寄せて小声で全てを呟いた。
 それには百代が徐々に体を前側に折り曲げて行き、遂には両ひざを付く。

 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんな――――」

 あまりの百代の態度の変わりように、ドイツ姉妹――――正確には違うが、そのコンビはひそひそと話し始める。

 「マルさん、何を言ったんだろうか?」
 「判りかねますが、言葉だけで“あの”武神を陥落させるとは――――やはり楽しめそうです・・・!」

 これにより改めて士郎にロックを掛けるマルギッテだが、このまま無理矢理押し通したらフリードリヒ親子に迷惑がかかるので、今日のこの場は自重する事にした。
 そして士郎の護衛を自称するシーマが現れたのは、それから10分後の事だった。


 -Interlude-


 川神市のとある住宅街。
 日もすっかり暮れた頃に、彼女たち――――私服姿に着替えていたフィーネとリザがいた。

 「収穫は如何だった?」
 「上々・・・・・・と言いたかったんだが、戦闘力方面は詳細な情報(モノ)は無いな」

 そう愚痴りながらもフィーネに報告を続けるリザ。
 何故リザだけが情報収集に駆けまわって来たかと言うと、この2人は今更言うまでも無く、相当な美人である。軍服を脱ごうと一目を容易に集めてしまう位に。
 それ故に、このままでは情報収集など出来ないと言う事で、セイヨウニンジャとして相応に気配を消せるリザだけが市街を駆け巡って来たのだ。
 だが結果論ではあるが適材適所だろう。
 もとより潜入に諜報関係がリザの仕事であり、隊長の補佐以外には部下達をまとめつつ情報などを解析するのがフィーネの仕事なのだ。
 だから役割分担としては順調だった。だがしかし・・・・・・。

 「これ以上は確かなものは得られそうにないぞ?それこそ藤村組に潜入でもしない限り・・・」
 「それは許可できん。あちらは自分達に敷地の上、壁越えが複数人もいる。潜入などすれば確実に尻尾を掴まれる上、これは任務では無い。不法侵入として扱われれば、本国には勿論の事、中将や隊長にもかなりの迷惑を負わせることになる」
 「なら如何する?正直手詰まりだし、これ以上同じ情報収集の形を取っても――――」
 「ん?如何した、リザ?」

 いきなり会話を止めたリザに向けて、フィーネは怪訝な顔をする。

 「あ、いや、大したことじゃないんだが、此処の家の住人達の気配が突然消えたなと思ってよ」
 「突然消えた・・・?」

 リザが寄り掛かっている壁――――もと言い塀の向こうの家の事だ。

 「ま、俺が気を抜いたせいなんだろ?直に調子を取り戻せば・・・・・・・・・ッッ!!?」
 「如何した!?」

 フィーネはリザの顔を覗き込むように尋ねる。
 それもその筈で、リザは今の一瞬の内に顔――――いや、全身中から冷や汗や悪寒が止まらなくなっている。一言で言えば恐怖に震えていた。

 「何だ、これ・・・?俺・・・・・・こんな気配、知ら、ない。これって・・・・・・“人”・・・・なのか?」

 リザはあまりの恐怖に全身は勿論の事、瞳も震え続けている。
 そんな仲間の態度の異変に察知したフィーネは、急ぎこの家の裏庭入り口からこの家に足を踏み入れた。不法侵入に値するだろうが、今はそんな時では無いと軍人としての勘に従っていた。
 そしてそこで見たモノは・・・・・・。

 「・・・・・・っ!?」
 「ひぃ、あぁっ!ひぃっ、はっ!?」
 『・・・・・・・・・・・・』

 黒い何かが、未知の恐怖により腰を抜かして動けなくなっている男性を見下ろすと言う、異様な光景だった。


 -Interlude-


 「急げシロウ!」
 「分かってる!」

 ほぼ同時刻に士郎とシーマの2人は、流星のように全力で街中を駆けていた。
 理由はスカサハからの報告である。
 久しぶりに来たのだ。サーヴァントらしき反応が、と。
 その真偽を確かめる為、士郎とシーマの2人で反応の在った場所に急行中だ。
 因みにエジソンはいざ何かあった時の為の留守番役だ。
 家を任せて走る、走る。駆ける、駆ける。
 そうして現場に着いた2人は、急ぎ周囲を探索しようとしたところで即座に見つけてしまった。いや、出会ってしまった。それ(・・)に。

 「なっ・・・!」
 「お前は・・・・・・」
 「あ、あぱ、あばぱ・・・ひぃふっ!?」
 『・・・・・・・・・・・・・・・』

 とある民家の裏口にそれ(・・)が男性を見下ろしていたのだ。
 2メートルはゆうに超えるだろう、黒い霧を纏った“何か”が。
 それ(・・)を見たシーマは、刹那の中でどの様な選択が最善かと必死に思考した。
 理由と言えば経験則である。
 相変わらず生前の事はほとんど思い出せないが、目の前のこの“何か”と対峙している今この瞬間に体が思い出しつつあるのだ。
 自分は嘗て、強大な魔に立ち向かった事があるのではないかと。
 そしてその経験則が確かならば、この“何か”は強大な魔とは別種にしてそれ以上の恐るべき存在であると理解出来てしまった。
 一方士郎も同じ刹那の間に居た。
 マスターの恩恵と権利により、目の前の“何か”がサーヴァントである事は間違いないと理解していた――――が、納得はしていなかった。
 ステータスのパラメータ値が解らないが、宝具やスキルなどであればその程度の事は些細な事実だろう。
 真名は兎も角クラスが分からない。自分が経験してきた聖杯戦争はどれも異常だったので、そう言う事もあるだろう。
 では何が納得できないのかと言うと。

 (コイツは本当英雄・反英雄(英霊)の類なのか?)

 自身が巻き込まれた聖杯戦争に加えて、キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ(師匠)の下での第二魔法により幾多の世界に送られた時の数多の英霊との邂逅で、士郎は真名こそ見極められるわけではないが天・地・人・星と言うカテゴリーを見極められる観察眼を具えていた。
 それ故に、だからこその疑問だった。

 (サーヴァントである事は間違いないが、コイツはどの英霊とも違う“何か”だ――――いや、それよりも今は・・・・・・!)
 「シロウっ!?」

 シーマの驚きの声など構わずに、士郎は腰を抜かしている男性を助ける為に行動に移す。
 例え世界中の人を助けることが叶わずとも、自分の手が届く範囲の人たちだけは必ず救って見せる――――と言うのが士郎の新たな誓いなのだから。

 「っ!?」

 しかし男性を見下ろしていた“何か”はいつの間にかに居なくなっていた。

 「消えた?―――――いや!」

 セオリー通りであれば後ろに居ると振り向くと、シーマも同意見だったようで振りむいて自分に背中を向けていた。
 そして予想通り2人の背後に居た。ただし・・・・・・。

 『な、に・・・!?』

 まるで興味が無いと言わんばかりに、2人の背後から――――と言うよりも、この場から去ろうとしていた。いや、現在進行形で遠のいていく。

 「待て!」
 「待つのはお主だ、シロウ!」
 「如何して止める!」

 自分の肩を掴んで制止するシーマに抗議するために振り向くと、当人は非常に悔しそうに凛々しい顔を歪めていた。

 「今の我らではアレには勝てん!死にに行くようなものだ・・・!」
 「だが・・・!」
 「それにもう姿など見えんし、気配を拾えるか?」

 そんな事と反発して気配探知で周囲を探すが、シーマの言葉通り全く引っかからなくなっていた。

 「クソっ」
 「拾えなくてもおかしくは無い。何せ我ら2人とも、先のアヤツを視認して初めて姿を確認できたくらいだ。それで如何する?それでも探すか?」
 「・・・・・・いや、今はあの人の保護や後処理を優先しよう。百代に近づくと探知すればスカサハ(師匠)から連絡が入る筈だ」
 「わかった。・・・・・・ん?この男、あまりのショックで気絶しておるな」

 行動方針を切り替えて即座に民家の中に足を踏み入ると、あの“何か”に終始怯えていた男が気絶していた。
 さらに男の近くには美女が2人ほど倒れていて、同じように気絶していた。

 「この人達も気絶しているだけか・・・。しかし見かけない顔だな。この辺に住んでいる人なら大体顔くらいは知ってるんだが・・・」

 倒れている美女2人の素性に心当たりがない士郎をよそに、気絶している男を一度置いとく事にしたシーマが家の奥へ進んでいく。
 そして――――。

 「シロウ!」
 「ん?如何したシーマ――――っ!?これは・・・」

 呼ばれて駆けつけて見れば、家の奥にある居間には、この家の主たちと思われる親子供合せた4人が倒れていた。
 そして見た瞬時に理解出来た。この4人からは生気を全く感じ取れない。
 つまり、死んでいる・・・・・・と。
 
 

 
後書き
 クラス:セイバー
 マスター:衛宮士郎
 真名:不明(仮初の名としてシーマ)
 性別:男性
 身長・体重:168cm・65kg
 属性:秩序・善
 ステータス
 筋力:B、耐久:C+、敏捷:B、魔力:C+、幸運:C-、宝具:Unknown(使用不可)
 クラス別能力
 騎乗:B+、対魔力:B
 保有スキル
 武の祝福:B、不明、不明、不明

 上記が今現在のシーマの状態です。霊器が全快すれば宝具も使用可能でしょうし、ステータスも全盛期状態にまで戻ります。 
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