魔女に乾杯!
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
97部分:第九十六話
第九十六話
第九十六話 包丁
その日曜日になった。利奈は朝から支度にかかっていた。
「お姉ちゃん」
「何?」
梨花は妹の言葉に応えて顔を向けた。もう台所のテーブルに座っている。
「チキンカレーでいいよね」
「ええ、いいわよ」
彼女は答えた。
「それでお野菜をたっぷり入れてね」
「玉葱切る時は目が痛くなるから前もって水に漬けておくといいわよ」
「わかってるわ」
どうやら事前に勉強しているらしい。用意のいいことであった。
「とりあえず今のところは大丈夫みたいね」
「うん」
ジュリエッタとピエールは梨花がいるテーブルの下で囁き合っていた。
「それでお姉ちゃん」
「今度は何かしら」
「人参はお星様の形でいいかな」
「いいわよ、そんなの」
梨花は妹のその言葉に思わず苦笑してしまった。
「別にどんな形でも」
「いいの?」
「ハートでも何でもね。好きなのにして」
「了解」
どうやら包丁は問題ないようであった。傍目で見ても満足に切っていた。
「包丁は問題ないか」
「こっちはいいみたいだね」
使い魔達はまた囁き合う。
「じゃあ安心していいかな」
「さあ、それはどうかしら」
だが梨花はここで使い魔達に対して言った。
「御主人様」
「料理は包丁だけじゃないから」
彼女は言う。
「まだまだわからないわよ」
「それはそうだけれど」
「とりあえず危ないのは、ってところかな」
ジャガイモの皮は剥かれ鶏肉も切られた。こうしてとりあえず切るのは終わった。
「ルーは何がいいかな」
「甘口かな」
梨花は答えた。
「林檎もすっていれるといいわよ。あとは牛乳かしら」
「もうすっておいたわ」
「何かやけに用意がいいわね」
「姉似かな」
「それはどうかしら」
梨花はまた笑って言った。
「まだまだこれからだから」
そしてその笑みのまま言う。
「わからないわよ」
林檎も牛乳も入れられて甘口のルーが入れられる。こうしてカレー作りは進むのであった。
第九十六話 完
2006・3・7
ページ上へ戻る