真田十勇士
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巻ノ五十二 島津四兄弟その二
「次はな」
「はい、それではですな」
「次は将帥ですな」
「そちらを見ますか」
「そうしますか」
「うむ、そうしようぞ」
こう言うのだった、そして実際にだった。
幸村は十勇士達にだ、今度はこう告げた。
「さて、ではな」
「はい、夜にですな」
「夜に彼等の軍勢に近付き」
「敵の本陣に忍び込み」
「四兄弟を見ますか」
「そうしようぞ」
こう言ってだ、そしてだった。
十勇士達を連れてだ、幸村は夜の闇の中島津家の軍勢に近付いた。夜であるがだ。
「凄い警戒ですな」
「夜であっても」
「物見の兵が多く」
「警護も厳重ですな」
「これは並の忍では近寄れませぬ」
「到底です」
「我等にしましても」
その主従にしてもだった。
「少し油断すればです」
「見付かってしまいますな」
「この夜の闇の中でも」
「迂闊なことをすれば」
「うむ、これは危うい」
まさにというのだ、そしてだった。
ここでだ、幸村は十勇士達に囁いた。
「わかっておるな」
「はい、変装をしてですな」
「そのうえで陣中に入り」
「四兄弟のところに行きますな」
「そうするが」
しかしというのだ。
「島津家の具足や服はあるな」
「ここに」
「丁度人数分あります」
「何とか薩摩で手に入れました」
「買って」
「そうじゃな、ではこれを着てな」
そしてとだ、また言う幸村だった。
「陣中に入るぞ」
「では」
「これより」
十勇士達も応えてだ、そのうえでだった。
主従は物陰に入りそこで素早く着替えてだ。何気なくを装い。
島津家の陣中に入った、そこで彼等は薩摩の言葉を使い先に進んでいった。
その陣中を歩いてだ、十勇士達は言った。
「複雑な陣ですな」
「まるで迷路です」
「普通の城よりも複雑です」
「やたら入り組んだ布陣です」
「これでは並の忍ではです」
「迷ってしまいます」
「うむ、これではな」
まさにとだ、幸村も言う。
「下手に入っては碌に前に進めぬ」
「到底ですな」
「本陣まで行けませぬ」
「陣までこうしているとは」
「島津家は違いますな」
「全く以て」
「そうじゃ、これは厄介じゃ」
幸村は十勇士達に囁いた。
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