魔女に乾杯!
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92部分:第九十一話
第九十一話
第九十一話 見知らぬ相手
姉への追跡を続けているうちにやがてあることに気付いた。葵は何かと友人達に細かく気を遣っているのだ。
「わりかし細かいね」
「うん」
赤音達は物陰に隠れて頷き合った。
「おうちでもそういうとこあるし」
「あれっ、そうだったっけ」
「そうだったっけって、御主人」
ハリーはそれを聞いてまたしても呆れた声を漏らした。
「御主人僕達よりずっと葵姉さんといる時間長かったんでしょ」
「まあそうだけど」
「それでそうだったっけって。それはないんじゃない?」
「いやあ、一緒にいると案外気付かないものなのよ」
「あっきれた。よくそんなので魔女なんてやっていられるわ」
「本当。何か御主人様って五人の間じゃ一番とろいし」
「大丈夫なのかな、これで」
「先生は大丈夫だって言ってくれてるよ」
けれど赤音はへこたれてはいない。
「魔法のセンスは充分にあるからって」
「確かに光の魔法は上手いかもね」
「うん」
二匹の使い魔はそれを聞いて頷き合った。
「箒で飛ぶのも上手だし」
「運動オンチなのにね」
「飛べればいいのよ、飛べれば」
「けれど今回の追跡にはちょっとね」
「そうしたこととか鋭いものとか身に着けて欲しいな」
「まあそのうち」
「やれやれ」
二匹は溜息をつきながらも尾行を続けた。結局今のところは何も怪しいところはなかった。だがふと赤音の足が止まった。
「どうしたの?御主人」
「隠れて」
「う、うん」
二匹はそれに従い赤音のフードの中に隠れた。赤音も物陰に隠れている。
「何かあったの?」
「見て」
そして姉を指差して言う。そこには葵と友人達、そして新しい女の子達が向かい合っていた。
「何、あれ」
「わからない。とりあえずは仲いいみたいだけれど」
見れば楽しそうに話をしている。喧嘩やそういったものではないようだ。
「けれど何かおかしいね」
「うんうん」
ジップとハリーは顔を見合わせて頷き合った。
「何かありそう」
「何か」
赤音はそれを聞いて言った。
「待ち合わせしていたみたいだけれどね」
「問題は何の為よ」
二匹は主の耳元で言う。
「気を着けてね、御主人様」
そして赤音にも言う。
「遂に、かもよ」
「ええ」
赤音はその言葉に頷いた。そしてじっと姉を見ていた。
第九十一話 完
2006・2・21
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