犬猿の仲
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第一章
犬猿の仲
大溝幸男は自分達の番組の会議の時にだ、ディレクターとしてこうしたことを言った。
「やっぱりうちは動物番組だからね」
「はい、動物をもっとですね」
「出すべきってことですね」
「何か最近ね」
どうもとだ、大溝は眼鏡をかけた顔で言ったのだった。
「マンネリっていうかね」
「動物が出てませんね、前に」
「タレントさんのコメントに比重がいっていて」
「もっと動物を出す」
「そうしていくべきですか」
「そうしよう、それで考えたんだけれど」
腕を組みつつ言う。
「動物の諺あるよね」
「はい、色々ありますよね」
「猫の額とか」
「あと鳩が豆鉄砲とか」
「豚に真珠とか」
「馬の耳に念仏とか」
「そう、実際に動物は諺通りか」
それをというのだ。
「実証するコーナー置こうか」
「そうですね、じゃあ」
「やってみます?」
「動物は本当に諺通りか」
「そうなのかを」
「それをやろう」
大溝のこの提案にだ、スタッフ達も頷いてだった。
番組の中で実際に諺コーナーが設けられた。そしてそのコーナーの中で動物達は実際に諺の通りなのか検証された。
このコーナーは好評でだ、番組もだった。
「視聴率上がってきてますね」
「いい感じに」
「勉強になるし面白いって評判ですよ」
「ネットでも宣伝されてますしね」
「ああ、当たったな」
提案した大溝もだ、微笑んで言った。
「これならいいな」
「はい、それじゃあですね」
「これからも諺コーナーやっていきますか」
「そうしますか」
「そうしよう、タレントさん達からも評判がいいしな」
出演者である彼等からもというのだ。
「タレントさんのトークに頼るよりも」
「動物番組ですからね」
「何といってもですね」
「動物を前に出す」
「そうしましょう」
「よし、それでな」
ここでだ、大溝は笑ってスタッフ達に言った。
「今度の諺コーナーはな」
「はい、何の諺でいきますか?」
「それで」
「犬猿の仲でどうだ?」
会議の場でだ、彼は言った。
「これで」
「ああ、あの諺ですか」
「あれを検証しますか」
「仲が悪いっていうな」
その犬猿の仲という諺の意味はだ。
「よく」
「それの代名詞ですね」
「今でもよく使いますね」
「犬猿の仲っていうと」
「本当にお互い嫌い合っていて仲が悪い」
「そうなんですね」
「そう、しかもな」
大溝はここでこんなことも話した。
「猿と河童も仲悪いんだよ」
「へえ、そうなんですか」
「猿って河童とも仲悪いんですか」
「そうなんですね」
「熊本で河童が大勢で悪さをしまくっていてな」
昔の話もするのだった。
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