遠吠え
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第三章
「一つ問題があるな」
「ああ、帰り道な」
「最近山の上の方がぐらぐらしてるな」
「落盤あるかもな」
「それが気になるな」
「それには気をつけないとな」
その落盤にというのだ。
「帰り道に上から岩が落ちてきてなんてな」
「洒落にならないからな」
「熊とかオオヤマネコに返り討ちに遭うのもあれだがな」
「落盤はもっとだからな」
それで死にたくはないというのだ。
「そんなことで死んでたまるか」
「落盤にも注意だな」
「出来たら上に登ってあの岩何とかしたいな」
「そうもしたいな」
「そうだな、まあとにかくな」
また言ったオーフェンだった。
「村までまずは肉持って帰ろうな」
「それから毛皮だな」
「あと保存用に干した肉とかもな」
「これで随分違うぞ」
「暫く食うのには困らないな」
笑って話す、そしてだった。
彼等は実際に肉を持ってだ、彼等の村に帰った。だが。
その帰り道、横に山がありその上の岩がぐらぐらしている場所を通る時には。
もう夜になっていた、その時にだ。またあの声が聞こえてきた。
「コヨーテか」
「まただな」
「今夜もなんだな」
仲間うちで言うのだった。
「鳴くか」
「遠吠えか」
「?」
ここでだ、オーフェンは。
不意にだ、仲間達の話を思い出した。迷信だと馬鹿にしたが。
それでもやけに気になってだ、こう仲間達に言った。
「おい、急ぐか」
「急ぐ?」
「何でだ?」
「それか道を端に寄ろう」
こうも言ったのだった。
「そうして帰るぞ」
「おい、どうしたんだ」
「いきなりそんなこと言って」
「一体どうしたんだ」
「急にそんなことを言い出して」
「何か気になってな」
眉を顰めさせての言葉だった。
「それでだよ」
「何かわからないが」
「急ぐべきか」
「それか端に寄ってか」
「そうして帰るべきか」
「ああ、そうしような」
こう言ってだ、左手に山があるその道をだ。狩人達は急ぐことにした。しかもその端を進んでいった。
そうして村に向かって帰っているとだ、不意に。
彼等の後ろにだった、轟音を立てて岩が落ちた。
その岩を見てだ、オーフェンは言った。
「急いでなかったらな」
「おい、何だよ」
「山の方から落ちてきたぞ」
「あれか、上でぐらぐらしてた岩か」
「それが落ちてきたんだな」
「そうみたいだな」
オーフェンは仲間達と共にその岩を振り返りながら言った。
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