バレリーナ
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第二章
それでだ、こう俺に言うのだった。
「甘いものもお酒も脂の多いお肉もね」
「全部駄目だな」
「そう、お野菜とか鶏肉とかお魚ね」
「栄養管理もしっかりしないといけないか」
「それがバレリーナなのよ」
「何でもしないといけないからな」
「さもないと舞台に立てないわ」
また俺にこう言った、汗を流しつつ。
「だからね、それでね」
「汗を流してシャワーを浴びてか」
「御飯を食べてね」
「すぐに寝るな」
「じっくりと寝て身体の休息も取らないと」
そのことをしなくてはいけないというのだ。
「駄目だからね」
「何でもかんでもだな」
「そう、節制しないといけないのよ」
「修道院の坊さんだな」
本当にそれだ、それかボクサーだ。とにかくレッスンに食事制限にだ。バレリーナはとにかく全てをバレエに向けている。
そうしないとやっていけない、だから家でもそうでだ。その日の夜を過ごしてから。
俺は朝起きてだ、彼女が作った野菜と牛乳がメインの食事を摂りながら一緒に食べている彼女に尋ねた。
「それで今度の舞台は何だ?」
「歌劇に出るの」
「そっちか」
「アイーダね」
「第二幕だったな」
俺も歌劇は好きなので知っていて応えた。
「勝って帰った時だったな」
「そう、あの時にね」
「出るのか」
「バレエの一人でね」
「そうか、頑張れよ」
「舞台観に来てくれるかしら」
「ああ、最近忙しいけれどな」
それでもとだ、俺は彼女に約束した。
「そうさせてもらうな」
「それじゃあね、来てね」
にこりと笑ってだ、俺に言ってくれた。そして仕事に行くとだ。
俺にだ、皆は笑って言って来た。
「彼女舞台に出るんだよな」
「アイーダに出るんだって?」
「やっぱり彼女観に行くよな」
「そうするよな」
「ああ、行くよ」
俺は皆に素っ気なく答えた。
「彼女にも約束したよ」
「そうか、やっぱり行くよな」
「彼女の舞台だしな」
「出ない訳にはいかないよな」
「当然のことだよな」
「バレリーナが彼女だと」
ここでまた彼女がバレリーナであることが言われた。
「いいよな、そうした楽しみもあるから」
「やっぱり行くよな」
「行かない訳がないな」
「そうだよな」
「まあそれは」
実際にとだ、俺も答える。
「当然だよ」
「バレリーナだとな」
「こうした楽しみもあるしな」
「いいよな、彼女がバレリーナだと」
「舞台を観るのも違うな」
「まあね」
俺は素っ気ないまま答えた、そしてだった。
彼女への話はいつも通り返して仕事をした。仕事の後で舞台に行くと。
彼女は第二幕、勝利の凱旋の時に踊った。出たことは出たが賑やかな数分位だった。それが終わると後は出番がない。
けれどだ、その舞台の後でだった。
彼女は家に帰ってだ、笑顔で俺に言った。
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