英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第69話
~東クロスベル街道・ボート小屋・奥地~
「くっ……さすがに手強かったな。」
戦闘を終えたロイドは唇を噛みしめ
「それにやっぱり……不思議な消え方をしたわね。」
エリィは不安そうな表情で呟いた。
「ティオちゃん、”場の歪み”の方は?」
「……駄目です。上位三属性が働いたままです。」
ノエルに尋ねられたティオは疲れた表情で答えた。
「ったく……いったい何が原因なんだ?」
「どうやら”幻獣”そのものが原因じゃなさそうだけど……」
「後はもう一方がどうなっているかだが……っと。」
ランディとワジの話を聞いたロイドが厳しい表情をしたその時、ロイドのエニグマが鳴りはじめ、ロイドは通信を開始した。
「はい、特務支援課、ロイド・バニングスです。」
「―――俺だ、リィンだ。先程幻獣の討伐を終えた所だ。」
「そうか。こちらも今討伐を終えた所だ。……ちなみに”場の歪み”に関してはどうだ?」
「それなんだが……不思議な事があってな。」
「不思議なこと?」
「ああ。幻獣を討伐した後も上位三属性は働いていたんだが……たまたま目に入った蒼い花をシャマーラが何かの材料代わりにと摘んだら、突如空間が歪んだ感覚した後光は消え、さらに上位三属性の働きも消えたそうだ。」
「蒼い花…………………――――あれか。」
通信相手―――リィンの報告を聞いたロイドは周囲を見回し、不思議な光を放ちながら咲いている蒼い花を見つけた。
「そちらにもあったようだな。……今から俺達は他の支援要請の片づけを始めようと思っているが、どうすればいい?」
「わかった。そのまま支援要請の片づけを始めてくれ。何かわかったら連絡する。」
「ああ。」
そしてロイドは通信を終えた。
「誰からだったのかしら?」
「リィンだ。彼らもさっき幻獣を倒したらしくて――――」
通信を終え、尋ねてきたエリィに答えたロイドは仲間達にリィンから聞いた話を説明した。
「それは……」
「やってみる価値はありそうですね……」
説明を聞いたランディは目を細め、ティオは真剣な表情で言った。
「ああ。」
そしてロイドは仲間達と共に蒼い花に近づいて、花を摘み取ろうとしたその時、花は不思議な光を放った!
「な、なんだ!?」
「これは……!」
「くっ………!」
光り始めた花を見たランディは戸惑い、ティオとロイドが驚いたその時蒼い花は光を放った後、空間を一瞬歪ませた後そして光は消えた。
「………………………」
ロイドは光が消えた花を見つめ
「い、今のは……」
「何か空間が揺らいだような……」
ノエルは戸惑い、エリィは考え込み
「……ティオ。”場の歪み”の方は?」
「……上位三属性の気配が消滅しました。既にこの一帯に異常は感じられません。」
ワジに尋ねられたティオは黙り込んだ後答えた。
「そうか……」
「ちょ、ちょっと待て。まさかその蒼い花が本当に異常を引き起こしてたのかよ!?」
「まあ、そう言う事だろうね。……そのちっぽけな花程度にそんな力があるとは思えないけど。」
「し、信じられない……」
「い、いったいどういう花なんでしょうか?」
「……もう、その花からはおかしな気配は感じませんが……とりあえずどこかで調べてもらった方がいいのでは?」
「そうだな……医科大学あたりもちょっと専門が違うだろうし。かと言ってリィンの話からするとセティ達も知らない様子だったし……」
ティオの提案を聞いたロイドは考え込み
「と、とにかく失くさないよう保管しておきましょう。心当たりが見つかったら調べてもらえばいいじゃない?」
「ああ、そうするか。」
エリィの提案を聞いて、ロイドは蒼い花を袋に入れて懐に入れた。
「……ふむ……」
「ワジ……?」
「何か心当たりでもあるの?」
「いや……僕のウロ覚えかもしれないけど。教会の聖典に、不思議な蒼い花の言い伝えがあった気がする。」
「えっ……!?」
「おいおい、マジかよ!?」
ワジの言葉を聞いたロイドとランディは驚いた。
「いや、大分前に流し読みした時に見かけた気がするんだけど……エリィとか心当たりはないかい?」
「私もさすがに聖典の全てに目は通していないけど……でも、確かにそんな下りを読んだ気がするわ。不思議な力を持っているという『蒼き花』の言い伝えを……」
「そ、それって……ビンゴなんじゃないですか?」
「少なくとも教会関係者に確認する価値はありそうです。」
「……そうだな。マーブル先生かリースさんのどちらかに相談してみるか。」
「そうね……どちらも適任だと思うわ。」
「おーし、そんじゃあクロスベル大聖堂に向かうか!」
その後ロイド達はクロスベル大聖堂に向かった。
大聖堂を尋ねたロイド達はまず、ロイドやエリィにとっては顔なじみのシスターを尋ねたが、シスターは日曜学校の授業をしていたため、事情は聞けず、教室の前で待っていたロイド達に声をかけたエラルダ大司教に事情を話し、その時にエラルダ大司教が自分も聖典に載る植物を知っているので、よければ話を聞くという好意をもらったため、ロイド達は好意に甘えてエラルダ大司教に話を聞く為にエラルダ大司教がいる部屋に向かった。
~夕方・クロスベル大聖堂~
「―――失礼します。特務支援課の者です。」
「ああ、入りたまえ。」
エラルダ大司教の許可を聞いたロイド達は部屋に入ってきた。
「ふむ、話を聞こうか。聖典に載っているという植物のことだとか?」
「いえ、まだそうだと決まったわけではありませんが……」
「まずは、これまでの経緯を一通りお話しします。」
そしてロイド達はエラルダ大司教に事情を話した。
「……時、空、識の気配に不可思議なる魔獣……」
事情を聞いたエラルダ大司教は考え込んだ。
「その、以前報告させて頂いた塔や僧院の魔獣とも違っていて……」
(あ、そういえば……)
(前に教会に相談してみるって言ってましたよね。)
ノエルの言葉を聞いたロイドとティオはある事を思い出し
「………………………その花というのは今、持っているのかね?」
エラルダ大司教は黙り込んだ後尋ねた。
「あ、はい。光は失われていますが……」
尋ねられたロイドは答えた後エラルダ大司教の前に蒼い花を置いた。
「!!!……これは……」
するとその時エラルダ大司教は目を見開き、信じられない表情をし
「ひょっとして……」
「やはり何か心当たりが!?」
エラルダ大司教の反応を見たロイドは真剣な表情になり、ノエルは尋ねた。
「………――――いや。残念ながら、心当たりはないな。」
しかしエラルダ大司教は予想外な答えを言った。
「ええっ!?」
「おいおい!そりゃねえッスよ!?」
答えを聞いたロイドは驚き、ランディは目を細めて声を上げ
「どう考えても心当たりがありそうな反応でしたが……」
ティオはジト目でエラルダ大司教を見つめて言った。
「無いものは無いだけだ。……こちらから誘って何だがお引き取り願おうか。これでも忙しい身なのでな。」
「そ、そんな……」
「ああ、シスター・マーブルに聞いたところで無駄だぞ。博識な彼女であってもその花のことは知らぬはずだ。逆に、もし知っていればいささか問題になるのだがな。」
「そ、それって……」
エラルダ大司教の話を聞いたノエルは言い辛そうな表情をし
「……どう考えても知ってる前提の発言だよね?」
ワジは口元に笑みを浮かべて尋ねた。
「どういわれようとも私の答えは変わらない。たとえ警備隊のギュランドロス司令やソーニャ副司令が直接、訪ねて来ようともな。」
「くっ……」
エラルダ大司教の話を聞いたロイドは唇を噛みしめ
「……だったら……私の知るそういう事を知っていそうな、七耀教会の神父の方をこのクロスベルに呼んでもらってもいいですか?その人は普通の神父の方と違う方ですから、大司教が知らない事も知っているかと。」
ティオは静かな表情で言った。
「ほう……?一体誰かね。」
ティオの言葉を聞いたエラルダ大司教は興味深そうな表情をしたが
「――――”外法狩り”。大司教でしたらこの異名に心当たりがあるのでは?」
「!!!」
真剣な表情で言ったティオの言葉を聞いて目を見開き
「げ、”外法狩り”……?」
「何だか物騒な異名だな…………」
「とても神父とは思えない異名ですよね……?」
ロイドは戸惑い、ランディは目を細め、ノエルは不安そうな表情をし
(まさか…………)
(やれやれ……よりにもよって大司教の前でその異名は禁句だよ……)
ある事に気付いたエリィは真剣な表情になり、ワジは疲れた表情になっていた。
「……………なぜ、その者の事を知っている。」
一方エラルダ大司教は厳しい表情でティオを見つめて尋ね
「昔、お世話になった事がありますので。――――”影の国”で。大司教でしたら、”影の国”の事も”星杯騎士団”か”封聖省”から報告が来ているのでは?」
尋ねられたティオは静かな表情で答えた後、尋ね返し
「……………………………」
尋ね返されたエラルダ大司教は重々しい様子を纏い、そして厳しい表情で黙り込んでティオを見つめた。
「せ、”星杯騎士団”!?」
「じゃあ、その”外法狩り”の異名ってまさか………」
一方ロイドは驚き、エリィは真剣な表情でティオを見つめ
「―――はい。”守護騎士”第五位の方の異名です。名前は明かせませんがその方と行動を共にした事があるんです。」
見つめられたティオは真剣な表情で頷いた。
(………”影の国”……という事はあの写真の中にいるという事だけど……まさか、ティオが行動したという”守護騎士”はケビン神父なのか……?)
ティオの答えを聞いたロイドは真剣な表情で考え込んだ。するとその時
「――――駄目だ。”星杯騎士団”に……よりにもよって”外法狩り”にクロスベルの土を踏ませる等、断じてならん。」
エラルダ大司教は厳しい表情でティオを睨みつけて言った。
「……それはあの人の”仕事”が関係しているのでしょうか?確かに聖職者とは言い難い”仕事”をしているようですが、今はそんな事を気にしている場合ではないかと思いますが。このまま状況をほおっておいたら、いずれ”幻獣”の被害者が出てくるかもしれませんし。」
そしてティオは話を続けたが
「……君は奴や”星杯騎士”の危険性や闇の深さを知らないのだから、そんな事が言えるのだ。―――とにかく奴を含め、”星杯騎士”をクロスベルに呼ぶ事等、絶対に許さん。お引き取り願おうか。」
エラルダ大司教は厳しい表情でティオを睨んで言った。
「……そろそろ失礼をしましょう。あまり長居をしていても失礼だわ。」
エラルダ大司教の様子を見たエリィはロイド達に言い
「ああ……それでは俺達はこれで失礼します。」
「うむ、悪く思わないでくれ。」
エリィの言葉にロイドは頷いた後エラルダ大司教に軽く頭を下げ、仲間達と共に退室した。
「オイオイオイ……ちょいとばかり意地悪すぎやしねぇか?」
「しかも私情に走っていた部分がありましたね。あれで大司教とは聞いて呆れます。」
部屋を出て、廊下で立ち止まったランディは目を細め、ティオは呆れた表情で言い
「せ、先輩……ティオちゃん……」
二人の言葉を聞いたノエルは言い辛そうな表情で二人を見つめた。
「ただ、後ろめたい雰囲気は特にありませんでしたね。まるで私達に隠すのが正しい事だと思っているような……」
「……恐らく何らかの禁忌があるんだろうな。それもマーブル先生が知らないほどの禁忌が……」
「やれやれ、そんな風に言われると余計に知りたくなるだけだけどね。こうなったら、いっそティオに頼んでその”外法狩り”とやらにこっそりクロスベルに来てもらうか、外国で落ち合って事情を話すというのはどうだい?」
ティオやロイドの話を聞いたワジは静かな笑みを浮かべてティオを見つめ
「無茶言わないで下さい。第一あの人との連絡方法なんて、知りませんし。」
見つめられたティオはジト目で答えた。
「そういや”外法狩り”だったか?一体どんな事をしている神父―――星杯騎士なんだよ?」
「それは………」
そしてランディに尋ねられたティオが言い辛そうな表情をしたその時
「―――『星杯騎士・心得六箇条』……『外法、滅すべし』……”外法狩り”はその心得を率先して引き受けていたのです。」
聞き覚えのある女性の声が聞こえ
「え……」
声を聞いたロイドが驚いたその時、リースが反対側の扉から姿を現した。
「貴女は……」
「リ、リースさん……?」
リースを見たロイドやエリィが戸惑いの表情を見せたその時
(シッ、お静かに……このまま礼拝堂を出て寄宿舎まで来てください。)
リースは小声で言った後その場から去って行った。
(ど、どうします……?)
(彼女は確か『星杯騎士団』の関係者という話だな……とにかく行ってみよう。)
(ええ、それがいいわ。)
その後ロイド達は大聖堂の近くにある寄宿舎に向かった………
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