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ソードアート・オンライン stardust=songs

作者:伊10
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アインクラッド篇
movement Ⅲ 迫り来る狂気の行進曲
  剣聖の怒り

 
前書き
さくさく進みまーす。 

 
フィールドに出てすぐ、最初のモンスターとエンカウントした。別にそのこと自体はなんの事はない、ごく自然なことなのだが………





「ぎゃ、ぎゃああああああ!?な、なきこれーーーー!?気持ちワルーーー!?」

シリカの叫びが木霊する。

「や、やあああ!!来ないでーー!!」

エンカウントしたモンスターは《サンフラワー・マンイーター》。ひまわりみたいな花に口がついていて、にゅるにゅる触手が伸びている人食い花だ。

うーん、女子にはやっぱり厳しいかな?ソラもはじめてここに来た時は似たようなことしてたし。

「大丈夫だぞー。その花の下のちょっと太くなってるトコ落とせば一撃で……」

「気持ち悪いんですーーー!!」

うん、気持ちは分かる。だけどここを越えないと―――――

「そいつで駄目ならこの先大変だぞー。花が沢山ついた奴とか食虫植物みたいなのとか、ぬめぬめの触手が山ほど生えた奴とか……」

「いやあああああ!!!」

おい、キリト。事実だがここで言ったら最悪だろうか。ほら、めちゃくちゃにソードスキル繰り出して捕まっちゃってる。ああ、駄目だ。逆さまに吊るされて………ん?逆さま?

逆さまにされるということは重力が頭の方に働くということ。そして今シリカはスカートを履いている訳で………

そこまで考えて俺は後ろを向いた。このままだと非常に良くない状況になる。キリトだけならいい感じのちょいエロイベントで終わるんだろうが俺は駄目だ。

「あ、アマギ………」

「さーて、他のモンスターが寄ってくるっぽいからなー。ちょっと一掃してくるわー。」

「あ、オイ!」

スタコラサッサと逃げ出す俺の背後で、モンスターの断末魔と微妙な沈黙が訪れた。





シリカsight

もうすぐ思い出の丘の頂上につく。どうにか無事に着けそうだ。途中イソギンチャクみたいなモンスターの触手にぐるぐる巻きにされた時は死ぬかとおもったけど。

それにしても、キリトさんもアマギさんも強い。特にアマギさんなんか、道中めんどくさいからとか言って、エンカウント前のモンスターを索敵スキルで捉えては投げナイフで仕留める、という事を繰り返していた。しかもどれもが見たことも無いような高位ソードスキルばかりだ。

マナー違反と知りつつ投剣スキルの熟練度を聞くと、あっさりとマスターしているという返答があった。メイン武器以外のスキルをマスター、それも投剣なんてマイナー武器。相当余裕があるのだろう。ひょっとしたらこの二人は………

「お、着いたっぽいな。」

アマギさんの声で我に返る。確かに丘の頂上だ。

「情報だと、そこの岩の天辺に生えてるらしい。」

キリトさんの言葉に、思わずその岩に駆け寄る。が、

「え?」

どこを見ても花などない。ただ苔のような物が覆っているだけだ。

「そんな………。」

もしかして情報が嘘だった?そしたらピナは?助からないの?

「おいおい、早とちりすんなって。」

「え?」

アマギさんの言葉にもう一度岩を見る。すると、苔むした岩から細い茎が伸び始めていた。みるみる育って蕾をつけたそれが開く。白い、小さい花だ。

「そいつがプラウネの花だ。花の中の雫を心アイテムに掛けると蘇生できる。」

「此処は強いモンスターが多いからな。街に戻ってからにしよう。」

「っ……………ハイ!」

涙ながらにそう答え、二人の後をついていった。

帰りはエンカウントをなるべく避け、大体四十分くらいで丘の麓の橋に着いた。そんなとき、キリトさんとアマギさんが互いの顔を見合わせた。

「いるな。」

「ああ、いる。」

「橋の前、か。どうする?向こうを待っても良いけど。」

「いや、それだと色々めんどくさそうだ。」

「じゃ、」

「おう。」

何やら二人の間で話が纏まったようだ。と、キリトさんが一歩前にでて大声で近くの木陰に話しかける。

「そこにいる奴。出てこいよ。」

そこにいる?どういう意味だろう。

首をかしげていると、木陰の空間が一瞬揺らいだ。かと思うと、女の人が一人、突然姿を表した。その人は私も知っていた。

「ロザリアさん!?」

革の軽装鎧を装備し、十字槍を携えたその女性は、間違いなくロザリアさんだ。

「あら、私の隠蔽スキルを見破るなんて、中々の索敵スキルね。」

隠蔽(ハイディング)?なんでこんなところで。これじゃあまるで―――待ち伏せみたいな………。

「その様子じゃ、首尾良くプラウネの花をゲットできたみたいね?」

そう言うとロザリアさんは、獲物を値踏みするような、気味の悪い目で私たちを見た。

「じゃ、早速渡して頂戴。」

「な!?」

何を言ってるんだろう?そんな………出来るわけが!

「ああ、別にくれなくてもいいわよ。殺すだけだから。」

殺す?その言葉を裏付けるように付近の森から沢山の男性プレイヤーが出てくる。その数、およそ30人。

「……全く随分とまあ、有象無象をかき集めたもんだなぁ?ええ?オレンジギルド《タイタンズハンド》のリーダー、ロザリアさんよぉ。」

オレンジギルド!?アマギさんがさして慌てもせずにいい放つ。でも、ちょっと待って。

「ロザリアさんはグリーンなんじゃ……」

「オレンジギルドと言ったって、全員オレンジじゃない場合も多いんだ。グリーンのメンバーが街で獲物を見繕い、圏外に誘きだして殺す。」

「ふーん。良く知ってるじゃない?ならなんでその子についてきたの?バカなの?それとも………体でたらしこまれた?」

「そんな事……!!」

してません!そう言う前にキリトさんに遮られた。

「用が有るのはこっちだったからな。正確にはソイツだけど。」

そう言ってキリトさんはアマギさんを指差す。

「ああ。あんたら、ついこないだ、シルバーフラグスってギルド襲ったろ?そんでギルドリーダー以外を全員殺した。」

「あー、あの貧乏な連中ね。覚えてるわ。大して強くもないくせに、リーダー逃がそうと必死になってねぇ。」

あれは傑作だったと笑うロザリアさん。それを聞いていて、恐怖よりも怒りが湧いてきた。

「そのリーダーがね、俺のトコ来たんだよ。すがり付いて、土下座して、大泣きしながらさ。」

「………へーぇ。それで?私たちを殺せって?」

「いや、アイツはあんたらを牢獄へ送ってくれって。わざわざ回廊結晶まで用意してな。その思いがお前にわかるか?」

「分からないわよ。バカじゃない?私、このゲームにそんなつまらないルール持ち込む奴が一番嫌い。」

「そうか。因みに俺はお前みたいなのが一番嫌いだ。」

「あっそ。あんた達、殺っちまいな。」

その言葉に、男達が一斉に襲いかかった。

「アマギさん!!?」

たまらず声を掛ける。かくなる上は、私一人加わった所でどうにかなるとは思えないけど。

短剣を引き抜き、せめて加勢しようとする。しかし、隣のキリトさんが私の肩を掴んで引き留めた。

「離してください!アマギさんが!!」

「心配いらないよ。」

「え………?」

「アイツをどうにかするには………そうだな、フロアボスでも連れてこないと。」

その瞬間、男達の咆哮と共に、アマギさんに武器が振り下ろされ…………破砕音とともに全て砕け散った。

「…………は?」

先頭の男がようやくそれだけ絞り出す。誰も言葉を発しない―――発せない中で、アマギさんの圧し殺した声が届いた。

「お前らみたいな、殺すだけ殺して、その事実にまともに向き合わない奴等が、一番嫌いなんだよ!!」 
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