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暁ラブライブ!アンソロジー【完結】

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そうなんです 【名前はまだ無い♪】

 
前書き
今回は別のサイトで『ア二ライブ!』等を書いている名前はまだ無い♪さんです。テーマは『バッドエンド』。閲覧の際はご注意ください。





どうも初めまして。別サイトで活動中の名前はまだ無い♪と言います。どうぞよろしくお願いします。
さて、今回は以前執筆したものを少し改変してみました。楽しんで頂けたら幸いです。
 

 
ピチョーン、ピチョーン

 そんな水の滴る音で花陽は冷たい床の感触とともに意識が覚醒する。そして辺りを見渡そうとするとジャラリ、と首元から金属音が聞こえた。

「え……これ何?」

 花陽が首に手を置くと、首輪とそこから伸びる一本の鎖があった。その鎖は壁際に立てられている鉄柱と壁の間を通り、さらにその鎖の先を見ると

「り、凛ちゃんが……なんで……」

 花陽が口に手を当て驚いていると、横になってる凛が身動ぎをする。凛の動きに合わせて花陽同様に首に繋がった鎖が金属音を奏でる。

「ぅう……かよちん? ここどこにゃ? それにこれ」
「凛ちゃん、私もさっき目が覚めたばかりで……」

 凛が自身と花陽を繋いでる鎖を見て花陽に聞くも、花陽自身も鎖に繋がられた理由が分からない為、答える事が出来ない。
 その時、反対側の壁の上部に取り付けられていた小型モニターの電源が入った。

『おはよう。ようやく起きたようだね』

 画面に映し出されたのはひょっとこのような仮面を被った人物だった。声もボイスチェンジャーで変えているのか、二人には性別すら分からなかった。

「だ、誰にゃ! 一体なんで凛達にこんな事をするにゃ!」
『それは二人が知らなくて良い事だよ』

 凛が詰め寄るように画面の向こうの仮面に聞く。仮面の人物がその質問には答えず、それより、と凛の隣にいる花陽を見るように首を僅かに動かす。

『そっちの彼女、良いのかい?』
「一体何を言って……かよちん!」

 仮面に言われ凛が後ろを振り向くと、最初にいた場所よりも後ろの場所で花陽は苦しそうに首に手を当てていた。凛は慌てて花陽に駆け寄ると花陽はその場にしゃがみ込み、深呼吸を繰り返す。

『そうそう。二人のポケットにちょっとしたプレゼントを入れておいたから。それとその首輪、ちょっとした仕掛けがあるから頑張ってね』

 仮面がそれだけ言うとプツッと画面が暗くなる。

「ポケットにプレゼント……?」
「それに首輪に仕掛けって……」

 画面が暗くなって少し、二人は仮面の人物の言った言葉を呟くとポケットに手を入れる。そして二人が同時にポケットから手を出すと、その手に握られていたのは一振りのナイフだった。

「凛ちゃん、これって……」
「ナイフ、だよね……」

 二人は出てきたナイフを震える手で見つめる。取り敢えず、とナイフをポケットに仕舞い、二人は首輪の方を見始める。

「ね、ねぇかよちん。どうなってる?」
「えっとね、タイマーが設定されてる。時間は残り100分くらい」
「なんのタイマーかな……?」

 凛も花陽の首輪を見ると同じようにタイマーが設定されていた。それから今度は部屋を見渡す。すると凛が小型モニターの下に設けられている机に目が行く。

「かよちんあそこにあるのって」
「え? もしかして鍵?」
「多分。でも届くかな?」

 凛が見つけた机の上にはポツンと鍵が一つ置かれていた。しかし、机の置かれている場所までは鎖で繋がられている為、二人で行くことは出来ない。

「私がギリギリまで下がるから、凛ちゃん取って来て」
「良いの……?」
「うん。私よりも凛ちゃんの方が運動できるんだもん」

 花陽が頷くと凛も頷き返し、花陽は鉄柱の方へ凛は机の方へそれぞれ歩き出す。そして机まであと少しという所で凛の首輪が後ろに引っ張られる。

「あと……少し……!」

 凛はあと少しで届く机に腕を伸ばすも、僅かに届かない。

「かよちん、もう少し……あとちょっと」

 凛が振り返って花陽に言うも、鉄柱に止められ苦しそうに首を抑えている花陽を見て慌てて駆け寄る。凛が戻ると同時にその場に倒れ咳き込む花陽。

「ごめんねかよちん! 大丈夫!?」
「ゲホッゲホッ……う、うん大丈夫。それより鍵は……?」

 花陽の質問に凛は首を横に振って答える。

「あともうちょっとなんだけど、届かなかったにゃ……」
「そっか……じゃあ動ける範囲で何かないか探そっか」

 花陽の提案で二人は動ける範囲で部屋中を探し回るも、特にこれと言った手掛かりは見つからなかった。

「あ、かよちん。タイマーがもう30分きってるにゃ」
「えぇ!?」

 ふと首輪のタイマーを見ると時間が半分経過していた。その時、再び小型モニターの電源が着く。

『困ってるみたいだね』

 画面に映ったのは先程と同じ仮面の人物だった。凛は仮面をキッと睨み付ける。

「あなた一体誰! どうして凛達にこんな事するの!」
『それはまだ答えるわけにはいかないよ。っとこんな事を話す為に来たんじゃなかった』

 仮面は首を振ると話を続ける。

『二人ともタイマーの意味を分かってないみたいだから教えてあげるよ。その時間が0になると首輪に仕込まれた爆弾が爆発するんだ』
「ば、爆弾!?」

 仮面の言葉に花陽は驚きの声を上げ、凛は首輪に手を当てる。

『解除する方法は二つ。首輪を開錠するか、時間が来て爆発するか。二人の好きな方を選びなよ。もう一つ方法があるけど、それは10分前に教えてあげるね』

 それだけ言うと再び画面が暗くなる。それから二人は首輪に手を当て、目を合わせる。

「ね、ねぇ凛ちゃん。爆弾って本当、かな」
「分からない……けど」
「けど?」
「本当だったら凛達死んじゃう、んだよね」

 首輪のタイマーの表示されている場所を手で押さえる。花陽もそれにつれられ首筋へと手を伸ばす。手にはヒヤリとした鉄の感触。

「これ、どうすれば良いのかな……」
「やっぱり鍵を取るしか……」

 花陽が不安気に凛を見ると、凛は遠くにある机とその上にポツンと置いてある鍵を見る。 花陽も凛につられて鍵を見る。

「でも、さっき届かなかったんだよね……」
「うん……部屋の中にも特に何もなかったし」

 凛は部屋を見回して再度、何か物がないか探す。凛が何かないか目を凝らしていると、突然隣からカチャリと金属音が聞こえる。音の元を見ると、花陽がポケットからナイフを取り出して構えていた。

「かよ……ちん……?」

 凛はナイフを構えた花陽を見て一歩後ずさる。そして自身のポケットに入ってるナイフに手を伸ばす。しかし凛がポケットからナイフを取り出すよりも早く、花陽のナイフが振り下ろされる。
 次の瞬間、花陽が振り下ろしたナイフは、二人を繋いでいる鎖に当たり金属音が部屋に響いた。
 凛が花陽の方を見ると、花陽が振り下ろしたナイフは二人をつないでいる鎖に当たり、止まっていた。

「もしかしたら切れるかもしれないから」
「凛も、凛も手伝うにゃ!」

 そう言うと凛も花陽に倣ってナイフで鎖に切りかかる。
 そして時間が経ち、残り時間が10分となった。その時再び画面が点く。

『爆発まであと10分になったよ。さっき言った通り、首輪を外す三つ目の方法を教えてあげるね。それはどちらかが死ぬ事。どちらかが死ねば、その場でタイマーは止まって首輪は外れる。まぁまた首輪を付けたら動き始めるけどね。そうそう。春人君、だっけ? 君達がそこいいる間、少し酷い目に遭ってもらっるから、彼を助けたかったら少しでも早くそこから脱出する事だね』

 画面が消えてから5分程粘るも、鎖は切れる様子がない。その様子に凛は諦めたように座り込む。

「かよちん、もう無理だよ……」
「無理じゃない。無理じゃないよ。頑張れば出来る!」

 花陽は凛を見ずに一心にナイフで鎖に切りかかりながら、励ます。しかしその手は続いた凛の言葉によって止められた。

「ううん、もう時間がないにゃ。だからさ、凛の最期のお願い聞いてくれる?」

 花陽は凛の言葉に嫌な予感を感じ、顔を上げる。花陽の目に映ったのは寂しそうに笑う凛だった。凛は表情を変えずに、震える手で持つナイフを首筋に当てる。

「凛……ちゃん……?」
「春君と幸せにね。バイバイ、かよちん」

 凛はそう言うと、手に持っていたナイフを地震の首筋に当て、スッと引く。切り口から鮮血が舞う。花陽は服が血で汚れるのも気にせず、徐々に冷たくなっていく凛の身体を抱きしめ、傷口を塞ごうとする。

「凛ちゃん! 凛ちゃん!」

 静かな部屋に花陽の悲痛な叫びが響き渡る。そんな中、カシャンと音とともに花陽の首輪が外れる。首輪のタイマーは残り数秒で止まっていた。それに合わせてモニターが点き、再度仮面の人物が映る。

『そっか凛ちゃんが自殺したんだね」

 今までの機会を通していた声とは違う、花陽のよく知る人物の声がスピーカーからから聞こえてきた。その声に花陽は涙でぬれた目を見開き、ゆっくりとモニターに振り向く。その様はまるで信じられない出来事に遭遇した人のそれだった。

「な……んで……」
『なんで? 何がなんでなのかな?』

 花陽は画面に映る仮面を外した人物に向けて、疑問の言葉を投げかける。花陽の振り向いた先、そこに映っていたのは先程「少し酷い目に遭っている」と言われた春人自身だった。

『あぁなんで僕がここにいるのかって事かな? それは簡単でね。僕が二人をそこに閉じ込めた張本人だからだよ』
「そんな……一体何の為に……」
『何の為? そんなの決まってる。僕は二人が好きだった。けど、二人同時に愛することは出来ない。なら、取れる方法は一つだけだった』
「それがこれなの?」

 花陽は春人から聞かされる事が信じられないのか聞き返すと、春人は黙って頷く。

「でもさっき酷い目に遭ってるって」
『そうだね。幼馴染みが苦しんでるのを見続けるって、僕は酷い目だと思うんだけど?」

 春人の言葉に花陽は信じられないものを見るように目を開く。春人はそんな花陽を無視して、画面の中で両腕を広げると嬉しそうに続ける。

『さぁ花陽ちゃん、おいで』
「……」
『花陽ちゃん……?』

 春人は俯いたまま動かない花陽に首を傾げる。花陽はそんな春人に何も返さず落ちた首輪を拾うと、それを自分の首に持っていく。その行動に春人は不思議なものを見るように花陽を止めようと声をかけるも、花陽はそれに耳を貸さずに首輪をつける。
 カシャン、という音とともに残り数秒のタイマーが動き始める。

「ごめんね凛ちゃん。お願い聞く事出来なかったや」
『花陽ちゃん何してるのかな?』
「春人君。私、今の春人君には着いて行けないや。だから、私はここでお別れだね。さよなら」

 花陽は画面に笑い掛けると首輪からピー、とタイマーの音が鳴り、部屋の中に小さな爆発音が響き、辺りに砂煙が舞う。
 煙が晴れた部屋の中にはバラバラになって原型が分からなくなったモノが部屋中に転がっていた。

『……』

 そんな惨状を見た春人は何も言わずに、ただ静かに画面の電源を消した。 
 

 
後書き
今回の内容は一部グロテスクなシーンがR-18にならない程度に入っています。ご注意下さい。
注意書きが遅いって?気のせいですよ。

さて、もう一度言います。
今回のお話、楽しんで頂けたら幸いです。
これから先の投稿者さん達はきっと、今回とは正反対のほのぼの物を書いてくれると信じてバトンをパスしたいと思います。

それではまたの機会があればお会いしましょう。
 
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