俺が愛した幻想郷
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俺は愛せる? 幻想郷...
吸血鬼ってこんなん?
第二十九話 式神パラダイス
前書き
俺愛の設定集が吹き飛んで泣きそうなどうもうp主妹紅です。
更新が遅れて、というか嘘ついてすみません。
紛れもなく、書く気がない状態が続いただけです。夏休みに入って、いつでも書けるとはや一週間のうp主妹紅です。
まぁ、要石に潰されてたんだとでも考えて多目に見てください。
ああここまで来るのに時間がかかった... 誰か書くスピードが上がるお札とか持ってないかな...
っとそんなことはさて置き、今回はね、頑張っちゃいました、いつも以上に。
個人的に面白くない話が続いてたのでね。
伏線も次話でどんどん回収しちゃいたいので、その辺も今話を通しての見所です。
ではでは本編を楽しんじゃってください。
本編、どぞ。
「久しぶりにゆっくりできてる気がする...」
今の状況を的確に説明するなら、湯気さんが張り切っている、だな。
なんだか凄いサバイバルをすることになりそうだったところを説得で止めさせ、昨日は霊夢の家にお邪魔したこともあり、少し早めに帰宅した俺、八雲琥珀。
自分の部屋に戻ることもなく、その足で八雲家の大浴場へ向かって今に至るのだ。
まるで俺が入ることを予想していたかのように丁度良く湯が張ってあったのでつい入ってしまった。明日にでも自分で掃除しておかなければ。
「なんっかこの二日で色んなことがあったなぁ...」
野生の幼女、ルーミアを発見したり、そのルーミアが本当は大人ですっげぇ綺麗だったり、魔理沙と弾幕ごっこして勝利も覚えて面白いことも発覚した。そんでもって知り合って日が少ないのに霊夢の家でお泊まりときた。
他にもいろいろあったが、まぁ、省略すると... ちょっと待てよ、働き者の湯気さんを見て一つ引っかかる記憶が出てきた。
「あの博麗ちゃんは本当に夢だったのか、それとも現実だったのか」
確かにあんなことはあるはずがない、しかも逆上せて目が覚めた。幻想の可能性が高いだろう。だが、あの妙にリアルな感覚はなんだ... 匂いも、物に触れる感覚も、湯気さんやお湯の暖かさの感覚だってあった。
博麗ちゃん... 見かけに寄らずおっぱ... いやなんでもない大きかったなぁ。
「熱いな」
自然と出たその一言と同時に湯船から出ようとする俺。それまた同時に、ガラガラという中折れドアの音が聞こえる。
これが所謂デジャヴと言われるやつだろうか...
素直に出れば良かったものの、俺は何を考えたのか湯気さんに身を任せ、咄嗟に広い湯船の角へ隠れた。
張り切り湯気さんの力は想像以上である。湯気から伝わる影しか見えない、が... 俺は直ぐにそれが誰だか理解した。
「藍さん...」
俺は聞こえぬよう小声でそう言った。
こんなに尻尾が揺れてるのとか藍さん以外にいないっすもん... 尻尾すっげぇデカいんっすもん...
影からでもわかる、藍さんのスタイルは完璧だ、出るとこは出て引いているとこは引いている... いや何をそんな... 最高です、ごちそうさま。
なんでだろう、なんか、プリン食べたい。物凄くプリンが食べたい。深い意味はない、別に藍さんの胸を見てそう思ったとかそんなことはない。
熱いから湯船から出ようと思ったのだ、そこでもう一度湯船に入って湯気に任せ隠れた。俺は今、ピンチということだ。いっそ前のように逆上せてしまうのもありかもしれないが... こちとら興奮してて意識はMaxでいろんなとこがピンピンしてんだ。
このままじゃ蒸発してしまう。かと言ってここで出たらバッドエンドな気がする。
「いや待てよ...」
冷静に考えてみろ、ここにいてバレないということは、少しくらい近づいたってバレないよな、俺は湯気さんを信じてるからな... 湯気さんは俺の味方だもんな、そうだよなっ!
「よいしょ〜♪」
しまったぁぁ! 冷静に考えるまでの時間が長過ぎた。そりゃそうだよな、そうなんだよ、"藍さんだって湯船入る"よぉ...
後ろから一息つく藍さんの声が聞こえる。それもかなり間近で。
今の状況を説明しよう。俺は藍さんに背を向けて座っていた、影を横目でチラチラ見ていたわけだが、つい先ほど藍さんは俺の背の方で座り出した。湯気さんの力は相変わらず凄く、気づかれていない、だがこちらは先ほどよりも鮮明に藍さんが見える。
近いとこにいる為、動いたら終わり、つまり先ほどの作戦はなかったことになる。
一言で、絶体絶命。
「ふぃ〜 やっぱりお風呂はいいものだなぁ〜♪」
くそっ! 可愛いなちくしょう。藍さんのこんな声聞いたことないぞ... やはり女の子は女の子なんだな... 魔理沙然り。
それにしても、これは天国なのか、地獄なのか。いろんなことがあったな、の記憶リストに上書きされてるぞ今のこの状況。
「そう言えばこはっちゃんまだ帰って来ないのかな」
ドクンと心臓が大きく反応して息が詰まる。
「昨日も帰って来なかったし... そう言えば、式神とは上手くやってるのかな」
式神... ああ、やはりあの子は式神か。あの飴を棒ごと食べる不思議な女の子のことだろう。あれ以来会っていないが...
「式神とは言え、式神のたまごなわけだ、しっかり主人に仕えれればいいのだが...」
式神のたまご? 式神になったばかりなのか? いやそもそも俺には式神がなんたるか知らないけど、今の言葉からするに主人に仕えるものみたいだな。
俺が主人ってことだよな、あんな紙渡してくるんだから。
「結構曰くつきな式神だからなぁ...」
式神に曰くつきとかあるのか。式神ってなんだ、本当に。
なんかこう、試験とかあるのか?
「あ〜 アイス食べたい。できればクリームがいい」
独り言多いなこの人。俺もそこそこ多い方だと自覚してるけど、それ以上だなこの人、いやこの狐、いや紫の式。
ああそう言うことか。式って式神のことで、主人に仕える、つまり藍さんは紫に仕えてるわけだ。式神にも式神は仕えるのか、橙は藍さんの式神だしな。
これ以上式神式神考えてると式神がゲシュタルト崩壊起こす。
「今日の晩御飯どうしようか。栗があったから栗ご飯にするか、納豆もあったな」
栗ご飯に納豆かけて食べるつもりかよ、どうなんだそこんとこ、いや美味いかも知れんけどさ。少なくとも俺は嫌だね、納豆も栗も好きだけど。基本嫌いな物ないけど。
考えたくないけど、アイスクリームにも納豆かけるんじゃないだろうか。トルコアイスになったとか笑い事じゃないからな。
「さて、そろそろ出るか」
よし、勝った。霊夢のお賽銭箱にあとでお金入れとこ。ああ、ラッキースケベも良いもんじゃないってことだ。
「あと百数えよう。橙に怒られてしまう」
可愛いなおいっ! っていうか橙は藍さんの式神だよな、やっぱこれ主従関係おかしいんじゃねぇかこいつら。つかやめてください死んでしまいますの。
「でもやっぱ熱いからいいや」
おう、早く出てください。丁度良くお風呂が沸いててそこにそそくさと入っていった俺が悪いですけども。
ザパァと湯からあがる音が聞こえ、ペタペタと数歩歩く音、そしてガラガラと中折れドアが開く音、全てが鮮明に聞こえた。それほどピンチということだろう。
「死ぬ死ぬ。マジで死ぬ」
湯からあがり、洗面器に水を汲み、頭から被る。
あれ、湯で暖まって疲れを取ろうと思っていたのに、むしろ疲れて挙げ句の果てに水をかけるってどうい——終わった。
ガラガラという、今一番聞きたくなかった音が聞こえたのだ。
「あれ、琥珀。帰ってたのだな?」
タオルを巻いた藍さんが俺を見てびっくりしながらそう言う。
「あ、えぇ〜と、はい」
「おかえりなさい。ていうか、いつの間に入ったんだ? 私が出たときにも会わなかったが」
「いや、その、俺、ステルス性能高いんで...」
「おお! そうなのか、凄いな、何処かの蛇みたいだ」
へ、蛇? ああ、蛇か。いや理解すんなよ。
良かった、藍さんはシンプルに驚いてる。上手く隠せそうだ。
「ところで琥珀、さっき湯船に入る前に私を呼んだみたいだが、なんの用だ?」
藍さんはにっこりと笑顔でそう言った。
「聞こえてたのかよっ!」
「私は狐だ。鼻も耳も良く効くんだぞ?」
「恐れ入りました... 悪気はないんです、本当に」
「ん? 別に怒ってないぞ? 今度一緒に入るときは背中の流し合いでもしような」
「え...」
コハクは
めのまえが まっくらに なった! ▼
■■■
知ってる天井だ... 俺の部屋だ。
身体が重い... また逆上せたのかよ、焼けるようにとは言わないが暑い...
ん? 身体が重いのはこれ違うな、お腹に何か乗ってるような... ちょっと息苦しい。湯に浸かりすぎてその感覚が少し残った、というのもあるのだろうか?
力の入らない身体に強く力を入れ、首を持ち上げる、と....
「お、お前...」
「すき」
!?
「な、なんて!?」
目の前にいる、お腹の上に乗っているそいつ——俺の式神であろう女の子は、俺のその言葉が気に食わなかったらしく、脚に力を入れて俺の脇腹を強く締め付けた。
「ちょっ、苦しい、お兄さん今苦しい、いろんな意味で」
パッと力を緩め、解放してくれた彼女。飴をあげたあの日と同じよう、ただこちらを見るだけになってしまった。
聞き間違えかも知れないが、さっき『すき』って言ったんだよな。
回復した身体を腹筋の力で起こし、両手を彼女の脇に添えて彼女を持ち上げ、まるでガムテープでくっついてるような足腰をお腹から剥がしてやる。
ふぅ、と一息ついて、彼女と目を合わせる。
「お前、式神なんだな?」
小さく、コクリと彼女は頷いた。
「君に聞くのはおかしいかも知れないけど、俺は君の主人か?」
これまた小さく、コクリと頷いた。
「君の名前はなんだ?」
これには彼女、緑のサイドテールを左右に揺らしてブンブンと首を振る。
教えてくれないのか? いや... 無いとか? もしもそうだとしたらなんだ、俺と同じタイプなのか? いや、橙はどうだ、藍さんはどうだ、もしかしたら主人が決めるものなのかもしれない。そうだと良いが...
などと考えている中、名前を言わない彼女は開くと思わなかった口を開いた。
「ちぃ、ちょうだい」
彼女の薄く紅い目が光りを増したように、俺はそう見えた。
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