ヘレロ族の服
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第四章
「この通りな」
「何かな」
その少女達、ヘレロ族の服も見てだ。豊も言った。
「女の子は黒人でもな」
「服が違うだろ」
「本当に欧州のな」
「それも十九世紀だろ」
「そのままだな」
英治の言う通りにとだ、豊は答えた。
「本当にそうだな」
「そうだろ、ティーセットもな」
「イギリスだったんだな」
「美味かったぜ」
そちらもというのだ。
「女の子と一緒だったしな」
「この娘達とか」
写真には英治もいる、同じ席で飲んでいる写真なのだ。
「いいな」
「そう思うだろ」
「素敵な時間を楽しんできたんだな」
「満喫してきたぜ」
まさにとだ、英治はざるそばを食べつつ豊に言い切った。
「思う存分な」
「それは何よりだな」
「後な」
「ああ、大丈夫だよな」
笑ってだ、豊は英治に問い返した。
「そっちは」
「大丈夫だよ」
実際にと答えた英治だった。
「神様に誓ってな」
「そうした遊びはしてないか」
「虫除けのスプレーも使ってたしな」
「蚊が怖いからな」
「マラリアな、あそこは蠅も怖いからな」
蚊だけでなく、というのだ。
「かなり気をつけてたよ」
「蠅が刺して中に卵産み付けるんだよな」
「そういうことがあるからな」
「あの辺りだとな」
アフリカの南部ではだ、エイズだけでなく他の多くの風土病も恐ろしい地域なのだ。
「それが怖いからな」
「注意してだな」
「ガイドさんも仕事してたよ」
「そのうえで楽しんできたか」
「ああ、存分にな」
「それは何よりだな、それでだよな」
「日本に帰ってきてな」
そのうえでと言う英治だった。
「今はこれ食ってるんだよ」
「ざるそばな」
「アフリカでイギリスを楽しむのもいいけれどな」
「日本に帰ったらか」
「これだな」
ざるそばだというのだ。
「美味いぜ」
「そうか、じゃあどんどん食うか」
「日本に帰ってきたからな」
ざるそばをというのだ、こうしたことを話してだった。
英治は今は友と共にざるそばを楽しんだ、日本の味を。それもまた実に美味いものだった。
ヘレロ族の服 完
2016・7・30
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