Three Roses
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第八話 短い輝きその十二
「やはり」
「そなたもそう思うな」
「旧教の貴族の中で、ですね」
「王国派の者達だ」
「やはりそうですか」
「その有力な貴族達が次々とだ」
「不祥事で失脚か、ですね」
そしてだった。
「急死ですね」
「そうなっている」
「やはりそうですか」
「おそらく裏で帝国が動いている」
彼等と縁戚関係にあり王国と対立しているこの国がというのだ。
「そしてだ」
「私の婚姻にも反対する彼等がですね」
「いなくなった」
まさにだ、そうなったというのだ。
「だからだ」
「私もあの国に入られますか」
「そうなったからな」
「そのことは喜ぶべきでしょうか」
「我が国にとってはいいことだ」
大公はここではドライに言った。
「我々の敵が消えたのだからな」
「王国派がですね」
「島国、半島だけでなくだ」
「北の王国もですね」
「あの国々からも王国派がいなくなっている」
「そうしたことはですね」
「いいことだ」
まさにというのだ。
「我々にとってはな」
「わかりました」
マリアは政治とはそうしたものだと理解していた、それでだった。
父の言葉にだ、内心で思うことは抑えてそうして言ったのだった。
「そうなりますね」
「政治のうえではな」
「思うところがあってもですね」
「個人の倫理は関係ない」
「政治としてどうかですね」
「そのことから考えるとだ」
「周辺諸国で起こっていることはいいことですね」
「まさにだ」
そうだとだ、大公は娘に話した。
「いいことだ、だからな」
「それで、ですね」
「そなたも輿入れ出来るのだ」
「それが現実ですか」
「そうだ、いいな」
「わかりました、それでは」
マリアは父の言葉に頷いてだ、そしてだった。
自身が輿入れすることが決まったことを受け入れた、エヴァンズ家の婚姻政策は着々と進んでいた。大公の思惑通りに。
第八話 完
2016・5・6
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