Three Roses
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第八話 短い輝きその八
「意固地になり頑迷にもなる」
「そして人の話を聞かなくなる」
「そうもなりますね」
「修道院に長くいれば」
「それで」
「そうなる、だから妃はだ」
マイラ、彼女はというと。
「この国の主になるとだ」
「そこが問題ですね」
「どうしても」
「尼僧は政治を行えるか」
こうしたことも言った。
「それが純潔であればある程な」
「無理がある」
「そういうものですね」
「純潔さは確かに必要だが」
しかしというのだ。
「それが過ぎるとな」
「枷になりますね」
「政治の世界においては」
「そうなりますね」
「視野は広く頭は柔らかくだ」
肉、焼いて香辛料で味付けしたそれを食べつつの言葉だ。
「こうした贅沢も楽しまなければな」
「わからないこともありますね」
「どうしても」
「そうだ、修道院は狭い」
太子はまたこう言った。
「長くいては政治に問題をきたす」
「それがマイラ様ですか」
「この王宮におられながら修道僧にいるが如し」
「それ故にですね」
「純潔過ぎるのですね」
「マリア公女も純潔だが」
太子は彼女のことも見ていた、これは彼女だけでなくマリー、そしてセーラひいては王宮だけでなくこの国全体を広く見ている。
「妃程でない」
「あの方は世俗のこともご存知ですね」
「それもそれなりに」
「国内も見回ることもありますし」
「マリー王女、セーラ公女と共に」
「あの三人は世俗も知っているが」
しかしという口調での言葉だった。
「妃は違う」
「まさに修道院の中におられ」
「世俗を知らない」
「聞いてはおられても」
「実感としてはないですね」
「政治は世俗だ」
太子は言い切った。
「この世にあるものだ」
「神の国にはありませんね」
「決して」
「人の世にあるものですね」
「そうだ、世俗を知らなくてはだ」
人の世、まさにそれをいうのだ。
「到底だ」
「政治は出来ない」
「ではマイラ様が政治を執られれば」
「その時は」
「この国にとってもな」
まさにというのだ。
「よくないだろう、しかし」
「しかし?」
「しかしといいますと」
「この前咳をしていなかったか」
太子はマイラについて彼女の身体のことにも言及した。
「そうしていなかったか」
「咳ですか」
「それをされていたのですか」
「そうだったのですか」
「普通の咳ならいいが」
しかしというのだ。
「それが労咳の咳だとな」
「よくないですね」
「あれは死に至る病です」
「黒死病程とはまた違いますが」
「死に至ることは同じです」
「思い違いならいいがな」
太子はその目を左に動かして言った、そこに何かを見る様にして。
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