魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~
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第3章:再会、繋がる絆
第55話「事件解決...?」
前書き
原作キャラを動かそうと思って結局大して動かせてないという...。
こ、これからだし!3章はまだ始まったばかりだし!(震え声)
=優輝side=
「―――はっ...!?」
“がばっ”と起き上がる。どうやら、眠っていたようだ。
「...ここは...医務室?」
辺りを見渡し、今いる場所を把握する。
「そうよ。」
「椿....。」
僕が寝ていたベッドの横で、椅子に座りながら椿と葵が御札を弄っていた。
多分、霊力とかを込めて術式でも組んでいるのだろう。
「...まったく、結局無理しちゃったわね。」
「うぐ...。」
そう言われて鈍い痛みが体を駆け巡る。
「とりあえず、目を覚ました事を皆に伝えておくわ。葵。」
「任せてー。」
「あ、ああ....。」
痛みに堪えつつ、椿の言葉に相槌を打つ。
「...確か....。」
ふと、なんで気絶していたのか、思い出そうとする。
「....ジュエルシード25個の同時暴走を、貴方は止めたのよ。...無理をしてね。」
「...そうだった...。....ん?」
どこか違和感を感じた。...いや、気のせいか...。
「少しの間とはいえ、霊力と魔力を混ぜて使ったから、しばらく体は満身創痍よ。」
「それ以前にも結構無茶な魔力運用してたでしょ?それも結構負担かかってたよ。」
「そういうこと。安静にしなさい。」
「そ、そうするよ...。」
確かに体の至る所が痛い。まるで全身が骨折したようなぐらい痛みが強い。
「...本来なら、人一人が単身で挑む物じゃなかったのよ?なのに、貴方は一人で...。」
「わ、悪かったよ...。」
確かにあの時僕は無茶をした。それこそ、緋雪の時みたいになるのを覚悟して。
でも、ああしなければ誰かが死んでいたと、僕は思ったからな...。
「...ありがとう、ずっと看ていてくれたんでしょ?」
「っ...!べ、別に私は皆が貴方の事を心配してたから、代わりに...!」
椿はそう言ってそっぽを向く。
...まぁ、顔を赤くしてるから照れてるのは丸わかりなんだけどね。
「優輝っ!!」
「目が覚めたのか!?」
そこで、声をあげながら誰かが部屋に入ってくる。
「って、まだ急に触ったりしちゃダメよ!まだ治ってないんだから!」
「わ、悪い...!」
勢いよく僕を労わろうとしたが、椿と葵に止められる。
...って、父さんと母さんか...。
「あー...言うのが遅れたけど...久しぶり。父さん、母さん。」
「優輝....!」
感極まって涙を流す母さん。父さんも感激で上手く言葉が出せないみたいだ。
「....僕は...僕らは、母さんと父さんが生きてるって、信じてた。」
「っ...優輝...!」
自然と僕も声が上擦る。...平静を装っても、嬉しいものは嬉しいんだな...。
「...二人には、優輝の事情を話していないわ。...貴方から話してあげなさい。」
「...ああ。」
椿にそう言われ、一度落ち着く。
...そう。僕から話さないとな...。特に、緋雪の事は...。
「とりあえず、これに霊力を流しながらゆっくり話してなさい。」
「あたしたちは気にしないでね。」
そういって椿は御札を一枚渡してくれる。
霊力を流せば、体の中から癒される感じがする。...治癒促進の術式か。
「どこから話せばいいか...。とりあえず、どうしてここにいるかから話すよ。」
そういってから、僕が魔法に関わった発端を話す。
緋雪はシャルと、僕はリヒトと出会って魔法を使うようになった事。
魔法と関わっていき、このアースラに乗っている人たちと知り合った事。
父さんと母さんに関わりのある犯罪者の情報が入り、その犯罪者を追ってここまで来て、今に至った事...それらの事を大まかに話した。
「....とりあえず、大体は分かったわ...。」
「ところで...緋雪はここに来てないのか?」
「っ....。」
わかっていた。聞かれるとは思っていた。むしろ、聞かれないと困る。
だけど、それでも一瞬僕は言葉を詰まらせてしまう。
「....緋雪は、もういない...。」
「え....?」
「僕と共に事故に遭って死んだ...って世間には伝えられてる。」
「...どういうことなの?」
今までにない、途轍もなく真剣な表情で母さんが聞いてくる。
父さんも、先ほどまでの感激はどこに行ったとばかりに真剣になっていた。
「...ここからは突飛な話になるけど...。」
幸い、ここにいるのは事情を知っている椿と葵だけ。
葵から連絡でも入れておいたのか、魔法とかで見ている気配はない。
「....僕と、緋雪にはそれぞれ古代ベルカ...戦争で滅びた魔法の世界に存在していた人物の記憶を持っているんだ。」
話すのは一応前々世の事だけ。生まれ変わりはともかく転生は話す必要がないからね。
「僕は、導きの王...導王ムート・メークリヒカイトの、緋雪は狂った吸血鬼として恐れられたシュネー・グラナートロートの記憶を...それぞれ持ってる。」
「...前世...みたいなもの?」
「その通り。...生まれ変わりなんだよ、僕らは。今僕が持っているリヒトとシャルも、その二人がそれぞれ持っていたデバイスなんだ。」
信じ難いようで、父さんも母さんも考え込む。
「ムートとシュネーは王と平民という身分差でありながら幼馴染だったんだ...。だけど、人体実験によって吸血鬼と同等の存在に。...ムートはシュネーを救おうと思い、民の裏切りにより死に、シュネーはムート達の友人だった聖王と覇王によって斃されたんだって。...歴史上では、ムートはシュネーに殺された事になってるけど。」
要点だけを両親に伝える。今重要なのはそこじゃないからね。
ちなみに、シュネーの最期についてはシャルから聞かせてもらった。
「...そして、生まれ変わりである僕と緋雪だけど...。...シュネーの吸血鬼化は、魂に影響するものでさ、緋雪も吸血鬼になった...と言うより、シュネーに戻ったんだ。...もちろん、ムートが殺された事で狂ったかつての状態に。」
「っ....まさか...!」
話を聞いて情報の整理だけで精一杯だった母さんが、もう察したらしく信じられないといった表情をする。
「....シュネーは...緋雪はずっと寂しがりやで、悲しんでいたんだ。...吸血鬼に...化け物の存在に堕ちるのに怯えながら、ずっと我慢してたんだ。...だから、僕に殺してもらうように、願った。」
「優輝...。」
「....僕だって、ムートの記憶を思い出して必死に助ける方法を考えたさ。...だけど、時間が圧倒的に足りなかった。焦っていたのもあるけど、どうしても命を助ける事はできなかった。....だから....。」
ここから先は言わなくても分かったのだろう、部屋が沈黙に包まれる。
...なんて言われるだろう。
どんな事情があったにせよ、僕は妹を...父さんと母さんの娘を殺したんだ。
人殺しだと責められても、口々に罵倒されてもおかしくはない。
...だけど...。
「.....ごめんなさい...。」
「.....え....?」
...母さんは、優しく抱きしめてくれた。
父さんも、責めるどころか、どこか申し訳ないような目で僕を見ていた。
「どう...して...。僕は、どんな理由があったにせよ、妹を...家族を殺したんだよ...?」
「...だから、だからよ...!そんな状況に、二人はいたのに私たちは傍にいられなかった...!親として、二人を支えてあげられなかった...!」
そういって、母さんは涙を流す。
...父さんと母さんは、僕が緋雪を殺した事よりも、自分たちが親として支えてやれなかった事を悔いているんだ...。
...確かに、人殺しなのには変わりない。どんな事情があったにせよ、その事実にはなんら変わりないのだから、普通なら僕は糾弾されているだろう。
だけど、父さんと母さんは僕を赦して、それどころか自分たちの無力を悔いていた。
「っ....ぁああ...!ぅぁあああ....!」
それが親として、人として正しいのかは僕にはわからない。
それでも、僕はそれが途轍もなく嬉しかった。
「....優輝も、まだ子供なんだから...。生まれ変わりとか、前世の記憶とか関係ない。子供なら、もっと親を頼りなさい。」
「....うん。」
...久しぶりに、みっともなく泣いてしまったな...。
「...他にも聞きたい事はあるのだけれど...。」
「...大丈夫。...椿と葵の事だね?」
泣き止んだばかりで、時間を置こうとする母さんだけど、それを遮って話を続ける。
聞きたい事とは、やっぱり親しくしている椿と葵の事だろう。
「ええ。優輝の事を看ていてくれたのは嬉しいけど、関係が気になって...。」
「一言で言えば居候かな。僕と緋雪が管理局と関わる切っ掛けになった事件...その被害者が二人なんだ。」
「そこから先は私たちが言うわ。優輝はもう少し休んでなさい。」
続きを喋ろうとして、椿が遮る。
...まぁ、まだ体は痛むから、そうさせてもらうか...。
「まず、私と葵がどんな存在か知ってもらう必要があるわね。」
「その方が説明しやすいもんね。」
そういって二人は自分たちが式姫という存在だという事。
椿が草祖草野姫という神様で、葵は薔薇姫と呼ばれる吸血鬼だという事を話した。
「...地球にもそんなオカルト染みた存在がいたのね...。」
「陰陽師に式姫か...。」
日本にも魔法のようなものが存在していた事に、二人とも驚きを隠せないようだ。
「私たちが優輝と出会えたのは偶然ね。偶々私たちがロストロギア...ジュエルシードのようなものを拾って、そこを次元犯罪者に襲われなかったら出会う事はなかったわ。」
「次元犯罪者...まぁ、魔法とか次元世界に関わる犯罪者だよ。」
椿が説明し、葵が補足する。
母さんも父さんも魔法は使えるけどその辺りの事情には疎いらしい。
「私たち式姫は主による霊力供給がなければ弱まっていく...だから、その犯罪者たちに対して、私たちは逃げるしかなかった。...そこで。」
「あたしが囮になって、かやちゃんは海鳴市の神社...八束神社まで逃げ延びた。」
「そこで偶然優輝達に出会ったのよ。」
大雑把でも細かくもない程度に説明していく椿と葵。
「実を言うとね...あたし、一度死んでるんだよね。厳密にはもう吸血鬼じゃないんだよ。」
「死ん...え?じゃあ、今は...?」
「それにロストロギアが関連してるのよ。私たちが拾ったロストロギアは私が肌身離さず持っていた勾玉と融合して、死んだ魂がその勾玉に入り込んで、デバイスと化したの。」
「デバイス...皆が使ってる魔法の杖みたいなものか。...機械っぽいけど。」
父さんと母さんは...というより、あの世界はデバイスを使わない魔法文明らしい。
「まぁ、直接見たほうがいいよね。はいっ!」
「っ、勾玉に...?」
〈これが今のあたしの本当の姿。ユニゾンデバイスっていう融合型のデバイスだよ。〉
勾玉の状態で葵はそう言ってから、いつもの姿に戻る。
「大まかな流れとしては、優輝達と出会ったところで、再び犯罪者..その組織に襲われて応戦。囮になっていた葵はもうボロボロで、最期まで私を庇って死亡。...その後、私は優輝と契約してその犯罪者組織を潰したのよ。」
「優ちゃんが主になったから居候してるって訳だよ。ちなみにあたしはデバイスとしてはかやちゃんが主だけど、式姫としてなら優ちゃんが主だよ。」
椿と葵との出会いの話なので戦闘の話はカット。
何気に那美さんと久遠の事も話してないな。
「優輝って...陰陽師としての力もあるの?」
「才能...というより霊力の純度が高いのよ。霊力量はそこまで多くないわ。だけど...。」
「...あー...。」
なんとも言えない表情で僕を見る椿と葵。
「...優輝が導王としての記憶を持っているのはさっき優輝が話したわよね?」
「ええ。まぁ。」
「...その導王は魔力の使い方が上手いのよ。その影響か、優輝は複雑な術式も簡単に組んでしまって...。」
「陰陽師じゃないけど並の陰陽師とは比べ物にならない程術が凄いんだよね。」
正直魔法と同じように扱ってるだけだけど、それほど凄いんだな。
「とまぁ、私たちと優輝の関係はこんな感じよ。」
「...うん。大体は分かったわ。細かい事はまた別の時に。」
「その方がいいわね。今はやるべき事があるんだし。」
そういって、椿たちの話は終わる。
「かやちゃん、かやちゃん。一つ大事な事言い忘れてるよ?」
「え?そんな事ないはずだけど...。」
「ほら、あたしとかやちゃんは優ちゃんの事が―――」
「ああああああ!!言わなくていい!言わなくていいのよ!!」
...葵が何か言いかけたけど、椿に遮られた...。
「........。」
「べ、別にそういう訳じゃないのよ!?ただ...ただ....!」
「...そういうことね。優輝も隅に置けないわ。」
母さんは葵が何を言おうか理解したみたいで、目を見開いた後そう呟いた。
...なんの事だ?とりあえず椿は落ち着こうか。
「...そういえば、母さんたちも魔法使ってたけど、あれは...。」
「お察しの通り、あの世界で集落の人たちに教わったのよ。」
「管理局の人たちに聞いたけど、俺たちにもリンカーコアがあったからな。」
...実は僕らの祖先って魔法のある世界の住人だったりしない?
一家全員がリンカーコア持ってるって...。
「母さんたちは、ずっとあの集落の人たちと一緒に暮らしてたの?」
「まぁ...そうね。言葉も通じない、土地勘もない私たちを助けてくれたのだから。」
「言葉が通じない....集落の人が翻訳魔法でも使えたの?」
「翻訳...村長は、“意思を伝える魔法”って言ってたわね。」
翻訳魔法と原理は同じか...。というより、翻訳魔法の元となった魔法みたいなものか。
「......。」
話が一通り終わり、会話が途切れる。すると...。
「...そろそろ入っていいか?」
「クロノ?...もう入っていいぞ。」
ずっと待っていたのか、クロノが扉から入ってきた。
「もしかして、そこで待機してたのか?」
「葵から邪魔しないよう念話が入ったからな。ずっと待っていた。」
「...なんか悪い。」
邪魔されないのは嬉しいが、待ってもらったのは少し罪悪感があるな。
「とりあえず、これからの事を伝えに来た。」
「...そっか。一応、あの世界に用はなくなったしね。」
「本命のクリム・オスクリタには逃げられたけどな...。」
どうやら、捜索したけど既に違う次元世界に逃げられていたようだ。
「まぁ、もうジュエルシードもメタスタスもない。探し出すのは困難になったが、奴の逃走手段もなくなったからな。じっくり追い詰めて行くさ。」
「...そういえば、ジュエルシードはどうなった?」
クロノの言い方からして、クリムを追いかけるためのジュエルシードの反応はもうなくなったのだろう。
だとすれば、そのジュエルシードはどこに...。
「...よくわからない。優輝が死に物狂いで転移させた後、反応が消えた。...おそらく、虚数空間が発生して吸い込まれたのだろう。」
「...あー、そういえば、アースラからは観測できなくなってたっけ。」
ジュエルシードのジャミングによって、肉眼でしか確認できなくなってたらしい。
だから、虚数空間が発生していたのかどうかすらわからないという事だ。
...まぁ、あそこまで膨大な魔力なら発生してるだろうけど。
「....で、だ。まず君のご両親の今後だが...。管理局で保護する事になる。理由は分かるか?」
「...地球では死んだ扱いになっているから...か?」
「その通りだ。戸籍がないならともかく、死亡扱いだとな...。」
まぁ、想定の範囲内にはあった事だ。そこまで驚きはしない。
「それと、しばらくの間、プリエールの集落の復興を手伝う事となっているが...これは僕ら管理局の仕事だ。嘱託魔導師である君たちの仕事ではない。」
「あー...ほとんど破壊されてしまったもんな...。」
ジュエルシードがあった祠を始め、集落の中心部分は完全に破壊されてしまっている。
事件が終わって“はい終わり”って訳にもいかないので人員を派遣するらしい。
「とにかく、君たちの出番はこれで終わりだ。後は僕らに任せて地球に帰るといい。....ご両親の事は僕らに任せてくれ。」
「...ああ。よろしく頼む。」
クロノ達なら上手くやってくれるだろう。
「...えーっと...クロノ...執務官?」
「あ、クロノでいいですよ。」
「...少し気になったんだが、労働基準法のような法律はそっちにないのか?」
父さんがクロノの外見年齢を見てそう尋ねる。
...まぁ、気になるよな。
「確か、地球の日本にある法律の一つでしたね。...管理局では、そういうのがありません。確かに、子供でも容赦なく戦場に駆り出されるのはおかしいと思います。ですが...。」
「...管理局は慢性的な人手不足で、まさに猫の手でも借りたい状態なんだ。...だから、成人していなくとも働けるなんて状態になっている。」
クロノの言葉に補足するように僕も説明する。
「それは...。」
「...僕からすれば、管理局は魔法に頼りすぎてるんだ。質量兵器を使えとは言わないけど、マジックアイテムとかで代用できないのか?」
「ここ最近、僕もそう思っているよ。...確かに僕ら魔導師は“魔法”にしか頼っていない。...魔力がなくとも扱える質量兵器でもない武器の開発を、あまり進めていないんだ。」
...それさえ解決すれば結構マシになるんじゃないのか?
「うーん...結構便利になるんだがな...。」
「...何もかも君のように使いこなせる訳ではないからな?」
それでも簡単な魔法の銃とかでも結構役立つと思うが。
地雷式のバインドとか、作りやすいと思うんだがな。
「....少なくとも、俺たちのような一般人がどうにかできる問題じゃない...か。」
「はい。...一応、同じような考えを持っている人が訴えかけているので、近いうちに少しは改善されるかと...。」
「...なんか難しい話になってしまったな。とりあえず、ここで話を切り上げよう。」
手をパンと叩いて、父さんは話を切り上げた。
...確かに、この状況に無粋な話だったな。
「明日には地球に着く。短い間だが、家族の団欒を楽しんでくれ。」
「ありがとうね。貴方も、あまり無理はしないでね?」
「はい...。...あ、それと、優輝はちゃんと椿と葵に診てもらってから動くよう判断してくれよ?」
「わかってるって。」
そう言ってどこかへと行くクロノ。
多分、リンディさんや他の皆に報告に行ったのだろう。
「団欒...って言われても...。」
「何を話せば...。」
父さんと母さんは、久しぶり過ぎて何を話せばいいか戸惑う。
「...じゃあ、僕の今までの話を聞いてくれる?」
だったらと、僕がそう言いだす。
緋雪を喪うような、悲しい事もあった。
だけど、それ以外にも楽しい事などはあった。
そんな僕の今までを、母さんと父さんにも聞いてほしかった。
「...ええ。存分に話しなさい。」
「俺たちも、優輝の今までの暮らしとか、聞きたいしな。」
母さんと父さんも了承してくれたので、話し出す。
椿と葵は、話が終わるまで待っていてくれるようだ。
...数年振りとの家族との再会、そして語らい。
それは、前世や前々世の記憶とかを持っている僕が、“志導優輝”という一人の子供に戻れる、唯一の時間だった...。
「...じゃあ、父さんと母さんの事を頼むよ。」
「ああ。任せてくれ。」
そして翌日の夕方。
僕らは海鳴公園で一時の別れを行う。
「士郎さんによろしく言っておいてね。」
「分かってるよ。」
母さんたちに話した話の中に、士郎さんにお世話になっている事もあった。
だから、念を入れて士郎さんに言っておくように母さんに言われた。
「じゃあ...また。」
「ええ。またね。」
「できるだけ早く帰ってくるからな。」
そう言って、母さんと父さんはクロノに連れられてアースラへと帰った。
「...さて、俺たちも帰るか。」
「そうね。」
椿たちに声をかけ、僕らも帰路に就く。
ちなみに、なのはや他の皆は空気を読んでか先に帰っている。
「..........。」
「どうしたのー?早く帰るよー!」
「....あっ、ごめんごめん。」
ふと、何かが引っかかって足を止めていると、葵に催促される。
多分気のせいだろうと思い、今度こそ僕は帰路に就いた。
「おはよー。」
「おー、優輝。久しぶりだな。」
翌日、久しぶりの学校に登校する。
それなりの期間休んでたので、色々とやるべき事が溜まってそうだ。
「授業についていけるかー?なんなら俺が教えてもいいぞー?」
「...ふっ、お前に教えられるのか?」
「んなっ..!?鼻で笑われた!?」
いやだって...今まで授業でわからない所教えてたの僕だし。
「くそう...!なら、この問題はどうだ!」
そう言って見せてきたのは、休み前にはやっていなかった範囲の問題。
内容は算数で、立体の体積だ。これなら...。
「累乗の問題か。5の3乗...125だな。」
「暗算...だと...!?」
いや、前世は社会人だったし、この程度なら暗算余裕だろ。
まぁ、こいつは知らないから仕方がないけどさ。
「なぜだ...!この時お前は休んでいたはず...!」
「予習してたんだよ。というか、一つ下の学年で同じ事できる奴知ってるぞ。」
主にアリサとか。この前聞いた話だけど、授業が全部わかってしまうから授業中はノートに落書きしているらしい。
「くそ...!お前を笑ってやるチャンスだったのに...!」
「はっはっは。そうしたいのならまず僕と同じ成績になるべきだな。」
まぁ、僕は最近は魔法関連で欠席が多くなってるからオール5とかではないけど。
それでも平均4は取っている。
「.........?」
「ん?どうした?いきなり教室を見渡して。」
「いや...なんかな...。」
気のせい...か....?
「...席替えとかしてないよな?」
「当たり前だろ。見りゃ分かるだろ。」
「だよな...。」
どこか...教室の席に違和感を感じたが...。
「...しばらく休んで、少しボケたか?」
「いや...そんな事は...。」
...やっぱり、昨日も感じたけど、どこかおかしい。
「...とりあえず、久しぶりの学校だから、気を引き締めておかないと。」
「ああ。宿題とか忘れたりするもんな。」
「...忘れたのか。」
「休み明けのを...ちょっとな。」
こいつの場合、やってすらいなさそうだが。
ちなみに僕はちゃんとやった上に忘れていない。
「お前なぁ...。いい加減その癖直せよ?」
「いやぁ...いざとなれば見せてくれるだろ?」
「何度もはさすがに断る。というか、僕以外にも....以外にも...あれ?」
誰かの名前を出そうとして、その名前が思い出せない。
「お前以外にいないって。」
「...じゃあ、僕が断れば...。」
「やめてください死んでしまいます。」
...さっきから...いや、昨日からいろいろとおかしい。
何か...何か忘れているような...?
後書き
今回はここまでです。
...そう、3章はここからが本番です。
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