英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第51話
~エルム湖~
「………………………」
ロイドがリィンに近づくとリィンは外を見つめて考え込んでいた。
「リィン、どうしたんだ?」
「ロイドか。いや……こないだエリゼと会ってからずっと思っていたんだけどさ……エリゼ、随分成長したなと思ってさ。」
「まあ、戦闘能力も凄かったけど何よりあのリフィア殿下の専属侍女を立派に務めていたものな。……もしかして兄として寂しいのか?」
リィンの話を聞いたロイドは頷いた後尋ね
「……まあな。メンフィルに留学してからもずっと俺に実の兄同然に懐いてくれていたあのエリゼが今では立派に自分の”道”を見つけて、進んでいるなと思ってさ……兄としてちょっと不甲斐ないなと思ってて……」
「そうか……俺は弟としての立場だから、兄としての立場はあまりわからないけど……エリゼさんは今でもリィンの事を兄として慕っていると思うけどな。」
「何でわかるんだ?」
ロイドの言葉を聞いたリィンは不思議そうな表情で尋ね
「エリゼさんのリィンに対する普段の態度とか、リィンを見ている目とか見ていたら何となくわかるよ。」
「……弟という立場だからこそ、わかる……か。………ちなみに言っておくがエリゼはやらないからな?」
ロイドの話を聞いたリィンは口元に笑みを浮かべた後真剣な表情でロイドを見つめて言い
「ええっ!?何でそういう話になるんだよ!?というか俺にはエリィがいるし!」
リィンの言葉を聞いたロイドは驚いた後疲れた表情で言い
「いや、だって…………リウイ陛下からいただいた支援課のメンバーの資料でお前の女性関係を見たら、兄としてさすがに警戒するぞ?」
「い、一体どんな事が書かれてあったんだ?」
「あー……それは秘密だ。一応極秘の情報だし、さすがに本人を目の前に言う度胸は俺にはない。」
「(い、一体どんなことが書かれてあるのか、気になる……!)……そ、それより女性関係で気になったけど、リィンは恋人とか作る気はないのか?今までの行動を見る限り、あまり女性に興味がなさそうだし。」
リィンの話を聞いたロイドは疲れた表情をした後気を取り直して尋ねた。
「失礼な。これでも人並みに恋人は欲しいとは思っているぞ?まさかとは思うけどランディや局長を比較対象にしてないよな?」
「た、確かに。あの2人が異常すぎるって事をすっかり忘れていた。」
「まあ、あれ程自分の欲望をさらけ出す人達は中々いないだろうな。……それにもしかしたら、父さん達が見合い相手を用意するかもしれないしな。恋人を本当に作っていいものか実際迷っている立場なんだ、俺は。」
「あ、そうか……リィンは貴族の息子だもんな。政略結婚とかあってもおかしくないか………あれ?じゃあ、もしかしたらエリゼさんもそうなるんじゃないのか?」
リィンの話を聞いたロイドはある事に気付いて尋ね
「……まあ、な。それに今のエリゼはリフィア殿下の専属侍女という立場だからな。メンフィルだけじゃなく、他国の貴族が申し込んできてもおかしくないさ。………俺は養子の立場の上長男だから別にいいけど、せめてエリゼには自分が選んだ相手と結婚して幸せになって欲しいんだよな……」
尋ねられたリィンは複雑そうな表情で答えた後疲れた表情で言った。
「ハハ……そんなに大事なんだったらいっそリィンがエリゼさんと結婚したらどうなんだい?」
「なに馬鹿な事を言ってるんだよ……義理とはいえ俺とエリゼは兄妹の間柄だぞ?……第一、ロイド。お前だって他人事じゃないだろうが。」
ロイドの言葉を聞いたリィンは溜息を吐いた後呆れた表情でロイドを見つめて言い
「へ??」
リィンの言葉を聞いたロイドは不思議そうな表情をした。
「エリィは名家であるマクダエル家のお嬢様の上、姉はイリーナ皇妃だぞ?俺の予想では既にマクダエル家にエリィに見合いの申し込みが山ほど来ていると思うが。」
「うっ……!い、言われてみれば確かに………」
そしてリィンの説明を聞いたロイドは大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「ま、人の恋路の心配をするぐらいだったら、まず自分の心配をする事だな。」
「仰る通りです………」
口元に笑みを浮かべて言ったリィンの言葉に疲れた表情で頷いた。その後ロイドはリィンから離れ、船内の席に座って外を見つめているランディに近づいた。
「―――よう、ロイド。しっかし、マリアベルお嬢さんもずいぶん太っ腹だよなぁ。ミシュラムのリゾートホテルにテーマパークも遊びたい放題。どんな大盤振る舞いだっつーの。」
「……そうだな。………………………」
口元に笑みを浮かべて言ったランディの言葉にロイドは頷いた後複雑そうな表情でランディを見つめ
「ハハ………――――なあ、ロイド。カン違いさせてるみたいだからひとつ言っとくぜ。」
「え………」
「叔父貴達がルファディエル姐さんの策によって国際犯罪組織扱いされ、社会的にも抹殺された事………別に恨んじゃいねーよ。身内があんな事になって、俺がショックを受けてると思ってんだろ?」
「そ、それは……」
真剣な表情で尋ねてきたランディにロイドは言い辛そうな表情になって、口ごもった。
「実際、猟兵なんざ金を払えばどんな非道な事もする上、欲望のままに戦い続ける犯罪者も同然の存在………特に悪名高き”赤い星座”はそれこそさまざまな犯罪を犯してきたさ。殺人なんざ日常茶飯事だし、中には強姦をした外道共だっている。」
「………………………」
静かな表情になった後目を細めて言ったランディの話を聞いたロイドは真剣な表情をし
「……ま、そういう訳だから今回の件は叔父貴達……いや、”赤い星座”にとってはいい薬さ。………まあ、叔父貴達を知っている立場としたら、自治州から追い出すだけなんて”生温い”と思ったけどな。叔父貴達の事だから、いずれ”報復”しに来るだろうからな。どうせなら殺しておいて欲しかったと思う所がやっぱり俺は骨の髄まで猟兵だって、改めて自分で思ったぜ。ハハ………まったく、クールで伊達男の俺様がなんつー無様な―――」
ランディはロイドの答えた後寂しげ笑みを浮かべ、そして疲れた表情で何かを言いかけた。すると
「………でもさ。ちょっと嬉しいかな。」
「え……」
ロイドが意外な事を言い、ロイドの言葉を聞いたランディは呆けた表情でロイドを見つめた。
「何て言うか、ランディっていつも大人で余裕があるからこちらが頼ってばかりじゃないか?でも、そうやって自分がさらけ出してくれると仲間としては少し嬉しいんだ。たぶん俺だけじゃなく……他のみんなも同じだと思う。」
「…………………………」
「それに……骨の髄まで猟兵だなんてただの思い込みじゃないのか?少なくとも俺は、ランディがミラのために戦争を請け負うのが好きなタイプには思えない。お調子者で、夜遊びが好きで少し好戦的で熱くなりがちだけどちゃんと引き際もわきまえてる……そして、いつも年下の俺達をフォローしてくれる兄貴分……それが、俺の知っているランディ・オルランドって男だ。」
呆けているランディにロイドは答えた後笑顔になった。
「…………………………」
「だから少しくらいカッコ悪い所を見えたからって気にする必要はないさ。むしろその方が俺やエリィたちだって―――」
そしてロイドが話を続けようとしたその時
「――わかった、皆まで言うな。どうやらお前のポテンシャルをまだ甘く見てたみてぇだ……どんだけだよ、この天然タラシは!?」
(あっはははははっ!ここまでの男、さすがのあたいでも今まで見た事がないねぇ!)
ランディが話を制して溜息を吐いた後、悔しそうな表情でロイドを睨み、エルンストは陽気に笑っていた。
「て、天然タラシ?よくわからないけどそこまで逆ギレされること言ったか?」
「あーもう、鬱ってるのが馬鹿馬鹿しくなってきたぜ……こうなりゃとことん、ミシュラムを満喫してやる!テーマパークで遊びまくって夜は姉ちゃんをナンパするぞ!お前も付き合え、この弟野郎!お嬢が許さなくても、問答無用だ!」
「りょ、了解ッス。(よくわからないけど……元気だしてくれたのかな?)」
自分の言葉に笑った後自分を見つめて言ったランディの言葉にロイドは苦笑しながら頷き、そしてランディから離れ、2人で話し合っているエリィとノエルに近づいた。
「あ……ロイドさん。」
「甲板に出ていたの?」
「ああ、風にあたりにね。えっと、お邪魔だったかな?」
「あ、ううん………」
「……その、通商会議の時の出来事について……それとディーター市長の提案について話してたんです。」
ロイドに尋ねられたエリィは辛そうな表情で答え、ノエルは答えた後不安そうな表情を見せた。
「提案……『国家として独立』するってあれか。」
「ええ……私にとってはちょっと他人事ではないわね。まさかおじさまがあんな事を考えてたなんて……」
「あたしもその……正直、他人事じゃない感じです。警備隊の存続にも関わってくる話ですから……」
「そうか……エレボニアとカルバードはクロスベル警備隊の規模縮小を要求してきているんだよな。代わりに自分達の軍隊をタングラム門とベルガード門に駐留させようっていう……」
「ええ………リフィア殿下やルファディエルさん達の活躍のおかげで二大国はそうは言ってられない状況になったけど……あの時はどう考えてもクロスベルから更なる富を吸い上げる為に結託したとしか思えないわ。そしてあわよくばお互いの隙を狙って併合して果実の独り占めをする……その準備としか思えないもの。」
「確かに……となると、市長の提案はそれに対抗する案でもあるのか。」
エリィの話にロイドは頷いた後言った。
「ええ、国家として独立すれば今まで両国に抑えつけられていた警備隊の装備も充実できます。対人用の武装だけじゃなくて、他国の侵略を阻止するための戦車や軍用飛行艇なんかも。……そんな風に考える自分がちょっと嫌になりますけど。」
「ノエル………」
「でも、おじさまの提案が現実的かどうかと言われると……エレボニアとカルバードは自国の混乱を治めるのに手一杯でまだ何とも言ってこないようだけど……混乱が治まれば間違いなく否定的な声明をするでしょうね。でも、リベールやレミフェリア、アルテリア法国などは好意的に受け取る声明を出してくれて…………ただ、二大国に睨みを利かせる事ができる肝心のメンフィルは中立の声明だし…………正直、もどかしい状況だわ。」
「そうだな……………通商会議の時、味方してくれたのは結局は自国の領を増やす為や”力”を示す為に協力したとしか思えないしな………光と闇の共存を謳う国とはよく言ったものだよ………」
「そうね……時には優しさや懐の広さ―――”光”の部分を見せ……時には非情さや戦争を起こす事も迷わず自分達の”力”を見せつける――――”闇”の部分を見せるんだから……………――――そして初代皇帝であるリウイお義兄様は”魔神”と”姫神”の血を引く方。その妻であるお姉様は”聖皇妃”という異名を持ち、まさに民の”光”とも言える存在だし、リウイお義兄様の側室の方達もそれぞれさまざまな”光”や”闇”の部分が特化した方達。……さらには現メンフィル皇帝であるシルヴァン陛下は”メンフィルの守護神”と称えられ、光の陣営の神々の代表格とも言える”軍神”の聖騎士シルフィア様の血を引く御方で、その妻のカミーリ様は”闇夜の眷属”の中でも秀でた戦闘能力を持つカーリアン様のご息女であるし、二人のご息女であるリフィア殿下の異名は”聖魔皇女”。皇族自身も”光”と”闇”の”共存”の手本となっているわ。」
疲れた表情で溜息を吐いたロイドの言葉にエリィは頷いた後複雑そうな表情で説明を続けた。
「……今日、招待してくれたマリアベルさんなんかはどう考えているんでしょう?」
「どちらかというと彼女は今はIBCの運営の方に専念しているみたいね。今回の提案についてはそこまで関わっていないみたい。」
「そうですか………せっかくの機会だからお聞きしたいと思ったんですが。」
「そうね……私もベルには聞きたいことが結構あるし……」
「―――なあ2人とも、こういう時だからこそさ。目一杯楽しんでいかないか?」
エリィとノエルが話し合っているとロイドが意外な言葉を言った。
「え………」
「……?」
「滅多にない休暇でミシュラムのホテルに宿泊だぞ?しかもあのテーマパークで遊びたい放題だっていうし。さぞかし頭を空っぽに出来るんじゃないかな?」
「……で、でも………」
「……あんな事があった後で………」
ロイドの言葉を聞いたエリィとノエルは迷いの表情を見せたが
「あんな事があったからこそさ。この先、クロスベルの状況がどうなるかわからない……俺達の仕事だって大変になる可能性が高いだろう。だからこそ何て言うか……『思い出』が作りたいんだ。」
「ええっ………!」
「そ、それって……!?」
笑顔で言ったロイドの言葉を聞いて2人とも顔を赤らめ
(ハア………懲りずにまたこんな事を無意識に………)
(こ、この男は”また”無意識にこんな事を……!エリィはともかく、他の者にまで言ってどうする!)
(くかかかかっ!駄目だ、笑いが止まらん!我輩を笑い殺すつもりか、ロイド!?くかかかかかかかっ!
その様子を見たルファディエルは呆れた表情で溜息を吐き、メヒーシャは顔に青筋を立てた後ロイドを睨み、ギレゼルは笑い続けていた。
「(……え?何でそこまで反応するんだ?)はは……さすがにクサすぎたかな?」
そしてロイドは2人の反応に内心不思議に思いながら苦笑した。
「クサすぎっていうか……(エリィさん……わざとやってるんですか?)」
「(ううん……天然の可能性が高いわね……)―――えっと、ロイド。その『思い出』っていうのは特定の誰かさんのことじゃないわよね?」
ノエルに耳打ちされたエリィはジト目で答えた後、頬を赤らめてロイドを見つめて尋ねた。
「?できればエリィとも作りたいとも思っているよ。今までデートする暇もなかったんだしさ。」
「~~~~~~~!!!そ、そう……………………」
ロイドの答えを聞いたエリィは顔を真っ赤にし
(や、やっぱりロイドさんはロイドさんですね………局長は局長で問題ありますけど、自覚のないロイドさんの方が一番性質が悪いかもしれませんね……………エリィさんも苦労していますね。)
(ううっ………将来ロイドは何人の女の人達を落とすのか、かなり不安だわ…………現在の時点でロイドに好意を寄せている人達が既に4人もいる上、さらに一番厄介な相手―――ルファディエルさんがいるんだから………)
苦笑しながら小声で言ったノエルの言葉にエリィは疲れた表情で答えた。
「あれ、ひょっとして俺、さっきから外しまくってるか?みんなが落ち込んでるみたいだから少しでも元気付けようと――――あ。」
一方2人の様子に首を傾げたロイドは尋ねたがある事に気付いて声を上げ
「ぷっ……」
ノエルは口元に笑みを浮かべ
「あははっ……!あ、貴方って本当に……天然というか不器用というか。まあ、そんな貴方だからこそ私は好きになったんだけど。」
エリィは大声で笑った後頬を赤らめてロイドを見つめ
「ふふ、何だか悩んでいたのがバカらしくなっちゃいましたね。」
ノエルは笑顔で話を続けた。
「……悪かった。顔を洗って出直してくるよ。」
「ふふ、すねないの。……ごめんなさい。私達の方こそちょっと空気が読めてなかったわ。」
「そうですね……やっぱりバカンスに行くなら目一杯楽しまないと!」
「そっか……(一応、目的は果たせたかな?)……あ、そうだ。…………いや、これを聞くのはさすがにエリィに失礼だな……」
二人の答えを聞いたロイドは心の中で安堵した後声を上げ、迷っていた。
「?私に何を聞きたいの?遠慮なく言って。」
ロイドの様子を見たエリィは不思議そうな表情をした後言い
「えっと、その……………エリィってもしかして凄い数の縁談が来ていたりするのか?」
「ええっ!?え、縁談……!?」
ロイドの疑問を聞いたノエルは驚きの表情でエリィを見つめ
「……………………………どうしてそう思ったのかしら?」
エリィは少しの間呆けた後、ロイドを見つめて尋ねた。
「えっと、その……リィンが言ってたんだけど……………」
そしてロイドはリィンの推測を2人に話した。
「た、確かに言われてみれば、そうですよね………エリィさんのお姉さんはあの”聖皇妃”なのですから、エリィさんと結婚できればメンフィル皇家とも強い繋がりが持てますし……………」
ロイドの話を聞いたノエルは複雑そうな表情でエリィを見つめ
「……………私への縁談がマクダエル家に来ている事は否定しないわ。お姉様の件が世間に知られてから、各国のさまざまな貴族や議員の方達から縁談の話が来ている事はおじいさま達から聞いているわ。」
エリィは少しの間考え込んだ後静かな表情で答え
「やっぱりか…………」
エリィの答えを聞いたロイドは疲れた表情で溜息を吐いた。
「フフ、でもおじいさまがみんな断ってくれているからそんなに心配しないで。」
「そ、そうなのか?」
「ええ。おじいさまは政略結婚に反対だし、何より私と貴方の関係も知っているし。……それにもしおじいさまが引き受けても私が絶対に拒否するわ。貴方がいるのに、そんな失礼な事はできないわ。」
「エリィ…………………」
エリィに微笑まれたロイドはエリィと見つめ合い
(ふ、二人が作る空気が辛い……………ううっ……できれば今すぐにでもこの場から離れてしまいたい……………というかランディ先輩達はずっとこの空気を耐えてきたなんて……凄すぎる………!)
二人の様子を見たノエルは疲れた表情で溜息を吐いた。
「っと!ノエルがいるのに自分達だけの空気を作ってごめんな、ノエル。」
「ご、ごめんなさい、ノエルさん。もっと場所を考えるべきだったわ。」
そしてノエルに気付いた二人は我に返ってノエルを見つめて謝罪し
「アハハ……あたしの方こそお邪魔しちゃってすみません。」
謝罪されたノエルは苦笑しながら答えた。その後ロイドは二人から離れた後キーアを探して甲板に出て、甲板にいたキーアを見つけてキーアに近づいた。
「………………………………」
「キーア、ここにいたのか。」
「あ……ロイド………えへへ……そろそろ到着かなー?」
「ああ、後少しだよ。テーマパークもあるから着いたら目一杯遊ぼうな?」
「うんっ!……えへへ………」
ロイドの言葉にキーアは頷いた後どこか陰りのある笑顔を見せた。
「……ごめんな、キーア。最近、ずっと寂しい思いをさせちゃってたみたいで……」
「………ううん。ぜんぜんヘーキだよ。詳しくは知らないけど……みんなが落ち込んでるのはなんとなくわかったから……キーアの方こそみんなを元気付けてあげたかったのに……けっきょく何もできなくて………」
ロイドの言葉を聞いたキーアが寂しげな笑顔を見せた後複雑そうな表情をした。するとその時ロイドはキーアの頭を撫でた。
「あ……」
「十分、元気をもらってるよ。キーアが側にいてくれること……それがどれだけ、俺達全員に力と元気をくれていると思う?」
「そーなの?……本当にそうなのかな………」
「……?」
キーアが呟いた言葉を聞いたロイドは不思議そうな表情でキーアを見つめた。
「……えへへ。なんかわかんなくなっちゃった。あ、でも、みんなちょっと元気になったみたいだねー?えへへ。やっぱりロイドはすごいなー。」
「いや、俺のせいってわけじゃないと思うんだけど……でも、せっかくだからみんなで目一杯楽しもう。テーマパーク。すごく楽しみにしてただろう?」
「うんっ!キーア、観覧車に乗りたいー!あと、ティオといっしょに『みっしいにキック』もしたいかな~!」
「『みっしぃにキック』って……子供の間で流行ってるんだっけ?うーん、ティオはちょっと年齢制限に引っかかりそうだけど。」
無邪気笑顔を見せて言ったキーアの言葉を聞いたロイドは戸惑いの表情を見せた後苦笑した。
「―――そのあたりのマナーはわきまえているつもりですが。」
するとその時ティオがエリィ達と共にロイド達に近づいてきた。
「ティオ、それにみんな……」
「あれー、どうしたのー?」
「ウォン。」
「ふふ、何となくみんなで集まっちゃったというか……」
「それに、そろそろ到着するみたいだからね。」
「ああ、そうか。」
ワジの言葉を聞いたロイドがキーアと共に振り向くと水上バスはミシュラムの港に近づいていた。
「わあ~っ………!」
ミシュラムを見たキーアは嬉しそうな表情で声を上げ
「綺麗ね……」
「本日晴天、行楽日和ですね!」
「まさに遊びにとっても適している天候だね!」
「シャマーラ、あまりはしゃぎすぎて皆さんに迷惑をかけたら駄目ですよ?」
「フフ、こんな時ぐらいは別にいいじゃないですか。滅多にない機会なのですし。」
エリィは微笑み、ノエルとシャマーラは嬉しそうな表情で言い、シャマーラを諌めるエリナにセティは微笑みながら言い
「よーし、ガンガン、テンション上がってきたぜ~!」
「休暇なのに、疲れるぐらい楽しんでしまうかもしれないな……」
ランディは嬉しそうな表情で言い、リィンは苦笑していた。
その後水上バスはミシュラムの港に到着した……………
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