ハイスクールD×D 新訳 更新停止
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第6章
体育館裏のホーリー
第112話 大決戦です!
前書き
今回はイッセー達中心で、明日夏が暴れるのは次回です。
決戦日、俺達は部室から明日夏達に見送られながらゲームフィールドへと転移してきた。
「着いたのか?」
そこはだだっ広い場所で、離れた場所に神殿みたいのがあった。
「……ここが本陣と言う事でしょうか?」
木場が訝しげに言う。
ライザーの時も転移した場所が本陣だったし、そう言う事なんだろう。
なんにせよ、俺は俺の仕事をするだけさ!
と、勇んでみたものの、いつまで経っても開始の合図が無い。
「……妙ね? 審判のアナウンスも無いなんて……」
「な、何か問題でもあったのでしょうか?」
首を傾げていると、神殿とは反対の方向に魔法陣が出現する!
しかも、一つじゃなく、沢山の魔法陣が出現していた!
「……アスタロトの紋章じゃない! 気を付けて!」
部長の言葉に俺達はそれぞれの得物を出して一斉に身構える。
「……この紋章、記憶が確かなら……」
部長が紅いオーラを身に纏いながら視線を鋭くする。
魔法陣から大勢の悪魔達が現れる!
「『渦の団』の旧魔王派に系統した者達よ!」
それってつまり、テロリストって言う事かよ!
「忌々しき偽りの魔王一族グレモリー。ここで散ってもらおう」
悪魔の一人が部長に挑発的な物言いをする。
クソッ! 一体どうなってんだよ!?
「キャッ!」
「ッ!?」
アーシアの悲鳴が聴こえ、振り返ると、アーシアの姿が無かった!
「ハッ! アーシアッ!?」
ふと、上を見上げると、アーシアを捕らえたディオドラの姿があった!
「ディオドラ!」
「テメェ!」
「やあ、アーシア・アルジェントはいただくよ」
「これはどういう事!」
「君達はここで『渦の団』達に殺されるんだよ」
部長の怒り混じりの問いに奴は醜悪な笑みを浮かべて答える!
こいつ! 『渦の団』と通じてたって言うのかよ!
「最低だわ! しかも、ゲームまで汚すなんて、万死に値する! 何よりも、私の可愛いアーシアをッ!」
部長の怒声を聞いても奴はどこ吹く風と言った様子だった。
「まあ、この数を相手に最後の足掻きをしてくれたまえ。僕はその間にあの神殿でアーシアと契る。意味は分かるかな? 赤龍帝」
野郎ッ! ふざけた事ぬかしやがって!
「イッセー、アスカロンを!」
「おう!」
ゼノヴィアの言葉に俺はすぐに反応し、篭手からアスカロンを取り出してゼノヴィアに投げ渡す!
「アーシアは私の友達だ! お前の好きにはさせん!」
ゼノヴィアがディオドラへと斬り掛かるが、奴はあろう事かアーシアを盾にしやがった!
「ッ!?」
ゼノヴィアは慌てて剣を逸らすが、それによって大勢を崩してしまう!
「……卑怯な!」
ゼノヴィアはディオドラを睨むが、奴は笑みを浮かべるだけで、そのままどこかへと転移してしまった!
「アーシアアアアアアッ!?!?」
俺はその場に崩れ落ちてしまう。
「クソォォッ!? ……何がアーシアを守るだ! また俺は! 俺は!」
「イッセー君、今は目の前の敵が先だ! その後、アーシアさんを助けに行こう!」
「ッ! ……ああ! そうだ! そうだよな!」
木場に激を入れられ、くずおれていた俺は立ち上がる。
そうさ。あいつをぶん殴ってアーシアを助ければ良いんだ。幸い、場所も分かってる事だしな。
とは言え、その為には、俺達を囲う悪魔達をなんとかしなければならない。
クソッ! 急いでるって言うのに、数が多過ぎる!
「キャッ!」
朱乃さんの悲鳴が聴こえ、何事かとそちらに視線を向けると、ローブ姿で隻眼の爺が朱乃さんのスカートを捲ってパンツを覗き見ていた!
「うーん、良い尻じゃな。何よりも、若さ故の張りがたまらんわい」
「どっから出てきやがった! このクソ爺!」
俺は爺から朱乃さんを引き離す!
ふと、俺はその爺さんに見覚えがある事に気付く。
「オーディン様!」
部長が口にした爺さんの名前を聞いてようやく思い出した。
冥界でロスヴァイセさんがお付をしていた北欧の神様だ。
「ロキの件では大義であったのう」
「どうしてここへ?」
「フホホホホホ。ディオドラ・アスタロトが裏で不逞の輩と手を組んでおったのが分かってな」
爺さんはそう言いながら悪魔達の前へと出る。
「ほーれ、儂は北欧の主神じゃぞ! 討ち取れば名が挙がるぞい!」
それを聞いた悪魔達が一斉に魔力の弾を撃ち出してきた!
それを爺さんは杖を地面にトンと突いただけで魔力の弾を打ち消し、その余波で悪魔達の何人かが消し飛んだ!
爺さんは構わず続ける。
「で、この機会に一網打尽にしたいからとアザゼルの小僧に頼まれたんじゃ」
「では、このゲームは……」
「連中に乗っ取られたと言う事じゃ。で、今は各勢力の面々が協力態勢で迎え撃っておる」
もしかしなくても、俺達って囮に使われたのか?
「とっとと行かぬか。爺が最前線で援護すると言っておるのじゃ。めっけもんだと思え」
「でも、爺さん一人で…っ!?」
俺が心配を口にしようとしたら、杖で頭を小突かれる。
「生まれて十数年の赤ん坊が儂を心配するなど千年早いわ」
爺さんが悪魔達を見据えると、その手に槍が出現する!
「グングニル」
槍から極大なオーラが放出され、数十人の悪魔が消し飛ばされた!
す、すっげぇ……!
「オーディン様、では、お言葉に甘えさせていただきます」
「なーに、爺も偶には運動せんと、体が鈍るんでな」
部長が爺さんに一礼すると俺達に言う。
「神殿まで走るわよ!」
「「「「「「はい、部長!」」」」」」
俺達は部長に応じて、神殿に向けて走り出した。
道中、魔法陣を介した通信が入る。
『無事か?』
「アザゼル先生!」
『言いたい事もあるだろうが、とにかく聞け。そのフィールドだけじゃなく、VIPルーム付近も旧魔王派の襲撃を受けている。これも事前に予測していた。待機していた各勢力の戦士が連中を撃退している』
「……事前にね」
『最近、現魔王に関与する者達が不審死するのが多発していた。裏で動いていたのは『渦の団』旧魔王派』
「……グラシャラボラス家の次期当主の事故死も……」
『ああ。連中の仕業だ』
「あのディオドラの魔力の急激な上昇も……」
『オーフィスの力による物だろう。それらの事から、今回のゲームで何かが起きるだろうと予見できたんだ。悪かったな。作戦上、お前達に事情を知らせる訳にはいかなかったんだ』
「も、もし僕達に何かあったらどうするんですかぁぁ?」
ギャスパーは震えた声で先生に訊く。
『この作戦の立案者は俺だ。責任は取る。ま、俺の首一つじゃ軽過ぎかもしれんがねぇ』
なっ! 先生、死ぬつもりだったのかよ!
そこまでの覚悟があってこの作戦を立案したのか。
『とにかく、事が収まるまで隠れてろ。後は俺達がテロリストを始末する』
「先生も戦場に来てるんですか?」
『同じフィールドにいる。広大だからかなり離れてはいるが。お前達からそれほど離れてない場所には明日夏達もいる』
「明日夏達も!?」
『今繋げてやる』
すると、すぐに明日夏の声が聴こえてきた。
『どうやら無事みたいだな、イッセー』
「明日夏、お前も来てるのか!」
『ああ。千秋や兄貴、姉貴、それから雲雀さんも来てる。別の場所じゃ天界側の戦士としてイリナ達も来てる。とにかく、無事ならアザゼルの言う通り、隠れてろ』
「そうもいかねえんだ!」
『ッ! まさかアーシアが!』
「ああ! ディオドラに連れ去られちまった!」
『……なんだと!』
『チッ、できれば避けたかった事態になったか!』
「先生、アーシアは俺の仲間です! 家族なんです! 俺は、俺はもう二度とアーシアを失いたくない!」
「私達はアーシアを救うわ! 私の眷属を奪うと言う事がどれほど愚かな事か、教え込まないといけないのよ!」
『ま、そう来ると思ったが』
『どのみち、大人しく隠れてるつもりは無かっただろうしな。そう思って千秋と姉貴がそちらに向かわせて正解だな。部長、途中で合流してください』
「分かったわ」
『やれやれ、後は俺がなんとかする。存分に暴れてこい! 特にイッセー。赤龍帝の力をあの裏切り小僧に見せつけて、絶対にアーシアを取り戻せ!』
「オッス!」
『ついでに、アーシアにちょっかいを出すとどうなるか、あのお坊ちゃんをその例第一号にしてやれ』
「おう!」
待ってろよ、アーシア! すぐに行くからよ!
━○●○━
「さてと」
イッセー達との通信を切った俺は障壁の様に周囲に展開していた緋のオーラを収める。
目の前には三桁に届き得る数の中級・上級の悪魔達が忌々しげな表情で俺を睨んでいた。
通信中の間攻撃されたが、オーラの障壁で奴らの魔力の弾を防いでいたので問題は無かった。魔力による砲撃がダメならと、手に持つ剣や槍で接近戦を仕掛けてくる奴もいたが、オーラで得物を絡め取ったところをマジックスラッシャーで斬り捨てた。
それを見てから、俺の通信が終わるまで悪魔達は攻めあぐねていた。お陰で通信に集中できた。
「イッセー君達は無事だったかい?」
少し離れた所で戦ってた兄貴が俺の近くにやって来て訊いてくる。
「ああ。ただ、アーシアがディオドラの奴に連れ去られた。今はアーシアを助けにディオドラの下に向かってる」
「千秋と千春を向かわせたのは正解だったね」
「ああ」
「僕達も行きたいところだけど……」
「……こいつらを連れて行く訳にもいかねえしな。それに、イッセー達なら心配はいらねえだろ。あんなお坊ちゃんに後れを取る事は無いだろ」
「だね。なら、僕達は僕達がやれる事をやろうか」
そう言い、兄貴は風を纏って後方の悪魔達の方に向かって行った。
「そうだな」
いなくなった兄貴に答えると同時に眼前の悪魔達を睨む。
「早速の実戦投入か……」
俺の体から緋のオーラが立ち上る。
それを見て悪魔達は一斉に警戒心をあらわにするが、俺はただオーラの形状をあるものへと型どっていく。
俺が型どったものを見て悪魔達が驚愕する。
「狼狽えるな! 所詮は瞞しだ!」
「瞞しかどうかは……その身で味わって確認しな!」
━○●○━
先生と明日夏との通信の後、アーシアを助ける為に俺達はアーシアとディオドラがいる神殿へと続く階段を登っていた。
「イッセー兄!」
「ヤッホー」
「千秋! 千春さん!」
そこへ千秋と千春さんが千秋の操る風に乗ってやって来た。
「見た感じ、アーシアちゃんが件のお坊ちゃんに連れてかれたっぽいな?」
千春さんの問いに俺達は頷く。
「私達はこのままアーシアを助けに行くわ」
「私達も行きます!」
「ええ。お願いするわ」
そのまま千秋と千春さんと合流し、そのまま二人も一緒に俺達は神殿に辿り着く。
神殿に入ると、ローブ姿の人影が十五名いた。
ディオドラの眷属か?
『来てくれると思ったよ。リアス・グレモリーとその眷属。なにやら余計なオマケもいる様だけど、まあ良い』
「ディオドラ!」
神殿中にディオドラの声が響くが、ディオドラの姿は見受けられない。
『さあ、ゲームの開始だ』
「……ゲームですって?」
「……あいにくレーティングゲームは中止となったわ。……貴方のお陰でね」
『だからその代わりさ。戦わなければアーシアは僕の物になってしまうぞ?』
アーシアを人質にしやがって! この野郎!
「良いわ。貴方の戯れ事に付き合ってあげる。私の眷属がどれほどのものか、刻み込んであげるわ」
『フフフ。じゃあ、ルール説明をするよ?』
ディオドラがそう言うと、ディオドラの眷属達の後ろにある二つの扉が同時に開き、ディオドラの眷属達は転移して消えた。扉の先にはまた階段が続いており、その先にはまた神殿があった。
『試合は二試合同時に行おう。右は『戦車』二名と『騎士』二名と『兵士』八名。左は『女王』と『僧侶』二名を出すよ。そちらの振り分けはご自由に。そこの眷属じゃない二人も是非参加しなよ。こっちも眷属じゃない特別ゲストがいるからね。彼女達の次の相手になるよ。その次は『王』である僕直々が相手をしてあげるよ』
特別ゲスト?
まあ、誰が来ようとぶっとばすだけだ!
「イッセー、小猫、ゼノヴィア、ギャスパー、千秋、千春さんは右の神殿へ」
「十二対六ですか!?」
部長の振り分けにギャスパーが驚愕の声を上げる。
まあ、気持ちは分かるけどな。相手の数はこちらの倍だからな。
「イッセー君一人で駒八個分だから、パワーバランス的には、こちらが有利なはずだ」
木場がギャスパーを安心させる様に言う。
『じゃあ、始めようか』
その後、俺、小猫ちゃん、ゼノヴィア、ギャスパー、千秋、千春さんは右の神殿へ、部長、朱乃さん、木場は左の神殿へと向かう。
神殿に着くと、さきほど転移して消えたディオドラの眷属が十二人いた。
『ちなみに『兵士』全員『女王』にプロモーション済みだから。念の為にね』
なっ! 最初から『女王』にプロモーションしてるのかよ!?
『最初から公平な勝負なんて期待していないわ』
部長の言う通りか。これは野郎が用意したゲームだからな。
『『戦車』二名と『騎士』二名はゼノヴィアと千春さんに任せるわ』
「了解した!」
「オッケー!」
指示を受けた二人は『戦車』と思しき二名と『騎士』と思しき二名の前に立つ。
『小猫と千秋は『兵士』に囲まれるのを防ぐのよ』
「「はい!」」
小猫ちゃんと千秋はそれぞれ炎と風を出して『兵士』達を牽制する。
『イッセー、ギャスパーに貴方の血を与えて』
俺は自分の指を少し噛み切って血を出し、ギャスパーに舐め取らせる。
血を飲んだギャスパーの雰囲気が変わる。
よし! これで準備万端だぜ!
『それからイッセー、あのね…』
「?」
俺は部長の言葉に耳を傾ける。
「マジっスか! 良いんですね!? 本当に!? いよっしゃー! プロモーション『女王』!」
部長の言葉に歓喜する俺は高々と叫んで『女王』へとプロモーションする!
そして俺は『兵士』達目掛けて駆け出す!
「小猫ちゃん! 千秋! 援護してくれ!」
「「え?」」
俺の行動に訝しげになりながらも、二人は炎と風で援護してくれる。
そして、二人の攻撃で十分に身動きが取れない中、俺は『兵士』達の体にタッチしていく!
全ての『兵士』達にタッチし終えた俺は高々とあの技の名を叫ぶ!
「行くぜ! ドレェェェス・ブレイク!」
パチン。
指を鳴らした瞬間、眼前の『兵士』達のローブが弾け飛び、全裸となる!
グフフフ。部長から女性プレイヤーが戦いたがらなくなるからとゲームでの使用を禁じられた俺の必殺技、洋服破壊!ディオドラの眷属がライザー同様全員女性なのは知っていたから見事に決まったぜ!
「これで戦闘はできま…」
女性である以上、全裸になってはもう戦えまいと高を括って、その『兵士』達の裸体を存分に拝もうとした俺の眼に……全裸にも関わらず攻撃を仕掛けてきていた『兵士』達がいた!?
「ええっ!?」
「フッ!」
「ぐふぉおっ!?」
『兵士』の一人の足蹴りが顔面に炸裂する!
ただ、その際、思わぬ絶景を見させていただきました!
「……やっぱり、最低です」
ぐっ! 小猫ちゃんの痛烈なツッコミもいただいてしまいました。
起き上がった俺の眼前では他の『兵士』の子も全裸なのに普通に動き回っていた!
な、なんで全裸なのに、普通に戦ってるの、この子達!?
しかも、俺は『兵士』達の全裸に視線が釘付けになってしまい、『兵士』達の攻撃をかわせず、もろにくらってしまっていた!
クソッ! これじゃ、むしろ俺の方が集中できねえ!?
『ああ、君の下品な技は対策済みだから』
「っ! なんだと!?」
『彼女達から羞恥心を取り除く術を掛けておいたのでね』
なっ! そんな方法で俺の洋服破壊が破られたって言うのか!?
俺の必殺技にそんな弱点が!?
「イッセー兄ッ!」
千秋が俺を囲む『兵士』達を風で牽制しながら俺の傍まで来ると、俺に抱き付いて、俺ごと風で飛んで、『兵士』達から距離を取る。
「イッセー兄、大丈夫!」
「ああ、なんとか。ありがとう、千秋。それにしても……」
俺達は『兵士』達の方を見る。
洋服破壊が破られたのも驚きだけど、こいつらの動きが非常に息の合ったものであった事にも驚きだ。
ゲームの記録映像でも完全な連携力を発揮していた。
「……ま、まるで心の声か何かで通じ合ってるみたいです!」
ギャスパーが言った事は一理あるかもな。会話も身振りもせずにこれだけの連携力を発揮するとなると、その可能性が高そうだ。
……心の声か。よし! 今こそあれを試す時だ!
俺は『赤龍帝の篭手』の力をパワーにではなく、頭に注ぐ! 魔力を! 俺の欲望を!
「煩悩開放! イメージマックス! 広がれッ! 俺の快適夢空間ッ!」
俺を中心に謎の空間が広がっていく!
「こ、これは!?」
「なんなの!?」
広がった空間に『兵士』達は警戒心をあらわにする。
俺はそんな『兵士』達のおっぱいへと語り掛ける。
そこのおっぱいさん達、右から順にこれから何をするのか教えておくれ?
『まず、邪魔な吸血鬼の眼を封じるの♪』
『三人掛りで一気に畳んじゃえ!』
『吸血鬼を倒す倒す!』
成功だ!
「あの子とあの子とあの子はギャスパーを狙っている!ギャスパー、停止させろ!」
「は、はいぃぃぃ!」
俺が指さした子達がギャスパーによって停止させられる!
『あの子達、停止させられちゃった!』
『まさか、私達の心を読んだ!?』
『じゃあ、私達が猫又を狙ってるのがバレちゃうかも!?』
さらに他のおっぱいからも声が聴こえる!
「ギャスパー、そっちの三人は小猫ちゃんを狙ってるぞ!」
「は、はいぃぃぃ!」
小猫ちゃんを狙おうとしていた子達もギャスパーによって停止させられる。
「貴様!やはり、私達の心を!?」
「読み取れるのか!?」
残った『兵士』二人が驚愕の表情をしながら俺に訊いてくる。
「違う。俺は尋ねただけだ。君達の胸の内を…否、おっぱいの声を!」
冥界での修業中、俺は強くなる為にあらゆる欲望を断ち切った。だが、それは逆に女の子と話したい、会いたいと言うところから始まり、圧倒的なまでのおっぱいへの渇望を自覚するだけだった。終いには、おっぱいと会話すると言う妄想にまで取り憑かれる始末。
だが、その結果、俺はよりエロへの心理に近付いた!
そして、編み出されたのがこのおっぱいと話せる俺の新たなる必殺技!
「これぞ新必殺技!名付けて、乳語翻訳!」
これを聞いて、相手の『兵士』二人が戦慄していた。
どんなに策を弄しようと、君達のおっぱいが全て教えてくれる。
しかも、そこに仲間の連携が加われば、こうも圧倒的になれる。
洋服破壊と合わせて、女性限定なら俺は無敵になれるぜ!
「……えい!」
「「きゃっ!?」」
戦慄して隙だらけの『兵士』二名を小猫ちゃんが撃破し、俺の事を半眼で見る。
「……凄いけど……やっぱり、最低です」
あう! 小猫ちゃんの容赦無い痛烈な一言!
『……これって……私達の胸の内も筒抜けって事……なのかな……?』
なんか、弱々しい声が聞こえ、そちらの方を見ると千春さんがいた。
えっ! 今のって、千春さんのおっぱいの声!? 確かに、俺に弱味を見せる時には弱々しい雰囲気になるけど、それでも、全然キャラが違う様な……?
「どったの、イッセー? 私のおっぱいがなんか言ってた?」
思わず千春さんのおっぱいを凝視していた俺に千春さんが首を傾げながら訊いてくる。
その瞬間、相手の『騎士』二人がこちらを見て隙ができてしまった千春さんに手に持つ剣で襲い掛かろうとしていた!
「はい、二名様いらっしゃいませ♪」
だが、千春さんが不敵に笑いながらそう言った瞬間、『騎士』二人の足下から大量の水が出てきて、『騎士』二人を包み込んでしまう!
「水牢。あんまり藻掻かない方が良いぞ。すぐ酸素不足になって苦しくなるから」
そう言われても、『騎士』二人は必死に水の牢屋から抜け出そうと藻掻いていた。
「まさかの『兵士』の全滅で焦ってるところに、隙だらけの敵。良い餌だったろ?」
千春さんは相手をああやって封じ込める為にわざと隙を見せたって事か。
先生が言ってたな。俺達みたいなパワータイプはテクニックタイプに注意するべきだって。自慢のパワーも搦め手で封じ込められたり、カウンターで返されたりするかもしれないからだ。
千春さんは間違い無く、搦め手で相手を封じ込めるタイプの使い手だ。敵じゃなくて良かった。
「……『兵士』が……全滅だと……!?」
「『騎士』までもが……!?」
残る戦車の二人は自分達以外の眷属が戦闘不能になった事で俺達から距離を置く。
「これで心置きなく開放できるな」
ゼノヴィアがデュランダルのオーラを高めながらかつて無い程のプレッシャーを放つ。
「……私は最初に出会った時、アーシアに酷い事を言った。魔女だと。異端だと。でも、アーシアはそんな私を迎えてくれたんだ! 友としてね!」
ゼノヴィアは異空間から俺が渡したアスカロンを取り出す。
デュランダルのオーラに触発されたのか、アスカロンのオーラもどんどん高まっていく。
「さあ、行こう! デュランダル! アスカロン! 私の親友を助ける為に! 私の想いに応えてくれぇぇぇぇッ!!」
二本の聖剣から強大な聖なるオーラの光の柱が立ち上り、天井を突き破る!
ゼノヴィアはそれを一気に『戦車』二名へと振り下ろす!
聖なる波動が『戦車』二名を飲み込み、後に残ったのは、ゼノヴィアの攻撃で半壊した神殿だけだった。
「ス、スッゲェ……」
「悪魔じゃなくても、あの一撃は必殺過ぎるなぁ」
ゼノヴィアの一撃、その威力に思わず唖然とする俺と感嘆する千春さん。
とにかく、これで相手は全滅だ!
千春さんの水の牢屋に囚われた『騎士』二名も長く呼吸ができなかった為に、酸素不足で意識を失っていた。
数ではこちらが圧倒的に不利だったのに、いざ戦ってみれば、最初こそ苦戦したが、こうも圧倒してしまうなんて!
これが今の俺達の力か!
こっちはなんとかなったけど、部長達の方は大丈夫なのか?
「部長、こっちはなんとか勝てました!」
『そう。流石ね、みんな。こっちは……まだ時間が掛かりそうだわ……!』
「えっ!?」
『……『女王』の後ろに控えてる『僧侶』二名分の治癒でこちらのダメージが相殺されて、攻めあぐねてる状況なんだ。どうにかして、『女王』と『僧侶』達を同時に倒せれば良いんだけど……』
マ、マジかよ!? 部長達でダメなら、それこそ、ゼノヴィアみたいなのじゃないと無理じゃねえかよ!
クソッ! 助けに行きたいけど、ここからじゃ遠過ぎる!
苦慮している俺を小猫ちゃんがちょんちょんと小突いてくる。
「……私に考えがあります」
しゃがむ様に促されたので、しゃがむと小猫ちゃんが耳打ちしてきた。
「それで良いの?」
「……はい。それで朱乃さんはパワーアップします」
そうなのか?
よく分からんが、小猫ちゃんが言うのならやってみるか。
「朱乃さーん」
俺は通信用の魔方陣越しに言う。
「えっと、その人達勝てたら、今度の日曜デートしましょう!」
俺は小猫ちゃんに言われた通りに言う。
にしても、俺とデートするくらいで朱乃さんがパワーアップするとは……。
ドゴォォォォン!
「え?」
突然の破砕音に驚き、部長達のいる神殿の方を見ると、天井を突き破って雷が迸っていた!
魔方陣越しに朱乃さんの弾んだ様子の声が聴こえてくる。
『……うふふ。うふふふふふふふふふふふふ!』
えっ! どう言う事!?
『イッセー!? 私と言うものがありながら!?』
すると、部長が涙声で訴えてくる!
『私の愛がイッセー君に通じた証拠ね』
『デート一回くらいの約束で雷を迸らせる卑しい朱乃になんか言われたくないわ!』
『……未だ抱かれる様子も無い貴女に言われたくもないわ!』
『そんな事無いわ!この間だって…………ベッドの上で……胸を沢山触ってくれたわ!』
『イッセー君の寝相が悪くてそうなっただけではなくて?』
『キ、キスしたもん!二回も!』
魔方陣越しにお姉様方のケンカの内容が聴こえてくる。
ま、また、お姉様方が下僕の俺を取り合ってケンカを始めてしまった!
『凄いよ! 二人の魔力がどんどん増大していくよ!』
木場の言う通り、朱乃さんの雷だけじゃなく、部長の滅びの魔力までも天井を突き破って増大していた!
『『うるさいッ!』』
二人の怒声が響いた瞬間、滅びの魔力と雷光の魔力が神殿を破壊し尽くした!
「な、何があったんだ、木場!?」
『えっと……相手の『女王』が自分達の事をよそにケンカしている事に我慢できなかったのか二人にもの申したら……』
二人の口論に口を挟んでしまったが為に、二人の怒りを買ってしまったと。
「触らぬ神…っと言うより、触らぬ女のケンカに祟なしってか?」
千春さんの言う通り、ケンカしているお姉様方はそっとしておくに限ります。
━○●○━
「死ねぇぇッ!」
「フン」
悪魔の槍の一撃を『十字義肢』の腕で掴んで防ぐ。
そのまま引き寄せ、悪魔の額を『十字具』モデル・ガンで撃ち抜く。
「……まだ結構いるな」
俺の視線の先には未だ膨大な数の悪魔がいた。
ミカエル様から『渦の団』の討伐を命じられ、ユウやイリナ、アルさんと共にこのゲーム用のフィールドに来ていた。
「イッ君達、大丈夫かな?」
ユウが俺の傍に来るなりそう訊いてくる。
「……なんで毎回俺に訊く?」
「ええー、だってライ君だって本当は心配…」
バン!
「っと。そう何度もビックリしな…」
ドサッ。
「きゃあ!?」
背後から倒れ込んできた悪魔に驚くユウ。
今の銃撃はユウを黙らせるのと同時にユウの背後から襲い掛かろうとしていた悪魔を狙ったものだ。
「……他人の心配よりも自分の心配してろ」
「もう!」
俺とユウは背中合わせで襲い掛かってくる悪魔共を確実に屠っていく。
「ハァァッ!」
「フゥゥッ!」
そこへイリナとアルさんが悪魔共を斬り捨てながら俺達の下へと来る。
「少々数が多いな……」
アルさんの言葉に俺達は苦々しい表情になる。
いくら有象無象と言っても、腐っても上級悪魔も混じっているからな。
「避けろ!」
「「「ッ!?」」」
ドゴォォォォン!
突然のアルさんの叫びに慌ててそこから離れると、巨大な影による一撃が俺達のいた場所に炸裂する!
「なんだこいつは!?」
そこにいたのは、巨大な肉体を持った巨人とも言える存在だった。
「これは!」
「知ってるの、アルさん!?」
どうやら、アルさんはこの巨人に覚えがあるみたいだ。
「お久しぶりですね」
驚く俺達に投げ掛けられる丁寧な口調の挨拶!
声がした方を向けば、メガネを掛けた科学者の様な男がいた。
「私の事、覚えていますか?」
「カリス……パトゥーリア……!」
アルさんが男の名を呼ぶ。
カリス・パトゥーリア。コカビエルの聖剣強奪事件の際、コカビエルの協力者の一人だった男。死人を戦う為の兵士にしようなんて事をする胸糞悪い男だ。
「……ここにいると言う事は……」
「ええ。『渦の団』の、レイドゥンさんの所にいさせてもらっています」
レイドゥン、士騎明日夏とその兄弟に因縁がある『渦の団』に所属する男。
だが、俺とユウは他に気になる事があり、カリス・パトゥーリアを睨む。
「ああ、ベルさんですか?」
そう、この男は俺達の同期であり、そして、浅からぬ間柄でもあったベルティゴ・ノーティラスことベルと共に行動していた。
「彼なら『渦の団』にはいませんよ。あの後、どこへと姿を消してしまいましたからね」
……そうか。あいつはいねえのか。
まあ良い。いずれ見付けて、因縁にケリはつける!
今はこいつだ!
「フフフ。アルミヤさん。貴方まで転生天使にならなくてホッとしていますよ。個人的には人間にしか興味ありませんからね。さあ、あの時の借りを返すと同時に、貴方の体を私の研究の為に有効活用させていただきますよ」
奴はそう言うと同時に、さっきの巨人と同型の巨人と死人の兵士を魔法陣から複数出現させる!
「気をつけろ! あの巨人も手強いが、あの男も十分に手強い!」
アルさんが警戒心を最大にしながら言う!
あんたがそこまで言う程かよ! こいつらは!
俺達も警戒心を最大にまで上げる。
クソッ! 周りには悪魔もいるってのに!
「行け」
奴のその言葉と同時に巨人が三体襲い掛かってくる!
俺達はそれに身構えた瞬間…。
グォオオオォォォオオオオッ!
突然現れたドラゴンが巨人の首を三体もろとも喰いちぎってしまう!
それと同時にドラゴンは消えてしまう。
「……久しぶりだな……カリス」
この場に掛けられる静かな声音。
声がした方を向くと、そこには緋色のオーラを迸らせている士騎明日夏がいた。
後書き
覚えている人もいれば、覚えていない人もいるかもしれませんが、カリスの再登場です。
次回は明日夏VSカリスです。
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