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真田十勇士

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巻ノ五十一 豚鍋その六

「それを使うぞ」
「わかりました」
「それでは」
「帰りはその道を使い」
「帰りましょう」
「まずは博多まで」
 十勇士達も応える、そしてだった。
 一行は薩摩も見ていた、その中で幸村はあることに気付いた。その気付いたことは何かというと。
「城があってもな」
「はい、そうですな」
「さして大きな城はなく」
「本城もです」
「大きくせぬ」
「これといって」
「うむ、甲斐と同じじゃな」
 幸村はこうも言った。
「それは」
「ですな、言われてみれば」
「武田家もそうでしたな」
「人は城、人は堀、人は石垣」
「そうした考えですか」
「島津家もな、だからな」
「それで、ですか」
「この家も堅城を築くのではなくですか」
「攻める」
「そうした家ですか」
「その様じゃ、これも一つの考えじゃ」
 まさにというのだ、幸村はこうも言った。
「武田家と同じくな」
「大坂城の様な堅城もありますが」
「こうして人は城、人は石垣もですな」
「考えですな」
「そういうことですな」
「薩摩隼人は猛者揃いじゃ」
 まさにというのだ、薩摩の者達はよくこう言われる。
「その猛者揃いの者達だからこそな」
「城にも石垣にもなる」
「堀にもですな」
「なる」
「そういうことですな」
「確かに城は必要じゃ」
 幸村も否定しない、彼の真田家にしても上田城という決して大きくはないが相当な堅城を持っている。そのうえでこうも言うのだ。
「しかしその城もな」
「人ですな」
「人がどうかですな」
「人がいなければ守れぬ」
「そうなのですな」
「そうじゃ、確かな者が守らなければ」
 到底というのだ。
「どの様な城も守れぬ」
「左様ですな」
「やはりまずは人ですか」
「人がどうであるべきか」
「そのことが大事ですな」
「そういうことじゃ、つまり島津家には人がおる」
 間違いなくというのだ、このことは。
「そしてその者達が守っておるのじゃ」
「この薩摩を」
「そして大隅、日向も」
「そういうことですな」
「そうじゃな、土地は痩せ貧しいが」
 島津家はだ、だが幸村はこれで言葉を終わらせはしなかった。
 共にいる十勇士達にだ、こうも言うのだった。
「しかし人はおる」
「そしてその人が守っている」
「そういうことなのですな」
「そしてその島津家がですな」
「戦うのですな」
「そして強い」
 幸村はこのことをまた言った。 
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