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真田十勇士

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巻ノ五十一 豚鍋その二

「だからよいな」
「承知しております」
「では酒はここは然程飲まずに」
「豚肉を楽しみましょう」
「そちらを」
「そうしよう、あとこの味噌は」
 幸村は肉が漬けられている味噌のことにも言った。
「麦味噌じゃな」
「麦から作ったですな」
「その味噌ですな」
「この九州の味噌ですな」
「味噌といっても違うな」
 国によってというのだ。
「ここの味噌は麦からじゃな」
「米があまり採れぬ故」
「それ故ですな」
「麦味噌ですな」
「麦から作った味噌ですな」
「そうじゃな、この味噌も美味い」
 幸村は味噌の味も楽しみつつ言う。
「近頃味噌も多く安く手に入る様になったがな」
「ですな、確かに」
「我等の国でも」
「味噌が安くなりました」
「よく手に入る様になりました」
「うむ、よいことじゃ」
 幸村はこのことを微笑んでいいとした。
「やはり味噌はよい」
「美味いですな」
「これ一つで味が変わります」
「匂いも消しますし」
「実によいです」
「そうじゃ、それだけで酒の肴にもなるしな」
 このこともというのだ。
「よいことじゃ、だからな」
「それで、ですな」
「今もですな」
「こうして味噌の味も楽しめる」
「そのこともですな」
「よいことじゃ、それでこの焼いた肉の後は」 
 次はというと。
「鍋じゃが」
「豚鍋ですな」
「それですな」
「そちらも楽しもうぞ」
「はい、是非」
「鍋の方もです」
「楽しみましょうぞ」 
 十勇士達も応える、そしてだった。
 皆まずは味噌漬けを焼いたものを楽しんだ、そうしてその後でだった。
 鍋となった、豚肉以外に茸や青菜等が入っている。その鍋の味もだった。
「いや、これも」
「鍋もまたよいのう」
「実に」
「煮た豚肉も美味い」
「こちらもな」
「焼いたのも美味いが」
「煮たものも美味いぞ」
「うむ、確かにな」
 幸村も食いつつ言う。
「豚鍋も美味い」
「やはり猪に煮た味ですが」
「猪より癖がありませぬな」
「しかも柔らかい」
「よいものですな」
「そうじゃな、豚肉は他の国では食わぬが」
 それでもというのだ。
「明等でよく食う訳がわかったわ」
「美味いからですな」
「だからこそですな」
「本朝以外では食べている」
「そうなのですな」
「そうじゃな、豚は南蛮でも食うという」
 だからだ、先程幸村は明等と言ったのだ。豚を食うのは明だけではないということを知っているからである。 
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