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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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第43話

~オルキスタワー~



「……お待ちしておりました。特務支援課の方々ですね?」

部屋の前まで来るとシェラ元帥がロイド達を見て尋ね

「はい。」

「……殿下がお待ちです。どうぞ、中へ。」

「失礼します。」

「殿下の警備、お疲れ様です、シェラ様。」

シェラ元帥に促されたエリィとリィンは会釈をした後、部屋の中へ入っていった。

「うむ、よく来たな!……それとついにお前もクロスベルに戻ってきたようだな、ティオよ!」

「……お久しぶりです、リフィア殿下。」

リフィアに視線を向けられたティオは会釈をし

「うむ、このような形とはいえ、また再会できて何よりだ。―――さあ、遠慮なく座るがよい。」

「失礼します。」

リフィアに促されたロイドは軽く頭を下げた後仲間達と共にソファーに座り

「エリゼ、紅茶と菓子を。」

「わかったわ。」

リフィアの後ろに控えていたエリゼはリフィアの指示に答えた後、全員分の紅茶と菓子を用意し、ロイド達はご馳走になった。

「……美味しい。」

「香りや味とかあたし達が普段飲んでいる紅茶とは段違いですよね。」

「さすがは皇族の専属侍女だけはあるね。」

紅茶を飲んだエリィ、ノエル、ワジは口元に笑みを浮かべ

「それに菓子も上手いぜ!」

「……甘さも控えめで、私にとってもちょうどいいです。」

「これもエリゼが?」

ランディは嬉しそうな表情で言い、ティオは静かな笑みを浮かべ、リィンは驚きの表情でエリゼを見つめて尋ねた。

「はい。……お口に合いましたか?」

「ああ、とても美味しいよ。……父さん達に出したらきっと喜ぶよ。」

「フフ、ありがとうございます。」

リィンの言葉にエリゼは微笑み

「わざわざご馳走して頂き、ありがとうございます。――――それでリフィア殿下。本日は一体どのようなご用件で俺達を?」

ロイドは口元に笑みを浮かべてリフィアを見つめて言った後、真剣な表情で尋ねた。



「――――なに。エレボニアとカルバードに対する牽制をしておこうと思ってな。」

するとリフィアは口元に笑みを浮かべて答え

「……っ……!」

「なっ!?」

「おいおい………」

「………………」

「リフィア殿下……」

「へえ………具体的には何をするんだい?」

リフィアの言葉を聞いたロイドとノエル、ランディは表情を厳しくし、ティオとエリィは複雑そうな表情をし、ワジは口元に笑みを浮かべて尋ねた。

「――――エリゼ。ロイド・バニングス、エリィ・マクダエル、ティオ・プラトー、ランディ・オルランドの4名にあれを渡してやれ。」

するとリフィアは高貴な雰囲気を纏ってエリゼに指示をし

「―――かしこまりました。」

指示をされたエリゼは会釈をした後、近くに置いてある鞄から4つの小さな小箱と薄いミラの札束を出した後ロイド、エリィ、ティオ、ランディにそれぞれ小さな小箱を渡した。

「……………これは一体?」

渡された小箱を見て少しの間、考えた後ロイドは真剣な表情でリフィアに尋ね

「開けてみるがいい。」

リフィアに促された後ロイド達はそれぞれ小箱を開けた。

「これはまさか……!」

小箱の中身を見たエリィは真剣な表情で呟き

「……メンフィル帝国の皇族の方に働きを認められ、与えられる勲章だ。……けど、シェラ元帥を含めたメンフィル軍の上層部が身につけている勲章と違うな……」

リィンは驚きの表情で呟いた後不思議そうな表情をし

「リィンが知らないのも無理はない。その勲章は他国の者達がメンフィル帝国にとって”益”となる働きをした者、もしくは我等マーシルン家に恩を作った者にしか渡されない特別な勲章だからな。」

リィンの疑問にリフィアは答えた。

「………リフィア殿下もあのカルバードの大統領さんのように、領有権を主張する為にわたし達に勲章を授けるんですか……」

「ほう?やはりカルバードの狸も動いていたか。………まあ、それもあるがお前達はイリーナ様のご両親の仇であり、プリネの妹であるレンに非道なる行為を働いた”教団”の残党を滅したのだからな。メンフィル皇家たる我等マーシルン家の縁者を害した者、即ち国家に反逆する最上級の犯罪者。そんな犯罪者を討ち取った褒美でもある。」

ジト目のティオに言われたリフィアは興味深そうな表情をした後答え

「……っ……!お姉様―――イリーナ皇妃はこの事をご存知なのですか……!?」

リフィアの答えを聞いたエリィは唇を噛みしめた後、真剣な表情で尋ねた。

「当然、知っている。」

「なっ……!?」

「じゃ、じゃあ何で故郷や家族を苦しめるような事を……!」

そしてリフィアの説明を聞いたエリィは目を見開いて驚き、ノエルは厳しい表情でリフィアを見て言った。

「苦しめる?おかしな事を言うものだな。我等メンフィルは現在の所、エレボニア、カルバードの2大国からクロスベルを”保護”するつもりで動いているというのに。」

するとリフィアは意外そうな表情で答え

「”保護”……………」

「”保護”とは聞こえはいいけど、最終的にはメンフィル領にするのが目的だったり?」

「…………………」

「フム。時と場合によってはそうなるかもしれんな。」

リフィアの答えを聞いたロイドは真剣な表情で呟き、ワジは口元に笑みを浮かべて尋ね、リィンは真剣な表情で黙り込み、ワジの疑問にリフィアは答えた。

「………お言葉ですが、それはあまりにも強引ではないのですか?クロスベルの宗主国たる2大国が黙っているとは思いませんし……下手をすれば戦争の引き金を引く事になるのですよ?」

一方エリィは気を取り直した後真剣な表情で尋ね

「そうなったら、そうなったで2大国を纏めて滅ぼし、我が国の領土とするだけの事。領土が広がればこちらとしても”益”になる。我等メンフィルはその気になればゼムリア大陸全土を制圧できる戦力、国力共にあるのだからな。」

尋ねられたリフィアは不敵な笑みを浮かべて答えた。



「なっ!?」

「……反則的な戦力や国力を持つメンフィルのみ可能な超強引かつえげつないやり方ですね………」

「つーか、2大国をメンフィルが滅ぼしちまったら、とんでもない事が起きるぞ……」

「クロスベルを利用して戦争を引き起こすつもりなのですか!?お姉様はその事を知っていて何故……!」

リフィアの話を聞いたロイドは驚き、ティオはジト目で呟き、ランディは疲れた表情で答え、エリィは真剣な表情で叫んだ後信じられない表情で呟いたが

「―――エリィよ。政治に詳しいお前ならわかるのではないか?イリーナ様がメンフィルの創始者であり、メンフィルの皇族であるリウイに嫁ぐのはどういう意味であるのかを。」

「―――!!それは………………」

静かな口調のリフィアに指摘されてある事に気付いて目を見開き、複雑そうな表情をし

「皇族に嫁ぐ事、即ち”国”に嫁ぐ事にも意味する………そして”国”が決めた事なら、例え正妃と言えど、個人の感情に左右されてはいけない…………そういう事ですね?」

リィンは静かな表情で答えた後真剣な表情でリフィアに尋ね

「あ………!」

「………………(エリィ………)」

リィンの言葉を聞いたノエルは声を上げ、ロイドは心配そうな表情でエリィを見つめた。

「うむ、そういう事だ。さすがは貴族の子息と言った所か。……とはいえその年でそこまで気づく者は例え貴族の子息と言えど、あまりいない。余が信頼する優秀なる専属侍女であるお前の妹共々将来が楽しみな人材だな?余の親衛隊に所属する日を楽しみにして待っているぞ。」

「……勿体なきお言葉。殿下の期待に応えられるよう、より一層精進いたします。」

「……お褒めに預かり光栄です、殿下。」

そしてリフィアに言われたリィンは会釈をし、リィンに続くようにエリゼは静かな表情で会釈をした。

「……リフィア殿下。一つだけ、お聞きしてもよろしいでしょうか?」

「む?なんだ?」

「お姉様は今回の件を知って、なんとおっしゃっていたのですか……?」

「『クロスベルの民達に2大国が今までしてきたような事はしないで下さい』とおっしゃっていたな。……まあ、イリーナ様に頼まれなくても元よりそのつもりだがな。余もそうだがメンフィルは自国の民は平等に扱う。―――例え制圧した敵国の領土の民や”保護”した領土の民であろうとな。」

「………そうですか…………」

「エリィさん……」

「……………………」

リフィアの話を聞いたエリィは複雑そうな表情をし、ティオは心配そうな表情でエリィを見つめ、ノエルは複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「……ちなみにエリゼちゃんは今のリフィア殿下の話を聞いて、何も思わないのか?昨日会った時はリフィア殿下の行動を何度も諌めていたが……」

一方ランディは真剣な表情でエリゼに尋ね

「私はリフィアの家臣であり、メンフィル帝国に所属する者です。”母国”であるメンフィル帝国が豊かになるのなら口を挟みませんし、リフィアの判断は皇族として間違っていない至極当然かつ、”まだ保護されていない”領土の民の事まで考えている慈悲深い考えだと思っています。………私が諌めるのはリフィアのプライベートな行動だけです。第一、”国”の決定にいくら貴族の子女とはいえ、侍女ごときが口を挟める訳はありませんし、政治に個人の感情は許されません。それは兄さんも同意見でしょう?」

「……ああ。」

尋ねられたエリゼは静かな口調で答えた後リィンに視線を向け、視線を向けられたリィンは目を伏せて頷いた。

「へえ……深窓のお嬢様と思いきや、あのマリアベルお嬢さんとはまた違ったやり手なお嬢様みたいだね。」

「フフ、褒め言葉として受け取っておきます。―――それと、渡すのが遅れましたが後はこちらをお受け取り下さい。」

そして興味深そうな表情で言ったワジの言葉にエリゼは微笑みながら答えた後、ある事に気付いてロイドの目の前にミラの札束を置いた。



「なっ!?殿下!さすがにこれは受け取れません……!」

前に置かれたミラの札束を見たロイドは驚いた後真剣な表情でリフィアを見つめて言い

「安心しろ。その金は賄賂ではないし、そんな小物がするような小汚い真似をするつもりはない。その金は我等メンフィルにとっては賞金首扱いされていた”教団”の司祭であるヨアヒムを討ち取った報奨金だ。500万ミラはある。”特務支援課”の生活費の足しにでもするといい。……子供を養っているのだから、子供の将来を考えれば金はいくらあってもいいはずだ。」

ロイドの言葉にリフィアは静かな様子を纏って答えた。

「それは……………」

「……身元不明のキーアの将来を考えると、将来何か会った時用の為にお金はたくさんあった方がいいですよね……」

「……だな。ある程度の事は金で解決できる時もあるしな。」

リフィアの説明を聞いたエリィとティオは複雑そうな表情をし、ランディは重々しく頷き

「………わかりました。そういう事でしたら、ありがたく受け取らせて頂きます。――――ただし、殿下が身元不明の孤児であるキーアに”寄付”して頂いたお金としてキーアの為だけに使わさせて頂きます。」

ロイドは考え込んだ後リフィアを見つめて答えた。

「その金をどう使うかはお前達の自由だ。―――そろそろ行くといい。”鉄血宰相”がまだ残っているのだろう?」

その後ロイド達は部屋を出た。



「……お疲れ様でした。オズボーン宰相の部屋はこの通路の最奥となっております。」

部屋を出たロイド達にシェラ元帥は伝え

「……ご親切にどうも。」

ロイドの返事を聞くとシェラ元帥は部屋の中に入って行った。

「ハハ、カルバードの大統領より露骨な事をしてきたねぇ。やっぱりあのメンフィルの次期皇帝だけあって、ただのお転婆姫じゃなかったね。」

「ワジ君、そんな失礼な事を言っては駄目でしょう?………でも、正直驚きました。昨日出会った時に見せた態度とは全然態度や対応も違いましたから……」

笑いながら言ったワジの言葉を聞いたノエルはワジを注意した後複雑そうな表情で呟き

「……リフィア殿下の異名――――”聖魔皇女”は殿下が光と闇の側面――――優しさや懐の広さ、厳しさや非情な部分をはっきりと使い分けている事からそう呼ばれているそうよ。」

「なるほどな……つーか、2大国と戦争を起こしても構わないってとんでもない事を言って来たな……」

エリィの説明を聞いたランディは重々しく頷いた後目を細めて呟き

「……ひょっとしたらメンフィル帝国の本音はクロスベルを保護する事より2大国と戦争をするきっかけが欲しいのかもしれませんね。それにクロスベルを”保護”すれば、一応イリーナ皇妃に対しても気を使っている事になりますし……」

「……確かにそうかもしれないな。”百日戦役”にメンフィル帝国が参戦したきっかけも、戦争中に訪れたロレント市でリウイ陛下がエレボニア兵達に襲撃された事がきっかけだそうだからな……」

ティオは静かな表情で呟き、リィンは頷いた後真剣な表情で言った。

「……後は宰相だけだ。気を引き締め直して会いに行こう。」

その後ロイド達は宰相のいる部屋に向かい、帝国軍将校に名乗った後部屋の中に入った…………… 
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