FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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二人っきり!?
前書き
今日買ってみた午後の紅茶アールグレイが甘くなかった・・・
シリル「あれ甘くないッて書いてあったよね?」
見る?そんなところまで。
シリル「見ないね」
だろ?
ジュビア「グレイ様は甘くないからいいんですよ!!」←通りすがり
「「・・・え?」」
シリル「いや・・・グレイさん関係ないし」
俺は気になったから買ってみただけなんだけど・・・
シリルside
「んん・・・今日もいい天気だね」
戸締まりをしっかりとして家から出た俺は、太陽の光を全身で浴びるように大きく背伸びをする。
「はいはい、わかったからお腹しまいなさい」
「シャツちゃんとしまって」
「だらしないよ~」
その後ろから三匹のエクシードたちが、俺のお腹の場所を見ながらそう言う。よく見ると、背伸びをした際に赤のポロシャツの中に着ているTシャツがズボンから出ていたことで、おへそが丸見えになっていた。
「おっと」
周囲に街の人はまばらにしかいなかったため、何事もなかったかのようにシャツをズボンの中にしまっていく。
「お前、意外とだらしないんだな」
「お前にだけは言われたくない」
後ろから寝癖がひどい金髪の少年が冷静な目でこちらを見ながらそう言う。だけど、この中で一番だらしないのは間違いなくお前だ。今日もいつも通り寝癖がついたままの髪の毛で外に出ているのが信じられない。もっと身だしなみをちゃんとしないとカッコ悪いぞ。
「ウェンディの髪の毛艶々だね」
「えへへ、ありがとうシェリア」
互いに相手のだらしなさについて話していた俺たちの後ろでは、サイドアップのウェンディといつも通りのビックテールのシェリアがそんな話をしている。
「でもシェリア上手だね、髪結うの」
今日の朝はシェリアがウェンディの髪を結んでくれたのだが、その際に彼女の髪質に惚れ惚れしていたようで、今も隙あらば髪の毛をいじっているのである。
「うん!!レオンでいっぱい練習したからね!!」
「「「「「!?」」」」」
褒められた少女は笑顔でとんでもないことを言って退ける。それを聞いた俺たちは思わず練習台とされたであろう少年の方を向く。
「??」
だが肝心の少年は全く気にしている気配がない。レオンはさっき歯磨きをしていたのにポケットから棒つきキャンディーを取り出し、彼の方を見ている俺たちを不思議そうな目で見ている。
「レオン・・・シェリアからそんなに弄られてたの?」
ちょっと哀れむような目付きで彼にそう言う。レオンは幼い頃に女装をしていたらしいけど、それもシェリアに無理矢理やらされていたことらしいし、実は結構可哀想な奴なんじゃ・・・
「お前に比べたら全然マシだ」
「その返しもどうかと思うぞ!?」
確かに俺の扱いはたまにおかしいこともあるけど、それをはっきり言われるとムカついてくる。でもウェンディから女装させられたことなんかないし、まだマシ・・・いや、でも最近色んな奴に弄ばれてるしな・・・どっちもどっちなのかな?
「あたしもウェンディみたいに髪伸ばそうかなぁ」
自分の髪を触りながら思考している様子のシェリア。あれ?なんか既視感・・・ルーシィさんも同じようなことで悩んでいた気がするけど・・・
「シェリアならきっと似合うよ」
「まぁ、悪くはならないんじゃない?」
「きっと可愛くなるよ~」
悩んでいる少女にその友と相棒たちが髪を伸ばすようにと進める。ウェンディもシェリアも髪が長い方が似合うような気がするし、俺も賛成だけど、ここは俺が言うよりこいつが言った方がいいんじゃないかな?
「レオンはどう思う?」
俺は自分の隣を歩くシェリアの幼馴染みに話を振る。彼は少し顔を上げ、髪が長くなったシェリアを想像しているみたいだ。
「うん、可愛いんじゃない?」
しばしの沈黙の後、ロングヘアのシェリアの姿を想像し終えたレオンは視線を前に戻しつつそう言う。
「えへへ/////じゃあ少し伸ばしてみよっかな」
大好きな彼から可愛いと言われたら、誰だってやってみようと考えるだろう。その後、先頭を歩く俺とレオンは今日はどんな依頼をやろうかと話し、ウェンディとシェリアはシェリアの髪が伸びてからの話題で持ちきりになっていた。
そして、それぞれの話がいいところまできたところで、蛇姫の鱗のギルドに到着する。
「・・・」
「?どうしたの?レオン」
ギルドに入ろうとしたその時、隣を歩いていた金髪の少年が不意に足を止める。急に止まった彼を見て、俺やウェンディたちは訝しげな表情をしている。
「なんか、嫌な予感がする」
「あら?あんたも?」
突然ため息をついて頭を抱えるような行動を取るレオン。彼の言葉に、ウェンディの足元にいたシャルルも同調していた。
「バカなこと言ってないで早く入って」
「後ろがつっかえるから」
「シャルルも早く~」
あからさまにギルドに入りたくないといった顔の二人を、シェリアやラウル、セシリーといったメンバーが背中を押して中に入る。
「レオン、シェリア、こっちに来い」
「ほら見ろやっぱり」
俺たちがギルドに入ったと同時に、双神を呼び寄せる一人の青年。どうやらレオンが感じていた嫌な予感とはこれだったらしい。まぁ、この間リオンさんとひと悶着あったし、話しづらいと言えば話しづらいんだろうね。
「また勝手に仕事決められてるじゃんこれ・・・」
「いいじゃん!!お仕事お仕事~♪」
他人に依頼を勝手に決められているのが嫌なのか、はたまたリオンさんが決めたと思われるからなのか、どんよりとした雰囲気のレオン。そんな彼の手を引き、シェリアは足取り軽く銀髪の青年の元に駆けていく。
「二人指名の依頼なのかな?」
「そうかもね」
離れていく彼らの背中を見て、クスクスと笑いながら見ている俺にウェンディがそう言う。何が面白いかって、レオンがあんなに落ち込んでる姿なかなか見られないからな。これは見ものだぞ、きっと。
「あの二人で依頼に行くなら、あんたたちはあんたたちで依頼を決めていいんじゃない?」
リオンさんから何かの依頼書を渡され、それに視線を落としている二人を見ていた俺とウェンディ。そんな俺たちに、シャルルがもっともなことを言うので、俺とウェンディはギルドのリクエストボードの前へと足を進めた。
「どれがいいかな?」
「う~ん・・・」
妖精の尻尾もそうだったけど、蛇姫の鱗のリクエストボードにもたくさんの依頼書が掲示されている。討伐系などの前と同じような依頼から、レオンたちの出身の魔法学校の特別講師、他にも以前はあまり見たことがないような、珍しい依頼が所狭しと並べられている。
「あ、おかえり~」
「どんな依頼だったの?」
俺たちが悩んでいると、後ろからセシリーとラウルが誰かに声をかけているのが聞こえる。一度そちらに視線を戻すと、そこにはリオンさんから解放されたレオンとシェリアが立っていた。
「あぁ・・・そのことでシリルとウェンディにお願いが・・・」
「「??」」
依頼で俺たちにお願い?つまりレオンたちと一緒に俺たちも仕事に行くってことかな?
「ウェンディ、シャルルとセシリー貸して!!」
そんなことを考えていると、ウェンディの手を取ったシェリアがキラキラした瞳でそんなことを言い出した。
「え?二人を貸しててって・・・」
「どういうこと?」
突然のこと過ぎて頭が追い付かない。なんだ?詳細を分かりやすく説明してほしいものだ。
「家出した子供を探してほしいって依頼なんだけど、森の中に入っていった可能性が高くて・・・」
「その子を見つけた時、俺とシェリアと三人で空から戻ってくるのがいいと思うんだ」
彼らが引き受けた依頼の内容を聞いて納得する。森の中は似たようなところばかりだし、迷子になりやすい。特にそのことはレオンはよくわかっているだろうから、あらかじめそのような対策を練っているのだろう。
「あれ?でも迷子なら私とシリルで匂いで探せるよね?」
すると、ウェンディがもっともなことを言う。彼女の言う通り、匂いでの探索は鼻がいい滅竜魔導士にとっては十八番だ。それなのに、なんでレオンたちを指名したのかな?
「その子の匂いがついてるものがあれば・・・な」
「「??」」
「家出した子供はね、自分のものもほとんど持って出ていったみたいだし、部屋にも消臭魔水晶がかけられてたみたいで、匂いが全然残ってないんだって」
「それにいなくなってから大分時間も経ってるし、いくらシリルたちでも難しいと思うぞ」
人の匂いは長時間は残留しない。長期間住み着いている場所ならわずかにでも残っている可能性があるかと思ったけど、消臭魔水晶で匂いを消すなんて用心深いことされたら、いくらなんでも無理かな?
「レオンは家出経験者だし、その子の辿ってそうなルートもわかるかもしれないから大丈夫だと思うよ」
「さらっと失礼だな、お前」
悪気があるようには見えない表情でレオンをディスっているシェリア。事実を言われているものの、納得いかないような顔のレオンではあるが、怒っても仕方がないとグッと堪えている様子。
「そういうことなんだけど、いい?シャルル、セシリー」
「えぇ。いいわよ」
「うん!!僕に任せて~!!」
ということで、レオンとシェリア、それにラウルとシャルルとセシリーの五人が今回の依頼に行くことになり、俺とウェンディは別行動を取ることになった。
「ありがとう!!じゃあ!!行ってくるね!!」
「うん!!気を付けてね!!」
翼を使える人材を獲得できたとあって、すぐに迷子の子供の捜索へと向かおうとするシェリアたち。
「あ、そうだ」
ギルドの扉に手をかけたその時、何かを思い出したレオンがこちらへと戻ってくる。
「もしかしたら今日帰って来れないかもしれないから、寂しかったら二人で同じ部屋で寝てていいよ」
「「!!」」
真顔でぶっ飛んだことを言ってきたレオンに俺とウェンディは驚いた後、恥ずかしくなって顔を赤くしている。それを狙ったのかたまたまなのかわからない少年は、入口で待っている四人の元へと小走りで向かっていった。
「えっと・・・つまりレオンのベットを使ってもいいよってことだよね?/////」
「う・・・うん/////そうだと思うよ/////」
彼の発言は、いざ一人じゃ眠れなかった時に、自分のベットを使ってもいいと伝えたかったのだと考える俺たち。別に深い意味はないんだ。ただあいつが言葉足らずだっただけなんだよな・・・
「あれ?でもつまりそれって・・・」
必死に顔の火照りを納めるために言葉の解釈に時間をかけていると、冷静に戻ってきたことである結論に至った。
(レオンたちが帰ってくるまで俺たち二人っきりってこと!?)
そう考えた途端、収まりかけていた火照りが再びぶり返してくる。隣の少女を見ると、同じように顔に赤みが戻ってきていることから、きっと同じようなことを考えているのだと推測できる。
「えっと・・・ウェンディ?」
「う・・・うん、何?」
互いに冷静を装いながら相手に話しかける。だが、シャルルとセシリーが生まれてからほとんど二人だけになった時間がないこともあり、なんでかとても緊張する。ずっと一緒にいたのに、なんだか新鮮な気持ちになっている。
「し・・・仕事でも選ぼっか」
「そ・・・そうだね!!」
緊張で何を話していいのか思い付かず、当たり障りのない話題を振ることにした。こんなに頼りがいのないままで、果たして俺はいいのだろうか。せめてもう少し心の準備をする時間があればと、心の中で愚痴りながら、天竜と手を繋ぎ、リクエストボードへと視線を戻したのであった。
レオンside
チラッ
ギルドの中の様子を伺うことができる窓から、バレないようにギルドの様子を見つめている四つの怪しげな影。俺はその四人を往来を行き交う人々が不思議そうに見ているのを、会釈をしながら「怪しくないですよ俺たちは」アピールをしつつ誤魔化している。
「もう!!二人ともなんであんなに緊張しちゃうの!!」
友達である二人の少女・・・じゃなくて少女と少年を見ながら怒声を上げたのは、世にも珍しい回復魔法を使用できる天神。
「ホントッ、いつまでもガキね、あの二人」
「もっと喜んだりすればいいのにね~!!」
「ラブラブオーラをもっと出してほしいなぁ」
少女の怒りに賛同するのは三匹のしゃべる猫。彼女たちは幼い頃からずっと一緒にいて、ついには恋人関係にまでなった二人が、いきなり二人っきりにされたらどうなるのかと気になったらしく、ギルドの様子をずっと覗き込んでいるのだ。
「なぁ、早く仕事行こうぜ?」
窓に食い付いている四人にそう言うが、誰も振り返ってくれないので思わずため息が出た。
今回の依頼は本当にリオンくんから任された依頼。そしてシャルルたちを連れ出したのも、彼女たちの力が必要だと判断したからだ。なのに、こんなところでシリルとウェンディをずっと見ていたら、まるで二人っきりにするためにウソの依頼と人選をしたみたいになるからやめてほしいんだよね。俺まで戦犯扱いにされそうだ。
「ねぇってb――――」
「ちょっと待ちなさい!!」
急かそうとしてみるが、逆に白い猫にキレられる。しかもこっちに視線を向けないまま、窓にベットリと張り付いている。
「もう少し~、もう少しだけでいいから~」
「せめて二人がキスするまででいいから」
「それまでは待っててよレオン」
シャルルに同調するように急かす俺を退けるシェリアたち。だけど、彼女たちが待っている光景は絶対に訪れないと思う。
まずシリルとウェンディ、この二人は見た目以外は純粋だ。人前でキスをするなんて大胆なことするわけがないと思う。
そしてこの二人の容姿・・・知らない人が見るとこいつらは仲の良い女の子同士にしか見えないのである。この二人がキスなんかしたら、周囲の男どもの視線がすべて集まるのは目に見えている。シリルは自分が女っぽいのを認めていないけど、ウェンディは重々承知しているから、絶対にこんな場所でキスなんかするはずない。
「て、言うのは簡単だけどな」
一人小さく呟いて近くのレンガの花壇に腰掛け、彼女たちがこの無意味な時間に飽きるまで待つことにする。俺ならすぐに諦めるけど、さすがは乙女(一人違うけど)といったところか、恋ばなには目がない様子。しかし、そんな少女たちも一時間ほど経った頃、ようやく諦めたらしくその場に立ち上がった。
「行くか?」
「うん・・・」
「そうしましょ」
「む~」
「二人ともリクエストボード見てるだけなんて・・・」
彼女たちが立ったのを見てから俺も立ち上がり、シェリアに並ぶように歩き始める。四人は二人がイチャイチャするのを相当見たかったらしく、かなり不機嫌になっていた。
「部屋にカメラでも隠しておけばよかったな」
冗談でそんなことを言ってみる。すると、シェリアたちがまるで名案を教えてもらったかのような笑顔になる。
「あたし、ちょっと用事w――――」
「思い出さなくていいからな」
家の方に駆けていこうとする天神の首元を掴み、ズルズルと引きずりながら街を出ていく。その際シャルル、セシリー、ラウルが順番に逃げていこうとするのを一人で対応しつつ、依頼主の元へと向かうために馬車へと乗り込んだのであった。
シリルside
「この依頼に決~めた!!」
悩むこと数十分、ようやくウェンディがやりたい依頼を決めたらしく、リクエストボードから一枚紙を取る。その際彼女のなんと律儀なことか、張り付けている画鋲を外して取っている辺り、彼女の丁寧さが伺える。
「どんな依頼にしたの?」
「はい!!これだよ!!」
彼女から依頼書を渡され文に目を走らせる。その依頼書にはこう書いてあった。
【救出依頼
エンジン魔水晶が壊れ、立ち往生している船を助けてほしい】
「・・・いやいやちょっと待て」
依頼書を見てうなずいていたが、あることに気付いてしまった。
「立ち往生してるのに依頼書なんかで救出を待ってていいの!?」
船が進まなくなったなんて相当な問題だ。下手したら人命に関わることなのだから、評議院から直接連絡があってもいいんじゃないだろうか?
「今はまだ評議院が完全に機能してないから、依頼書で回すしかないんじゃないかな?」
「なるほど」
一人悩んでいるとウェンディにそう言われて納得する。普通なら直接救援要請が来るけど、今回は仕方なく依頼書で回ってきたってことか。
「場所もここから遠くないし、私とシリルにピッタリだと思うんだよね!!」
船が止まったなら海の上だろうし、それだと水の魔導士である俺と風を操るウェンディにはうってつけの仕事だろう。その辺も考慮してる辺り、ウェンディはしっかりしてるなぁ。
「じゃあ行こ!!馬車で二十分くらいだって!!」
「ば・・・馬車!?」
俺の手を引きギルドから出ようとする少女が笑顔で死刑宣告をしてくる。馬車なんてマジで言ってるのか!?俺乗り物酔いするのに!!
「大丈夫!!私がトロイアしてあげるから!!」
「そ・・・それならいいんだけど・・・」
イマイチ乗らない気持ちをなんとかしようとしつつ、ウェンディと並ぶように歩く速度を早める。その際、ギルドで手を繋いでいることなんかほとんどなかったから、蛇姫の鱗の人たちが物珍しげに見ているのが妙に印象に残った。
後書き
いかがだったでしょうか?
シリルとウェンディ、本当に二人だけでのストーリーです。シャルルもセシリーもいないのは天狼島の告白の時以来かな?
次は二人だけでクエストです。
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