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真田十勇士

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巻ノ五十 島津家の領地その四

「この耳川でもな」
「見れば実にですな」
「伏兵を置きやすい場所ですな」
「しかも川を変に渡るとです」
「そこをさらに攻められますな」
「ここで戦うには軍勢を一つにまとめてじゃ」 
 幸村は兵法から話した。
「伏兵に気を使い一気に攻める」
「高遠城もですな」
「あの城のことも頭に入れねばなりませんな」
「そうじゃ、そうして戦わねばな」
 幸村は十勇士達に話した。
「実際に大友家の様に遅れを取る」
「そして敗れる」
「そうなりますか」
「そうした場所じゃ、その地を知らねば」
 戦に勝つにはというのだ。
「敗れるわ」
「だから大友家も敗れた」
「そうなのですな」
「そうした場所ですか」
「この耳川は」
「そうじゃ、少しこの地のことを調べよう」
 幸村は周りを見回した、そして。
 島津家の橙の旗や具足が見当たらないのを確認したうえでだ、十勇士達に対してあらためて話をした。
「幸い島津家の者達はおらぬ」
「ですな、今はです」
「どうやら兵を一つの場所に集めています」
「筑前ですな」
「あちらを攻めまするな」
「その様じゃな、龍造寺家は屈した」
 島津家にというのだ、他ならぬ。
「その沖田畷の戦でな」
「主の隆信殿が討たれ首を取られた」
「多くの家臣の方々も兵も失いました」
「国人達も離れました」
「最早龍造寺家には力がありませぬ」
 十勇士達も口々に言う、彼等はその龍造寺家の領地も回ったので知っているのだ。
「島津家に屈するのも道理」
「では残るは大友家ですな」
「あの家だけです」
「筑前を攻めるだけですな」
「筑前を攻め豊前、豊後じゃ」
 そういった大友家の領地もというのだ。
「筑前を取れば後は一瞬じゃ」
「豊前、豊後もですな」
「あの二国も瞬く間ですな」
「だからこそですな」
「あの国を攻めるのですな」
「うむ」
 そうなるというのだ。
「まずはな、そして筑前を取ればじゃ」
「まさにですな」
「島津家の九州統一が完成する」
「そうなりますか」
「だからこそ今は兵を集めておる」
 薩摩隼人、その彼等から成る兵達をである。
「おそらく四兄弟と主な家臣の方々もな」
「その兵達と共にですな」
「筑前攻めの用意を」
「しておる、そしてこのことはな」
 まさにというのだ。
「我等にとて好都合だ」
「筑前に力が向かっている分ですな」
「我々には目が向かわない」
「隠密である我々に」
「それは有り難いことですな」
「その通りじゃ、しかし薩摩まで見るが」
 その島津家の本領の中の本領と言っていい場所をというのだ。島津家の領地の中でも薩摩はそれだけ別格であるのだ。 
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