英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第21話
~雨・旧市街・ナインヴァリ~
「ん、特務支援課か。あたしに何か用かい?」
「はい、実はアシュリーさんに伺いたいことがあるんです。元武器商人としての貴女に。」
「ふ~ん、何だい?ツァオとチキたちが本格的に動き始めた件についてかい?」
エリィに言われたアシュリーは興味深そうなで尋ねた。
「さすがにご存知でしたか。多分、それとは別件だとは思うんですが……」
そしてロイド達はアシュリーに事情を説明した。
「隻眼……赤毛の偉丈夫か………………」
ロイド達の話を聞いたアシュリーは考え込んでいた。
「心当たりはありませんか?裏社会に属する男なのは間違いなさそうですが……」
「該当しそうなヤツだったら何人か心当たりがある。だが、今この状況でクロスベルに来るとしたら………………」
ロイドに尋ねられたアシュリーは答えた後黙り込んだ。
「え、えっと……」
「その様子だとやはり心当たりが?」
「へえ、そんなにヤバイ心当たりがあるのかい?」
「さてね……ただ、あたしの想像がもし最悪のケースだった場合。アンタらの手に負える相手じゃ無いのは間違いないだろうね。……まあ、”黄金の戦王”か”紅き暴君”なら対等か、それ以上に戦えるかもしれんが。」
リィンとワジに尋ねられたアシュリーは答えた後興味深そうな表情でヴァイスを見つめ
「ほう?それは強敵だな……」
「一体どれほどの相手なのでしょう?」
「ヴァイスハイトとギュランドロスクラスって…………かなり厄介そうな相手ね……」
アシュリーの話を聞いたヴァイスは興味深そうな表情をし、アルとエルファティシアは考え込み
「そこまで……」
「や、やはり猟兵かテロリストあたりですか?」
エリィとノエルは厳しい表情をした。
「フフ、さてねぇ。もしその男だった場合、一応、こちらも付き合いがある。ペラペラ喋るわけには行かないさ。」
「で、でも……!」
アシュリーの話を聞いたノエルは反論しようとし
「―――猟兵ならともかくテロリストなら放置できません。いくらクロスベルとはいえ、テロ行為を罰する法律はあります。最低限の情報だけでも教えてもらうわけにはいきませんか?」
ロイドは真剣な表情でアシュリーを見つめて尋ねた。
「ロイド……」
ロイドの様子を見たエリィは心配そうな表情でロイドを見つめ
「ふふ、悪くない。―――ガイの弟だったか。いい眼をするようになったね。」
アシュリーは口元に笑みを浮かべて言った。
「アシュリーさん、兄貴と面識が……!?」
「今じゃダドリーあたりもたまに顔を見せるが……当時、旧市街くんだりまで足を運んでくる酔狂な捜査官はヤツくらいだったからね。面白い男を亡くしたもんだよ。」
「………………………」
「あの馬鹿に免じてこれだけは答えてやろう。あたしの最悪の心当たりはテロリストってわけじゃない。ただ、人食い虎みたいな危険な男ではあるけどね。」
(”テロリストではない”……ね…………)
アシュリーの話を聞いたルファディエルは考え込み
「ひ、人食い虎……」
「やれやれ……最悪な相手じゃないか。」
「人食い虎か……ある意味ギュランドロスと似たタイプかもしれんな。」
「あの男と同タイプなんて厄介すぎでしょ……」
「そうですね……」
ノエルは驚き、ワジは溜息を吐き、ヴァイスとエルファティシア、アルは真剣な表情になっていた。
「ま、その男かどうかはまだ決まったわけじゃない。アンタたちが見た男ってのは一人きりだったんだろう?ヤツなら大抵、部下か連れが同行しているはずだからね。」
「そ、そうなんですか?」
「となると……やはり軍隊関係者ですか。」
「もしくは……猟兵団を率いる者ですか?」
アシュリーの説明を聞いたロイドは意外そうな表情をし、エリィとリィンは真剣な表情で尋ねたが
「フフ、ここまでだ。これ以上は自分達の力で追ってみるんだね。」
アシュリーは不敵な笑みを浮かべて答えを誤魔化した。
「……わかりました。」
「情報、ありがとうございました。」
そしてロイド達は店を出た。
「むー、シトシトいってんなー。そうだママ、昨日とどいたブツ、荷ほどきしなくていーのか?」
ロイド達が店を出て行った後アシュリーの娘は外を見て表情を顰めた後アシュリーに尋ね
「ああ、この天気だし急ぐことはないだろ。……それよりジンゴ。アンタ昨日、街に出た時変なヤツを見かけなかったか?」
「ヘンなヤツ?そんなのいっぱいいたぞ-?バカンスルックの若ぞーとかパンを山ほど買ってたシスターのねーちゃんとか。あのワジもヘンなヤツだしなー。」
「そうか、ならいいんだ。」
アシュリーに尋ねられて不思議そうな表情をして答えた。
(……まあ、気にしすぎか。もしヤツが来たんだとしたら娘も連れてきているだろうしね。)
一方アシュリーは考え込んでいた後気を取り直した。
「交換屋ナインヴァリ……さすがの迫力でしたけどはぐらかされてしまいましたね。」
一方ロイド達と共に店を出たノエルは疲れた表情で溜息を吐いた。
「まあ、ああいう業界には独自の仁義があるはずだから。あそこまで教えてくれただけでも感謝しましょう。」
「そうだな……それにしても人喰い虎みたいな男か。テロリストでないとすると猟兵の可能性が高そうだけど……」
「ま、猟兵の場合1人ってのはちょっと不自然だけどね。そのあたりも含めて課長さんに報告しておけば?」
「ああ、そうしよう。(猟兵関係なら、ランディが何か知っていそうだけど…………って、そうだ。)……ちなみに局長とアル警視には心当たりはありませんか?」
ワジに言われたロイドは頷いて考え込んだ後ある事に気付いてヴァイスとアルに尋ね
「ん?何で俺とアルに聞くんだ?」
「何でも局長達はクロスベルに来る前は各地を周って猟兵団の拠点を潰しまくったとミシェルさんから聞きましたので。」
「ああ、その話か…………そうは言っても俺達には心当たりはないぞ?」
「ええ。襲撃した猟兵団の猟兵全員は殺害しましたから私達が相手した猟兵が生きている事はありえないと思いますよ?毎回、襲撃をする時1人も逃がさず殺す作戦を実行していましたから。」
「そ、そうですか……」
「ろ、6人で猟兵団を殲滅ですか……」
「ハハ、たった6人で猟兵団を襲撃したあげく全員殺害だなんて中々凄いじゃないか。」
「感心すべき事じゃないでしょう?猟兵とはいえ、人を殺しているんだから…………局長。フランはその事、知っているのですか……?」
ヴァイスとアルの話を聞いたロイドは冷や汗をかいて戸惑いながら頷き、リィンは驚き、ワジは笑顔で言い、ノエルは溜息を吐いた後複雑そうな表情でヴァイスを見つめて尋ね
「知っているっていうと、どれの事だ?」
「その……局長が猟兵を殺害した事とかです……」
「ああ、知っているぞ。最初は驚いていたが……それでも俺の事を愛しているとフラン自身が言ってくれたぞ?何なら後で本人に確認してみるといい。」
「……そうですか………………」
ヴァイスの答えを聞いて複雑そうな表情になっていた。
(その……エルファティシアさんは今の話を聞いて、何とも思わないのですか?局長達が人を殺した経験がある事に……)
一方エリィは小声でエルファティシアに尋ね
(別に?……それと忘れていない?私もヴァイスハイト達と共に戦争に参加して戦った事があるのだから、数えきれないほどの兵士達を自分の魔術で殺害しているわよ。)
(…………………………)
真剣な表情で言ったエルファティシアの話を聞いて黙り込んだ。そしてロイド達は一端支援課に戻る為に旧市街を出ようとしたが、ある人物がロイド達を呼び止めた…………
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