英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第8話(序章終了)
~夕方・クロスベル駅~
「ロイド―――――――――――ッ!!」
ノエルと共に列車から降りたロイドがホームを歩いていると聞き覚えのある声が聞こえてき
「あ……」
声に気付いたロイドが立ち止まって声が聞こえた方向を見つめたその時
「おっかえり―――――ッ!!」
キーアが走ってロイドの身体の飛び込み、飛び込まれたロイドはキーアを受け止めた。
「キーア……!迎えに来てくれたのか。」
「うんっ!今日帰ってくるって聞いたから!だいじょうぶ!?どこもケガをしてない!?」
口元に笑みを浮かべて言ったロイドの言葉にキーアは嬉しそうな表情で頷いた後ロイドを見つめて尋ね
「ああ、平気だよ。ただいま、キーア。」
「おかえりっ、ロイド!」
ロイドの答えを聞いて笑顔で言った。
「えへへ……ノエルもおかえりなさい!」
「あはは……ただいま、キーアちゃん。」
そしてキーアに笑顔を向けられたノエルが笑顔で答えたその時
「おねえちゃ~~ん!」
今度はフランの声が聞こえた後フランが走ってノエルに飛び込み、ノエルを抱きしめた。
「わわっ、フラン!?」
「ふえええん……!お姉ちゃんが無事でよかった!おかえりなさいっ!ケガとかしてないよね~!?」
驚いているノエルにフランは安堵の表情で涙を流した後笑顔で尋ね
「うん、見ての通り大丈夫。ていうか、たった数日なのにそんな大げさにしなくても…………」
尋ねられたノエルは答えた後呆れた表情で溜息を吐いた。
「お姉ちゃんはわかってません!時間なんて関係ないんだよ~。ねー、キーアちゃん?」
「そーそー、その通り!」
「はは……」
「何だか戻ってきたって実感がありますね…………」
和やかにフランとキーアが頷き合っているのを見たロイドとノエルが微笑んでいたその時
「ロイド……おかえりなさい。」
聞き覚えのある女性の声が聞こえ
「あ…………」
声を聞いたロイドが声が聞こえた方向を見つめたその時、エリィとセルゲイ、エルファティシアとルファディエルがロイド達に近づいてきた。
「エリィ!もう戻ってきたのか!?」
「う、うん、つい昨日にね。おじいさまの手伝いも終わったし、私も今日から復帰できるわ。」
「そっか…………………………」
(こ、この2人は…………!よくもまあ、これだけ他の者達や私が見ている前でよくこんな事ができるな……)
エリィの答えを聞いたロイドはエリィと見つめ合い、それを見ていたメヒーシャは表情を引き攣らせた後溜息を吐き
「フフ………」
「若いわね~。」
その様子をルファディエルとエルファティシアは微笑みながら見つめ
「ねーねー。ロイドとエリィ、見つめ合ってどうしたのー?」
キーアは不思議そうな表情で尋ね
「い、いや!別に何でもないって!」
「そ、そうそう。久しぶりだったからつい懐かしいなぁっていうか!」
尋ねられたロイドとエリィは慌てた様子で答え
「んー?」
2人の答えを聞いたキーアが首を傾げたが
「フフ、それはね、キーア。2人が私とヴァイスハイトみたいな関係だからよ♪」
「そしてようやく恋人同士になったというのに仕事の関係でしばらく離れていたから、互いの思いを確認していたのよ♪」
「わあー、ラブラブだー♪」
エルファティシアとルファディエルの言葉を聞いてはしゃぎ
「エ、エルファティシアさん!それにルファ姉も……!」
「……………………」
2人の言葉を聞いたロイドは顔を真っ赤にして慌て、エリィは恥ずかしそうな表情で黙り込み
(うーん……相変わらずラブラブだなぁ。)
その様子を見ていたフランは微笑ましそうに見つめ
(話には聞いていたけど、ここまで熱々なんてね……)
フランの小声を聞いたノエルは苦笑しながら見つめていたが
(えへへー。でも私とヴァイスさんだって負けていないよ♪この前のデートだって一杯愛し合ったんだよ♪)
(う”…………)
笑顔で言ったフランの言葉を聞いて表情を引き攣らせて唸った。
「あ、ノエルさんもお疲れ様。危険なことはなかった?ロイド、たまに無茶なことをしでかすことがあるから……」
一方気を取り直したエリィはノエルに視線を向け
「い、いえいえ。エリィさんこそお疲れ様です。たしかマクダエル議長の付き合いで各国を回ってたんですよね?」
視線を向けられたノエルは気を取り直した後尋ねた。
「ええ、大した手伝いが出来たわけじゃないけど。でも、色々と面白い情報を仕入れてくることが出来たわ。」
「そっか……後で改めて聞かせてもらうよ。しかし、これでティオとランディ、セティ達が戻ってたら言うことないんだけどな……」
エリィの答えを聞いたロイドは頷いた後溜息を吐き
「ま、今月中にはランディとティオは戻ってくるし、セティ達も来月中には戻ってくるだろう。それより、ロイド。ちゃんとケリは付けてきたのか?」
ロイドの疑問にセルゲイは答えた後尋ねた。
「……はい。無事、両名とも逮捕しました。ダドリーさんとアリオスさんが拘置所の方に護送しています。セリカさん達はアルタイルでたまたま知り合いの方と出会ったので、その方と話をしてから戻ってくるそうです。」
「そうか……ま、これで教団絡みの事件は一段落したと見ていいだろう。わかってるとは思うが……ボチボチ頭を切り替えてもらうぞ。」
「はい、そのつもりです。」
「ノエルの方はあらためてよろしく頼む。今日からでいいんだったな?」
「ハッ!ノエル・シーカー!本日より特務支援課へ出向させていただきます!」
セルゲイに尋ねられたノエルは敬礼をして答え
「ほえ~……」
「えへへ……これでお姉ちゃんもお仲間だ。」
「フフ、よろしくね。」
「……貴女の力、期待しているわよ。」
ノエルの様子をキーアは呆けた様子で見つめ、フランは嬉しそうな表情をし、エルファティシアは微笑み、ルファディエルは静かな笑みを浮かべて見つめ
「あー、そんなに畏まらなくてもいい。ギュランドロス司令やソーニャからも聞いてるだろうがウチにはウチのペースがある。軍隊式の上意下達はとりあえず捨ててもらうぞ。」
セルゲイは溜息を吐いた後ノエルを見つめて指摘し
「ど、努力します。」
指摘されたノエルは戸惑った様子で答えた。
「フッ………まだまだ軍隊式の固さが取れていないぞ、ノエル?」
「軍隊にいた者が急に態度を変える事がは難しいと思います、ヴァイス。」
するとその時男性と女性の声が聞こえて来た。
「え………この声は……!」
「うっ…………!」
声を聞いたロイドは驚き、ノエルが表情を引き攣らせて唸ったその時、ヴァイスとアルが腰に付けた鞘に剣を収めた黒髪の少年と共にロイド達に近づいてきた。
「アーネストとハルトマンの捜査及び逮捕、ご苦労だったな、ロイド、ノエル。」
「お二人とも、お疲れ様です。」
「き、局長!?それにアル警視まで……!わざわざ出迎えに来て頂き、ありがとうございます!」
ヴァイスとアルに話しかけられたロイドは驚いた後姿勢をただし
「あ、ヴァイスさん♪アルさんもお疲れ様でーす♪」
フランは嬉しそうな表情でヴァイスとアルを見つめ
「フ、フラン!今は仕事中なんだからプライベートな呼び方は止めなさい!」
フランの言葉を聞いたノエルは慌てた後フランを睨んで注意したが
「えー?でも、ヴァイスさん達は良いって言ってるよー?」
注意されたフランは不思議そうな表情で答え
「ええっ!?」
フランの答えを聞いたノエルが驚いてヴァイスを見つめ
「フランの言う通り、俺が許可した。……まあ、さすがに公的な場所では呼び方を控えてもらうが、今は公的な場所じゃないからいいだろう?」
見つめられたヴァイスは静かな笑みを浮かべて答えた。
「な、何言ってるんですか!?仕事中なんですよ!?仕事中も公的な場所じゃないですか!」
ヴァイスの答えを聞いたノエルは真剣な表情でヴァイスに言ったが
「フッ…………その仕事場の最高責任者である俺が許可しているのだからいいだろう?」
「そ、そんな無茶苦茶な……どう考えても職権乱用じゃないですか…………」
ヴァイスの答えを聞いて疲れた表情で溜息を吐いて指摘したが
「職権乱用とは失礼な。今までの警察の態度が硬すぎて市民達に近寄りがたい雰囲気で見られていたから、局長である俺自身が警察内をもっと柔らかい雰囲気にする為に特務支援課のように動いているんだぞ?そのお蔭で市民達からも以前と比べて接しやすくなったという声があるだろう?」
「う”…………」
(ひ、否定できない…………)
(実際、クロスベルタイムズでも局長が変わってから警察が接しやすい存在になったって書かれているものね……)
ヴァイスの言葉を聞いて表情を引き攣らせて唸り、ロイドとエリィは疲れた表情で溜息を吐き
「うふっ♪そういう所も相変わらずね、ヴァイスハイト♪元帥だった頃も貴方、頻繁に町に出てギルドの依頼を受けたり、堂々と娼館に行きまくっていたもんね♪というか貴方にとっては娼館がないこのクロスベルにはちょっと不満があるんじゃないの~?」
エルファティシアはからかいの表情でヴァイスを見つめた後口元に笑みを浮かべて言った。
「そうなんだよな…………いつかこのクロスベルを支配したその時、まず優先的に作らなければいけないのは娼館だ!」
エルファティシアの言葉を聞いたヴァイスは頷いた後真剣な表情で言い
「警察の局長なのに不謹慎な事を言うのは止めて下さいよ…………」
「しかも娼館なんて、思い切り規制対象になる施設じゃないですか……」
「……それ以前に娼館のどこがいいのかしら?」
(すがすがしいまでの欲望を出す男だな……)
ヴァイスの言葉を聞いたロイドとエリィは疲れた表情で溜息を吐き、ルファディエルは呆れた表情で言い、エリィの身体の中にいるメヒーシャは呆れ
「何を言う!娼館は男のロマンだぞ!?そうだろ!?セルゲイ!」
(その通り!娼館こそが男のロマンだ!)
ヴァイスは高々と言った後セルゲイに視線を向け、ヴァイスの言葉を聞いたギレゼルは力強く頷き
「いや……そこで俺に話を振らないで下さいよ……そういう話はランディがいるときにでもしてください……」
ヴァイスに話を振られたセルゲイは溜息を吐き
「むー。ヴァイスさん、私達と付き合っていて、まだ満足できないんですかー?前のデートの時だって一杯求めてくれたのにー。」
「フ、フラン!!」
「まあ、ヴァイスハイトだからね~。それはしょうがないわよ♪」
「ヴァイスが娼館に通っていた数は私でもわからなかったぐらいですから、きっと私達の予想以上の回数を利用していたんでしょうね。まあ、リセルでしたら知っていたかもしれませんが……」
フランは頬を膨らませてヴァイスを見つめ、フランの言葉を聞いたノエルは顔を真っ赤にして叫び、エルファティシアとアルは苦笑し
「ねーねー、ショウカンってどんなトコなのー?ケーサツでイチバンえらいキョクチョーが通っているから面白いトコなのー?」
「キ、キーアちゃんっ!」
キーアは首を傾げてロイド達に尋ね、キーアの疑問を聞いたエリィは慌て
「局長!子供の目の前で、教育に悪い事を口にしないで下さい!」
ロイドはヴァイスを睨んで叫んだ。
「ハッハッハッハッハ!話には聞いていたが、本当にその女の子には甘い男だな。―――さてと。いい加減、追加される新メンバーを紹介しないとな。」
ロイドに睨まれたヴァイスは笑った後気を取り直して黒髪の少年に視線を向け
「新メンバーの紹介…………?」
「もしかしてその人が話にあった…………?」
ヴァイスの言葉を聞いたエリィは不思議そうな表情をし、ロイドは黒髪の少年に視線を向けた後ヴァイスに尋ねた。
「ああ。―――リィン。」
「ハッ!」
ヴァイスに促された少年は姿勢をただした後、一歩前に出て自己紹介を始めた。
「初めまして。今日からしばらくクロスベル警察、特務支援課に配属するリィン・シュバルツァーと申します!若輩の身で、皆さんに色々迷惑をかける事もあると思いますが、よろしくお願いします!」
「特務支援課のリーダーのロイド・バニングスです。それとそんなに固い態度で接してもらわなくても大丈夫ですよ。見た所俺やエリィと同じぐらいに見えますけど……失礼ですが何歳ですか?」
「俺は今年で17歳です。」
「俺とエリィと一つ違いか。まあ、でも今後はタメ口で接してもらっていいよ。この支援課はそういった年功序列とかあまり気にしない部署だし。今、この場にはいないけどランディっていう21の男性に対しても俺達はタメ口だし、本人もそれでいいって言ってるしね。」
「そうなのか?…………じゃあ、ロイド。君の呼び方はこれでいいのか?」
「ああ、よろしく、リィン。」
少年――――リィンに尋ねられたロイドは頷き
「あたしはノエル・シーカーと申します。あたしもロイドさん達のように気安い態度で接してもらって構いません。同じ新米同士、よろしくお願いします!」
「ああ、よろしく、ノエル。」
そしてノエルに話しかけられたリィンは頷き
「キーアはキーアだよー。よろしくねー、リィンー。」
「こんにちはー。私はノエル―――お姉ちゃんの妹のフラン・シーカーです。これから一緒に頑張って行きましょうねー。」
「ああ、2人ともよろしく。」
キーアとフランの言葉に頷き
「……特務支援課、サブリーダーのエリィ・マクダエルよ。……えっと、リィン。貴方ってもしかしてシュバルツァー家の人なの?」
「え……エリィはリィンの事を知っているのか?」
リィンに尋ねたエリィの言葉を聞いたロイドは不思議そうな表情でエリィを見つめた。
「ええ…………確かエレボニア北方の地方貴族で”男爵”の爵位を持っているはずだけど…………」
「え……エレボニアの貴族の方なんですか!?」
エリィの説明を聞いたノエルは驚きの表情でリィンを見つめ
「ハハ、とは言っても俺は養子だよ。それにシュバルツァー家は”百日戦役”でメンフィル軍の侵攻によってメンフィルに降伏して、メンフィル帝国に所属しているから、今はエレボニアとは関係ないよ。」
見つめられたリィンは苦笑しながら答えた。
「ええっ!?」
「ご、ごめんなさい。知識不足だったわ……」
リィンの答えを聞いたロイドは驚き、エリィは申し訳なさそうな表情をし
「ああ、気にしなくていいよ。もう昔の話だし、メンフィル皇家や貴族から厳しい目で見られているとはいえぞんざいな扱いは受けていないし、シュバルツァー家が治めていた土地もそのまま任される事になっている上俺と妹もメンフィル帝国には色々とお世話になっているから、メンフィルの事は何とも思っていないどころか感謝しているよ。元・敵国の貴族なのに待遇をよくしてもらって。」
エリィの様子を見たリィンは苦笑しながら答えた後口元に笑みを浮かべ
「そっか………まあ、しばらく同じ職場仲間同士、よろしくな、リィン。」
「ああ。」
自分の話を聞いて笑顔で見つめられたロイドの言葉に頷いた。
「フッ…………早速仲良くなって何よりだ。……まあ、その調子で俺とアルとも仲良く頼む。」
その様子を見ていたヴァイスは静かな笑みを浮かべて言い
「…………へ??」
「きょ、局長…………?」
ヴァイスの言葉を聞いたロイドは一瞬固まった後呆けた声を出し、エリィは戸惑った表情でヴァイスを見つめ
「なんだ、セルゲイ。まだ言ってなかったのか?てっきりロイドには説明してあると思ったが。」
2人の様子を見たヴァイスは意外そうな表情でセルゲイに視線を向け
「…………まさか本当に実行するとは思わなかったので…………それより…………本当に特務支援課に来るんですか?」
視線を向けられたセルゲイは疲れた表情で溜息を吐いて答えた後、尋ね
「勿論来るに決まっているだろう?まさか俺が冗談でそんな事を言うと思っていたのか?」
「できればそうであって欲しいと願いたかったんですがね…………」
ヴァイスの答えを聞いて疲れた表情で溜息を吐いた。
「か、か、課長!?い、一体どういう事ですか!?」
「い、今の会話からするとまるで局長が特務支援課に所属するような口ぶりでしたが……」
2人の会話を聞いたロイドは慌てた様子でセルゲイに尋ね、エリィは信じられない表情でヴァイスを見つめたその時
「ええ、そうですよ。今日から私とヴァイスも特務支援課に一時的にですが所属しますよ。」
アルが何でもない風に答えた。
「「「……………………………」」」
アルの答えを聞いたロイド、エリィ、ノエルは固まり
「「「ええええええええええええっ!?」」」
大声で驚きの声を上げ
「わあ♪2人ともよろしくお願いしますー。」
「うふっ♪2人と同じ仕事ができるなんて最高ね♪」
「フフ、局長が同じ部署だとこちらの知りたい情報も知れるから色々と助かるわ。」
フランとエルファティシアは嬉しそうな表情をし、ルファディエルは微笑み
「わあー、キョクチョーとアルも今日から一緒にすむんだー。」
キーアは無邪気な笑顔を浮かべた。
「ちょ、ちょっと待ってください!?なんで局長が特務支援課に来るんですか!?局長としての仕事は!?」
そして驚きから立ち直ったロイドは慌てた様子でヴァイスに尋ね
「ああ、あんな書類仕事、アルと一緒ならどこでもできる上、早く終わるから時間は余るぞ?」
「で、でも局長なら他の課への指示とかあるのでは……?」
ロイドの答えに答えたヴァイスにエリィは尋ね
「俺は基本、それぞれの課の主任や課長任せにしている。その方が手間や時間がかからないから、効率的でいいだろう?ま、要するに俺とアルの仕事場が変わるだけだ。」
「そ、そんな無茶苦茶な…………警察局長が一般の警官に混じって仕事をするなんて聞いた事がありませんよ!?」
ヴァイスの答えを聞いたノエルは疲れた表情で溜息を吐いた後指摘したが
「だからこそ、”特務支援課”だろうが。一部を除けば正規の警察でない出身の者達が集まっているんだから、そこに俺とアルが混じった所で今更だろう?」
「…………………………」
ヴァイスの話を聞いて絶句し
「フフ、なんだかガイを見ているようね…………」
「さすがのガイでもこんな無茶苦茶さはないと思うんだが…………」
ルファディエルは微笑み、ルファディエルの言葉を聞いたセルゲイは溜息を吐き
「……という訳でだ。―――ロイド。局長達の手綱をしっかり握っていてくれ。」
ロイドに近づいて肩を軽く叩いて呟き
「ええっ!?というか何で反対しなかったんですか、課長!」
セルゲイの言葉を聞いたロイドは驚いた後指摘したが
「……仕方ねぇだろ。警察の一番偉いさんの命令なんだから、部下の俺は言う事聞くしかねぇだろ…………」
「う”…………というかこの場合、リーダーは局長がした方がいいのでは……?」
疲れた表情で答えたセルゲイの話を聞いたロイドは唸った後ヴァイスを見つめて尋ね
「リーダーは今まで通り、ロイドが続けてくれ。俺とアルはあくまで手伝い程度だと思っていてくれていい。さすがにどうしても俺とアルが出ないと不味い会議や公式な場での参加の時はお前達と一緒に行動できないからな。」
「ううっ、わかりました…………ハア…………」
ヴァイスの話を聞いて疲れた表情で頷き、溜息を吐いた。
「それにしても何故、特務支援課に所属する事にしたんですか?」
一方気を取り直したエリィはヴァイスに尋ね
「俺が支援課に所属しようと思ったのは市民の人気取りだな。いずれ、俺とギュランドロスはこのクロスベルを支配する。だが、その為には市民に有名かつ慕われるような存在でならなくてはならない。そういう意味で一番市民と接しやすい特務支援課が打ってつけなわけだ。……まあ、今はディーター市長、マクダエル議長共に人気があるようだが……いずれ、俺とギュランドロスがその人気を覆す。」
「…………………………」
「ほ、本当にあの時―――IBCビルでギュランドロス司令が言った事を実行するつもりなんですか…………?」
不敵な笑みを浮かべて言ったヴァイスの答えを聞いたエリィは表情を引き攣らせ、ロイドは冷や汗をかいて尋ねた。
「当たり前だ。俺は常に上を目指す。その考えは生まれ変わる前も変わらないし、生まれ変わっても変わらない。第一、ただの警察局長や警備隊司令という位置に”王”であったこの俺やギュランドロスが満足していると思ったのか?」
そしてロイドに尋ねられたヴァイスは不敵な笑みを浮かべ
「フフ、そういう所も相変わらずね。」
「だからこそのヴァイスですよ……」
「わあー。立派です、ヴァイスさん♪警察の一番偉い人になっても満足せず、努力するなんて人、滅多にいませんよ♪」
ヴァイスの話を聞いたエルファティシアは微笑み、アルは頷き、フランは表情を輝かせた。
「ううっ……何でこんな無茶苦茶な人にフランが…………」
一方ノエルは疲れた表情になって呟いたが
「えー?ヴァイスさん、とっても素敵な人だよー?」
フランは意外そうな表情をし
「失敬な。ギュランドロスと比べれば、”この程度”大した事ではない。第一アイツもこの支援課に来ようとしたんだぞ?」
「ええっ!?し、司令がですか!?」
「あ~…………あの男ならやりかねないわね…………」
「敵対しているメルキア軍に堂々と入隊した男ですからね……」
ヴァイスの話を聞いて驚き、エルファティシアとアルは苦笑していた。
「まあ、あいつはあいつで俺とは”別の意味”である者達の人気を取る必要があるからな。俺やルイーネ、エルミナが総出で来ないように説得したから安心していい。(ただ奴の事だから、また”仮面の紳士”と名乗って堂々と来てもおかしくないんだがな…………)」
「”別の意味”や”ある者達”…………?一体何の事ですか?」
ヴァイスの説明を聞いたロイドは不思議そうな表情で尋ねたが
「フッ…………それはいつか、知る時が来るだろう。」
「は、はあ…………?」
「…………………………」
答えを誤魔化したヴァイスを戸惑った表情で見つめ、ルファディエルは真剣な表情で黙って考え込んでいた。するとその時
「ふふっ……揃っているみたいだね。」
聞き覚えのある声が聞こえた後、テスタメンツだった時の服装から一新し、マフラーを付けたワジがロイド達に近づいてきた。
「あ…………」
「ワジ……!」
「あ、ワジだー!」
ワジを見たノエル、ロイド、キーアは声を上げた。
「フフ、お勤めご苦労様。その調子だと上手く行ったみたいだね?」
「ああ、ワジの情報があったからアルタイス市の情報屋にも何とか接触できたけど……いったいどこであんな情報を仕入れてきたんだ?」
「フフ………蛇の道は蛇ってね。」
呆れた表情で尋ねてきたロイドにワジは笑いながら答えた後ロイドに近づき
「―――他ならぬ君のためだ。役に立ったのなら嬉しいよ。」
ロイドの至近距離でロイドを見つめて口元に笑みを浮かべて言った。
「!?」
「わわっ!?」
ワジの行動や言葉を見たエリィとフランは驚き
「ちょ、近いって!なんでにじり寄るんだよ!?」
ロイドは慌てた。
「あはは、愚問だなぁ。君の反応が面白いからに決まってるじゃないか。」
「あ、あのな……」
「ワジ君、あなたねぇ…………」
「あはは……(やっぱり謎な子だなぁ。)」
ワジの言葉を聞いたロイドとエリィはワジを睨み、ノエルは苦笑し
「えへへ。なんか楽しそーだねぇ。」
キーアは無邪気な笑顔を浮かべた。
「いいなぁ、特務支援課……お姉ちゃんもキーアちゃんもいる上、ヴァイスさん達もいるし、困ってるロイドさんも見られるし。いっそ、ヴァイスさんにお願いして私も特務支援課に異動しようかなぁ。」
「ん?なんだ、フランも来たいのか?仕方ないな。なら異動願いを提出してくれ。すぐに手配する。」
「いや!羨ましがられても困るから!それと局長も実行しようとしないで下さい!」
そして溜息を吐いて呟いたフランの言葉を聞き、答えかけたヴァイスを見たロイドは慌てた様子で指摘し
「やれやれ……ジャレるのはそのくらいにしとけ。」
セルゲイは溜息を吐いて指摘し、ロイド達全員はセルゲイに注目した。
「―――ともかく、これが新生・特務支援課のスターティングメンバーだ。リーダーとして、ロイド・バニングス。」
「……はい!」
「リーダー補佐、エリィ・マクダエル。」
「はい。」
「臨時リーダー兼臨時リーダー補佐、ルファディエル。」
「ええ。」
「警察本部からの出向、ヴァイスハイト・ツェリンダー局長、アル・ノウゲート警視。」
「ああ。」
「はい。」
「警備隊からの出向、ノエル・シーカー。」
「はいっ!」
「メンフィル帝国軍から出向、リィン・シュバルツァー。」
「はい!」
「臨時の準メンバーとしてワジ・ヘミスフィア。」
「ja(ヤー)。」
「同じく臨時の準メンバー、エルファティシア・ノウゲート。」
「ええ。」
「本日、18:30をもって特務支援課の再始動を宣言する。前以上に楽しいお仕事が舞い込んでくるはずだから楽しみにしておくといい―――」
こうしてロイド達―――新たに生まれ変わった特務支援課が始動した………………!
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