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剣風覇伝

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弟十九話「ドラゴン」

 ゴブリンたちは馬のいななきとひずめの音に消された三人の動きを読めず、混乱していました。そんなときに思っても見ないほうから、攻

撃を重ねてくるものが現れたのです、それは王の霊たちでした。王を守るため墓守として生きた戦士たちはここに骨をうずめたのです、それ

もなぜ今なのか、そう馬のいななきとひずめの音、久しく聞かない勇者の鼓動、それがこの墓の霊たちを起こしたのでした。

「くそう、このなんだこいつら、剣が効かねえ、おい大砲もってこい」

「大砲を奪われました」

「なにをやってる、このグズが」

「ですがこいつら、矢も剣も大砲すらも聞かないんです、それにさっきから仲間のこえがきこえない、ああ!だれかこの馬のひずめの音をとめてくれ!」

「そんな余裕はないぞ!」

「ああ!あいつだ、みな、かかれい!」

「この戦い助太刀いたす!ミリル、後ろを頼む 賢者様 追っ手に気を付けて」

タチカゼの剣に一閃で、ゴブリンがばたばたと倒れていく。

「な!こいつ強いぞ!?」

 後ろのミリルが間髪入れずに弓矢をつがえ、射る。その弓矢は敵を貫通してニ、三人を

壁に縫い付けた。

「ひ、ひいい!」

 あまりの強さにゴブリンの集団はちりぢりになった。そこへオリオンの杖の一撃がくる。聞きしに勝るその威力。

そして最後は戦士たちの英霊によってつぎつぎと倒されていく。最後には迷宮の奥の部屋に追い詰めて、大砲につかっていた火薬を放り込んで一網打尽にされた。

「おぬしら、なにものだ?」

「俺はタチカゼ、そして後ろにミリルしんがりは賢者オリオン」

「また、ゴブリンどもが騒いでいる、ひょっとしてなにかあったのか」

「あなたたちには悪い知らせですが、アルウェルンの地にはゴブリンどもの軍勢が向かっているのです。森のドルイドに援軍を頼みましたが

形勢はわかりません、味方をお願いしたい!」

「我ら、死すとも、心はアルウェルンの地と王にあるのだ」

「三日のうちにこの迷宮の道を通っていかないと、おそらく陥落します」

「アルウェルンの地は長いこと山の悪しき者たちを退けてきた、戦士の都、そう簡単には落ちはしない」

「それが、やつらは黒色火薬の作り方をしっているのです」

「なに?火薬だと?」

「だれが吹き込んだのか。もしかしたら敵の知恵者がいるのかもしれません」

「っくだがこの塚のあの道は溶岩の轟くなかには獄炎の覇者がいる」

「そ、そいつはなんだ」

「ドラゴンだ。アルゴンという。目で見たものを一瞬で灰にする、こっちは目を見ることができない、だがそれでは奴の炎には勝てない、目をこっちが見なくとも見つけられれ、姿を見られても灰にされる。奴は太古から生きている恐ろしい存在だ、やつの炎は火薬なんか、目じゃない、そしてその炎はこの世ではないものすら溶かしてしまう、奴を倒せなければあの道はわたれん」

タチカゼは口笛をふく、すると二頭の馬が帰ってくる。

「倒せるのか?」

「……賢者様」

「分かっておるこの一戦わしが引き受ける。昔アルゴンがまだ幼きころわしはやつにおうた、そして奴にはわしこそがその首をあげるにふさわしいと約束した。そして千年の時がたち、奴は恐ろしい化け物と化した。もはや止められるものは杖持つ者のみ、わしはこの時のために生きてきた。森を好み、鉄と炎を嫌い生きてきた哀れな竜の末路をここで決めねばならない」

「アルマタハル様」

「いざ、いかん」

 一人の杖持つ者がその橋を渡る。傍らにはタチカゼとミリル、そして目の前には今まさにその眼を開かんとする邪竜アルゴン。暗く炎を宿すその身に鉄の体。後ろ足で立ち上がり前足を自由にし攻撃の体制をとる。目が開く。……しかし、三人は灰にはならない賢者の崇高な光が三人を包む。ミリルはドルイドの矢を引き絞り目にめがけてはなった。しかし目は閉じられはじかれる。

「さあ!いざ勝負じゃ、アルゴンっ!お前とわし、どちらの技が上か!」

 邪竜アルゴンがその口を開くと古い呪文と炎が一度に襲った。三人の前で杖の力で炎は二つに別れる。呪文は杖持つ者のアルマタハルにとってまた自身もその口か神聖魔法の呪文を朗々と口ずさむ。一言一言が必殺の力をもつ気を許せばもってかれる。

 タチカゼは二つのことなる呪術のことばを聞いてなにかに覚醒しだした。すると額に光がはしり炎が胸に起こった。そして手をかざすとアルゴンにむけてタチカゼの口から二つの呪文の合成呪文が響き始めた。呪文は時に高く、時に低く、しかし二体一のこの状況にミリルも聞き知っているドルイドの術を口ずさみはじめた。ドルイドの技はあちらこちらで花や草や苔を生み出しそのつるや花粉があたりに蔓延した。邪竜アルゴンはこの三人の呪文を一手に受けてだんだん押され始めた。

 しかしそれでも目の力は衰えず絶えず三人を灰にしようとする。しかしこの三種混合の複雑な高高度魔法言語に自分の鉄の体が燃え始めている。鉄のうろこが解け始め、その皮膚を焼き始めた。おそろしいやけどの痛みにも耐えそして呪文と炎を吐き続けるがこの力の中ではもはや

自分の存在を維持できなくなった。そんなときだった。

「アルマタハル。千年前の約束。今お返し申す」

邪竜アルゴンは一つの流星になってアルマタハルの胸の中に吸収されていった。

こうして山深き王の墓の邪竜アルゴンは葬られた。

「アルゴン、おまえの誇り高き魂は我の胸に」

ゆっくりと倒れる巨体は奈落の底に光り輝いて落ちていった。

「オリオン」

「行くぞ、行く手はアルウェルン。三日で駆けねばならぬ」

「でも」

「よいのじゃ、約束は果たされた。わしはそれで充分じゃよ」

「ありがとう、賢者オリオン。あなたが道を照らす限りわたしも道を進もう」

三人は馬にまたがり駆けた。暗き王墓を。 
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