英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)
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第126話
―――クロスベルに恐るべき混乱を引き起こした”D∴G教団”の存在。それに利用されたマフィアと薬物によって操られていた警備隊。そしてハルトマン議長を始めとする数々の有力者たちの不始末……
――――事件の概要はクロスベルタイムズによって報じられ、前代未聞の大スキャンダルへと発展した。ここに至ってマクダエル市長は警察局長、警備隊司令両名を解任―――各課の責任者やソーニャ副司令に事件の徹底究明を命じた。ダドリー捜査官を始め、今まで上層部に押さえつけられていた捜査官達や協力を要請されたルファ姉によって帝国派議員のみならず、共和国派議員にも及ぶ”教団”とのコネクションが洗い出され……何名もの逮捕者が出るに至って、クロスベル政界に対する市民の不信感は頂点へと達した。
そんな中、IBCのディーター総裁が次期市長選挙の出馬を電撃表明し………引退するマクダエル市長の理念を継いで健全な政治体制の確立を公約に掲げた。そしてマクダエル市長もまた逮捕された議員たちの補欠選挙への出馬を表明し……早くも議長候補として各方面から期待されているという。
さらに空席となった警察局長と警備隊司令にはなんとIBCのディーター総裁、マクダエル市長、マクダエル市長の縁者であると明かされたメンフィル前皇帝夫妻リウイ皇帝、イリーナ皇妃、さらにリウイ前皇帝夫妻の縁者であるプリネ姫、シルフィエッタ姫、ペテレーネ神官長とティア神官長、”メンフィルの黒き薔薇”と名高いルクセンベール卿、ユイドラ領主夫妻であるウィルさんとセラウィさん直々の推薦により、クロスベルの危機の際、市民の為に率先して戦っていたヴィスハイトさんが警察局長に、アルさんはヴァイスハイトさんの秘書兼護衛になり………警備隊司令にはギュランドロスさんがなり、ルイーネさん、エルミナさん、パティルナさんはそれぞれ今回の事件で逮捕され、空位となった警備隊の上層部になった。当初、他国出身でメンフィル帝国の皇家やその関係者直々の推薦を受けている六人はメンフィル帝国によるクロスベルの乗っ取り計画の為の人員かと噂され、警察、警備隊共に六人の就任に賛成はせず、反対意見は多かったが………彼らが市民達の間で噂になっている各地を回って市民達の為に戦い続けた名高い”六銃士”である事………そしてそれぞれが次々と挙げ続ける功績や彼らに裏金を渡したり、脅しで繋がりを持とうとした議員達を時には逮捕し、時には鉄拳制裁をして自分達の健全さをアピールする事によって自然とその噂はなくなり、警察、警備隊共にだんだんとその功績を認め始め…………新たな警察局長、警備隊司令を含めた六人は各方面から期待され、エレボニア、カルバード両大国からは厄介者扱いされているという。
そして事件から1ヶ月後―――そのマクダエル市長によって俺達は市庁舎のホールに呼ばれ、今までお世話になった関係者達が見守る中、マクダエル市長より表彰状をもらった。
――――エステルとヨシュア、ミントとフェミリンスさんはエレボニア帝国の帝都のギルドに応援を頼まれ、そちらに向かう事になった。遊撃士協会の人手は減ることになるが、政治改革が行われることによって警察の体制もより良く変わるだろう。今後は一層、ギルドとも協力しつつ彼らの負担も減らせるかもしれない。そしてエステルに頼まれたセリカさんはレシェンテさんとリタちゃんと一緒にしばらくクロスベルに残り、遊撃士協会に期間限定で所属する事になり、人手が減ったクロスベルの遊撃士協会をしばらく手伝う事となった。
――――リウイ陛下とイリーナ皇妃を始めとしたメンフィル帝国の関係者、ウィルさん達もクロスベルの復旧を手伝ってくれ………それぞれの故郷に帰る事になった。―――別れ際、リウイ陛下達と共に帰るレンは俺達に改めて気になる言葉を掛けてきた。500年前の真実とキーアが競売会にいた経緯………そして俺の兄、ガイ・バニングスを殺めたのは結局何者だったのか………全てを見通し、メンフィル帝国という情報源がある彼女にもそれらの真相はわからなかったという。唯一つ彼女は俺だけに謎の言葉を囁いて帰国した。―――IBCに気を付けろと――――
それらを解き明かすのは俺の―――いや俺達の役目であるはずだ。いつかまた再会する約束をして俺達は彼らと別れの言葉を交わした。
そして―――――
白熱した市長選が終わり、俺達が通常業務に戻った日………特務支援課の玄関に真新しいカバンを持ったキーアの姿があった。
~特務支援課~
「うーん、本当に大丈夫か?やっぱり初日くらいは俺も付いていった方が………」
「だいじょうぶ。ちゃんと道も覚えたモン。それにリュウとアンリもいっしょに行くんだし。ロイド、心配しょーすぎ!」
ロイドに心配されたキーアは答えた後笑顔でロイドを見つめ
「で、でもなぁ………」
見つめられたロイドは渋っていた。
「まったくもう………本当に親バカなんだから。あなただって小さな頃は子供たちだけで日曜学校に通っていたんでしょう?」
ロイドの様子を見たエリィは呆れた表情で指摘し
「まあ、それはそうだけど………」
指摘されたロイドは苦笑しながら答えた。
「………そういうエリィさんもそわそわしまくっていませんか?」
「う……こ、これはその、保護者の性というか……」
そしてティオに指摘されたエリィは言葉を濁したその時
「うふっ♪もしくは母親の性って言った方がいいんじゃないの♪」
「そうだね♪で、父親が勿論、ロイドさん♪」
エルファティシアがからかいの表情でエリィを見つめ、エルファティシアの言葉にシャマーラは頷き
「ほえー?ロイドとエリィがキーアのパパとママなのー?」
2人の言葉を聞いたキーアは可愛らしく首を傾げてロイドとエリィを見つめ
「キ、キーアちゃん……」
「エ、エルファティシアさん!それにシャマーラも!俺達が親になるなんてまだ早すぎる年だよっ!」
見つめられたエリィは顔を真っ赤にし、ロイドは顔を真っ赤にした後指摘し
「フフ……”まだ”という事は将来はなるのですね?」
「クスクス……お二人はもしかしてキーアの事を養子にするんですか?」
ロイドのある言葉を聞いたセティとエリナは微笑みながら尋ね
「「~~~~~~!!!」」
2人に尋ねられたロイドとエリィは顔を真っ赤にしていた。
「……やれやれ。せっかくのキー坊の晴れの日だ。もう狙われる事も無いんだし、せめてきちんと見送ってやろうぜ。」
「グルル……ウォン。」
そして苦笑しながら言ったランディの言葉に返事するようにツァイトは吠えた。
「いやまあ………わかっちゃいるんだけどさ。」
「……何だか子供を持つ親の気持ちがわかる気がするわ。」
(フフ、ロイド達が子供を育てる事になったら、きっと凄く甘やかすでしょうね……)
ランディの言葉を聞いたロイドとエリィはそれぞれ溜息を吐き、その様子を見ていたルファディエルは微笑んでいた。
「クク……―――お前らこそ、新市長から相談に呼ばれているんだろう?そろそろ出かけたらどうだ?」
「あ、はい………それなんですけど課長、ご存知なんでしょう?」
「一体どんな相談なんですか?」
「クク、それは新市長から直接聞いた方がいいだろう。―――とにかく今日はお前達全員にとって新たな一日になるはずだ。せいぜいしっかりやって来い。」
「……わかりました。」
「やれやれ。また忙しくなりそうだな。」
「まあ、忙しいのはいつもの事ですけれど……」
「それじゃあ、キーアちゃん。通りまで一緒に行きましょう。」
「うんっ!」
そしてロイド達は玄関を開け、セルゲイとツァイトを見つめ
「――――行ってきます!」
全員で元気よく言った後それぞれが向かう場所に向かった。
こうしてロイド達の新たな一日が始まった………………!
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