英雄伝説~菫の軌跡~(零篇)
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第79話
下に向かって階段を降り、時折襲い掛かって来る魔獣や魔物達を撃退していたロイド達は近代的な設備がある区画に入った。
~太陽の砦~
「このあたりは近代的な設備が入っているわね………」
「そのヨアヒムって人が改築させたのかしら?」
周囲にある設備を見回したエリィは呟き、エステルはロイド達に訊ねた。
「………多分そうだろう。”グノーシス”を完成させるための研究設備かもしれない。」
「なるほど………病院にその設備が無かった以上、可能性は高いかもしれないね―――」
エステルの疑問に答えたロイドの推測にヨシュアは頷いたが
「………っ……!」
「人の気配……!いえ、それにしては気配が……!?」
「誰か来ます………!」
「さ~て……一体鬼が出るか蛇が出るか……」
「状況を考えれば操られた警備隊かマフィアのどちらかだと思うが……」
何かの気配を感じると双剣を構え、同じように気配を感じていたルフィナは驚き、ティオは警告し、ゼノとレオニダスは近づいて来る気配の持ち主を警戒していた。するとルバーチェのマフィアが二人現れてロイド達の行く手を立ち塞がった。
「あんたたち………」
「チッ、ここにもいやがったか。」
「こんな所にまで配置するなんて、かなり要人深い証拠ね。」
「あなたたち!大人しく投降しなさい!いくら薬で強くなったってこの人数相手に―――」
マフィア達の登場にロイド達が武器を構えて厳しい表情でマフィア達を睨んでいる中エステルはマフィア達に警告しようとしたが
「ま、待って下さい……!様子が………何か変です………!」
「!この気配は……!……どうやら病院で戦ったあの青年のように完全に”魔”に”堕ちて”しまったようね……」
「え………」
マフィア達の様子がおかしい事に気づいたティオがエステルを含めた仲間達に警告し、マフィア達に何が起こっているのか既に気づいていて呟いたルフィナの言葉を聞いたエリィが呆けたその時
「………ァアアアア………」
「…………ギギギギギ………」」
マフィア達は頭を抱えて唸り、さらに全身から瘴気をさらけ出した。
「な、なんなの………?」
「こ、これは……」
「…………………」
その様子を見たエリィは戸惑い、ヨシュアは驚き、レンは真剣な表情でマフィア達を見つめていた。
「オオオオオオオオオオッ!」
「ガアアアアアアアッ!」
するとマフィア達は異形の怪物に変化した!
「なああっ………!?」
「肉体変異………!?」
「迷ってる暇はない………!」
「とにかくブチ倒すぞ!」
そしてロイド達は異形の怪物と化したマフィア達との戦闘を開始した!
「分析を開始します………弱点属性は空!他属性は全て弱点・耐性はありません!エニグマ駆動……」
「うふふ、予想通りの弱点ね。――――降り注げ、邪を裁く光!レイ!!」
「光よ――――ホーリーセイバー!!」
「「ガアッ!?」」
クラフト―――アナライザーで敵の情報を分析したティオの助言を聞いたレンは魔導杖に組み込まれてある敵の頭上から聖なる光を降り注がせる特殊魔法を、ルフィナは法剣に聖なる光を纏わせて薙ぎ払い、弱点属性である空属性の攻撃を受けた敵達は怯んだ。
「えいっ!とうっ!!」
「せいっ!!」
「フンッ!!」
「ハッ!!」
敵達が怯んでいる隙に敵達に近づいたロイドとヨシュア、ランディとエステルはそれぞれの武器を振るって攻撃を叩き込み
「ハァァァァ……!フン!!」
「「ガッ!?」」
4人の攻撃が終わると4人の攻撃に気を取られている隙に敵達の背後に回ったレオニダスがマシンガントレットを地面に叩き付けて凄まじい衝撃波を発生させるクラフト―――グラウンドバスターで敵の背後から攻撃し、背後からの強烈な一撃を受けた敵達は反撃をする暇もなく再び怯んだ。
「隙あり!シュート!!」
「狙い撃ちや!!」
そこにエリィが敵一体に正確無比な3連続射撃を叩き込むクラフト―――三点バーストで、ゼノはクラフト―――スタンショットでそれぞれ怯んでいる敵達を狙い撃ち
「やあっ!ラストディザスター!!」
「「ガアアアアアアア――――ッ!?」」
仲間達が攻撃している間に高火力のアーツを放つ為に必要な駆動時間が終わらせたティオが弱点属性である空属性の高火力アーツを発動し、それを受けた敵達は悲鳴を上げた後元の人間の姿に戻って地面に倒れた!
「こ、これって………」
「悪夢でも見てるみたい……」
戦闘を終えたエステルとエリィは人が異形の怪物に変化するという出来事を思い出して信じられない表情で呟き
「魔人化……そんな現象があるのは聞いたことがあるけれど……」
「6年前に私達が制圧した拠点に生き残っていたと思われる教団員も今のように既に異形の怪物と化していた状態で私達に襲い掛かってきたわ……」
ヨシュアとルフィナは重々しい様子を纏って答えた。
「―――気絶している。かなり衰弱してるけど命に別状はなさそうだな。」
そして倒れた状態のマフィア達を調べたロイドはマフィア達が生きている事を仲間達に伝えた。
「ほっ………良かった。」
「………恐らくこれも”グノーシス”の力かと………精神の変容が肉体まで影響したのかもしれません。」
「おいおい……メチャクチャすぎんだろ………いくらロクデナシどもとはいえ、こんな目に遭わせるたぁ……」
「そのヨアヒムってヤツ、絶対に許せないわね……!」
「うふふ、相変わらずエステルは甘いわね。犯罪者が酷い事をされても怒るなんて。」
「ハハ、まあそこがエステル嬢ちゃんの良い所でもあり、悪い所でもあるんやろうな。」
「……何せ”猟兵”の俺達にも感謝の言葉を述べた事もある酔狂な者だからな。」
マフィア達が異形の怪物と化するように仕向けたヨアヒムに対してランディと共に怒りを抱いている様子のエステルを見たレンは小悪魔な笑みを浮かべ、ゼノとレオニダスは苦笑していた。
「ああ………―――とりあえず、この一帯を調べてみよう。教団に関する情報が手に入るかもしれない。」
一方エステルの意見に頷いたロイドは仲間達を見つめて提案し
「ええ………!」
「わかった……!」
ロイドの提案にエリィとヨシュアは頷いた。その後探索を再開したロイド達はある部屋に入ると端末を見つけ、端末に近づき、ティオが端末を起動させた。
「動いた………!」
「数年前に財団が開発した情報処理システムですね。今となっては旧式ですが当時は相当高価だったはずです。」
「多分ミラは、ハルトマン議長が用意したんでしょうね………」
起動した端末を見たエステルは声を上げ、ティオの説明を聞き、端末を購入する為に必要なミラを用意した人物に心当たりがあるエリィは疲れた表情で答えた。
「ああ……いずれその辺りも徹底的に洗う必要がありそうだな。ティオ、他に何かあるか?」
「はい……―――どうやらこの端末では隔壁のロックの解除と情報の閲覧ができるようです。もっとも情報は一部しか残っていないようですが……」
「十分だ………さっそく調べてみよう。」
そしてティオは端末を操作して隔壁のロック解除をした後ロイド達と共に端末内にある情報を閲覧し始めた。
『教団について』
―――私の名はヨアヒム・ギュンター。”D∴G教団”に属する幹部司祭である。6年前、遊撃を含む多くの勢力の手で我が教団は壊滅状態に陥ってしまった。しかし、私だけは故あって難を逃れ、この―――の地へと落ち延びる事ができた。大いなる”――”の導きによって教団の大望を成すべく私は永らえたのだ。いずれ来るその時――――新たな聖典を記すための資料として各端末にデータを記録しておく事とする。
まず、我が教団の成り立ちについて語ろう。そのためには、ゼムリア大陸が辿った忌々しい歴史を振り返る必要がある。
――約1200年前の”大崩壊”によって大陸は高度な文明と秩序を失い、戦と貧困の支配する”暗黒時代”が訪れた。そして、疲れ果てた人々は大いなる間違いを犯してしまった。
突如現れた愚か者どもの甘言に惑わされ、彼らの作りだした身勝手な秩序を受け入れてしまったのだ。
すなわち―――愚かなる――――と信仰の象徴たる”――の―――”である。彼らの秩序によって”暗黒時代”は終焉し、その信仰はたちまち大陸中に広まったが………
よく考えてみてほしい。もし真に”――”が存在するというのならば誰もが等しく救いを受けるべきではないか?しかし、未だに格差の概念は無くならず、災厄や不幸で命を落とす者も後を絶たない。
”――”は救う人間を選ぶというのか?あまりに馬鹿馬鹿しい話ではないか。
所詮は―――――が権威を得る為作りだした虚像に過ぎないのである。”―――”など、存在するわけがないのだ。
真理に辿り着いた我々の先人たちは、”――――”に邂逅すべく長き旅路に出た。
そして時代が中世に移り変わる頃、ついに彼らは見出したのである。この地の奥深くで―――――――――――――――…………
”――”――――それはそう呼ばれていた。
「これは……ヨアヒム先生が残したものか。」
情報を読み終え、端末内に情報を残した人物がヨアヒムである事に気づいたロイドは真剣な表情で端末を見つめていた。
「教団についての概要が残されているみたいだけど……」
「しかし所々、読めなくなってるな。」
「意図的に削除したのでしょうね。万が一第3者に見つかった時の事を考えて。」
「恐らくそうでしょうね。データの復旧は難しいのかもしれませんね。」
レンの推測にティオは頷いて答えた。
「でも、ここで消されてるのって『七耀教会』とか『空の女神』よね?女神の存在を否定するって公言してたみたいだし………」
「ああ、間違いないだろうね。それ以外にも、気になる単語が削除されているみたいだけど………」
「間違いなくその単語は”教団”の真の目的がわかる為の単語でしょうね……」
溜息を吐いたエステルの言葉にヨシュアは頷き、ルフィナは真剣な表情で考え込んでいた。その後隔壁のロックの一部を解除したロイド達は探索を再開し、違う部屋にある端末を見つけて起動し、情報を閲覧し始めた。
『グノーシスについて』
”グノーシス”………それは、―――――――という――――、”プレロマ草”を原料とした秘薬である。
その調合方法は―――――――、服用することで身体能力と感応力を高め、さらには潜在能力すら引き出す効能を持つ。―――――――――――――――。――――――――――――。”グノーシス”は、――――の―――を”―”の――に―――――薬なのだ。”―”は―――の――を―――することで――を蓄え、――する性質を持つ。いずれその――が”――”に至ったとき、”―”は――するのである。
さらに、”グノーシス”には改良の余地が残されていた。――――――――――――、――――を”―”に―――――のだ。
それから―――――――、我が教団はより効果の高い”グノーシス”の研究……いわゆる”儀式”を繰り返してきた。
そうして、―――――の―――とは――――――――――――――”グノーシス”は完成へと近づいたが、今一歩のところで誤算が生じてしまう。
実験の規模を大きくしたことで遊撃士やその他の勢力に存在を感づかれ、各ロッジ、及び教団そのものの壊滅に繋がってしまったのである。
誠に愚かな事であるとは言わざるを得ない。”――――”の――のためには多少の犠牲は付き物だというのに……
私は、壊滅したロッジから実験のデータを秘密裏に回収し、この――の地クロスベルへと至った。
”グノーシス”の材料である”プレロマ草”は――――の―――に――しているため、――――に困ることはなかった。また、この”太陽の砦”の深層は――の―――――の―――研究施設であり、数々の高度な設備を備えている。こうして私は恵まれた研究環境を手に入れ遂にこの秘薬を完成させたのである―――。
「かなりの情報が削除されてるな………」
「ええ………例の薬についての情報がまとめられているみたいだけど。」
「でも、ここの研究施設を使って完成させたのは確かみたいだね。たった数年で、量産段階で漕ぎつけたのか………」
「さすが国際的にも有名な医科大学で薬学担当の准教授をしていただけあってヤクの栽培は十八番のようやな。」
「もしかすれば、既に”裏の世界”の一部でも”グノーシス”が流通しているのかもしれんな。」
先程の端末と比べると情報がかなり削除されている事にロイドとエリィは真剣な表情で話し合い。ヨシュアとゼノは”グノーシス”を僅か数年で量産段階まで漕ぎつけた事について考え込み、自分達”猟兵”にとっても他人事ではない事になっている可能性もある事に気づいていたレオニダスは厳しい表情をしていた。
「この”プレロマ草”ってのは何なのかしら?薬の原材料っぽいけど……」
「”プレロマ草”………聞いたことのない名前だな。」
「………わたしも聞き覚えはありません。戻ったらデータベースで調べてみる必要がありそうですね。」
「……レンも後でレンの情報網を使って調べてみるわ。」
(”プレロマ草”………まさかこんな所でその名前が出るなんて……今回の件が終わったらジュエ卿やケビン達に知らせておくべきでしょうね……)
エステルの疑問にランディは頷き、ティオとレンはそれぞれ考え込み、心当たりがあるルフィナは真剣な表情で今後の事を考えていた。その後隔壁のロックを解除したロイド達は探索を再開し、他の部屋にある端末を見つけて起動し、情報を閲覧した。
『御子について』
このクロスベルは我々”D∴G教団”の―――であるとともに、―――とされる。その――は、”御子”たるものが―――――――――だからである。
”御子”とは、”――――”―――――――――――”D∴G教団”――――――――――。”太陽の砦”―――――――――――――――――、――――――――――――――”太陽の砦”―――――――――――――――――――――――――――――のだ。
――がそれほどの――を―――など、俗世の者には信じ難い話であろう。
だが、私は確かにこの目で見たのだ。『――――』と呼ばれる――の―で―――――――――――――――――――その神々しき、――を。『―――――』は、”古代遺物”を――していた―――――の――を元に――――――――――――である。ならば、この―――――――――――にも何ら不思議はないだろう。”御子”は―――――から”グノーシス”を―――、―――――――――――――――――――――。
―――”―――”――――――”御子”は――――、―――――”―”―――であろう。そして、――の――の――と――は”―”のもとに――され、人々を”――”の呪縛から解き放つのだ。
それが我が”D∴G教団”の先人が残した予言であり、成すべき大望なのである―――。
「何だこりゃ………虫食いだらけじゃねえか。」
「………どうやら教団にとって最高機密にあたる情報みたいですね。」
今までと比べるとかなり情報が削除されている事にランディは呆れた表情で呟き、ヨシュアは真剣な表情で推測していた。
「えっと、この”御子”っていうのはキーアちゃんの事なのよね?」
「え、ええ………IBCビルに現れたヨアヒム先生が彼女のことをそう呼んでたわ。」
「正直、妄想のたぐいとしか思えないような口ぶりでしたけど。」
一方エステルの疑問にエリィは頷き、ティオはジト目で答えたが
「あら、レンはそう思わないわよ。”影の国”で出会った異世界からのお客様の中には”神の分身”だった人もいるしね。」
「”神の分身”………?ああ、リアラか。」
「さすがにキーアちゃんが彼女みたいな存在ではないと思うのだけど……少なくても”教団”は何らかの理由があってキーアちゃんの事をそのように信じているのでしょうね。」
レンはティオの意見をある人物の事を出して否定し、レンが口にした人物が誰であるか一瞬わからなかったがすぐに心当たりを思い出したロイドは目を丸くし、ルフィナは真剣な表情で考え込みながら答えた。
「か、”神の分身”って………」
「滅茶苦茶すぎんだろ………」
「もはやどんな存在もアリな状況ですね。」
「クク、話に聞いていた以上に姫はとんでもない魔窟にいたみたいやな。」
「フッ、”西風の旅団”や”赤い星座”も”魔窟”といってもおかしくない人材が揃っているが、下手をすれば”影の国”とやらに巻き込まれたメンバーには敵わないかもしれんな。」
一方”神の分身”という普通に考えておとぎ話の中でしか出て来ないような人物とも邂逅しているレン達の話を聞いて冷や汗をかいて表情を引き攣らせたエリィとランディは疲れた表情で呟き、ティオはジト目で指摘し、自分達が可愛がっているある人物が滅多に体験できない事を体験した事にゼノとレオニダスは静かな笑みを浮かべていた。
「………いずれにせよ、この情報は直接本人から聞くしかなさそうだな。」
その後隔壁のロックを解除したロイド達は隔壁が完全に解除され、先に進めるようになった通路を進んでさらに下へと降りて行った―――――
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