英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)
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第115話
端末に仲間達と共に近づいたティオは端末を起動させた。
~太陽の砦~
「動いた………!」
起動した端末を見たエステルは声を上げ
「数年前に財団が開発した情報処理システムですね。今となっては旧式ですが当時は相当高価だったはずです。」
ティオは端末を見つめて説明し
「多分ミラは、ハルトマン議長が用意したんでしょうね………」
エリィは疲れた表情で推測し
「ああ……いずれその辺りも徹底的に洗う必要がありそうだな。ティオ、他に何かあるか?」
ロイドはエリィの推測に頷いた後ティオに尋ね
「はい……―――どうやらこの端末では隔壁のロックの解除と情報の閲覧ができるようです。もっとも情報は一部しか残っていないようですが……」
「十分だ………さっそく調べてみよう。」
ティオの答えを聞いて頷き、情報を見るように促し、促されたティオは端末を操作して情報を閲覧した。
『教団について』
―――私の名はヨアヒム・ギュンター。”D∴G教団”に属する幹部司祭である。6年前、遊撃を含む多くの勢力の手で我が教団は壊滅状態に陥ってしまった。しかし、私だけは故あって難を逃れ、この―――の地へと落ち延びる事ができた。大いなる”――”の導きによって教団の大望を成すべく私は永らえたのだ。いずれ来るその時――――新たな聖典を記すための資料として各端末にデータを記録しておく事とする。
まず、我が教団の成り立ちについて語ろう。そのためには、ゼムリア大陸が辿った忌々しい歴史を振り返る必要がある。
――約1200年前の”大崩壊”によって大陸は高度な文明と秩序を失い、戦と貧困の支配する”暗黒時代”が訪れた。そして、疲れ果てた人々は大いなる間違いを犯してしまった。
突如現れた愚か者どもの甘言に惑わされ、彼らの作りだした身勝手な秩序を受け入れてしまったのだ。
すなわち―――愚かなる――――と信仰の象徴たる”――の―――”である。彼らの秩序によって”暗黒時代”は終焉し、その信仰はたちまち大陸中に広まったが………
よく考えてみてほしい。もし真に”――”が存在するというのならば誰もが等しく救いを受けるべきではないか?しかし、未だに格差の概念は無くならず、災厄や不幸で命を落とす者も後を絶たない。
”――”は救う人間を選ぶというのか?あまりに馬鹿馬鹿しい話ではないか。
所詮は―――――が権威を得る為作りだした虚像に過ぎないのである。”―――”など、存在するわけがないのだ。
真理に辿り着いた我々の先人たちは、”――――”に邂逅すべく長き旅路に出た。
そして時代が中世に移り変わる頃、ついに彼らは見出したのである。この地の奥深くで―――――――――――――――…………
”――”――――それはそう呼ばれていた。
「これは……ヨアヒム先生が残したものか。」
情報を読み終えたロイドは呟き
「教団についての概要が残されているみたいだけど……」
「しかし所々、読めなくなってるな。」
エリィは考え込み、ランディは目を細めて呟いた。
「意図的に削除したのでしょうね。万が一第3者に見つかった時の事を考えて。」
「恐らくそうでしょうね。データの復旧は難しいのかもしれませんね。」
レンの推測にティオは頷いた後答えた。
「でも、ここで消されてるのって『七耀教会』とか『空の女神』よね?女神の存在を否定するって公言してたみたいだし………(”空の女神”は本当に”いた”のだから、教団の解釈は間違っているって指摘してやりたいわ………)」
そしてエステルは真剣な表情で呟いた後心の中で考え込み
「ああ、間違いないだろうね。それ以外にも、気になる単語が削除されているみたいだけど………」
エステルの言葉にヨシュアは頷き
(うふふ。エステルが”空の女神”の末裔だなんて知ったらどんな反応をするかしらね?)
レンは不敵な笑みを浮かべていた。その後隔壁のロックの一部を解除したロイド達は探索を再開し、違う部屋にある端末を見つけて起動し、情報を閲覧し始めた。
『グノーシスについて』
”グノーシス”………それは、―――――――という――――、”プレロマ草”を原料とした秘薬である。
その調合方法は―――――――、服用することで身体能力と感応力を高め、さらには潜在能力すら引き出す効能を持つ。―――――――――――――――。――――――――――――。”グノーシス”は、――――の―――を”―”の――に―――――薬なのだ。”―”は―――の――を―――することで――を蓄え、――する性質を持つ。いずれその――が”――”に至ったとき、”―”は――するのである。
さらに、”グノーシス”には改良の余地が残されていた。――――――――――――、――――を”―”に―――――のだ。
それから―――――――、我が教団はより効果の高い”グノーシス”の研究……いわゆる”儀式”を繰り返してきた。
そうして、―――――の―――とは――――――――――――――”グノーシス”は完成へと近づいたが、今一歩のところで誤算が生じてしまう。
実験の規模を大きくしたことで遊撃士やその他の勢力に存在を感づかれ、各ロッジ、及び教団そのものの壊滅に繋がってしまったのである。
誠に愚かな事であるとは言わざるを得ない。”――――”の――のためには多少の犠牲は付き物だというのに……
私は、壊滅したロッジから実験のデータを秘密裏に回収し、この――の地クロスベルへと至った。
”グノーシス”の材料である”プレロマ草”は――――の―――に――しているため、――――に困ることはなかった。また、この”太陽の砦”の深層は――の―――――の―――研究施設であり、数々の高度な設備を備えている。こうして私は恵まれた研究環境を手に入れ遂にこの秘薬を完成させたのである―――。
「かなりの情報が削除されてるな………」
「ええ………例の薬についての情報がまとめられているみたいだけど。」
情報を見終わったロイドとエリィは真剣な表情で呟き
「でも、ここの研究施設を使って完成させたのは確かみたいだね。たった数年で、量産段階で漕ぎつけたのか………」
「………薬を創る人としてそれだけ優秀な人である証拠だよね………」
ヨシュアは考え込み、ミントは厳しい表情で呟いた。
「この”プレロマ草”ってのは何なのかしら?薬の原材料っぽいけど……」
「”プレロマ草”………聞いたことのない名前だな。」
エステルの疑問にランディは頷き
「………わたしも聞き覚えはありません。戻ったらデータベースで調べてみる必要がありそうですね。」
ティオも頷いた後真剣な表情で呟いた。
「レンも聞いた事がないわ。”姫将軍”さんや”姫神”さんは?」
「いえ………初耳です。」
「私も同じですわ。そもそもその”グノーシス”とやらは中世の時代よりこのゼムリア大陸で創られているようですから、私達の世界にある材料ではないでしょう。」
レンに尋ねられたエクリアは静かな表情で答え、フェミリンスは頷いた後自分の意見を言った。その後隔壁のロックを解除したロイド達は探索を再開し、他の部屋にある端末を見つけて起動し、情報を閲覧した。
『御子について』
このクロスベルは我々”D∴G教団”の―――であるとともに、―――とされる。その――は、”御子”たるものが―――――――――だからである。
”御子”とは、”――――”―――――――――――”D∴G教団”――――――――――。”太陽の砦”―――――――――――――――――、――――――――――――――”太陽の砦”―――――――――――――――――――――――――――――のだ。
――がそれほどの――を―――など、俗世の者には信じ難い話であろう。
だが、私は確かにこの目で見たのだ。『――――』と呼ばれる――の―で―――――――――――――――――――その神々しき、――を。『―――――』は、”古代遺物”を――していた―――――の――を元に――――――――――――である。ならば、この―――――――――――にも何ら不思議はないだろう。”御子”は―――――から”グノーシス”を―――、―――――――――――――――――――――。
―――”―――”――――――”御子”は――――、―――――”―”―――であろう。そして、――の――の――と――は”―”のもとに――され、人々を”――”の呪縛から解き放つのだ。
それが我が”D∴G教団”の先人が残した予言であり、成すべき大望なのである―――。
「何だこりゃ………虫食いだらけじゃねえか。」
「これじゃあ、何もわからないよ~。」
「………どうやら教団にとって最高機密にあたる情報みたいですね。」
情報を閲覧し終えたランディは呟き、ミントは溜息を吐き、ヨシュアは推測した。
「えっと、この”御子”っていうのはキーアちゃんの事なのよね?」
「え、ええ………IBCビルに現れたヨアヒム先生が彼女のことをそう呼んでたわ。」
「正直、妄想のたぐいとしか思えないような口ぶりでしたけど。」
一方エステルの疑問にエリィは頷き、ティオはジト目で答えたが
「あら、レンはそう思わないわよ。”姫将軍”さんという実例がいるしねぇ………」
「あ………」
興味深そうな表情で呟いたレンの言葉を聞いてある事に気付いてエクリアとフェミリンスに視線を向け
「………そうですね。フェミリンスの力を強く受け継ぎ、”姫神”をその身に宿した事のある私としても可能性はあると思います。」
「………………………」
視線を向けられたエクリアは頷いて答え、フェミリンスは目を閉じて黙り込んでいた。
「あの………フェミリンス様。”御子”とは”神”である貴女からすればどのような見方をされているのですか?」
そこにエリィが遠慮気味に尋ね
「そうですわね………”神”の傍に仕える事を許された選ばれし者や”神”の言葉を民達に伝える役割が多いですが………一番の役割は封印された”神”を解放してその身に宿す事ですわね。」
尋ねられたフェミリンスは静かな表情で答えた後、厳しい表情で言った。
「ちなみに”神”をその身に宿したらどうなるんスか?」
フェミリンスの説明を聞いてある事が気になったランディは真剣な表情で尋ねた。
「………よほど力の強い者以外はよくて廃人、最悪の場合だと死に至りますわ。”神”をその身に宿す―――すなわちそれは自らの身を犠牲にして”神”を復活させる事の意味でありますから。」
「そんな………!」
「チッ……!あの変態野郎にそんな事をさせるか………!」
「絶対に……させません………!」
フェミリンスの説明を聞いたエリィは信じられない表情をし、ランディとティオは怒りの表情で呟いた。
「あれ……?でも、エステルさんは”神”を二柱、その身に宿しているのに今もこうして元気でいられますよね?」
そしてある事に気付いたエリィはエステルを見つめ
「―――その娘は例外ですわ。私はその娘に負担がかからないように自分で力を調節して私の力を宿らせていますし、サティア―――”正義の大女神”はその娘と完全に同化しているでしょうから、その娘に負担はかかりません。………まあ、その娘の家系に隠された”素質”が関係しているかもしれませんが………」
エリィの疑問にフェミリンスは答えた後、エステルに視線を向け
「エステルさんの家系に隠された”素質”………?」
「一体何なんだ、エステルちゃん?」
(………なるほど。空の女神の末裔であり、”女神”のフィーナさんの子孫でもあるエステルさんもまた、”女神”になれる素質があってもおかしくありませんね……」
フェミリンスの言葉である事が気になったエリィとランディはエステルを見つめて尋ね、ティオは納得した表情になっていた。
「フェ、フェミリンス。さすがにそれを教えるの不味いって。」
一方エステルは若干慌てた後、真剣な表情でフェミリンスを注意し
「………そうですわね。失言でしたわ。―――2人とも、先程の私の言葉は忘れなさい。キーアというあの幼子とは関係のない事ですわ。」
注意されたフェミリンスは頷いた後エリィとランディに言い
「え、ええ。わかりました。」
(………あの様子だと、まだとんでもない秘密を抱えていそうだな、エステルちゃん……)
フェミリンスの言葉にエリィは戸惑いながら頷き、ランディは苦笑しながらエステルを見つめた。
「………いずれにせよ、この情報は直接本人から聞くしかなさそうだな。」
そしてロイドは考え込んだ後静かな表情で言った。
その後隔壁のロックを解除したロイド達は隔壁が完全に解除され、先に進めるようになった通路を進んでさらに下へと降りて行った……………
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