ぶそうぐらし!
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第25話「しまい」
前書き
オリ展開になると途端に話が思いつかなくなる...。
とりあえず悠里とるーちゃんに焦点を当てた話です。
=香織side=
「...ここね。」
遼に言われた通りの部屋を見つけ、ノックをする。
「はい?」
「入ってもいいかしら?」
中から女性の声がする。おそらく紹介に出ていた佐倉先生だろう。
「えっと....。」
「遼の母親の香織よ。話を聞いて様子を見に来たの。」
「そ、そうなんですか!?」
佐倉先生は驚き、とりあえずドアを開ける。
「それで、件の悠里さんは...。」
「...疲れていたので、今は眠っています。」
「そう...。」
部屋に入ると、ベットの上でタオルを額に乗せて少女が眠っていた。
「...疲労困憊、精神衰弱...余程疲れていたのね...。」
首などに手を当て、大体どんな感じか探る。
「...目に隈が出来てる...。あまり眠れてないのね...。」
「学校を出てから、夜中に目覚める事が多くなったみたいです。」
安心感が少ないから、深く眠れない...それによる心身の疲労...ね。
「...私は医者じゃないし、この状況下だから何とも言えないけど...なんとかしてみるわ。」
いきなり瑠璃ちゃんと再会させるのは控えた方がいい。
あの遼たちが会わせるのを躊躇うのだから、それほどの状態なのだろう。
「...佐倉さん、彼女の詳しい精神状態、教えてください。」
「あ、はい。...私も、あまり分かってないですけど...。」
佐倉先生から話を聞き、大体彼女の状況を把握する。
「ぬいぐるみを妹として...ね。」
「はい...。由紀ちゃんも、以前は今の状況を認識しないようにしていたんですけど、それとはまた違った感じで...。」
由紀と言う子は、多分桃色の髪の、子供っぽい雰囲気を持つ子だろう。
その子の場合は、今のバイオハザード染みた状況から現実逃避をしていたらしい。
でも、彼女とは違う。
彼女の場合は今の状況を認識したうえで現実から逃避しているらしい。
それこそ、せめてもの救いを求めるかのように、瑠璃ちゃんの幻覚を...。
「...一番の解決策は、妹本人...瑠璃ちゃんと再会させる事ね。これでもし私が助け出せたのが瑠璃ちゃんじゃなかったら...根気よく立ち直るまで支えてあげるしかなかったわ。」
「でも...いきなり会って悠里さんの精神は大丈夫なんでしょうか...?」
不安そうに佐倉先生がそう言う。
「それは...信じるだけよ。この子を。」
「...そうですね。」
私達が彼女にできる事は、精々支える事か、信じてあげる事だけだ。
「...疲労が取れて、それで回復するならばそれでよし。もしまだだったら...落ち着いた所で瑠璃ちゃんに会せるわ。」
「...はい。」
とりあえずの方針を決め、私は部屋を後にする。
ちゃんと交代しながら様子を見るように、他の皆にも伝えておこう。
=遼side=
「....そうか...。」
「問題は瑠璃ちゃんの方ね。あの子、きっとショックを受けるわ。」
母さんから事情を聞き、俺は少し思案する。
「...とりあえず、今日は俺達も休むべきかな。悠里の様子は...母さん、見てくれるか?俺も交代するし。」
「いいわよ。...ところで...。」
母さんが部屋を見渡す。
由紀と瑠璃が仲良くなってるのはいいとして、大学組が緊急マニュアルを持っているのが気になったらしい。
「...高校の方にあったマニュアルなんだ。...まるで、今起きているパンデミックを予期していたみたいでな...。」
「...ちょっと見せて。」
アキさんが持ってたマニュアルを母さんが読む。
「...なんてこと。これなら、ここに食料とかがあるのも納得だわ...。」
一通り読み終わり、母さんはそう言う。
「うちの大学を目指したのは、これがあったからかぁ...。」
「ランダルコーポレーションっていうのはなんか怪しかったんで...。」
俺がそう言うと、桐子さんは納得するように頷く。
「確かに。こういうのって製薬会社が黒幕な場合多いからねぇ。」
「それ、一応ゲームでの場合でしょ?確かに“薬”って言うのは怪しいけど。」
まぁ、アキさんの言う通り、それはゲームによる先入観からだ。
実際はどうなのか分からない。...怪しいのには変わりないが。
「あの...そういえば先輩方はどうしていたんですか?」
「武闘派がいるって聞いたけど...。」
美紀と胡桃がおずおずと聞く。
「武闘派...武闘派かぁ...。」
「前まではアレだったけど、香織先生が来てからはちょっと変わったんだよね。」
「あいつらも、別に悪い奴らじゃないんだけどね。」
そう言ってから、武闘派について少し説明してくれる。
なんでも、大学でもどんどん人が死んでいったようで、そこで武闘派となる一部の人達が戦える人を優遇した結果の派閥みたいなものらしい。
...母さんが来てから変わったとは....?
「....で、香織せんせーが来た時も君達のように威嚇されてね...そこでせんせーがブチギレて逆に制圧。ボクらとの関係を少し飽和してくれたんだ。」
「母さん...。」
「だって、子供に対して容赦なく威嚇してくるのよ?」
かくいう俺もキレた訳だから何も言えねぇ...。
「ってか、一人で制圧って...。」
「銃さえなければ余裕よ。こっちは拳銃あったし。ボウガンだって鉄パイプで弾けるわ。」
「...あー、やっぱ遼の母親なんだな。」
「それどういう意味だ胡桃。」
確かに母さんは俺と同等の強さだけどさ。
...親父の凄さ見たらどうなるんだろうな。
「まぁ、基本的にせんせーはこっち側かな。さすがに痛めつけちゃったから、そのお詫びに武闘派の頼みも聞いて物資の調達とかもしてくるけど。」
「高上...皆をボウガンで威嚇した子ね?その子には、特に怯えられちゃって...瑠璃ちゃんにもなんか責めるような目で見られちゃって...。」
「....蛙の子は蛙...だね。」
蘭の苦笑い気味の呟きに俺は何も言えなかった。
...母さんとほぼ同じじゃないか...。
「はい。もうこの話は終わり!皆も疲れてるんだから、もう休みなよ。」
桐子さんがそう言って、話はそこで終わった。
=out side=
「っ....ここは...?」
翌朝。ぐっすりと眠っていた悠里は目を覚ます。
辺りを見回せば、そこはあまり覚えのない部屋。
「目が覚めたかしら?」
“どうしてここに?”と考える間もなく、話しかけられる。
そちらを見れば、またもや見覚えのない女性。
「貴女は...?」
「遼の母親よ。昨日、とても疲れが溜まっていたから、ここで休むように言われた後、ずっと寝ていたのよ。」
むくりと起き上がり、改めて悠里は香織と向き合う。
「疲れは取れたかしら?」
「あ...はい。よく眠ったので...。」
「そう。それはよかったわ。」
疲れが取れたらしい悠里に微笑む香織。
そこで悠里はある存在が目に入る。
由紀が持っていた熊のぬいぐるみ。...だが、悠里には違う存在に見えていた。
「るーちゃん!」
「っ....。」
抱き寄せるようにぬいぐるみを寄せる悠里に、香織は顔を顰める。
「(....やっぱり、結構深刻...。)」
治っていない。そう確信した香織は部屋の外にいる遼に、一定のリズムで聞こえる程の椅子を叩く音で指示を出す。
「(了解...っと。)」
遼は一度ドアの前から退避し、違う部屋へと向かう。
「由紀。」
「あ、遼君。...やっぱり?」
その部屋では、由紀が瑠璃と遊んでいた。
由紀には話を通してあるので、遼がここに来た意味が分かっていた。
「...ああ。」
「そっか...。ねぇ、るーちゃん。」
遼が肯定すると、由紀は瑠璃に言い聞かせる。
今から姉に会う事、その姉がどんな状態でもしっかりすること。
まだ幼い少女には荷が重いが、気をしっかり持つように由紀は言い聞かせた。
「それじゃぁ、行こっか。」
「ああ。そうだな。」
言い聞かせた後、遼は二人を連れて先程の部屋に戻る。
「....りーさん。」
「..........。」
自分もかつては悠里と似た状態だったので、ただ心配するしかない由紀。
それを余所に、遼は黙ってドアを開ける。
「あら?遼君に由紀ちゃん。」
「...来たわね。」
まず遼が入り、続いて由紀が部屋に入る。
瑠璃は由紀の体に隠れるように入り、まだ悠里には気づかれていない。
「...由紀。」
「うん。..ほら、頑張ってっ!」
「っ......。」
由紀が瑠璃の背中を優しく叩き、後押しをする。
「っ...ぁ.....りー...ねー....。」
「「っ...!?」」
絞り出すように出たその声は、悠里を驚かせた。
...なぜか香織も驚いていたが...それは声を出せるようになっていたからである。
「っ...りーねー...!」
「...るー...ちゃん....?」
震える声で悠里は瑠璃を見、そしてぬいぐるみを再び見る。
...もう、ぬいぐるみが妹に見える事はなかった。
「わた、し...どうして....?」
「...それだけ、精神に負担が掛かってたのよ。...安心しなさい。貴女の妹は、こうして無事に生きているわよ。」
震えながらも、飛び込んできた瑠璃を抱きしめ返す悠里。
自分が今までどうして幻覚を見ていたのか恐れる悠里に、香織が優しくそう言った。
「...貴女が、助けてくれたんですか...?」
「...本当なら、もっと助けれたんだけどね...。貴女の妹だけでも助けれて良かったわ。」
思い出すのは自分が手に掛けた“まだ人間だった”人達。
香織も遼同様、それまで人を殺した事はなかった。
「...ありがとう、ございます....。」
「...でも、瑠璃ちゃんは今、あまり喋れないわ。恐怖で声が出なくなったみたいなの。さっき、貴女の名前を呼べたのは私も驚いたわ。」
「大丈夫です。...生きていてくれただけで、十分です...!」
涙を流しながら、瑠璃が生きていた事を心から喜ぶ悠里。
「...そう。...しばらく姉妹だけでゆっくり話し合いなさい。私達は部屋の外で待ってるわ。」
「はい...。」
そう言って、香織は遼と由紀を連れて部屋を出る。
「良かったね!りーさんが元気になって!」
「ああ。全くだ。」
部屋を出て、由紀と遼がそんな会話をする。
二人も悠里が正気に戻って嬉しいようだ。
「じゃあ、私は行くわ。しばらくここを任せていい?」
「いいぜ。どうやら、高校よりも過ごしやすいみたいだしな。」
「それじゃあ、任せるわ。」
そう言って香織は遼と由紀を置いてどこかへ行ってしまった。
「香織先生は何をしに行ったの?」
「ん?あぁ、確か...武闘派と少し話をしてくるらしい。」
残った由紀は、遼に香織はどこに行ったのか聞き、遼が答える。
「えっ?...大丈夫なの?」
「母さんなら大丈夫だろ。あの小学校で悠里の妹と共に生き延びてきたんだから。」
忘れがちだが、小学校には大学や高校のように暮らせるような設備は皆無だった。
その中で生き延び続ける程のサバイバル力と強さがあるのだ。
さらに、遼は家族に対しては絶対的な信頼を寄せているので、万が一にも死んだりする事はないだろうと踏んでいる。
「ま、俺達は適当に暇を潰して待ってようぜ。」
「そうだね。」
そう言って、二人は悠里たちが出てくるまで適当に暇を潰すのだった。
=香織side=
「聞きたいのはあの子達の事ね?」
サークルの子達と、武闘派の縄張り...というか生活領域ね。
その領域の共通部分にある会議室に、私と武闘派の人達はいた。
「そうだ。...香織さんが先導しただろう?」
「まぁね。息子もいたし、なによりここを目指してたらしいのにボウガンで狙われちゃったから、とりあえず入れようとあっちに入れたわ。」
「....はぁ。どうやら、こちらの不手際か...。」
リーダー格の男性と私は会話する。
「...物資や情報に関しては?」
「物資はアサルトライフル二丁、ショットガン二丁、ハンドガンが五丁...それとそれぞれの弾が多数とそれなりの食料と水ね。後、生活に役立ちそうな道具をいくつか。.....で、情報がこれね。」
そう言って遼から受け取っておいたあのマニュアルを渡す。
「...これは...。」
「息子たちがいた高校にあったマニュアルよ。...なんでも、ここと高校はこんな状況になる事が想定されていたんですって。」
普段は冷静な彼だけど、今回ばかりは驚愕していた。
「...道理で設備が良すぎる訳だ...。」
「それに、高校にはウイルスに対するワクチンもあったそうよ。既に息子と生存していた教師が使っているけど....ゾンビ化の傾向はなし。ただ、死人の体に近くなるわ。」
遼に聞いておいた情報を話していく。
...私も聞いた時、遼が本当に無事なのか焦ったわね...。
「...大丈夫なのか?」
「温度覚と、少しの痛覚、それと体温が低くなるけど他は異常がないわ。...むしろ、身体能力が上がったらしいわ。でも、少なくともゾンビ化する前兆もなにもないらしいわ。」
「.....そうか。」
粗方情報を聞いて、考え込む彼。
「とりあえずそのマニュアルとワクチンの半分を渡しておくわ。銃器の類はまた個別に聞きに来て頂戴。ちゃんと扱いを覚えておかないと死ぬだけだから。」
「...分かった。助かる、香織さん。」
「困った時はお互い様なんだから、当然でしょ?」
戦える人を贔屓したり、サークルの子達と仲があまり良くなかったりするけど、それでも彼らを見捨てる理由にはならない。
だから、私は彼らの手助けもしている。
「...あ、それと。」
「...まだ何かあるのか?」
「ええ。...もうすぐ、ここを拠点に行動する必要がなくなるわ。」
私の言葉に彼だけでなく、この場にいる全員が訝しむ。
「...どういうことだ?」
「根拠も何もないけどね。....強いて言うなら、妻としての勘...かしら?」
「......?」
そう言って、私は部屋を立ち去る。
「(....もうすぐ、きっともうすぐ来るわよね?隼...。)」
きっとこのパンデミックを収めるために奔走してるであろう夫に私は想いを馳せた。
=遼side=
「......。」
「うふふ♪」
「りーねー♪」
...なんだろうか、微笑ましすぎる...!
「見違えるほど元気になったな...。」
「りーさんもるーちゃんも嬉しそう!」
胡桃と由紀も二人の様子を見てそう言う。
「.........。」
「...なんで香織さんは落ち込んでるの?」
なんか(´・ω・`)みたいな顔になってる母さんが気になったのか、蘭が聞いてくる。
「...あー、母さんは小学校の教師やってる通り、子供好きなんだ。それで、今まで懐かれてたのが取られて落ち込んでるんだろう。」
まぁ、相手は実の姉だ。仕方ないと言えば仕方ない。
「うぅ...瑠璃ちゃん....。」
「...こんな香織せんせー初めて見たよ...。」
「家族内でも結構珍しいぞ。母さん、子供ウケいいからな。あんな状態にはなかなかならない。」
とはいえ、いつまでも放置しておくわけにはいかないな。
「ていっ!」
「あうっ!?」
母さんに適当にチョップを入れる。
「ちょっ、母親に手をあげるなんて!?」
「模擬戦じゃ当然の如くあげてただろう...。それより、さっき武闘派の所行ってたんだろう?何話していたんだ?」
対処法は簡単。チョップして話を逸らすだけ。
逸らした先の話が真剣なものだからな。
「えっ!?武闘派って...あの連中!?」
「あー、大丈夫。香織せんせーなら武闘派も大人しくなるから。」
そんなじゃじゃ馬みたいな扱いしなくても...。
「生死のかかった状況だ。戦えないからって見捨てる訳ないだろ...。」
「そ、そっか。そうだよな...。」
俺達もそうだったので、納得する胡桃。
「それで、どうだったんだ?」
「大した事ではないわ。ただ、遼たちの事と、あのマニュアルを渡してきただけ。」
「そうか。」
確かに大した事じゃないな。むしろあれは渡しておくべきだったし。
「それで、これからどうするつもりなんだ?母さんは。」
「うーん...そうねぇ....。」
少し考える素振りをしてから、母さんは答えた。
「...何もしないわ。」
「....はい?」
「だから、何もしないって。」
まさかの行動しないという答えに、俺も固まってしまう。
「なんとなーく、隼がもうすぐ来る気がするのよね。だから、何もしない。」
「親父が?...って、それ、ただの勘じゃ...。」
「ええ。妻としての勘。文句ある?」
勘なのに無駄に自信のある母さんに、俺は呆れてものも言えなかった。
...まぁ、親父に関した母さんの勘は結構当たるけどさ。
「遼の父親....って、どんな人なんだ?遼を鍛えた本人だから...。」
「....素手で戦車相手に戦ってほぼ無傷...って言えば分かるか?」
「...強すぎて逆に分からなくなった事が分かった。」
俺もおかしいとは思う。素手なのはともかく、ほぼ無傷って...。
「まぁ、少なくともこんな状況になっても確実に生き残ってるって確信できる存在だな。」
「そりゃすげぇな...。」
一番驚いたのは戦車の弾を逸らす事で回避したっていう話だな。
あれは親父に慣れてた俺でも驚いた。現実で可能なのかよ...。
「ついでに言えば、親父の傭兵仲間も親父の影響を受けてるから相当強いな。俺も手合せさせてもらったけど、全く勝てなかった。」
「一つ言っていいか?...なんだその最強集団。」
そういや、一部の業界では親父達って有名だったな。
「それはそうと、この大学での安全地帯とそうでない場所を知っておきたいんだが...。」
「あ、それなら私がチェックしてあるわ。」
そう言って母さんは持っていた大学の地図を広げる。
そこには、×印のついた箇所がいくつもあった。
「印がつけてある場所が安全地帯よ。だいぶ安全を確保したわ。」
「...戦える人数がいるとここまで変わるのか...。」
おそらく、武闘派の奴らと母さんが場所を確保したのだろう。
「偶には外に出て運動しないとねー。」
「それもあるが、大学内で行動するに当たって色々と把握しておきたいしな。」
そう言いながら地図で大体を把握していく。
「...お、グラウンドが使えるのか。」
「やったね胡桃ちゃん!」
「いや、元陸上部だけど今は関係ないだろ...。」
でもまぁ、グラウンドが使えるのなら、色々試せるしな。
「やっぱ高校より安全地帯が多いな...。」
「あっちはバリケードとかも不足していましたからね...。」
結局三階ばかり使っていたんだよな。高校は。
せっかくある程度掃除したプールも使わなかったし。
「大学は設備が揃ってるからなぁ...。高校と違ってさらに自給自足がしやすい。」
しかもこの状況を予期していたのだから尚更...。
...あ、そういえば...。
「ラジオ....母さん、ラジオとかで何か受信したりは...。」
「あぁ、それなら武闘派の子達が...。」
「あっちもあっちで外と連絡が付かないか試しているらしいよ。」
母さんに少し聞けば、どこかから何度か受信はする...との事。
「こっちにはラジオはあるのか?」
「んー...探せばあると思うけど...。」
「...ちょっと試してみるか。」
何か受信できるかもしれないし、試してみる価値はあるからな。
「それに、もしかしたら親父の方で何か放送してるかもしれないしな。」
親父なら既にこの大学よりも広い範囲を制圧して、そこを拠点にしてるだろうし。
...どんなに凄い事が起きても親父なら仕方ないしな。
「じゃ、ちょっとラジオ機器探してくる。」
「あ、じゃー案内するよ。」
桐子さんがそう言って先導してくれる。
「遼、私も行くよ。」
「お、そうか。」
蘭もついてくるようだ。
じゃ、ちょっと行ってくるか。
「....んーと...。」
ラジオを探しに行った俺たちだが、あっさり見つかった。
今は皆のいる部屋に戻っており、ちょっとラジオを弄っている。
「何も聞こえないねー。」
「そりゃあ、一般の放送局は全部潰れてるだろうし...。」
由紀の言葉に答えながら、俺は何か受信できないか弄っていく。
「...隼の放送を探してるの?」
「まぁな。親父ならもう放送してるだろうし。」
さて...これで聞こえるか...?
『.....ザザ...ちら.....東...都...ザザ...』
「っ...!」
何かが聞こえた。すぐさま周波数などを合わせにかかる。
「静かに...!」
『ザザ....こちら東京都。現在、生存者の保護を行っております。この放送を聞いた方は目印となるものを示してください。ただ、奴らは音に敏感なので、決して音の大きいものは使わないように...。繰り返します....』
「これって...!」
ラジオから聞こえた男性の声。
ノイズ混じりでよく聞こえなかったが、どうやら生存者の保護を行っているらしい。
「東京か...。ここから行くには少し遠いな。...そんな事言ったら関西方面はどうなんだって話だけど。」
それにしても目印となるものか...。わかりやすいのは信号弾だが...。
まぁ、そんなものが大学にあるはずがないか。
「あの!校門の方に何かが...!」
「っ...!....あれは....!」
佐倉先生が校門の方に何かを見つけ、俺もそっちを見て驚愕する。
そこには、明らかに普通じゃない車がいくつもあったからだ。
「っ、誰か出てきた...!」
「誰か双眼鏡!」
「遼!」
蘭が誰かが出てきたのを見たので、俺は母さんからパスされた双眼鏡を覗く。
そこに映っていたのは...。
「っ....!?親父...!?」
...親父だった。
後書き
一部出会わない人と、サブタイの割に出番が多くない若狭姉妹ェ...。
次回最終回です。オチはありません。(所謂打ち切りみたいな終わり方)
そして、既に東京を完全に奪還している父親勢ェ...。
まぁ、それだけ強いって事です。
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