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大統領 彼の地にて 斯く戦えり

作者:騎士猫
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第十四話 大統領救出作戦前

俺は今南門付近にいる。
情報収集のための捕虜を選んでいるのだ。しかし、さっきからハミルトンが条約書をずーと見ている。何か不備でもあったのか?
「ハミルトン殿、何か不備でもありましたか?」
「い、いえそうではなくっ・・・」
まぁこの世界じゃ破格と言っていいほど譲歩してるからな、こっちは。駐留軍だって厳しく制約を決めて停戦範囲内での防衛と治安維持だけを任務としている。本来なら武力制圧だからな、こっちの世界では。

その後5人連れて行く捕虜を選んで輸送ヘリに乗せた。捕虜は女性が4人男性が一人だ。復興には男の方が必要だろうし、正規兵でも略奪や殺戮をする時代だ、女性を置いておいたら何をされるかわからん。

「さて、我々も帰りますか」
第一航空騎兵団を見送りながらおやっさんが言った。
倉田が”御嬢さんたちは?”と尋ねてきたので本来の目的を遂行中と答えた。
「あ、それが目的でしたね」
ああ、おやっさんの言うとおりだ。鱗売るだけのはずが、いつの間にか戦闘に巻き込まれて条約まで結ぶことになってしまった。帰ったらハイドリヒに説教されるんだろうなぁ・・・。


・・・・・・・・・・・・・


「はぁ早く帰って寝たい・・・」
「俺もさすがに疲れましたよ」
商談を終えたレレイ達を乗せて我々はイタリカを出た。恐らく半日ぐらいでアルヌスに着くだろう。
「ふぁ~あ・・・ってグハッ」
あくびをしていると突然車が急停車した。
「倉田止まる時ぐらいは言ってくれ!」
俺は体を起こすと倉田に軽く怒鳴った。こちとら疲れてるんだ、少し丁重に扱ってくれないか。
「隊長、前方に煙が見えます」
俺はその瞬間逃げ出したくなった。
今回で煙を見るのは3回目、それも1回目2回目とこと如く厄介ごとに巻き込まれている。二度あることは三度あるといわれているように今回もどうせ厄介ごとに巻き込まれる可能性が高い。
つまり、今は早急にあの煙から離れることが先決だろう。
俺はそう考えると倉田に前進命令を出そうとした。が、一応確認だけはしてみるかと双眼鏡を構えた。倉田も双眼鏡を構えている。
「煙が邪魔でよく見えんな・・・」

「ん?・・・ティアラですっ」
「ああ、ティアラね、ってティアラ!?」
「金髪ですっ」
「金髪?」
「縦ロールですっ」
「縦ロール!?」

「目標、金髪縦ロール1、男装の麗人1、後方に美人多数っ!」
倉田が超真面目に報告してきた。あの煙は騎馬に乗っているからか。もしかしてピニャ皇女の言っていた薔薇騎士団か?
そんなことを考えている間に騎馬隊が近づいてきた。

『総員警戒しろ』
シェーンコップが銃を取り出しつつ言う。
「総員敵対行動は避けろよ?条約違反になりかねん」
俺自身も念のためにデザートイーグルを取り出した。
男装の麗人がおやっさんを問い詰め始めた。”どこから来たのか””どこへ帰るのか”そんな感じだ。おやっさんも正直に答えている。
「貴様っ!異世界の敵か!」

「閣下、第一航空騎兵団に連絡したところ、我々を護衛していた戦闘ヘリ2機を向かわせるとのことです」
「いや、下手に刺激するとまずい。ヘリには十分に離れたところで待機するよう伝えろ」
「はっ」
俺はシェーンコップに指示を出すと車外へ出た。シェーンコップが驚きながら付いてきた。
「申し訳ない、部下が何かいたしましたかな?」
俺はおやっさんの胸元を掴んでいる金髪縦ロールに話しかけた。
「降伏なさいっ!」
騎馬に乗っている男装の麗人が首元に剣先を突き付けてきた。
「くっ、まぁ話せばわかr「お黙りなさいっ!」ぐっ」
俺が冷静に話し合いを提案しようとすると金髪縦ロールが平手打ちをかましてきた。その瞬間シェーンコップが銃を抜いた。
「ま、待てっ!とりあえず今は逃げろっ!」
俺は隊員達を制止させて離脱を指示した。隊員達も一応上官からの命令なので渋々従ってあっという間に走り去っていった。残されたのは俺とシェーンコップだけだ。まぁ正直この人数であれば二人でも容易に制圧できる。が、こんな中世の時代だ。下手に敵対行動を取ればあの姫さんが条約違反だ何だと言ってくるかもしれん。下手をすれば戦争だ、それだけは回避しなければ。
俺とシェーンコップは素直に両手を上げて降伏した。





第三偵察隊はペルシャールとシェーンコップが捕まった後、桑原の指揮の元再びイタリカ近辺まで戻っていた。大統領拘束されるの報は直ちに特地派遣軍司令に伝えられ、直ちにハイドリヒの直接指揮の元帰還途中の第一航空騎兵団の一部及び一個機甲師団が既にイタリカ周辺を包囲していた。無論下手に荒立てると大統領が殺される危険もあるため、相手に気づかれないよう隠密行動である。そんな中第三偵察隊はその名の通り崖の上でイタリカの偵察を行っていた。
「隊長、もう死んでたりして」
「縁起でもないこと言わないで下さいよ・・」
「だって連れてかれる途中随分ひどい目に遭ってるし・・」
ペルシャールとシェーンコップがイタリカに連れて行かれる道中は待機していた戦闘ヘリによってモニターされていた。それを見ていた将兵たちはあまりの惨さに”直ちにイタリカに攻め入り大統領にした行いをそのまま100倍にして返してやれ”と高らかに謳い合ったほどである。


・・・・・・・・・・・・


その頃イタリカの伯爵邸では薔薇騎士団の隊長であるボーゼスと第二部隊隊長のパナシュがピニャに報告を行っていた。

「なんてことをしてくれたのだ!!?」
ピニャはそう怒鳴りつけるとボーゼスに持っていた杯を投げつけた。杯はボーゼスの額に当たり、血が流れて顔には注がれていたワインが飛び散った。
「・・え・・・?」
ボーゼスはいきなりことで理解できなかったようで、呆然とその場に座り込んだ。
「ひ、姫様!?我々が何をしたというのです!?異世界の軍の指揮官を捕虜にしたのですよっ!?」
パナシュはボーゼスの顔に着いたワインや血を拭きながら尋ねた。
「分からんかっ・・・?」
ピニャはそういうと顔を俯けながら横の壁を見た。そこにはペルシャールとシェーンコップが座り込んでおり、後者は何とか意識を保っているものの、前者は完全に意識が飛んでいてわけわからんことを呟き続けている。
「ミースト殿!!ワルター殿!!」
ハミルトンが必死に呼びかけるが、片方は意識が飛んでいてもう片方は意識は保っているものの疲労困憊で声が出ることはなかった。
それもそうであろう。この世界では捕虜に人道的な扱いなどない。捕虜に関する法律もなければ条約や協定もない。つまりただの物である。自陣まで徒歩で連行させ、止まるものがいれば鞭で叩いたりやり先で背中を軽く刺して無理やり歩かせる。他にも殴るけるなんかは普通である。そんな扱いを受けたのだから意識が飛んでいるのも疲労困憊なのも当然であろう。

ピニャはそれを考えただけで身震いした。彼女は今回の件で条約を破棄されるのではないかと恐れたのだ。いまこうして座り込んでいる二人もイタリカ防衛線では一人で軽く100人並の働きをしている。そしてその後ろには一瞬で自分たちを滅ぼすことが出来る兵器を大量に保有しているロンディバルト軍がいる。彼らと戦えば結果は火を見るより明らかだ。
自分たちは全滅してそこから雪崩のように帝国をも巻き込み滅ぼしてしまうかもしれない。

ピニャは少し考えるとまた身震いした。今度は全身が震えている。

「姫様!何故我々をお叱りになるのですか!?納得のいく説明をしてくださいっ!」
ピニャはパナシュに言われると呟くように話し始めた。
盗賊によって劣勢に立たされていたピニャ達にペルシャール率いる第三偵察隊と第一航空騎兵団が加勢し、盗賊を一瞬で薙ぎ払った。
説明が終わるとボーゼスとパナシュはようやく自分たちが何をしてしまったのかを理解した。そして直後に身震いした。ピニャと同様全身がである。
ピニャはそんな二人を部屋から退出させ、ペルシャールとシェーンコップの両名を客室へ運ばせると今後の事について考え始めた。

「結んだその日に条約破りとは・・・」
ピニャは玉座に座ると頭を抱え込んで必死に考えた。
「これを口実に戦争を吹っかけるというのが帝国の常套手段ではありますが、彼等が同じことをしないとも限りませんな」
二人を見送ったグレイがピニャに話しかけた。
「そうなったら滅ぶのは我らだ・・」
「ですが幸いなことに此度は死人が出ておりませぬ。ここは素直に謝罪されてみては如何でしょう?」
「妾に頭を下げろというのかっ?」
「では戦いますか?あの者たちと」
「うっ・・・」

ピニャはその後も頭を抱え込んだままだった。


・・・・・・・・・・・


「今っなんて言ったの!?」
イタリカの偵察を続けていた中の一人である栗林が驚くように言った。
「隊長ならたぶん大丈夫だっt「その後よ!!」」
「ああ見えてあの人、白兵戦特一級持ちだから」
「なっ!!?」
栗林が驚くのも無理はないだろう。白兵戦特一級はロンディバルト軍でも持っている者が非常に少ない、いわば白兵戦のプロの証なのである。
ちなみにこの証を持っているのはペルシャールのほかにシェーンコップや陸軍元帥ゲルダント・グリッセル、第八SS特殊任務連隊(通称スペツナズ)連隊長アリスタロフなどがいる。
ちなみにこのさらに一つ上があり、白兵戦特S級と呼ばれる。

「そ、そんなのありえない・・・勘弁してよぉ~・・・」
「ミーストがそれを持っていたらいけない?」
「だって、柄じゃないのよねぇ!地獄のような訓練過程を潜り抜け、鋼のように強靭な肉体と精神でどんな過酷な任務でも遂行可能な人、それが白兵戦特一級!あんな人には似合わないものなのよぉっ!」

栗林が喚いてる中、野戦司令部ではハイドリヒと健軍少将といった数人の部隊指揮官が会議をしていた。
「閣下!こうしている間にも、大統領の生命が危機に瀕しておるのですぞっ!」
第六機甲師団長のアヴジュシナ・ヴェネジクト少将が仮設テーブルに拳を叩きつけながらハイドリヒに迫った。
「落ち着けヴェネジクト少将、指揮官が焦っては兵士たちに悪い影響が出るぞ」
健軍は腕を組みながらヴェネジクト横目で睨んだ。せっかくの出撃の機会を無駄にしたくないヴェネジクトは必死にハイドリヒに訴えるが、ハイドリヒ自身がそれを制止させて口を開いたためすぐに引き下がった。

「ローゼンカヴァリエ連隊の方は?」
「準備完了しております」
そう答えたのはローゼンカヴァリエ連隊副連隊長であるアルベルト・ディートヘルム中佐である。
「うむ、作戦を説明する」
その言葉に各指揮官が自然と姿勢を正した。
「本作戦の第一目標は言わずともわかるだろうが大統領及びシェーンコップ中将の救出である。よって、少数精鋭の部隊で潜入し両名を救出、他部隊の掩護の元離脱する」
ヴェネジクトは今回も出番なしかと顔をしかめた。
「ヴェネジクト少将、卿は第六機甲師団をもって敵の注意を逸らしてもらいたい」
「敵の注意を逸らす、ですか?」
「そうだ、戦車や自走砲で突撃の真似事をするもよし空砲を断続的に発射するもよし、運営は卿に任せる。ただし、実際に攻撃はするな」
「・・・承知」
ヴェネジクトは渋々承諾した。
「我々は待機ですか?」
話しが終わったのを見ると健軍が問いかけた。
「第一航空騎兵団は上空で踊ってもらいたい」
「踊るですか、了解しました」
健軍は一瞬ハイドリヒの言っていることが分からなかったが、すぐに理解して返答した。
「では、作戦発動は20分後だ。各自準備をしておけ」
「「「はっ」」」
指揮官たちはすぐに司令部を出て自分の部隊へ向かった。

ハイドリヒはたき火の灯るイタリカをじっと見つめた。
 
 

 
後書き
大体アニメと同じような感じですね。
あとヴェネジクトはただのオリキャラです。これからも結構出るかも・・?
あとスペツナズはロンディバルト民主共和国の領土が元々ロシアとかのユーラシア大陸だったのでロシア・中国・日本辺りが主だからです。軍隊とかはそのまま引き継いだという設定で・・・(手抜き解釈
まぁてことは某段差登れない戦車とか某暴発する銃とか某浸水艦とかも引き継がれちゃってるんですよね(白目
それはそれでヤヴァそう(小並感
逆に今は亡き君主制連合は某チート国家とか某紅茶国家とか某元チョビ髭さんの国家とか某パスタ国家とかが主です。普通だったら反対じゃね?と思われるかもしれませんが、これは作者がロシア人とか日本人名とか使いたかっただけです。(なお7割ゲルマン系の名前の模様
圧政に苦しんだ国民が亡命してきたとでも考えてくださいな・・・。

長々と関係ない話を書いてしまいましたが、これでもよければご意見や感想、評価等よろしくお願いいたします<m(__)m> 
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