上からマリコ
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1部分:第一章
第一章
上からマリコ
マリコさんは僕よりずっと年上の人だ。僕はまだ高校生だけれどマリコさんは大学も出て病院でお医者さんをしている。そのマリコさんと出会ったきっかけはというと。
盲腸で入院しているツレの見舞いでマリコさんの病院に来た時に会った。黒くて長い髪を後ろに団子にしてまとめていて背が高く目がはっきりとしている。スタイルもすらりとしている。
その白衣のマリコさんを見て本当にだった。一目惚れだった。
もうすぐにだった。擦れ違ったマリコさんの方を振り向いて追いかけて声をかけた。
「あの」
「はい?」
振り向いた横顔もその声も。見て聞いてすぐにだった。
僕の心を鷲掴みにしてきた。白衣の下の黒いタイトのミニスカートと同じ色のストッキングも。どれも僕の目に入るとそのまま虜にしてきた。
そのマリコさんにだ。僕は名前を聞いた。
「お名前は」
「はい、私の名前ですね」
「何ていうんですか?」
ここでマリコさんという名前を聞いた。上の名前は内緒にしたい。
そのマリコさんにだ。僕も名乗って。
もう勢いのままだった。マリコさんにあれこれその場で聞いて話した。僕のことはあらかた話したつもりだ。そしてその最後にだった。
僕は勢い、本当にそのままマリコさんに言った。
「あの、実は僕」
「はい、何か」
「付き合ってる人誰もいないんです。だから」
自分でも今思うとよく言ったものだと思う。けれど。
本当に勢いのままだ。僕はマリコさんに言った。
「付き合って下さい。よかったら」
「返事は」
「今すぐにお願いします」
周りに人がいてもだった。僕は勢いのままマリコさんに言った。
「駄目ですか?それは」
「あの」
マリコさんは僕の突然の言葉に少し戸惑いを覚えたのか間が開いた。けれどすぐに。
僕の方にそっと来てだ。こう囁いてきた。
「あのね」
「はい?」
「今度の日曜私休日だから」
それでだと囁いてきてくれた。
「その時駅前の八条百貨店の本屋さんに来て」
「そこですか」
「ええ。そこで待ち合わせして」
この言葉がどういう意味かは僕にもわかった。まだ高校二年だけれど。
「後はわかるわよね」
「は、はい」
「じゃあそういうことでね」
マリコさんはくすりと笑って僕に囁いてくれた。
「今日はこれでね」
「お別れですか」
「ええ、今日はね」
またくすりと笑ってくれて僕に囁いてくれた。そしてその日曜日。
僕は精一杯お洒落をしてそれで八条百貨店の本屋に入った。するとそこには。
マリコさんがもういた。雑誌のコーナーに赤とオレンジの派手だけれどとても奇麗な上着に黒の短いスカートとスカートと同じ色のハイソックスという格好だった。その手にはバッグがある。特に奇麗な脚が目について仕方ない。
その姿で僕のところに来てそしてこう言ってくれた。
「待ったかしら」
「いえ、今来たところです」
僕はマリコさんの派手だけれどとても奇麗なファッションにどきどきしながら答えた。
「本当に」
「そうなの。それじゃあね」
「えっと、今から」
「そう。デートしましょう」
マリコさんから僕に言ってきてくれた。
「私が色々案内していいかしら」
「は、はい」
「お互いのことをお話しながらね」
「デートですか」
「そうしましょう」
こう言って僕の手に自分の手を絡めてきて。僕達はファーストデートをはじめた。その時にお互いのことを話したりもした。そこでだ。
僕はマリコさんの名前も聞いたしマリコさんのことも詳しく聞いた。マリコさんは八条大学医学部を出た内科の先生で二十六歳だった。僕より九歳も年上だった。
その九歳も年下の僕に。マリコさんは喫茶店、マジックというイギリス風の古風なダークブラウンのお店の中で紅茶を飲みながら言ってきた。
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